【完結】デジタルモンスターA&A~紡がれる物語~   作:行方不明

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第四十一話~大都市!?機械里!~

 次から次へと移り変わっていく窓の外の風景。日本では数少ない、人工の物がまったく存在しないその光景を人工物から望むという現状況は、ともすれば一周回って幻想的である。

 現在、大成たちは電車のようなデジモンであるトレイルモンに乗って旅をしていた。

 また、トレイルモンはデジモンであるが、その乗り心地は人間の世界の普通の電車と変わりない。いや、変わらないどころか、人間の世界の電車よりも優っている点も多い。

 そんなトレイルモンに乗っての移動に不便などあるはずもない。快適そのものな感じである。その快適さの程は、大成たちが部分的でも、学術院の街の自宅よりも快適に感じたほどである。

 

「おー……これで風呂と食事サービスがあればもう一生ここに住めるな」

「大成殿……流石にそれはどうかと思いますぞ」

 

 そんな大成たちがトレイルモンに乗って、学術院の街を出発してから、かれこれ一日が過ぎていた。

 その間、ずっと電車に乗りっぱなしであるというのに、大成たちはほとんど疲れていないし、ストレスを感じてもいない。それだけでトレイルモンの凄さがわかる。

 だが、そんな電車旅行も終わりの時を迎えようとしていた。

 

「この速度なら……そろそろだな」

「スレイヤードラモンさん、何がです?」

「到着が、だよ。機械里だ。ほら、もう見えるぞ」

「どれどれ……?は……?」

 

 スレイヤードラモンの言葉に、一同は窓から前方に広がる光景を見る。だが、見た瞬間に大成は口を開けて呆然と固まった。いや、大成だけではない。優希もレオルモンも口を開けて固まっている。スティングモンも冷静さを気取ってはいるが、内心では同様だろう。

 そんな面々がおかしくて、スレイヤードラモンは口の中で笑いを噛み殺す。それほどまでに、大成たち全員は同じ格好をしていたのだ。

 

「リュウ!?え?あれが……!?」

「ああ、そうだぞ大成。アレが機械里だ」

「うそ……」

「驚きですな……」

「……」

 

 三者三様に驚きながらも、大成が代表してスレイヤードラモンへと尋ねる。だが、帰ってきたのは肯定の言葉。正真正銘、大成たちが見えているものが機械里である。

 だが、まあ、大成たちが驚くのも無理はないだろう。それほどまでに、機械里の外観は常識をぶち壊すようなものだったからだ。

 機械里とは、読んで字のごとく機械で出来た街である。機械系のデジモンが多く住み、また外部からも機械についての用があるデジモンが大勢訪れる。この世界にしては珍しく、外部から多くのデジモンの出入りがある町である。

 だが、珍しいのはそれだけではない。機械里は、多くの街や里があるこの世界でも屈指の大きさを誇っている街なのだ。大きさ的には学術院の街を余裕で超え、総面積的には日本の市と呼ばれる区分の場所にも匹敵するだろう。

 摩天楼は超高層建築物という意味の言葉であるが、正しくその言葉通りの大きさの建築物が街中に建っている。デザインは人間の世界に見られるようなものでありながら、どこか近未来的な感じも見受けられる。全体的な雰囲気としてはちぐはぐで雑多でありながら、正しく圧巻の眺めであった。

 またこの世界でも屈指の鉄壁のセキュリティが備わっている街でもあり、いざとなれば街を取り囲むように火の外壁が形成されるだけでなく、街中に迎撃設備も同時展開される。

 

「いつ来てもデカイな。ここは」

「……いや、アレだろ。世界観にそぐわないだろ」

「雰囲気ぶち壊しね」

 

 スティングモンやレオルモンはその光景に圧倒されるばかりであったが、逆に大成たち人間組は微妙な気持ちとなっていた。まあ、それもそうだろう。

 大成たちにとって、この世界のイメージはゲームや御伽噺全盛のファンタジー世界だったのだ。だというのに、そんな世界のど真ん中に、こんなSF映画から飛び出してきたような大都市がある。違和感がすごいどころの話ではない。

 言うなれば、弓や剣で戦うような時代に戦車が走っているようなものである。

 機械系デジモンを何回かその目で見てきたことがあるとはいえ、こうもまざまざと見せ付けられると何とも言えない大成たちだった。

 

「……やっぱり変だろ」

「お前らの感覚が俺には分かんねぇけどな……ん、着いたな。ほら、降りるぞ」

 

 言いようのないダメージを負った気がしながらも、大成たちはスレイヤードラモンに急かされるままにトレイルモンを降りる。名残惜しいが、快適な電車生活ともこれで暫しのお別れである。

 トレイルモンは大成たちが降りたのを確認するとそのまま走って去っていった。また、どこかで誰かを乗せに行くのだろう。

 そんなトレイルモンを見送ってから大成たちはこの大都市“機械里”への一歩を踏み出す。見れば、それまであった草原から、いきなりアスファルトのようなものがひしめく大都市へと切り替わっている。その不自然なまでの切り替わりは、まるで絵を切り取って貼り付けたかのようだ。

 そんな光景に大成と優希は違和感を覚え、頭を悩ませる。だが、そう感じているのは人間組だけで、デジモン組はそういうものだとして受け入れているようだった。

 

「ピピ……認証シマシタ。ヨウコソ、機械里へ」

「おお、ハグルモンか!」

 

 街に入った大成たちを迎えたのは、歯車で出来たデジモンだった。ハグルモンと呼ばれる成長期のデジモンだ。

 ハグルモンの機械的な音声に大成は妙な気分になった。デジモンということは、生きているのだろう。だが、ハグルモンの声はロボットのもののようで、全然生きているように感じられない。だというのに、生きている。それが、大成には不思議だった。

 まあ、生きているからといって、自我があるということにはならないのだが。そう、ハグルモンというデジモンは、よほどの突然変異体でもない限り人間と同じような自我はない。大成は、その辺りのことが理解できていなかったのである。

 

「ソコニイラッシャルノハ、スレイヤードラモン様デスネ。貴方様ガ訪レタ時ニハ全霊ヲモッテ歓迎セヨ、トノ御命令デス」

「リュウ、本当に何をしたんだよ」

「……まぁいいだろ。さてそれじゃ、俺は行くぞ」

「って……え!?」

「何を驚いてんだよ。言っただろ。仕事を手伝う気はないぞ。ああ、あと別に先に帰ってもいいからな」

「いや、ちょ、待――」

 

 それじゃあまたな、と。待ったをかけようとする大成たちの目の前でスレイヤードラモンは消えた。まあ、消えたのではなく超高速で去っただけだが、スレイヤードラモンの動きを人間が捉えられるはずもない。まるで忍者のように消えるスレイヤードラモンの姿は今までにも何度も見たことはあるものの、待ったをかけようとしたその瞬間にやられると微妙な気持ちになる。

 というか、スレイヤードラモンがいなくなったせいで大成が立てていた予定がいろいろと狂った。仕事を手伝ってもらえないことは了承していたが、この街の案内くらいはしてもらうつもりだったのだ。だからこそ、このタイミングでいなくなられると、宿やその他諸々を大成たちは自分たちでやらなければいけなくなる。

 正しく、特番のために外国に一人で放り出された芸人のような気持ちに大成はなっていた。まあ、スティングモンや優希たちがいて、言葉が通じる分だけ、外国よりはずっとマシだろうが。

 

「で?どうする?」

「どうしますか……?」

「どうしますかな?」

「……はぁ。とりあえずは拠点探しね。これだけ広いと一日で終わりそうもないし」

 

 そう。この機械里に来る原因となったガワッパモンの依頼だが、不明部分が多過ぎるのだ。そんな不明部分の多い依頼を正確にこなす為には、おそらく一日では足りない。であるならば、この街での拠点の獲得は必須であろう。まあ、拠点といっても数日泊まるホテルくらいでいいのだが。

 ともあれ、優希も大成も、こんな大都市で野宿だけは嫌だった。現代風な見た目に反しての野宿。どこか自分が惨めに思えてしまうからだ。

 

「ハグルモン、ちょっといい?」

「ナンデショウカ……?スレイヤードラモン様ノオ連レ様」

「いや、まあ、間違っちゃいないだろうけど……」

「この辺りで宿泊できる場所はないの?できればタダで」

「うわ、守銭奴発げ――」

 

 手持ちのお金がないからこその優希のタダ発言だったのだが、大成には曲解して伝わってしまったようである。もしくは、わざと曲解して受け取ったのか。

 まあ、大成の邪気のない顔を見れば前者みたいだが、何ともアホな受け取り方をしてしまったものである。

 

「ちょっと黙ってくれない?」

「え?なんで?」

「……」

「大成殿……ある意味大物ですな。悪い意味で」

 

 ニッコリと笑いながら、されど怒気を含んだ声で話しかければ、たいていの者は恐ろしさのあまり萎縮する。実際、優希の言葉には明らかな怒気が含まれていた。それほどまでに守銭奴扱いされたのが嫌だったのだろう。

 だが、そんな優希を前にしても大成は何も感じていないようだ。鈍いのか、それとも大物なのか。おそらくは後者だろう。

 そんな大成を蚊帳の外にて呆れるレオルモンとスティングモン。優希の方もまだ思う所はあったものの、何も感じていないような大成に構うのがアホらしくなったのだろう。怒りを飲み込んで、再びハグルモンに向き合った。

 

「シカシ、スレイヤードラモン様ノオ連レ様ナラバ――」

「いいの」

「ソウデスカ。ハイ、コノ街ニ該当施設ハ多数存在シマス」

「本当?案内してくれる?」

「オマカセクダサイ」

 

 案内してくれるらしいハグルモンをありがたく思いながら、大成たちはついていく。

 ハグルモンは不思議な原理で浮きながら移動しており、大成たちが付いて来易いようにスピード調整しているのか、その移動スピードは大成たちの徒歩の速さと変わりなかった。

 まあ、元々この移動スピードなのかもしれないが、どちらにしても大成たちとしてはありがたいことだった。

 そして、歩き始めて十数分。機械里はやたらと広いだけあって、未だ目的地にはついていない。そして、その間、ハグルモンが無駄話をしないタイプのデジモンであったこともあって、大成たちは無言で歩いていた。

 だが、そろそろ黙っているのにも辛くなってきた。まあ、ようするにただついて行くのにも飽きてきたのである。

 だからこそ、それぞれがハグルモンに話しかける内容を探して――。

 

「リュウ……スレイヤードラモンって何をしたんだ?」

「……そうね。気になるわね」

 

 そういえば、と大成は声を上げた。この街でスレイヤードラモンが何をしたのか、ずっと大成は気になっていたのである。

 ハグルモンは進みながらも、大成のそんな質問に答えてくれた。

 

「スレイヤードラモン様ハコノ街ヲ救ッテクレマシタ」

「街を救う?」

「ハイ。コノ街ノ恩人デス」

「へぇー……具体的には?」

「コノ街ノ暴走シタ長ヲ鎮メマシタ」

 

 よくわからない部分が未だあるものの、街を救ってくれた発言を鑑みるに、どうやらよほどのことをしたらしい。さらに昨日のガワッパモンの発言も含めれば、このようなことをスレイヤードラモンは彼方此方でしていたのだろう。

 スレイヤードラモンが元々凄い人物であることはわかっていたが、それでも自分たちの知らない彼の姿が垣間見えた話だった。

 

「この街の長とは誰なんですか?」

「アンドロモント呼バレル完全体デジモンデス。普通ノアンドロモントハ違イ、意思ト感情ヲ持ッテイル素晴ラシイ御方デス」

「へぇ……完全体なのか」

「普通のアンドロモンとは違うのですね」

 

 アンドロモンという完全体デジモンは、人型タイプのサイボーグデジモンである。

 人間のような意思や感情を持っておらず、機械らしく与えられているプログラムに忠実に動く――のが、普通のアンドロモンである。だが、どうやらこの街の長と呼ばれるアンドロモンは違うらしい。

 普通の個体とは違って、意思があり感情を持っているとハグルモンは述べている。それはつまり、この街の長と呼ばれるアンドロモンは相当特殊な個体であるということだ。

 そうして話し続けてだいぶ時間が経っていたようだった。気がつくとハグルモンが動きを止めている。いや、動きを止めているというよりは、動く必要がなくなったから止まったという感じだ。

 そう、それはつまり、目的地についたということで。

 

「此方ニ見エルノガ、無料ノ宿泊施設デス」

「おお、これが……これが?」

 

 大成たちの目の前にあったのは、何十階もあろうかというほどの巨大なビルだった。看板などもなく、シンプルを通り越して無機的な造りであるこのビルでは、一見するとここが宿泊施設であるかどうかの確認は難しい。だが、ハグルモンはここが宿泊施設であると語っていた。

 疑ってしまうくらいわかりにくい外観ではある。だが、よくよく見れば周りのビルはほとんど似たような外観であるのだ。元々、見分けがつくような造りをしていないのである。いや、人間である大成たちの目から見てそう見えるだけであって、もしかしたらデジモンたちには違いがわかるのかもしれないが。

 

「ソレデハコレデ失礼シマス」

「ありがとうなー!」

 

 案内が終わったために、用がなくなったハグルモンは大成たちに背を向けて去っていく。そんなハグルモンを見送ってから、大成たちはビルの中へと入って行った。

 そうして、ビルの中へと入った大成たちを出迎えたのは――。

 

「ヨウコソ。宿泊デスネ」

「これは……」

 

 ハグルモンだった。

 先ほど別れたばかりなのに何故、と一瞬思ってしまった大成。だが、このハグルモンは先ほどのハグルモンとは別の個体なのだろう、とそのことにすぐに思い至って納得した。

 とはいえ、人間の目ではデジモンの外見上の個体差など、よほどの違いがなければわからない。同じデジモンであるスティングモンやレオルモンにはその差がわかるようではあるが、人間である大成たちにとって同じデジモンが何体もいるというのは心臓に悪いことだった。例えるのならば、ドッペルゲンガーを見た人の気持ちが近いだろうか。

 

「ドウカサレマシタカ?」

「いや、なんでもねぇ」

「ソウデスカ。部屋ノ数ハドウシマスカ?」

「二部屋で」

「了解シマシタ。部屋ハ203号室ト204号室デス」

 

 ドウゾ、と言われて部屋の鍵の代わりなのだろうカードを大成たちは手渡される。

 そこはいいのだが、号室番号からいって泊まる部屋は二階に存在するのだろう。せっかく何十階もあるビルに宿泊するのにこれでは詰まらない、と若干の不満を感じた大成だった。

 ちなみに、カードが部屋鍵として扱われているのは、この宿泊施設があまりグレードの高くない施設だからである。もっとグレードの高い施設であれば、顔認証のような最先端技術で鍵のような物は不要となる。

 スレイヤードラモンの連れている者たちとして認識されている大成たちならば、もっとグレードの高い施設にも無料で泊まれたのだが、優希が会話の中で偶然断りを入れたためにハグルモンが選択から排除したのである。

 

「大成さん、部屋を確認したらどうしますか?」

「とりあえず……どうするかをどうする相談だな」

「いつも通りにちゃっちゃと終わるようなものでもないしね」

「それが得策ですな」

 

 これからのことを話し合いながら、大成たちはエレベーターに乗って部屋へと向かっていく。

 そして。

 

「あれは……」

 

 そんな大成たちの後ろ姿をジッと見つめていた一体の青き幻竜デジモンがいた――。

 




というわけで第四十一話。機械里に入ったお話でした。
ちなみに最後にちょこっとだけ登場したデジモンは新キャラですね。

次回はガワッパモンの依頼。さて、無事に片付けられるのか……。

それではまた次回もよろしくお願いします。

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