【完結】デジタルモンスターA&A~紡がれる物語~   作:行方不明

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というわけで、今回から第四章が始まりますので、またよろしくお願いします。


第四章~過ぎ行く平穏と這い寄るナニカ~
第三十九話~報告。そして混乱~


 ウィザーモン誘拐事件から一夜明けて、翌日の夕方。

 現在、大成は自分の家にいた。いや、大成だけではない。というか、デジモン人間問わず、この世界で大成と親しくなった面々が大成の家に大集合していた。

 その中には普段研究室に篭ってばっかりのウィザーモンも含まれていて、珍しいどころの話ではない。もっとも、昨日の一件で研究室は潰れたので、ウィザーモンは否応なしに研究室から出て仮住まいに活動の場を移さなければならなくなっているのだが。

 まあ、それはともかくとして。この家にいるのは、大成と優希と旅人と勇。そして、それぞれのパートナーたちとウィザーモンだ。

 大成がこの家に住んで何日か経過しているが、この家がここまで賑やかになったのは初めてのことである。

 この家がそれなりに大きいとは言っても、現在の人口密度では、かなり狭く感じられる。そんな中で、椅子に座っている者もいれば、立ったままの者もいて、かと思えば床に寝そべっている者もいる。面々はそれぞれ気に入った場所に腰を落ち着けていた。

 ちなみに、これだけの面々がこの家に集まることになったのは、ウィザーモンがあることを報告するために招集をかけたからだ。

 

「っていうか、ウィザーモン誘拐されたんだって?」

「ああ。その上、研究室まで潰された。まったく迷惑なことだ」

「それは災難だったな。っていうか、誘拐なんて、偉そうじゃないか」

――あかん、ツッコめへん……ワイも外とのコミュニケーション手段ほしいわ~――

「いきなり話しかけてくるな」

「旅人~偉そう、じゃなくて偉いんだよ。たぶん……っていうか、最近独り言多くない~?」

「多分は余計だ」

 

 すでに召集された面々は集まっている――というより、ウィザーモンが話のある面々はすでに集まっているというのに、なかなか本題に入らない。

 まあ、本題に入らないというよりは、各々が好き勝手に話しているから本題に入れないというのが正しいのだが。

 そんな中で、大成はスティングモンをジッと見つめていた。

 

「……」

「……大成さん、僕をジッと見ていたようですが何か?」

「え?いや、特に何も?」

「スティングモン殿は進化してから落ち着きが出ましたな。お嬢様」

 

 レオルモンが言う通り、進化してからスティングモンには落ち着きが出た。

 ワームモンだった頃には、どこか落ち着きがない、というよりは周りを伺ってばかりのような感じだった。だが、スティングモンに進化してからは、まるで寡黙な仕事人のように、常時冷静に構えているといった感じなのである。

 それは、進化して性格が変わったともとれるのだが――。

 

「……内心じゃわかんないけどね」

「……?」

 

 優希にはそうは思えなかった。

 自分を見つめる大成に向かって思わずといった体で声を発したスティングモンに、優希はいつものワームモンの姿を幻視したのだ。

 きっと、外見と纏う雰囲気が変わっただけで、内面部分はそう大して変わっていない。そう優希は思ったのである。

 とはいえ、そんな優希の思いを感じ取ることができないレオルモンは、ただ疑問顔で優希を見つめるしかなかった。

 

「……」

「……大成さん。やっぱり僕に用があります?」

「え?いや、特に何も?」

「さっきと全く同じ返しですよ」

 

 スティングモンに尋ねられるたびに、何でもないと返す大成。傍から見ていてわかりやすいくらいスティングモンを凝視していたのだ。それで何もないというのは、スティングモンでなくとも信じられないだろう。だが、実際には何でもないのである。

 スティングモンを見ていた大成は、フィギュア鑑賞をしている人と同じようなもの、と言えばわかりやすいだろうか。ようするに、進化したスティングモンをまじまじと見つめて悦に浸っていたのである。

 まあ、見つめられているのは心なきフィギュアではなく、しっかりと心のあるデジモンだ。まじまじと見つめられて、こそばゆい気持ちになってしまうのも当然の帰結だろう。

 

「そういやすっかり忘れてたけど、人間が旅人のカードみたいなのを使ってたぞ?あれについてなんか知らねぇか?」

「ん?オレのカードみたいなの?へぇー本当か?リュウ?」

「ああ。まあ、あくまでみたいってだけだが……」

「ふむ。今日の本題はそのことにも関係がある。……というか、いい加減に本題に入っていいかな?」

「どうぞ~」

 

 これでは埒があかない。そう思ったからこそ、強引にでもスレイヤードラモンの話題に便乗してウィザーモンは話を進める。

 まあ、それでも大成と勇辺りは聞く気ゼロだったりするのだが。スティングモンを見つめることに忙しい大成はともかくとして、勇の方はなぜ聞く気ゼロかというと――そう、食事を作っているからだ。というか、料理に集中していて本題の話が始まったことにすら気づいていない。

 とはいえ、ウィザーモンがこの話を聞かせたい相手は、主に旅人とドルモン、そしてスレイヤードラモンだ。勇や大成が聞いていなくとも、特に問題はなかった。

 

「ふむ……どこから話そうか。いや、初めから話そうか」

「いいからさっさと言ってくれよ」

「やれやれ……気が早いことだ。ふむ。三年前くらいのことだったかな。君たちがどこかへと行ってから、僕は旅人。君のカードを再現することに尽力していた」

「へぇ?で、できたのか?」

「完全にはできなかったな」

 

 完全にはできなかった。それは、裏を返せばある程度は再現できたということだ。

 使用する旅人本人もそのカードのことを知る者たちも、カードの力の凄さはよく知っている。それに、不明な部分が多いということも。だからこそ、そんなカードをある程度であっても再現することができたというウィザーモンに驚きを隠せなかった。

 まあ、それもカードについて知る者の話であって、カードについてよく知らない者はほとんど“ふーん”の一言で済ませているのだが。

 

「マジでか……え?ってことは白紙のカードとかも?」

「話をよく聞け。完全には無理だったと言っているだろう。僕にできたのは物体に力を込める。さらにそれを引き出す、の二つだけだ」

「そこだけ聞くとカードと特に変わりない気がするな」

「いや、旅人。そうは問屋が下ろさないんだろ」

 

 ウィザーモンの話を触りだけだが聞いたスレイヤードラモンは、話のこの先をなんとなく察していた。そして、自分の聞きたい話の部分にいよいよ入るのだとも。

 それまでは宙に浮きながら胡座をかくという、人から見たら不真面目にしか見えないような態勢で話を聞いていたスレイヤードラモンだが、本題に入るとあって真面目に聞く気になったのだろう。宙に浮くのは止めて、床に降て壁に背をあずけ、話を聞くのに楽な態勢に移った。

 

「そうだな。僕はカードほどうまく作れなかった。僕の作ったそれは、専用の機械に力を込めた物体を読み込むことで、ようやく発動する」

「やっぱり……」

「しかも、物体に力を込めたものを一つ作るのにもかなりの苦労する。裏技がないわけでもないが……これではまだ完成品には程遠いよ」

「いやいやいやいや……」

――馬鹿ダナ。頭ノ良イ馬鹿ホド手二終エナイ奴ハイナイ――

「まったくだ」

 

 作っただけでもすごいというのに。当の本人のウィザーモンは、まるでガラクタについて話すかのような口ぶりである。ウィザーモンの研究者としてのプライドというか、こだわりというか。

 なんにせよ、ほとほと呆れる旅人たちだった。まあ、誰しも自分が本気で挑むものにはそれ相応のこだわりがあるものだ。旅人たちであっても例外ではないし、ウィザーモンの場合はそれが研究だっただけの話だ。

 

「おい、それらしき物を優希を襲った奴が持ったたんだが?」

「む?……そうか。実は三年前に作られた試作品一号は盗まれていてね」

「盗まれた!?……今回のことといい、この街警備大丈夫か?」

「ふむ。まぁ、この街は警備の街ではないからね。この街は学ぶ者の街だ。警備の質が低いのも仕方ないだろう」

「……。さりげなくこの街の警備隊を貶したな」

「さて、そいつはどこへ行った?どうだった?……優希?」

「……ここで私に振るのね」

「本人から話を聞くのは当然だろう。で?」

 

 今まで他人事で聞いていたのに、ここで自分に話題が振られるのは予想外だったのだろう。優希は若干の驚きを内心に感じていた。その驚きは顔に出てはいなかったが、とはいえ、それでもわかる者には優希が驚いていたことがわかるだろう。

 優希は冷静であっても、無表情というわけではないのだ。まあ、無表情気味ではあるが、感情が表に出ないというほどでもない。

 それはともかくとして。ウィザーモンの言っている試作品とは、優希たちがこの世界に来たばかりに襲ってきた男の持っていたアレだろう。零たちの襲撃事件があまりにも衝撃的で、そちらの方がより鮮明な記憶として脳裏に残っているため、優希は半ば忘れていた。

 とはいえ、完全に忘れたわけでもない。優希は一つ一つ思い出しながら、ゆっくりと話していく。

 

「話を聞いているとカードには似ていないようだけどな」

「いや、旅人。カードを再現しようとして作っただけで、別物って考えていいんじゃねぇか?」

「旅人のやつは機械使う必要ないもんね~」

「……っく。そう言われると腹が立つな。とはいえ、ふむ。やはりそれは僕の作った試作品だな。その男は?」

「え?いや、さぁ……」

 

 その男がどこへ行ったのかなど、優希が知るはずもない。何者であったのかなど、もっと知る由もない。

 わかってるのは、何らかの目的を持って襲ってきたこと。そして、ウィザーモンの作った試作品を持っていたということだけだ。

 だから、これ以上優希に話せることはなかった。

 結局、ウィザーモンがわかったことは、自分の作った試作品をその男が持っていたということだけ。

 まあ、ウィザーモンとしても、確信に至るほどの情報を得られるとは思ってはいなかったが、それでも何らかの情報を期待していなかった訳でもない。こうも情報少なげであるとウィザーモンとしても少ないショックを受けてしまう。

 マスクでその顔の半分が隠れているということもあって、全然そうは見えないのだが。

 

「まぁ、試作品くらい別にいいか」

「軽っ!?……え?いいの~?」

「いや、所詮は試作品だからなドルモン。いいのだよ」

「……ウィザーモン殿。ここに一応、その試作品で迷惑を被った者もいるのですがな」

「別にいいわよセバス。ウィザーモンだって悪気があったわけじゃないんだし」

 

 まあ、優希の言う通りにウィザーモンには悪気こそないのだが、それでも盗まれたものを放置していた時点で故意と取られても仕方ない。というか、どうでもいいと思っていて、それで迷惑を被った者がいる辺り、タチが悪い。

 ウィザーモンにとって、試作品は試作品であって、つまり失敗作だったということだろう。まあ、ウィザーモンにとって失敗作でも、その他の者にとっては宝になりうることもあるということだ。

 とはいえ、これでウィザーモンの報告会は終わったことになる。だから、というわけではないが、少々強引ながらもウィザーモンは話題を変える。

 というのも、ウィザーモンには学術院の人々から旅人に依頼することを直々に頼まれていたからだ。まあ、頼むことを頼まれるという、ある意味面倒なことになっているのだが。

 とはいえ、当の旅人にその依頼が受け入れられないことはウィザーモン自身わかっていたりするのだが――それでも一応聞いてみなければならないだろう。この街の人々から頼まれたのだから。

 

「ふむ……そうだ、旅人。ダメ元で聞いてみるのだがな」

「ダメ元って言ってる時点でアレだろ」

「話だけでも聞いてくれ。この街の警備隊として――」

「嫌だ」

「せめて最後まで言わせてくれないか」

 

 まあ、速攻で拒否されたが。この結果はウィザーモンにとっても、わかりきったことであった。

 故に、やはりな……、と内心で思うことこそあれ、“何故”と思うことはない。というか、街の人々にどう言い訳しようか、と今から悩んでいた。

 一方で、その頼みを断った旅人だが、無理なものは無理なのである。まあ、旅人は至極個人的なことで断っていたりするのだが。

 

「そんなこと言ってもな。そろそろ旅に出たいんだけど。ああ、ドルたちは置いてくつもりだから手伝いならそっちに」

「えぇっ!?聞いてないよ~!」

「それ、俺もだよな?」

「えー?だって、お前たちなんか今いろいろとやってんじゃん」

「う……」

 

 ドルモンとスレイヤードラモンは、現在優希や大成の面倒を見ている。それは交わされた約束だ。

 そして、旅人はドルモンたちが、約束を反故にするような奴ではないことを知っている。ようするに、ドルモンやスレイヤードラモンが約束を果たし、旅ができるようになるまで旅人は待てないのである。だから、先に一人で旅をしようと思ったのだ。

 とはいえ、現在旅人の中には話すことしかできない人格が居座っているために、一人だけでと言うと語弊があるのだが。まあ、最近はたまにしか話しかけてこないその人格のことだ。旅人自身も半分忘れていたりするのだろう。きっと。

 

「嫌だ嫌だ!い、や、だ~!」

「っく……そりゃ、約束したけど……」

 

 旅人が一人で旅に出ることに、形は違えど反対するドルモンとスレイヤードラモン。その根底にあるのは、ようやく再会できたのにまた離れるのは嫌だという思いと旅についていきたいという思いである。

 とはいえ、旅人の予測の通り、どれほど嫌でもドルモンたちには約束を反故にする選択肢など、初めから存在していない。そんな状態でワガママを言っているというこの状態はつまり、二人は言外に旅人に旅に出ないでくれと頼んでいるのである。

 

「いや、行くし」

「待って待って待って~」

「あの、ドル?そんなに行きたいなら行ってもいいのよ?」

「ああっ!?別に優希ちゃんが悪いって訳じゃなくてね!」

 

 軽い混乱がこの部屋の中に起こっていた。

 すべての発端はウィザーモンで、それを助長させたのは旅人だ。だが、当のその二人は何事もなく寛いでいる。

 そんな二人を尻目に見ながらもドルモンは無い頭を必死に捻ってまだしつこく粘っている。だが、この調子では旅人の心を変えられそうにはないだろう。

 一方で、こうなるなら黙って出て行けばよかった、と内心でそう思っていた旅人である。

 

「なんか騒がしいな。ほら、ご飯できたぞー?」

「スティングモンか。うんうん。やっぱりちょっとは良くなったな」

「ちょっとですか……」

「お嬢様……このセバス。より一層の努力をします」

「……そうね。このままだとドルやリュウが可哀想だし」

「ま、連絡をくれるならな。俺のスピードだったらすぐ追いつくだろうしな」

「嫌だ嫌だ嫌だ~!うわぁ~ん!」

 

 なんにせよ、事件が終わった後の賑やかな一日だった。

 




第四章第一話もとい第三十九話。
まあ、軽い説明回と第四章のキー回ですね。
次回から本格的に第四章が始まります。

それでは、次回もよろしくお願いします。
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