【完結】デジタルモンスターA&A~紡がれる物語~   作:行方不明

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第四十二話~ストーカー?青き竜人との戦い!~

「朝だな」

「朝ですね」

 

 機械里の街に朝が訪れる。機械里は近未来的ながら、それでも学術院の街よりかは現代の日本の街に近い。だからというか、大成たちがこの街で()()()()()()()()()()()は、日本での朝を思い出して懐かしい気分に浸ることができたこともあった。

 初めての朝を経験した時。そう。その言葉通り、大成たちがこの街で朝を過ごしたのは一日だけではなかった。大成たちが機械里の街へと訪れてから、すでに三日経っていたのだ。

 

「……はぁ」

「朝から景気悪いですね」

「仕方ないだろ」

「そうですね」

 

 三日。それだけの日々を費やしても、大成たちはこの街での用事を済ますことができなかったのである。この街での用事とは、それすなわちガワッパモンの依頼のこと。つまり、ガワッパモンの依頼を済ませることができないということは、大成たちはこの街を離れることはできないということで。

 そんなこんなで、大成たちは、未だこの街に留まっていたのだ。

 そんな時、大成のいる部屋にノックの音が響き渡った。この時間帯に自分の泊まっている部屋に来る者など限られている。ようするに、大成には来たのが誰かということなどわかりきっていたのだ。

 まあ、それが誰か、わかっていようといまいと。大成が入室の許可を出す前に、ノックをした者は入って来たのだが。

 

「おはよう……大成、起きてる?」

「起きてるよ」

「なら、行くわよ」

「おはようございます。大成殿。スティングモン殿」

 

 入ってきたのは優希とレオルモンだった。というか、朝にこのような感じで優希たちが大成を起こしに来るのが、大成たちがこの街に来てからの日常になりつつある。

 大成が人間の世界では遅刻の常習犯だったからこそ、優希のこの行為に繋がるのだが、当の大成にとっては余計なお世話だった。大成が人間の世界で遅刻ばかりだったのは、夜遅くまでゲームをしていたからだ。ゲームのないこの世界では、早々と遅刻するような時間帯まで起きているはずもない。だからこそ、この世界では大成は普通の時間帯に起きることができる。

 よって、寝坊していないかとチェックしにくるこの優希の行為は、大成にとって嫌がらせに等しい行いだった。

 まあ、大成のそこら辺は積もり積もった行いのせいといるだろう。

 

「さて……どうするか」

「聞き込むしかないでしょう?」

「……だよなぁ。本当に見つかるのかー?」

「そこら辺は頑張るしかないですね」

「ですな。頑張りましょう。大成殿。スティングモン殿。お嬢様」

 

 こうやって話し合いながらも、外出の旨を従業員のハグルモンへと告げて、大成たちは街へと向かっていく。

 そんな中で大成は憂鬱だった。いや、その気持ちもわかるだろう。

 この機械里の街は、桁外れなまでにデカイ。人がこの街のすべてを歩いていくならば、どれほどの時間がかかるかわかったものではない。それほどの大きさの街で、何をしたらいいのかもわからない不明だらけの内容の依頼を片付ける。その困難を思うだけで、欝になっても仕方ない。

 それでも、やらなければならない。これには自分たちの生活がかかっているのだから。

 仕事しなければならない大人ってこんな感じなのかな、と今の大成は大人の世界を少しだけ覗いていた。まあ、その辺りについては、さまざまなしがらみのある大人の世界はこんなもんじゃないとも言えるし、見知らぬ世界で生き抜いている大成たちのほうがキツいとも言える。つまり、どっちもどっちである。

 

「それじゃ、ここから別行動ね」

「おー……それじゃサボるなよー」

 

 このやたらと広い街の中を纏まって行動するのは、効率の面からいっても得策ではない。だからこそ、この街に来てからの行動は、大成と優希で別れてのものだった。

 まあ、それでも二組に別れたとしても、その程度ではこの広大な機械里の中から不特定の何か探すというのはだいぶ骨が折れるどころの話ではない。現に三日も費やしている。

 今日も今日とて、そんな骨を折れることを、大成たちはしなければならないのだ。

 

「お嬢様がサボる訳ありませぬ!このセバスがついているのですからな!」

「……」

「それって、レオルモンさんがいなければ……いや、なんでもないです」

 

 自分の失言にレオルモン本人は気づいていないようだ。一応、当の優希は微妙な顔をしているのだが。

 ともあれ、このまま喋り続けていても仕方ない。大成たちは別れて情報収集をし始めた。とは言っても、ここ三日間でこの辺りにいたデジモンたちには一通りに聞き込みをしていた。

 まあ、デジモンも生き物である。ゲームと同じように、毎日同じデジモンだけがこの辺りにいるという訳はない。つまり、昨日とは違って今日この辺りにいるデジモンたちの中に、何か知っているデジモンがいる可能性も僅かながら存在する。

 だが、それでも、そんな僅かな可能性に賭けることは大成はしない。今日の大成は、より遠くへと足を伸ばすことを考えていた。

 まあ、その可能性を失念しているだけなのかもしれないが。

 

「それじゃ、ま。昨日言った通り……頼むぜ」

「わかりました」

 

 さて、遠くへ行くといっても、やはり徒歩で歩くというのは堪える。それはこの街が広大であるからで、大成がインドア派で体力がないとか、そういう問題ではない。だからこそ、大成は昨日のうちにあることをスティングモンに頼んでいた。

 そして、スティングモンの方も、大成からの頼みだ。断るはずもなかった。それどころか、ワームモンの頃にはほとんどなかったであろう、大成から頼られているという事実に、やる気を出してさえいる。

 大成がスティングモンへと頼んだ頼みごと。それは――。

 

「行きますよ」

「うぉ……おぉ!すっげー!」

 

 スティングモンが大成を抱えて空を飛ぶということだった。 形態こそ人型であるものの、スティングモンは昆虫デジモンである。当然、羽が有り、そして飛べる。さらに、非力だったワームモンとは異なって、かなりの力を持つ。そして、スティングモンの身長は大成の身長よりも、一メートル近く大きい。

 よって、スティングモンが大成を抱えて飛ぶということなど造作もないことだった。まあ、そう高く飛ぶことに意味はないため、地面から数メートルの低空を飛ぶ程度だが。

 

「おおー!リュウの時にも思ってたけど、やっぱいいな!」

「大成さん、あんまりはしゃぐと――」

「いやー……でもテンション上がるわー!なぁ!」

「まぁ、そう……ですね」

 

 自力で飛んでいるスティングモンには、大成のテンション上がる発言は理解できなかったものの、それでも話を合わせて同意の言葉を口にした。

 ともあれ、機嫌のよさそうな大成の姿には、スティングモン自身も嬉しくなる。自然と頬も緩んでしまうスティングモンだった。

 まあ、対して人間の大成では、()()スティングモンの“頬が緩んでいる”時と平常時との見分けをつけることができない。

 だが、そんな大成でも、スティングモンの機嫌がいいことくらいはなんとなく察することはできる。それが自分の機嫌がいいことから来ていることまでは理解できていなかったが。

 結局、機嫌がいいコンビは機嫌がいいままに、機械里の街を飛んでいった。

 とはいえ――。

 

「……はぁ」

「なかなか見つかりませんね」

 

 そんな風に機嫌が良かったのも、その間だけだったのだが。

 優希たちと別れて数時間後。そろそろ太陽が空の真上からだんだんと下り始めようかという時間帯。聞き込みをした相手はそろそろ五十体に届きそうなくらい。

 数時間前の飛行中とはうって変わって、大成たちのテンションはダダ下がりだった。まあ、数時間も聞き込みをしていて何も成果が出ないのだ。これでテンションが高い者がいたのならば、それはただの馬鹿か、空元気を振りまいているだけである。

 まあ、大成の場合は前者ではありそうだが――そんな大成でも、現在のテンションは低かった。

 

「というか、ガワッパモンのことを誰も知らないってどういうことだよ」

 

 そう、先ほど聞いたのは、戦車のようなデジモンだったが、ガワッパモンの依頼について何も知らなかった。

 いや、そのデジモンだけではなく、この街の誰もがガワッパモンという種族のことは知っていても、大成たちに頼みごとをしたガワッパモンを知っている者はいなかった。

 あのガワッパモンの言う話では、言えばすぐにわかるとのことだったが、全然すぐにわかっていない。ガワッパモンが嘘を言ったのではないか、と大成は疑問に思い始めていた。

 まあ、ガワッパモンは“誰に”言うのかを言っていないので、大成たちが何もわからないのも仕方ないのだが――大成は“誰に”言えばいいのかを聞いていないことをストレスできっぱりと忘れていた。

 

「これだけ多くのデジモンに聞き込みをして、それでも反応がないということは……」

「うーん?どういうことだ?」

「もしかして、ガワッパモンの個人間的なことだったりするんですかね?」

「……その場合って、ガワッパモンの依頼について知っている個人を探せってことだろ?この広い街の中から」

「ですね」

「……」

「……」

「あー!やめやめ!暗い方へ考えるのは止めだ!よし、聞き込み再開!」

 

 大成たちがしなければならないお使いが、ガワッパモンとまだ見ぬデジモンの個人的なやり取りのみで成り立っていた場合、この広い街からなんの情報もない一体のデジモンを直接探し出さなければならないということになる。

 相手の特徴もわからないのに見つけるのは流石に無理であるし、仮に出来たとしてもそれにかかる労力を考えただけで欝になる。

 よって、大成は強引にこの話を忘れることにした。というか、忘れたかった。

 

「とはいっても、ですよ。この辺りのデジモンにはそれなりに聞きましたし、別のところに行きましょうか?」

「そうだな。そうするべきかもしれねぇな」

 

 スティングモンの言う通り、この辺りにいるデジモンには粗方聞き終わっていた。だからこそ、スティングモンは別の場所に行くことを提案したし、大成もそれに頷いた。

 数時間前と同じように大成を抱えて、スティングモンは飛ぶ。この浮遊感と風を感じる瞬間だけは、大成もこの街に来てからのストレスを忘れることができていた。

 だが、そんな大成たちを後ろを追従するように飛ぶ、一匹のデジモンが――。

 

「これってどういうことだと思う?」

「えっと……とは?」

「だから、ストーカー、もしくは偶然。あとは……」

「どれでもいい気はしませんね」

 

 当然、そのデジモンについてはスティングモンも気づいていたし、人間の大成でさえ、数分も後を追ってくる者がいれば流石に気づく。

 だが、大成たちに後をつけられるような覚えはない。

 一体どういうつもりなのか。そう思いながら、大成やスティングモンがさまざまな予想をしていたその瞬間に――。

 

「ッ!大成さん!」

「え?……なっ!?」

 

 大成たちの前に回り込むように現れた青き竜人が、大成たちめがけて襲いかかってきた。

 スティングモンは咄嗟に反応できたものの、大成を抱えているせいでうまく避けることができない。なんとか地面ギリギリにまで急降下することで躱すことができたからよかったが、一歩間違えば大変なことになっていただろう――大成が。

 まあ、当然である。

 先ほどの一撃は、竜人の拳だった。ようするに殴打である。それがどれほどの威力のものかはスティングモンにはわからなかったが、それでも竜人の拳とスティングモンの間にいたのは抱えられて身動きが取れない大成である。つまり、どうあがいても竜人の拳はスティングモンよりも先に大成にぶち当たる結果となるのだ。

 ともあれ。

 

「何なんだアイツ!」

「大成さん大丈夫ですか!?」

「なんとか!」

 

 そんなスプラッタな未来は実現せず、大成は生きている。

 あの竜人がどういうつもりで襲いかかってきたのか知らないが、いざ戦いが始まってもスティングモンが戦いやすいように、大成は地面に飛び降りた。

 つくづく、大成たちは運が良いようだった。先ほどの攻撃を躱せられたのもそうだし、今回もそう。もし上空の高い位置にいたのならば、大成は地面に飛び降りることはできずに、スティングモンの足でまといになっていただろう。

 内心で、大成は安堵の息を吐きながらも、襲撃してきた竜人を見る。

 姿は腹と翼が白い程度で、全体的に青い。さらに腹の部分にあるXの文字が特徴的だ。また、というかなんというか。大成の知らないデジモンである。とはいえ、成長期のデジモンに目の前にいるデジモンと似たデジモンを知っている。順当に考えるのならば、その大成の知る成長期デジモンの進化系なのだろう。

 

「何者なんです!?」

「人間とデジモン……てめぇらだな!」

「……?」

 

 てめぇらだな、とそう言われても、大成たちには何のことだかさっぱりわからない。

 疑問を顔に出す大成とスティングモンだったが、そんな大成たちの事情など知ったことではないとばかりに、竜人は再びスティングモンに攻撃を始めたのだった。

 

「なんなんだよ!」

「問答無用だ!覚悟しろっ!オラオラオラオラ!」

「っく!」

「っ!イモ!」

 

 奇襲で一撃重視だった初撃とはうって変わって、まるで機関銃のような激しい連撃。竜人の拳が振るわれるたびに、空気が振動する。初撃ほどの威力はないだろうが、それでも充分に脅威の威力を誇っていた。

 あの竜人の拳だったら、巨大な岩でさえ容易く砕けるだろう。

 大成にはその光景をありありと思い浮かべることができていた。それほどまでに、見るからに竜人の腕と脚は力強かったのだ。

 だが――。

 

「っく!なんで入んねぇんだ!?」

「ぬぅうう……!」

 

 だが、そんな竜人の連撃をスティングモンは防いでいた。防ぐことができていた。

 それはスティングモンの経験によるものだ。スティングモンは、目の前にいる竜人よりもずっと強いデジモンを見たことがあるし、戦ったこともある。目の前にいる竜人の強さは、スレイヤードラモンや零たち、そしてあのハイブリッド体は言わずもがな、勇とグレイモンにすら届いていないように感じている。

 スティングモンは進化だってした。つまり、あの頃から成長しているはずなのだ。これだけの条件が揃ってあっさりと負けたら、恥を通り越すレベルだ。

 とはいえ、だからといって竜人にスティングモンが勝てるかというと、これも微妙なところだった。スティングモンと竜人の戦闘能力はほとんど拮抗している。今、スティングモンは反撃しないのではない。竜人の連撃を前にして、スティングモンは防ぎ躱すのが精一杯で、反撃できないのだ。

 だが、それでも決着がつかないということはない。その時は訪れる。もしスティングモンと竜人に差があったとするのなら、それは――。

 

「くそっ!当たれぇ!」

「……ここです!」

 

 性格の差だったのだろう。

 竜人は見るからに自分の攻撃を防がれ、避けられ続けたことに焦っていた。その焦りが隙を生み出してしまった。仮に竜人が焦らずに堅実な攻めを行っていたのなら、スティングモンを捉えることができていたかもしれない。

 だが、所詮は仮定の話でしかない。

 焦った竜人は隙を生んだ。そして、必死になって耐えていたスティングモンはその隙を見つけることができた。それが全てだ。

 

「しまっ――!」

「はっ!」

 

 生まれた隙。耐えに耐えて見つけたその隙をスティングモンは見逃さない。スティングモンは竜人を殴り、それと同時に両腕に取り付けられたスパイクが解放される。

 “スパイキングフィニッシュ”。直後、そう呼ばれるスティングモンの必殺技が竜人に向かって炸裂した――。

 




というわけで第四十二話。謎の青き竜人との戦いでした。
いったいこの青き竜人は誰なんでしょうね?
ともあれ、もう少しこの戦いは続きます。

さて、次回はこの戦いの続き――ではなく、この時の優希サイドのお話です。

それでは、次回もよろしくお願いします。
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