【完結】デジタルモンスターA&A~紡がれる物語~   作:行方不明

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第四十四話~乱入!そして……やっぱり乱入~

 優希たちがアンドロモンと出会った時から、時は少し遡って。

 その時、スティングモンの必殺技は、竜人に躱すことすらさせず直撃した。苦悶の表情を浮かべながら、竜人は地面へと落ち、倒れこむ。そんな姿の竜人を見れば、誰もが勝敗が決したと思うだろう。

 スティングモンの、初めてと言っても過言ではない勝利である。

 

「勝った!?……え?前みたいな第二形態的なことなんてないよな!?」

「はい!やった……やりましたよ!」

 

 いつぞやにハイブリッド体と戦った時は完璧にぬか喜びだった。

 だが、今度はそういうこともないだろう。なぜなら――。

 

「ぐぅ……くそっ。このオレがこんな奴らに……!」

 

 竜人は地面に倒れ込みながら、唸りながらも悔しがっているからだ。

 悔しがっているということは、すなわちこの竜人自体が負けを認めているということ。死んでいないとはいえ、スティングモンの攻撃によって竜人の体はボロボロになっている。これではしばらくは起き上がることすらできないだろう。

 ここまでの状態になって、負けを認められない方がおかしい。まあ、世の中にはこんな状態になってまで負けを認められない奴もいるにはいるのだが。ともあれ、この竜人は負けをあっさりと認めるタイプのようだった。

 

「っく!おい!いつまでこうしてやがる!情けはいらねぇ!さっさと殺しやがれ!」

「え?なんで?」

 

 せっかく命を拾ったのだから、わざわざ死を選ばなくてもいいのに。そう思う大成だったが、竜人の方は納得いっていないようだった。

 竜人は、許されざる行いをした者たちを倒すために、決死の覚悟で戦いを挑んだのだ。勝てば生。負ければ死。そういうつもりで戦っていたのである。だからこそ、負けたのに生きているこの状況は恥でしかなかった。

 とはいえ、そんな竜人の事情など大成たちには知ったことではない。好き好んで相手を殺すような趣味は大成たちにはないのだ。

 

「……てめぇら……なんのつもりだ?」

「何のつもりって……それはこっちのセリフだ。何でお前は俺たちを襲ってきたんだよ」

「はぁ!?本気で言ったんのか!?」

「……?本気だけど?」

「何か粗相でもしてしまったんですかね?」

 

 大成たちの言葉に、竜人は本気で驚いている。一方で、竜人が何を驚いているのか、大成たちにはわけがわからなかった。

 知らぬ間に何かしでかしてしまったのではないか、とも思うが、いくら考えても大成にもスティングモンにも心当たりはない。

 これは話し合うべきだな。そう考えた大成が、より詳しい話をしようと竜人に話しかけようとして、その瞬間に――。

 

「っ!大成さん!危ないっ!」

「え――?」

 

 はるか彼方から、いくつもの弾丸が大成たちめがけて放たれた。

 それは、明らかな攻撃行為。だが、こんな攻撃をする者など先ほどまでいなかった。つまりは、新たに現れた敵ということになる。

 咄嗟に危険を察知したスティングモンが、竜人と大成をビルの脇へと押しやって弾丸を避けたから最悪の事態にはならなかったものの、あと少し遅れていたら竜人も大成も蜂の巣になっていただろう。

 スティングモンの危機察知に感謝すると共に、大成はお約束なまでにこんな状況になる自分の運の悪さを呪っていた。

 

「人間の世界に戻ったら、絶対にお祓いに行ってやる……!」

「お祓いってなんですかね?……ってそんなこと言っている暇じゃないですね。僕が相手します。大成さんは隠れていてください」

「大丈夫か?……おい、何で顔を逸らす」

「……そんな顔しなくても大丈夫ですよ」

「俺ってどんな顔なんだ……?って、あ――」

「行ってきます!」

 

 連戦するスティングモンを大成は心配しているつもりだったのだが、冗談を言う余裕があるくらいには当のスティングモンも大丈夫なようである。

 まあ、その冗談を大成は本気で受け取ってしまったのだが。

 スティングモンが出て行った直後、耳をつんざくような大音量が連続して辺りに響き渡り始めた。その大音量を前にしては、思わず手で耳を覆わなければやっていけない程である。そんな、それほどの大きな音が連続して鳴っていたのだ。

 雷と間違うかのようなその轟音。平和国家の現代日本で育った大成には馴染みがなかったが、それは銃声に近かった。いや、銃声よりももっと過激。ありとあらゆる重火器が放たれているような音。正に、戦場の音だった。

 

「一体どんなデジモンなんだ……?」

 

 重火器ということは、あのムゲンドラモンのように機械系のデジモンなのだろう。だが、完全体以上だということはあるまい。もし、完全体だったり究極体だったりするならば、初めの一撃で大成たちはあの世へと行っているはずだからだ。

 とはいえ、これほどの音を出すデジモンを大成は知らない。だからこそ、そのデジモンが気になった。それに、デジモンだけでなく、現状がどういう状況なのかも気になる。

 よって、大成が見てみたいと思うのも仕方ないことだった。とはいえ、顔を出した瞬間に首から上がこの世から消えるなどという事態は大成でなくとも絶対に御免だ。だからこそ、ビルの影からそっと、慎重を期して現場を見る。

 そこにあった光景は――。

 

「イモ……っ!あれって……!」

 

 そこにあった光景は、正に戦場だった。

 スティングモンはその中にあって、空を舞い、地面を駆け、ビルの影に身を隠し、ありとあらゆる方法をもって耐えていた。

 その一方で、逃げ耐えるスティングモンを狙うように、弾丸が、ミサイルが、砲弾が、空を駆けている。

 驚くべきことに、それほどの攻撃を行っているのは、たった一体の戦車のような外見のデジモンだった。たった一体で、この戦場と見間違う光景を作り出している。その姿は正しく、ワンマンアーミー(一人軍隊)だ。

 

「壮観すぎるだろ……」

 

 そんな光景に唖然としながらも、戦車のような外見のそのデジモンに大成は見覚えがあった。先ほど聞き込みをしていた時に、話しかけたことがあったデジモンだ。あの時は、まさかこんなデジモンだとは思わなかったが。

 戦場の如き光景を、一体のデジモンが作り出し、さらにそのデジモンに立ち向かう者も一体。改めてデジモンの凄さがわかる光景である。あの戦車のようなデジモンに立ち向かうのが、人間だったら一人というのはありえないだろうし、それ以前に安全面から言って遠隔ミサイルとかを使うことになるだろう。

 

「――!」

「ん?」

 

 この状況を唖然として見ていた大成だったが、ふと轟音の中に別の音が聞こえたような気がして疑問に思う。

 まあ、音というよりは声のようだった。だが、スティングモンの声ではない。今のスティングモンのいる位置からではこの轟音の中で声は届かないだろう。かと言って、自分の声でもない。だとすると、聞こえた声は、自分の後ろにいる者の声ということになる。

 そう。先ほどスティングモンによって、半ば雑に大成と共にここへ押し込められたあの竜人しかいない。

 

「――!」

「お前か!何だって?」

「――!――!」

「聞こえねーよ!」

 

 とはいえ、この轟音の中でうまく会話ができるはずもない。大成は取り分けて耳が遠いという訳ではないが、それでもこの中で会話できるほど耳が良いわけでもなかった。いや、この轟音の中で耳がよかったら、それこそ死ぬほど辛い目に合うことになるが。

 竜人はイラついているようだ。いや、まあ、声を張り上げても、大成がなかなか聞き取ってくれないものだから、仕方ないと言えるのだが。

 ともあれ、何度もチャレンジをしても、大成は竜人の言葉を聞き取ることができなかった。だからこそ、声が聞こえないなら、と大成は竜人の近くへと自分の場所を移すことにしたのだ。まあ、初めからそうしろという話である。

 

「で?」

「……タンクモンか。厄介な奴に目をつけられたな」

 

 まだ少し聞こえづらかったものの、ようやく話ができるようにはなった。ジト目で睨んでくる竜人を、大成は笑って誤魔化した。そんなへらへらした大成を前に、さらに竜人の視線がキツくなったのは言うまでもないことだ。

 とはいえ、竜人も話を先に進めることにしたのだろう。まあ、先ほどまでのやり取りを無かったことにしたのかもしれないが――それはともかくとして。

 竜人の言ったタンクモンというのが、あの戦車のようなデジモンの名前なのだろう。とすれば、大成が次に気になったのは竜人の名前だった。

 

「オレ?……気になるところはそこかよ。エクスブイモンだ」

 

 エクスブイモン。それが、この青い竜人の名前だった。腹の辺りのXの文字はそこから来ているのだろう。

 エクスブイモンが名前を教えてくれたことで、大成も同じように自己紹介をする。ついでに、今はタンクモンの相手に忙しいスティングモンのことも教えておいた。

 そんな大成の姿に、エクスブイモンは舌打ちをしている。どうやら、大成たちが自分の思っていた人物像と違ったようで、調子が狂うようだった。

 

「で、エクスブイモンってことは……やっぱりブイモンの進化系なのか?」

「へぇ、よく知ってんな……って、そうじゃねぇ。タンクモンは傭兵デジモンって異名を持つくらい争い好きなデジモンだ」

「なんか読めてきたな……つまり?」

「おそらくさっきのオレとスティングモンの戦いを嗅ぎつけてきたんだろうな」

 

 だいたいはエクスブイモンの言う通りだった。

 タンクモンは、争いが起きるぞ、という己の勘を頼りに大成たちの後をつけてきたのはいいものの、一度は大成たちを見失った。だが、スティングモンとエクスブイモンの戦闘音を感じ取って再び大成たちを発見。襲いかかってきたのだ。

 すべては争い好き故の行動なのだが、ここまでいくと迷惑以外の何者でもなかった。

 

「……はぁ。運悪いなー。っていうか、何でお前は俺たちを襲ってきたんだよ」

「さっきも言ってたな。本気で分かんねぇのか?」

「うん」

「オレはな、人間とデジモンが笑いながら罪なきデジモンたちを虐殺してるって話を聞いたんだよ!」

「……はぁ?」

 

 大成にはさっぱり身に覚えがないし、そんなことをしようとも思わない。結局のところ、エクスブイモンの勘違いということだ。冤罪もいいところである。

 また、人間とデジモンの組み合わせがデジモンたちを虐殺、という部分に一瞬だけ零たちのことを思い浮かべた大成だったが、すぐにそれは違うとその考えを打ち消した。零たちは確かにデジモンたちを虐殺していたのは事実だったが、笑いながらではなかった。どちらかといえば泣きそうだった。

 まあ、虐殺していたという事実がある時点で言い逃れ不可能だったが、それでもエクスブイモンの言葉に少なくない違和感を大成は抱いたのだ。

 

「俺たちじゃねぇって!」

「……わかってるよ。二、三日見てたが……全然そんな気配がねぇ。おまけに襲ってきたオレを殺そうとすらしねぇ。お前らがそんな奴らじゃねぇってのは十分わかった」

「ならいいけど……」

 

 どうやら、エクスブイモンの誤解は解けたようである。大成もホッとしていた。また襲われてはたまったものではないからだ。

 ちなみに、大成はそのことについて割とあっさりと許したようだったが、本当ならばもう少し言いたいことがいろいろとあった。

 だが、誰だって、目の前にある危機的状況を放っておいて、もう終わったことをせっつくことなどしない。つまりはそういうことで、大成がそれを言わなかったのは大成自身がこのカオス的状況に巻き込まれて言いたいことが出てこなかった、ということである。

 

「焦ってたんかもしれねぇ。そんな奴らがいるってことが許せなくて……怒りに身を焦がして進化できたのはいいが……怒りを向ける奴が見つからなくてな」

「って!進化したばっかりなのか!」

「ああ、一週間前くらいにな。まさか進化をオレ自身が体験するなんて思わなかったけどな」

 

 エクスブイモンがスティングモンと拮抗した実力だったのは、その辺りもあるのだろう。怒りを向ける相手がいなかったということは、つまりは敵と遭遇していないということで、言い換えれば戦いをしていないということである。

 進化してから戦っていないということは、未だエクスブイモンとしての体に慣れていないということだ。人間だってスポーツをする際に新しい道具を手に入れたのなら、本格的に使う前には試しに扱ってみるだろう。それと同じことだ。それを怠れば、どのような結果をもたらすかもわからない。

 エクスブイモンは、進化して上がったスペックに慢心した結果、スティングモンに負けたのである。まあ、すべては性格の結果なのだろうが――呆れてものも言えない。

 

「……っぐ」

「って、おい!何で動こうとしてんだよ!」

「そりゃ、助太刀するんだよ。勘違いして襲いかかって、返り討ちになって、それで守られてりゃ世話ねぇや。今まで休んでいてちょっとは体力が回復してきた」

「いやいや、無理だろ!」

 

 ゆっくりと立ち上がったエクスブイモンの体は、フラフラと揺れている。明らかに先ほどのスティングモンのダメージが抜けきっていない。そんな状況であの弾丸飛び交う中に突撃するなど、無謀だ。というか、そんなことをする者などただの自殺願望者である。

 だが、エクスブイモンに止まる気配はない。大成も必死に止めようとするが、エクスブイモンがいくら傷を負っているとはいっても、人間とデジモンの筋力差が覆るほどではない。つまり、大成では力づくでは止められないからこそ、言葉で止めるしかない。

 だが、だからこそ。大成の言葉で止まらないからこそ、エクスブイモンは止まらなかった。

 

「待て待て、考え直せって!」

「いや。考え直す必要はねぇ。スティングモンだってキツいはずだ」

「それは……」

 

 エクスブイモンの言葉に、大成は押し黙る。

 拮抗した実力の相手と戦った後での連戦。スティングモンが辛い状況にあるのは明白だ。

 

「オレだけ寝てるわけにも行かねぇだろ。この状況だって、元を辿ればオレが原因だ。その償いは自分でやるしかねぇ。オレから償いの場をとらないでくれよ」

「お前……」

「安心しろ。お前のパートナーは無事に帰すからよ」

 

 力強い言葉で言い切るエクスブイモンを前にして、ついに大成が折れた。まあ、折れたと言うよりは、説得されたと言うべきかもしれないが――きっとエクスブイモンの言葉に思うところがあったのだろう。いつかやったゲームのキャラに似たような奴がいたとか、格好良い気がするとか、そんな理由で。

 とはいえ、その言葉はエクスブイモンの本心だった。人によってはいろいろと感じ方が違うだろうが、それはともかくとして。

 そんなエクスブイモンを前にして、大成は彼を行かせてもいいと思ったのだ。

 

「すっげ……お前さ、オレのパートナーにならね?」

「は?お前のパートナーってスティングモンじゃねぇのか?」

「いや、別にパートナーが一体だけじゃないとダメってルールはないだろ」

 

 確かに無いが、だからといって堂々と誘うのもどうかという話である。

 ちなみに、この時のスティングモンの内心では、言いようのない複雑な感情が湧き上がっていたりした。まあ、その感情を察知した直後に、弾丸が顔に掠って背筋が凍ったのだが。

 果たして、エクスブイモンの答えは――。

 

「……考えとく」

 

 これまた微妙な答えだった。

 まあ、いつもは即答で断られているために、それを考えるとマシなのかもしれないが。それでもマシと感じるのは大成だけであって、もしこの場にスティングモンがいれば不安で慄き震えることになるだろう。

 そんな返事にちょっとテンションが上がった大成を差し置いて、エクスブイモンはビルの影から戦場もかくやという街中へと出て行く。

 そして――。

 

「おらぁ!ここにもいるぞ!かかってこいやぁ!」

 

 大声で言い放った。

 きっとエクスブイモンは頭が弱いのだろう。割と本気で。これが決闘とかならともかくとして、この乱戦状況の中、さらに怪我をしている身で、わざと自分が狙われるような発言をしたのだ。これで頭が弱くなかったら、それはきっと戦場限定のマゾの類だろう。

 だが、結果としてそれが功を奏する結果となった。

 それは――。

 

「あらぁん?いい!いいわぁ~!その漢気溢れた行い!スゥーーーーパァーーーーに!イケてるじゃない!」

「え?」

「あん?」

 

 それは、新たなる乱入者を招くことになったからだ。

 世の中、何がどうなるかわかったものではない。実に不可解で不思議なことに、この乱入者は大成たちが待ち望んでいたものでもあったのだから。

 

「このキング!オブ!デジモン!の、エテモン様が助太刀してあげるわァん!」

 

 そうして、カオス(戦場)はまた一歩新たな段階へと進む。

 




というわけで、第四十四話。
あの青き竜人はエクスブイモンでした!いや、まぁ、バレバレでしたでしょうが。
そんなこんなで、カオス乱戦はまだ続きます。具体的にはあと一話くらい。

次回は謎のエテモンとの○○です。

それでは、また次回もよろしくお願いします。
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