【完結】デジタルモンスターA&A~紡がれる物語~   作:行方不明

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第四十話~そうだ!お使いに行こう!~

 ウィザーモンが大成の家に招集をかけた日から数日後のこと。

 ちなみに、この数日はとりあえず表向き穏やかな時間が流れていた。穏やかというか、いつもと変わらないというか。これぞ、日常といった感じの時間だった。

 まあ、旅人が行方不明になったり、ドルモンが拗ねたり、微妙にスレイヤードラモンの実施するトレーニングがキツくなったり、勇が大成の家に入り浸るようになったりしたのだが、それはほんの余談である。

 

「おー……で、今日は何だ?仕事だって聞いたけど……」

「……どんな仕事ですか?」

「スティングモン、大成。それはこれからでしょ?」

「そうですぞ。二人共、そこまではやらずともいいと思いますぞ」

「ふむ。来たかね。……何でスレイヤードラモンまで来ているんだ」

「暇だから」

 

 そんな時、大成たちはウィザーモンに仕事の用件で呼び出されていた。呼び出されたメンバーは大成と優希、そして二人のパートナーたちだ。だが、暇だからという理由でスレイヤードラモンもついて来ていたりする。

 まあ、呼び出されたと言ってもいつもの研究室は数日前に潰れているので、今現在に大成たちがいるのは、ウィザーモンが現在住んでいるとある一軒家である。ウィザーモンはまだ数日しか住んでいないはずであるのに、もう物が散乱していた。

 散乱している物の中にはデジメンタルもあることから、おそらくはウィザーモンの研究の品なのだろう。研究の結果、もしくは研究対象の品々であるはずなのに、扱いが雑すぎだ。

 その散乱具合といえば、やって来た大成たちの足の踏みどころがないくらいである。

 だが、この人口密度も物品密度も高い、言うなれば居所のないこの家に、新たに入ってきたデジモンがいた。おそらく、今回の呼び出しに関係するデジモンなのだろう。そこら辺は大成たちにも予想がついた。

 

「ほお?コイツらが特別名誉教授さんが推してくれる奴らかぁー!どう見てもガキじゃねぇか。大丈夫か?」

「そこら辺は大丈夫だろう」

「へぇ?お墨付きか。……って!そこにいるのはスレイヤードラモンさんじゃねぇかぁ!」

「ああ?」

「あ、握手してください!」

 

 新たに大成たちの前に現れたデジモンは、河童だった。人形のような見た目に反して頭には皿ではなく、CDのようなディスクが乗っている。それが、ガワッパモンと呼ばれる成熟期のデジモンである。

 どこか大成たちを見下したような言葉遣いと雰囲気だったものの、スレイヤードラモンを見るや握手を強請った。敬語で。格下と認識している者は舐め、格上と認識している者には敬意を払う。なんだか、可愛らしい見た目とは裏腹にどこぞのチンピラのようである。

 そんなガワッパモンを見て、ゲーム時代にある意味でお世話になっていたいつかのチンピラのことを思い出した大成。

 ムカつくアイツは今はどうなっているだろうか。この世界に来ているのだろうか。それとも、人間の世界でまたムカつく顔を晒しているのだろうか。

 そんなことをボンヤリと思った大成だった。

 

「もう手を洗わねぇ」

「汚いわね」

「うるせぇ!小娘!このスレイヤードラモンさんはなぁ!伝説なんだよぉ!五年前に流星の如く現れて、各地で数々の伝説を残してる!イカスお方なんだよぉ!」

「……リュウ、何してるの?」

「いや、まぁ……旅人やドルのやつを探している時にいろいろとな」

 

 実は、スレイヤードラモンが五年前に世界を救った面々の一人という、その事実を知っている者は少なかったりする。世界の危機があったということを知っている者は少ないし、世界を救った面々の詳しい情報を知っている者はもっと少ないということだ。

 ようするに、スレイヤードラモンがガワッパモンに伝説扱いされているのは、五年前に世界を救ったという事実以外の事によってであるのだ。

 一体何をしたのか。そう疑問に思った面々だったが、その疑問にスレイヤードラモンが答えることはなかった。

 ちなみに、それについても知っているだろうウィザーモンも、興味ないとばかりにその疑問について答えることはなかった。

 

「っく!スレイヤードラモンさん!一体誰なんすか!その人間の小娘は!」

「ん?ああ、ちょっと面倒を見てやってる奴だよ」

「なっ!羨ましいぜ!おい、小娘!このオレと代われっ!」

「嫌よ」

「なにぃいいいいい!」

 

 優希の即答に、ガワッパモンは頭を抱えて絶叫している。

 そんな光景を前にして、大成たちは自分たちが何をしにここに来たのかわからなくなっていた。というか、このウザイガワッパモンに付き合うくらいならさっさと帰りたい、とそんなことすら思い始めている。

 だが、そうは問屋が下ろさない。仕事は仕事。この街で快適な生活をするためにも、サボることはできない。

 

「はぁ。そろそろ本題に入ってくれないか?僕にもこの後には担当の講義がある。いや、研究だってあるんだ。ここで騒がないでもらいたい」

「……すまねぇ。特別名誉教授さん……でも!」

「でもけども謝罪もいいから、さっさと用件をすませたまえ」

「……はい。オレはガワッパモン!この街に最近来たデジモンだぁ!」

 

 そうして、ガワッパモンはウィザーモンに急かされて、ようやく本題に入る。

 本題に入るまで時間にして十数分。たった十数分ではあるが、ガワッパモンのウザさも相まって、それ以上の時間が経過しているように大成たちには感じられていた。ようするに、精神的に疲れてきていたのである。

 だが、そんな大成たちには気づかない様子で、ガワッパモンは話を進めている。つくづく、自分本位の性格であるようだった。

 そして、ようやく始まったガワッパモンの話――。

 

「でなぁ!新たな音楽を目指してオレはこの街に来たのはいい……が!この街にゃ全然イカス音楽がねぇ!」

「……で?」

「それでな!かの有名な機械里に行って欲しいのよ!」

「誰かー!通訳呼んでくれー!」

 

 だが、ガワッパモンは致命的に説明が下手だった。

 こんなどうしようもないところまで自分本位が極まっているのか、それとも当人の元々の性質なのか。まあ、どちらにしても説明が下手という結果には変わりようがないのだが。

 

「はぁ。このガワッパモンは音楽好きな者たちが住む街にいたらしい」

「そうそう!だがなっ!オレもオレ自身の音楽に新天地を迎えたいのよ!」

「……黙っててくれないか。君が話すと話が進まない」

「だからこそ、オレは旅に出てこの街に来た!けど、この街の人間はつまんねぇ石頭ばっかり!音楽を理解することすらできねぇと来たもんだ!」

「無視かね?それと、僕もその石頭に含まれているのか?」

 

 説明下手な者を相手するほど疲れることはないし、話が先に進まない。だからこそ、気を利かせて事情を知っているだろうウィザーモンが間を取り持って大成たちに説明をしてくれる。だが、やはり自分のことは自分で説明したいという願望があるのか、要所要所でガワッパモンが口出ししてくる。

 そんな状態では、確かにガワッパモン一人が説明しているよりは話が進むだろうが、間を取り持っているウィザーモンとしては疲れることこの上なかった。

 とはいえ、話しているうちにテンションが上がってきたらしい。ガワッパモンはどんどん饒舌になっていき、それと同時に少しだが説明下手もマシになっていく。こういうところを見るに、ガワッパモンは説明下手というよりは言葉足らずなのだろう。だからこそ、饒舌になるほど、説明はわかりやすくなる。

 まあ、それでも他の人と比べれば説明が下手であることには違いないのだが。

 

「だからオレは決めたのよ!この街に音楽の世界を広めるってな!」

「どうしてそうなったのよ……」

「……ありがた迷惑という言葉を知っているのかね」

「オレはこの街で音楽を広めるのに忙しい。でもな、オレ本来の目的であるオレ自身の音楽に新天地ってことも忘れちゃいねぇ!」

「……で?」

「だからオレがこの街で音楽を広めている間に、ちょいとお使いを頼まれて欲しいのよ!聞けば、お前らはこの街の何でも屋らしいじゃねぇか!」

「ちょっと待て!」

 

 ここまでおとなしく話を聞いていた大成。だが、ツッコミどころ満載、というかツッコミどころしかないガワッパモンの言葉につい声を上げた。

 この街の何でも屋、もとい便利屋扱いされていることなど大成たちは初めて知った。確かに、この街でさまざまなことを手伝う大成たちは、この街の何でも屋と言えるようなことをしていると言える。だが、何でも屋という名の仕事についているつもりは一切としてなかった。

 だからこそ、そのような扱いを受けていたことに、大成たちは驚くしかなかった。

 ちなみに、ウィザーモンはそのことを知っていた。というか、知らなかったはずはない。大成たちに仕事を斡旋していたのはウィザーモンなのだ。むしろ、特別名誉教授であるウィザーモンが直々に仕事を斡旋しているからこそ、大成たちは何でも屋としてこの街の住人たちに認知されることになっている。

 

「なんだよ!何でも屋って!」

「別にいいだろう。仕事があるだけマシだと思え」

「それにしても、機械里ね。……あれ、何か忘れてるような……まぁいいか。俺も久しぶりに行くかな。ああ、せっかくだし俺が連れてってやるよ。それなりに遠いしな」

 

 機械里というのがどこであるのか、大成たちにはわからない。だが、スレイヤードラモンが言うにはそれなりに遠い場所にあるらしい。スレイヤードラモンがいなければ、きっと何日も歩き続ける羽目になるだろう。

 大成はそれだけは嫌だった。この学術院の街で家持ちの快適な暮らしをしていたからこそ、何の理由もなく何日にも渡るだろう不便な野宿をしたくはなかったのだ。そして、それは大成だけではなく、優希にしても同じことだ。もちろん、何らかの理由があって仕方なく野宿をしなければならないのならば、大成も優希も納得するだろう。だけど、常日頃から好き好んで野宿をしたいとは思わない。そういうことなのだ。

 だからこそ、スレイヤードラモンの提案は渡りに船。ありがたいことだったのだが――。

 

「え?マジで!?じゃ、リュウお願いす――」

「いやいやいやいや!かのスレイヤードラモンさんにそんなことさせられるわけないじゃないですかぁー!」

「なんでお前が答えるんだよ」

 

 その提案を、何故か大成たちではなくガワッパモンが断った。

 正に渡りに船という言葉の船の部分をぶち壊そうとするガワッパモンの言葉に、大成は思わず声をあげた。だが、ガワッパモンは止める気はなかった。

 ガワッパモンにとって、スレイヤードラモンとは尊敬の対象だ。そして、大成たちに頼む今回の用件は、正しく雑用といえるものだ。つまり、尊敬するスレイヤードラモンに雑用などさせられるわけもないということである。

 

「いや、でもな。リュウが個人的に行くってんならお前に止めることはできないだろ」

「うぐ……」

「必死ね」

「まぁ、分からないでもないですな」

 

 外野が何やら呟いているが、大成の言う通りだ。ガワッパモンにスレイヤードラモンの行動を制限する権利などない。いくらガワッパモンが喚こうと、スレイヤードラモンが個人的に行くと言ってしまえばそれまでなのだ。

 まあ、それを言っているのはスレイヤードラモン自身ではなく、大成である。ついでに言えば、大成とスレイヤードラモンはパートナー関係でもなんでもない。

 お前には関係ないだろう、とガワッパモンに言われてしまえれそれまでになってしまうのだが――幸か不幸か、ガワッパモンはそこまで頭が回らなかったようである。

 ちなみに、当のスレイヤードラモン本人はどうでもいいとばかりに欠伸をかいていた。

 

「どうでもいいがさっさと行ってくれ。そろそろ僕もこの家を出ないとまずい」

「いや、まだ……!」

「っく。ん?待てよ……スレイヤードラモンさんに手伝ってもらえるとなりゃ、末代まで自慢できるんじゃ……?」

「いや、俺はその仕事自体を手伝うとは言った覚えはないぞ」

「そう考えると悪くないかもな!それじゃとにかく頼むぜ!?ガワッパモンからの頼みごとって言えばわかってもらえるからよ!」

「おい、誰に!?誰に言うんだよ!」

 

 それだけ言い残してガワッパモンは去っていった。最後の最後まで忙しないというか、もう少し説明義務を果たすべきというか、なんと言うか。

 現状を纏めると、大成たちはこの街から出て機械里に向かわねばならず、そこでどこにいるとも知れない誰かを探さなければならず、さらにガワッパモンから頼まれた用事も果たさなければならない。

 情報の少なさ故に、一気に面倒くささが倍増というか、ほとんど無理の域である。思わず途方に暮れてしまう大成たち。

 

「悪いがな。そろそろ本当にまずいんだ。さっさと出て行ってくれないか?」

「いや、でも……」

 

 だが、そんな間にも時間は刻一刻と過ぎていく。いろいろと用事があるウィザーモンとしては、本当に時間がなくなってきたのだろう。今のウィザーモンには節々に大成たちを急かすかのような言動が見受けられる。

 

「スレイヤードラモン。君はどうするんだ?先ほど大成たちを乗せていくみたいなことを言っていたが……一応こちらでも移動手段は準備してある。君には必要ないだろうが、乗ろうと思えば乗れるが?」

「そうなのか?……ま、暇だしな。たまにはゆっくり行くのもいいだろ」

「移動手段は学術院の街の入口に準備してある。……というか、来るように頼んである。出発時間は……ふむ。あと一時間後くらいだろう」

「一時間!?」

 

 来るように頼んである。ということは、デジモンが運転でもする乗り物なのだろうか。形的には車なのか飛行機なのか。大きさ的には大きいのか小さいのか。

 いろいろと気になった大成たちだったが、それを尋ねている暇はなかった。なにせ、あと一時間後くらいに出発という衝撃的な言葉をウィザーモンから聞かされたのだ。

 あと一時間ではろくな準備もできない。スレイヤードラモンやスティングモンたちデジモン組はともかくとして、大成たち人間組は多少でも準備をしなければ心配である。

 

「仕方ないだろう。あのガワッパモンのせいで思った以上に時間が経っていたのだから」

「いや、それでも一時間が一時間三十分くらいに変わるくらいの変化だろ!?」

「ふむ。まぁ、そうだな」

「言い切った!?」

「だが、何とでもなるだろう。さっさと行きたまえ」

「……旅人ならこれでもいいんだろうけどな。大成たちはそれじゃキツイと思うぞ?」

「ふむ。なるほど確かに。だが、もう遅い。次から善処するとしよう」

 

 そんなことをのんびり言うウィザーモンに軽くイラっときた大成。だが、そんなことを言っていても埒があかない。仕方なくウィザーモンの仮家を出た大成たちは大急ぎで自分たちの家へと戻る。

 

「何を準備すればいい!?」

「知らないわ」

「っく……!」

「大成さん落ち着いて」

 

 だが、旅支度などまともにしたことがない大成たちだ。時間もないこの状態では、焦りで頭も回らない。結局、大成たちはろくな準備をすることができなかった。

 相変わらずというか。行き当たりばったりが極まっている感じである。

 そんなこんなで、ほとんど手ぶらも同然の状態で大成たちは学術院の街の入口へと急ぐ。学術院の街の入口へと着いた時には、大成は疲れ果てていた。

 まあ、疲れ果てていたのは大成だけで、それ以外の面々はケロッとしていたのだが。

 

「……理不尽……だ……」

「そんなこと言われてもね」

 

 とはいえ、なんやかんやあっても時間には間に合った。これは幸運だろう。これで遅刻でもしようものなら目も当てられない。

 だが、そろそろ時間だというのに、ウィザーモンの手配したという乗り物の姿は微塵も見えない。

 どういうことか、と顔を見合わせていた大成と優希だが、次の瞬間には気づいた。スレイヤードラモンも、スティングモンも、レオルモンも。デジモン組全員が上を見ていたことに。

 つられて大成たちも上を向く。そして――。

 

「なっ!」

「えっ!」

 

 驚愕した。

 ゲーム時代からさまざまなデジモンを見た大成だったし、優希も過去に一度はこの世界に来たことがあったが、それでも流石にこれは予想外だった。

 そこにあった光景。それは電車が空を翔ける光景。あの電車はまず間違いなくデジモンだろう。よく見れば目があり、顔がある。次々と空にレールが敷かれ、その上を縦横無尽に走っている。

 

「懐かしいな」

「リュウ。あのデジモンを知っているのか?」

「ああ。トレイルモンっていうデジモンだよ」

 

 トレイルモン。さまざまな客を乗せてこの世界を走り回るデジモン。

 それが、ウィザーモンの手配した乗り物だった。

 




というわけで第四十話です。
ちなみに次回登場の機械里という街ですが、前作でも名前だけは地味に登場していたりもします。

さて、次回はお使いのために機械里にて奔走する面々です。

それでは次回もよろしくお願いします。
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