【完結】デジタルモンスターA&A~紡がれる物語~   作:行方不明

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今日は用事があるので、早めの時間に投稿します。


第六話~出会ったのは~

 満天の星が瞬くそんな夜空の下。剣を持った白い竜騎士は荒野を歩いていた。

 五年前に仲間と生き別れて以来、その白い竜騎士はこうして旅を続けているのだ。いつかまた会えると、その再会を信じて。だから、これは偶然だったのと共に必然だったのだろう。

 

「……デジャヴだな」

 

 白い竜騎士は空を見上げて溜息を吐いた。空には何もない。だが、人間を遥かに凌ぐ視力を見るその白い竜騎士は、その空にあるものをしっかりと見つけていた。

 空から落下(・・)してくるソレら。常人ならば、それを見て唖然とすることだろう。なぜならば――。

 

「ぁああああああああ!死ぬぅううううううう!」

「ちょっとぉおおおお!落ち着きなさいぃいいいいいい!」

「うわぁあああああん!」

 

 落下してきているのは、人だ。しかも、一人ではない。二人の男女が超高速で落下してきていたのである。このままでは後数秒で地面に着弾することだろう。

 白い竜騎士はその片方に見覚えがあった。だからこそ、既視感を覚えているともいえるのだが。

 再会を求めていたのは確かだけども!と、求めていた再会ではなかったことに多少ガッカリしながら、白い竜騎士は溜息を吐いた。白い竜騎士が本当に求めていた再会は、彼女とは別の者たちとの再会なのだ。

 もっとも、彼女(・・)と再会したいと思っていなかったわけでもないのだが。

 そしてもちろん、白い竜騎士がグダグダとそんなことを考えている間にも、彼らは地上めがけて落ちてきている。

 

「……行くか」

 

 何度目になるかもしれない溜息を吐いて、その白き竜騎士である“スレイヤードラモン”は現在進行形で落下している彼ら――大成たちを助けに行ったのだった。

 ちなみに、スレイヤードラモンが大成たちを助けた時には、すでに地面着弾の一秒前のことだったりする。

 死を覚悟して生を諦めていた大成たちにとって、スレイヤードラモンの救助は驚愕すべき出来事だった。というか、言葉もでないとはこのことだろう。大成たちは驚きのあまり、放心している。

 まぁそうだろうな、と心の中で呟きながら、スレイヤードラモンはとりあえず再会の挨拶をすることにしたのだった。

 

「よぉ。久しぶりだな。優希」

「リュウ?」

「優希は空から落ちてくるのが好きなのか?」

「そんなわけないでしょうがぁっ!」

 

 そして大成たち中で、いの一番に復帰したのは優希だった。それには、スレイヤードラモンとの知り合い(・・・・)だったということが大きいのだろう。

 未だ放心している大成や、その頭にしがみついているワームモンは半ば置いてけぼりだ。そして数分後。ようやく興奮が落ち着き、助かったことに気づいた大成は、奇声を上げて生きていることを喜ぶのだった。

 

「なかなか賑やかな奴だな」

「……まぁ、いろいろな意味でね」

 

 そんな大成を優希とスレイヤードラモンは生温かい目で見ていた。

 一方で、そんな目で見られていることすら気づいていない大成は、喜びのあまりワームモンと一緒に踊り狂っていたりする。

 ちなみに、ようやくまともに大成と交流できたことに、ワームモンは感極まって涙目になっていた。これくらいで感極まるのだ。単純すぎである。もしくは、今までの仕打ちの間に溜めたものが相当なものだったか。

 

「やっぱり生きているって素晴らしいなっ!で、優希!この格好良いデジモンは知り合いなのか!?っていうか、なんで!?」

「え?まぁ、私は前に一度この世界に来たことがあってね。その時にこのトカゲ人間と出会ったの。んで……」

「誰がトカゲ人間だっ!ったく。俺はスレイヤードラモンのリュウだ。よろしくな」

 

 優希から引き継いで、スレイヤードラモンは大成たち二人に自己紹介をする。緑のマントをなびかせ、月の光を浴びて輝く白銀の鎧を纏う、騎士然とした姿。それは、贔屓目に見なくても、格好良い姿だ。だから。というわけではないが、大成がこんな対応をするのも無理はないことだろう。

 

「ぜひ!俺のパートナーなってくれっ!」

「ええっ!?」

「私がこの世界に一度来ていた部分は無視?」

「そんなことはどうでもいいっ!」

 

 清々しく言い切った大成の目に冗談の感じはなかった。間違いなく本気で言っている証拠である。

 そしてその本気具合がわかったからこそ、ワームモンは顔を青くしていた。先ほどまで感極まって涙目になっていたというのに、今度は別の意味で涙目になってしまっている。

 一方で、重要そうな情報をあっさりと流された優希は、微妙な心情だった。具体的には“深く突っ込まれるのも嫌だが、こうもあっさりと流されるのもそれはそれで癪だ”という感じだ。

 

「いや……お前のパートナーはそこのワームモンじゃないのか?」

「お願いだっ!」

「……。悪いけどな。俺のパートナーは一人しかいないんでね。諦めてくれ」

「マジでかぁあああああ!」

「あんな縄文時代どころまでさかのぼったようなナンパ擬きで釣れるやつなんて、いるわけないでしょ。子供じゃないんだから」

「ナンパじゃねぇっ!どっちかっていうとプロポーズだっ!」

「お前ら何の話してるんだよ」

 

 スレイヤードラモンの当たり前の返答に、天を仰ぎ見て絶叫する大成。まさかとは思うが、本気でOKをもらえると思ったのだろうか。いや、大成の様子からして、半ば本気でそう思っていたのだろう。おめでたい頭である。

 そんな大成を、周りのメンバーは呆れた目で見ていた。

 唯一、大成を呆れた目で見ていないのは、ワームモンだけである。そんなワームモンはスレイヤードラモンを、抗議の目で見ていた。再びの既視感に襲われたスレイヤードラモンだ。出会って数十分と経っていないのに、昔を思い出すようで懐かしい気分になったスレイヤードラモンである。

 

「はぁ……まぁ、仕方ないか。他人のパートナーを横取りなんて意味ないもんな」

「本当っ!?本当っ!?よかったぁ……」

「俺は一ミリ足りとも悪くはないのに、なんか悪いことした気になるな」

「っひ!ごめんなさいっ!」

「……俺ってそんなに怖いか?」

「さぁ?」

 

 ワームモンにとってスレイヤードラモンは恐怖の対象らしい。小さな悲鳴を上げて、優希の後ろに隠れている。

 まあ、人間を超えるほどの身長のスレイヤードラモンだ。人間の足元ほどの大きさしかないワームモンにとっては、見上げるような背丈である。それは怖くも思えるだろう。

 そして、そんなワームモンの反応にちょっとだけ傷ついたスレイヤードラモンだ。

 

「あーあ……もっと格好良い奴なら良かったのになー。どうして現実にはリセットボタンがないんだっ!」

「アンタそればっかりね。いいじゃない。ワームモン」

「そうだぞ。ワームモンは可能性の塊だ。進化すれば……」

「そ、そそそそんな!僕なんかが……進化するなんてとても無理だよぉ……」

 

 一方で、大成はまだグダグダ言っている。手のかかる弟を窘めるように、優希たち二人がフォローを入れた。

 だが、そんな二人によるフォローも、ワームモン自身が否定する始末だ。これでは、ワームモンが進化することなど、いつになるかわからない。大成が現実世界へと帰ることができるのは、当分先の話になりそうである。

 

「そういえば、リュウってスレイヤードラモン?……なんだよな。なんで名前が二つもあるんだ?」

「ん?ぁあ。スレイヤードラモンっていうのは種族の名前だ。リュウっていうのは俺個人の名前。まぁ、個人の名前は無いやつも多いけどな」

「へぇ……こいつのイモみたいなもんか」

「イモ?アンタ付けるならもっとマシな名前にしてあげなさいよ」

 

 そんな優希の足元では、ワームモンが静かに泣いていた。会ったばかりのスレイヤードラモンも、その名前には大成に抗議の視線を送る。だが、大成としても変えるつもりはなかった。理由は至極単純で、一度決定したことを覆すなど、カッコ悪いと大成が思ったからだ。

 

「んで?俺は旅の途中だけど……お前らはなんでこんなところにいるんだ?」

「あ、リュウ……それがね?」

 

 話が一段落したから、優希はスレイヤードラモンに今までのことを話した。優希としては、自分たちをここへ連れてきた人物や出口で襲ってきた謎の人物についての情報が知りたいのだ。この世界を旅しているスレイヤードラモンなら、何かを知っているかもと思ったのである。

 だが、現実は非常だ。スレイヤードラモンの知っていることといえば、最近人間がこの世界に何人も現れ始めたということだけである。おそらくそれはあの街の外へと出て行った人々なので、優希がとりわけて知りたいことでもない。

 もっとも、木を隠すなら森の中という言葉通り、それだけ人が街の外へと出て行ってしまったのならば、怪しい人間がこの世界にいても気づけないだろうが。

 

「……そういえば、なんでお前らは空から降ってきたんだよ」

「街の話はしたでしょ?その街の出口から出たら、空の上だったのよ」

「でも、空を飛ぶ街なんてここら辺にはないぜ?転移でもさせられたか?」

「たぶんね。居場所を突き止めさせないための工夫だと思う」

 

 そんな優希たちの話で大成も現実に戻った。格好良いスレイヤードラモンとの出会いで浮かれていたが、大成は街の外へと出てしまったのだ。ようするに、もう確実に安全に生活できるとは言い切れない。大成は、この異世界に身一つで放り出されてしまったのだ。

 ちなみにその時、大成の頭の中でワームモンの存在は忘れ去られていた。

 四の五の言っている場合ではない。そのことを大成は思い出したのだ。なら、大成のすることなど決まっている。

 

「リュウ!優希!」

「はい?」

「ん?」

 

 突然の大成の大声に驚いた二人だったが、次の瞬間にもっと驚くことになった。大成の姿が消えたのだ。いや、消えたのではない。優希には消えたように見えただけである。なぜなら、大成は土下座していたのだから。

 いきなりの土下座に優希たち二人は唖然とする。というか、どう考えたらそんな結果になるのかわからない。だが、それでも大成はまじめに考えた結果であった。

 もっとも、ものすごく頭の悪い結果であるのだが。大成の頭の出来が知れる行動である。

 

「俺を助けてください!せめてっ!帰ることができるまでっ!安全を提供してくださいっ!あ、あとできたらこの芋虫も鍛えてほしいです」

「図々しいにもほどがあるでしょ。まぁ、見捨てる気はないけど……」

「いや、鍛えたり、手助けするのは構わねぇが……それでも安全を保障なんかできねぇぞ?」

「十分だっ!」

「ふぅ……まぁ、できる限り善処することを約束してやるよ」

 

 とはいえ、スレイヤードラモンも厳しいと思っていた。大成が元の世界へと帰ることがである。安全面ならば、スレイヤードラモンが守ればいいし、安全地帯を探してそこに大成を押し込めればいい。

 だが、究極体に進化という部分は別だ。以前(・・)とは違い、今のこの世界では進化という現象は、よほどのことがなければ起きることはない。しかも、成熟期や完全体ならまだしも、究極体だ。元々究極体まで至ることのできる者すら希で、現在のこの世界に存在する究極体でさえほんの数体。どれほどそれを目指すのが難しいかわかるだろう。

 

「でも、究極体って……」

「まぁ、何とかなるだろ。人生そんなもんだ」

「……リュウ、旅人見たいよ?」

 

 どこかで聞いた名前に首を傾げた大成。だが、昔からの知り合い同士の話について行こうとするのなど、普通に無理な話だ。

 話題についていけない人は、そういう時には空気になるものである。空気になった大成は、不意に脳裏に浮かんだ嫌な予感を感じて空を見上げるのだった。そしてそんな大成の嫌な予感は的中することとなる。

 

「さて、今日はここら辺で休んだほうがいいだろ。俺は平気だけど、お前らはつらいだろ」

「ん、そうね」

「え?野宿か!?」

 

 そう、当然だが辺りに人里の気配はない。ここから人里に類するような場所まで行こうとすれば、夜が明けるだろう。つまり、大成たちはここで休むしかないのだ。休まなければ、明日以降辛い目にあるだけだ。

 だが、現代日本で暮らしていた大成にとって野宿など初めての経験である。しかも、テントなどのキャンプ用品すらない。不安しか感じられない大成だった。

 

「しかないでしょ」

「っていうか、優希はなんで平気そうなんだ!?」

「私は経験しているし……まぁ、慣れかな」

「何が慣れだよ。お前あの時文句たらたらだったじゃねぇか」

「う、うるさいっ!」

 

 顔を赤くして抗議する優希をスレイヤードラモンは軽くあしらう。大成が何と言おうと、今日はここで休むしかないのだ。だから、大成には諦めてもらうしかない。そのことを大成もわかっている。というか、わかっていないはずもない。何とかなるかもしれないという一筋の希望を抱いて、言ってみただけである。結果はどうにもならなかったのだが。

 ちなみに、優希は何度か野宿を経験しているので、野宿に抵抗はない。とはいえ、自ら望んで野宿を望みたくはないのだが。そこら辺は年頃の女の子ということだろう。今優希の頭の中には、あの街で使えたはずのベッドやトイレ、風呂に対する未練が巡っていた。

 

「じ、じゃあ……リュウのマントを布団代わりに貸してくれ!」

「いや、嫌だから」

「布団が欲しいなら……僕糸吐けるよ。……ネバネバだけど」

「つかえねぇ……」

「う……ごめんなさい」

 

 ともあれ、その場で野宿は決定事項だ。見張りであるスレイヤードラモン以外の優希たちは眠りにつくのだった。

 もっとも――。

 

「……眠れない」

 

 大成を除いて。昼間数時間も眠っていた大成は眠り過ぎで、眠れなかったのだ。スレイヤードラモン以外は既に眠っているらしい。寝息が聞こえる。大成もそれに習おうとするが、眠れない。というか、人間というものは眠ろうとするほど、かえって眠れなくなるものである。

 仕方なく、大成は起き上がる。眠れないのなら、少しでもスレイヤードラモンと親睦を深めていくほうが建設的だと思ったのだ。

 

「ちょっと話そうぜ?眠れないんだ」

「……明日に響きそうだな。まぁ、ほどほどにな」

「サンキュー。それじゃあ……お前のパートナーはどんな奴なんだ?」

 

 大成は気になっていたことを尋ねた。特に知りたかったわけでもないのだが、急に話題も出てこなかったがゆえに、会話の導入的なつもりでその話題を振ったのである。

 

「うーん……一言で言えば……旅馬鹿?」

「旅……バカ?」

「そうだな。すぐに落ち込むくせに……どこか楽観的で、豪快なんだか繊細なんだかわかんない奴だな。あと無類の旅好き。というよりも、旅することが生きている理由みたいなやつだ」

 

 そう語るスレイヤードラモンは、どこか懐かしそうだった。大成も薄々と感づいていたことではあったが、スレイヤードラモンはそのパートナーとだいぶ長い間会っていないらしい。それが、死別したのか、それともただ生き別れただけなのかは、大成にはわからないことではあったが。

 

「旅ねぇ……楽しいのか?家でゲームしてた方がよっぽどマシに思えるけど」

「ゲーム?あぁ。人間の室内遊戯のことか。……そうか?旅もなかなかにいいものだと思うけどな。まぁ、アイツと出会えたからそう思えたんだけど……。少なくとも部屋に閉じ篭っていたら見えないものは、見えると思うぞ」

 

 そう言われて、確かに、と大成も思う。大成の目の前には満天の星空があった。ゲームや本の中でしか見たことがないような感嘆するほどの星空。まず間違いなく、空気の汚れた現代日本では、よほどの場所に行かなければ見えない光景だろう。

 旅は、このような光景を見ることもできる。大成をして感嘆したほどの光景だ。このような景色を見るためならば、少なくない金を積むという人もいるだろう。そう考えると、このような光景を見ることができる旅を生きがいにする人がいるというのも、大成にも理解できなくもなかった。

 

「確かに、部屋にいたら見えない景色ではあるな……?……どうかしたのか?」

「……襲撃だな。これで気づいてないと思ってるのか?まぁ、いい。大成、優希を起こせ」

 

 それは、平穏なひと時を過ごしていたつもりの大成にとって突然の事態だった。

 




というわけで、大成たちの本格的なデジタルワールド冒険が始まります。
ちなみに、優希とスレイヤードラモンの出会いは前作の第八十話~第八十四話の部分です。
そして、次回はついに戦闘回(一部)。

それでは、次回もよろしくお願いします。
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