【完結】デジタルモンスターA&A~紡がれる物語~   作:行方不明

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業務連絡。
あらすじのところの章の開始終了の部分が四章以降いじっていなかったことに気が付いたので、直しました。


第六十話~信頼の進化!未来を掴むは託された思い~

 この場に新たに現れたスカルグレイモン。

 見た目は全然違うが、あれがグレイモンの進化した姿であろうことは想像に難くなかった。なにせ、グレイモンがいなくなって、グレイモンが元いた場所にスカルグレイモンは現れたのだ。これで、スカルグレイモンは新たな乱入者である、と思えるはずもない。

 ついでに言えば、スカルグレイモンは明らかに正気を失っている。いや、もしかしたら初めからそんなものはないデジモンなのかもしれないが――その雰囲気に理性や知性といったものが感じられないことは、誰から見ても明らかだった。

 

「ガァアアアアアアアア!」

「グギャアアアアアアア!」

 

 なぜ、どうして。自分の胸の内に湧き上がるさまざまな疑問が湧き上がるが、それを胸の内に押しとどめたとしても、優希たちは立ち尽くすしかなかった。

 この状況の元凶だろうヴァンデモンは、愉しそうにスカルグレイモンを見つめていて、いつの間にかコウモリの群れから解放された勇も、倒れて動かない。さらに、スカルバキモンとスカルグレイモンという二体の狂えるデジモンが、咆哮している。

 この状況で優希たちは下手に動くことなどできなかったのである。だからこそ、いつ何時事態が動いても動けるように、油断なく事態を観察し続けていた。

 

「グガギャアアアアアア!」

「ガッ……ギュガァアアアア!」

 

 そうして、その果てに、二体の狂えるデジモン同士がぶつかり合いを始める。骨という身で、痛みを感じていないかのようにその巨体をぶつけ合う二体のデジモン。その姿からは、戦いにおける執念しか見ることはできなくて――傍から見ていて、恐ろしいことこの上なかった。

 戦いを志す者のなれの果てが、()()なのだ、と。そう見せつけられているようで。

 

「ククク……ハハハ!すごい!すごいぞ!まさかここまでとは!」

 

 そんな中、ヴァンデモンは機嫌よさそうに笑う。良い収穫があった、と。予想以上だった、と。

 グレイモンがスカルグレイモンに進化し、ああなってしまったのは、ヴァンデモンが原因のはずだ。というか、それしか思いつかない。

 だからこそ、狂える者同士でやり合っているを二体を放っておいて、レオルモンとエンジェモンはヴァンデモンを包囲する。

 もしかしたら、スカルグレイモンを元に戻せるかもしれない、と。そう微かな希望を抱いて。心の中にある、手遅れだという思いには目を向けないようにして。

 

「グレイモンを元に戻してくれませぬかな?」

「ククク……なぜだ?奴は()()()()ああなったのだぞ?」

「あの心美しき者がああなるなど、汝以外の者が原因であるはずかない!」

「まぁ、その通りだが……何。素質を感じたのだ。我が下僕としてある素質を」

「いい加減にしてくれませぬかな?こちらとしても我慢の限界があるのでな……グレイモンを元に戻せと言っている!」

「ククっ!お前たちは本当にそう思っているのか?一度完全に進化した者が元に戻ると?」

「……っ!」

 

 ヴァンデモンの言う通りだった。

 優希の力での強制進化やアーマー進化などの例外的な進化以外で、一度進化した者が元に戻ることなどありえない。時は逆方向。子供が大人になれようと、大人が子供になれないように。それは、考えるまでもない当然の事実だった。

 だが、だからこそ、その事実が何よりも痛い。もう、スカルグレイモンはどうしようもないということを突き付けられてしまったのだ。

 

「さて、それでは私は一度失礼させてもらう」

「……何!?」

「流石に思わぬ収穫があったとは言え、本来の用事も捨てがたい。何、用事が終わったら戻ってくる……スカルグレイモンを我が下僕とするためにもな」

「闇の眷族が……!逃げられると思っているのか!?」

「お前たちは私が逃げられないと思っているのか?」

「……!っく!」

 

 またも、ヴァンデモンの言う通りだった。

 レオルモンとエンジェモンの二人では、例え二人の力を合わせたとしてもヴァンデモンには敵わない。その状態で、ヴァンデモンを逃がさないことなどできるはずもない。

 とはいえ、そんなことは理屈ではない。逃がさないのではない。逃がしてはいけないのだ。だからこそ、二人はヴァンデモンの攻撃を仕掛ける。彼を逃がさないためにも。

 だが――。

 

「なっ!?」

「その時に再び相見えることになるだろう。クク……もっともお前たちが生きていれば、の話だが」

 

 だが、二人が攻撃したのは、ヴァンデモンではなくコウモリの群れで。

 大空へと飛び立ったコウモリの群れは、そのまま学術院の街の方向へと消えていく。つまり、ヴァンデモンには逃げられてしまったということで。

 悔しがる二人。だが、二人がそうしている間に、一つの戦闘が終わりを迎えようとしていた。

 スカルバキモンとスカルグレイモンの狂えるデジモン同士の対決が、今まさに終わりを迎えようとしていたのだ。

 

「グギャアアアアア!」

「ガアアア……アアアア……アア……」

 

 最後の最後まで暴れまわっていたが、倒れ伏し、動けなくなった敗者。それは、スカルバキモンの方だった。

 そう。スカルグレイモンが勝ったのだ。

 しかも、この場の全員はヴァンデモンに気を取られていて気づいていなかったが、終始スカルグレイモンがスカルバキモンを圧倒していた。スピードも力も、すべてが上回っていた。技を使わせる暇も与えず――文字通り、一蹴したのだ。

 そんなスカルグレイモンを見て、レオルモンたちは冷や汗を垂らす。この後の展開が、容易に想像できたから。そして――。

 

「これは……マズイですかな?」

「……っく!」

「グギャアアアアアアアアアア!」

 

 そして、その想像通りの展開になった。

 暴走を続けるスカルグレイモンは、その行動のままにレオルモンたちに襲いかかってきたのだ。

 いくら進化したとはいえ、この場の全員がスカルグレイモンとは見知った仲であり、友人とも言える仲。できれば戦いたくはなかった。

 まあ、そういった心情を除いても、スカルバキモンを一蹴できる実力のスカルグレイモンを相手にすることなどしたくはなかったのだが――それはともかくとして。

 とはいえ、暴走状態であるスカルグレイモンを相手に、戦わないことを選択すれば、それはそのまま死を選択することに等しい。ゆえに、彼らに戦わないという選択肢はなかった。

 

「いい加減に元に戻ってくれ!心美しき汝は何処へといった!」

「グギャアアアアア!」

「っく!」

 

 レオルモンにスカルグレイモンの相手は不可能。それを悟ったエンジェモンは、自らスカルグレイモンの相手を引き受けているのだが――正直言って、かなり部が悪い。

 スカルグレイモンの攻撃は、ほとんど体を使ったものであるとは言え、一撃一撃が重い。一撃くらってしまえば、エンジェモンでも致命傷となってしまうだろう。ゆえに、一撃もくらわないことが大前提となる。

 だが、それゆえにエンジェモンは攻撃を避けるので精一杯になってしまっているため、攻撃を仕掛けることができていない。

 それが指し示すところはつまり――この後に待ち受けるのは、避けようもない敗北と死の二つという事実だけだった。

 もちろん、この場にいるのはエンジェモンだけではない。レオルモンもいる。だが、彼も頑張っているが、彼が本格的に参戦すればエンジェモン以上に無謀な戦いになるため、はっきり言って役に立っていなかった。

 

「勇!勇!起きなさい!」

「……勇……さ、ん……お願い……です!」

「……」

 

 そして、デジモンたちがそんな状況にある中で、優希と片成は気絶していた勇を必死に介抱していた。介抱といっても、戦っているデジモンたちを放っているわけではないし、もちろん遊んでいるわけでもない。

 優希たちは、スカルグレイモンを止められる可能性があるのは、勇だけだと踏んだのだ。例え、気絶前の声色から言って、ヴァンデモンによって何かされている可能性が高いとは言っても。

 優希たちにとって、彼だけがこの場での希望だった。だが、勇は起きない。頬を叩いても、体を揺すっても、声をかけても。

 

「……起きてってば!」

「……」

「勇……さん……!」

「……」

 

 正直言って、優希はこの状況をどうにかする手がないわけでもなかった。いや、正確に言えば、なんとかできるかもしれない手か。

 だが、それはかなりというか、無謀の極みとも言えるような博打。いや、博打要素を除いても、それはスカルグレイモンを()()()()()()()()()()()()だ。

 友人とも言える仲である者を倒す。それは、優希たちとしても断固としてゴメンだった。やりたくなかった。だが、このままではその最悪の方法を試さなければならなくなる。

 

「ッ!お願い……起きて……!」

 

 気づけば、優希の声は震えていて、喋る声もどこか懇願の色合いが大きくなっていっていた。

 そう。優希も気づいていたのだ。選択をしなければならない時が、徐々に、そして確実に近づいてきているということに。

 だが、勇が起きることはなかった。どれほど声をかけても。どれほど体を揺すっても。どれほど頬を叩いても。まるで、そのすべてが届いていないとばかりに。

 

「グガァアアアアアアア!」

「ぐあっ……」

「っエンジェ……モン!」

 

 攻撃を受けてしまっただろうエンジェモンの苦しそうな声が、そのことに気づいてしまったであろう片成の痛烈な悲鳴が、優希の耳に聞こえる。

 そんな状況で、優希は震えていた。声だけではない。体そのものが。

 何度考えてもそんな最悪の方法しか思いつかなくて。

 彼女の心の中の冷静な部分が、それをするしかないと告げている。彼女の心の中の感情的な部分が、それはダメだと告げている。

 優希は今、そんな二つの思いで板挟みになっていて――だけど、その実、頭でもそれしか方法がないとわかっていて。だからこそ、優希はその()()()()()恐ろしさに震えていたのだ。

 そんな優希を見かねたのか――。

 

「お嬢……いや、優希。大丈夫だ」

「……セバス!?でも……!」

 

 優希の下にやって来ていたレオルモンは、口調を変えて、まるで諭すかのように優しく話しかける。それは、まるで決意を固めているかのようだった。

 わかっている。急いで選択をしなければ、死にかけながら死なないために動き回るエンジェモンが、本当に死んでしまうことも。片成が、そんなエンジェモンを悲しそうに見ていることも。

 そう、わかった上で、優希は迷っていた。その恐ろしさに震えていた。

 大好きな自分のパートナーが、死ぬかもしれない賭けに挑戦することが。大好きな自分のパートナーに、その賭けに挑戦してくれと、ほかならぬ自分が頼むことが。

 それでも、どう考えても、それしか選択肢はなくて。もう選択の時はそこまで来ていて。

 そして、そんな時だった。

 

「大丈夫」

 

 レオルモンの頼れる声が優希の耳に聞こえたのは。

 そのレオルモンの言葉に、悩むしかなかった優希は思い出した。いつだって、レオルモンが約束を破ったことは一度もなかったことを。いつだって、隣にはレオルモンがいてくれたことを。

 だからこそ、不安を振り払うように、優希は選択する。

 いつまでも未来に怯えて選択を放棄し、誰かの助けを、他人の選択を待つような自分は嫌だ、と。未来に不安を抱いているのは自分だけではないのだ、と。優希はそう思って。

 いつも自分の傍にいてくれるパートナーを信じることを、大丈夫と言った自分のパートナーを信じることを、優希は選択したのだ。

 この戦いが終わって、自分たちも勇たちも片成たちも、そのすべてが今まで通りに過ごせることを祈って――それを選択した優希は、未来をレオルモンに託した。

 

「……セバスっ!信じるよ……!」

「……おうっ!信じてくれ!レオルモン!ダブル進化――!」

 

 直後、優希の持つペンダントが光り、同時にレオルモンも輝きに包まれる。

 それは、進化の光。優希が久しく見ることのなかった、レオルモンの進化。だが、進化する先は優希の見慣れた成熟期デジモンのライアモンではない。レオルモンが進化をするのは、その先にある――完全体。

 そのデメリットの大きさを考慮して、決して開けるわけにはいかなかったその扉を、優希たちはこの極限状態において開けることを決断したのである。

 

「……行くぞ!」

 

 以前は一瞬だけの進化だったからよく見ることのできなかったその姿も、今ならまじまじと見ることができる。

 やがて光が晴れて現れ出てたのは、削岩機のタテガミとハンマーの如き鉄球の尾を持った機械の獣王。それこそが、レオルモンが完全体へと進化した姿。ローダーレオモンと呼ばれる完全体デジモンだった。

 

「ガオァオオオオオ!」

「グギャガアアアア!」

 

 ローダーレオモンが咆哮する。

 そんなローダーレオモンの咆哮を前にして、新たな敵の出現を察知したのだろう。スカルグレイモンも負けじと咆哮した。

 それはまるで、戦いの始まりを告げる合図のようで。こうなってしまえば、優希や片成といった人間組はもちろん、エンジェモンでさえ手は出せそうになかった。

 

「ぉおおおおおお!」

「グギャアア!」

 

 再度、二体のデジモンがぶつかり合う。

 その巨体を生かしたパワーで戦うスカルグレイモンに対して、ローダーレオモンはどこか防戦一方のようにも見える。だが、その実、ローダーレオモンはただやられっぱなしでいるわけではないのだ。防戦一方であっても、勝機を見出すために、冷静なまでにスカルグレイモンを観察している。

 隙あらば、逆転される。そのことを、理性と知性なき身で悟ったのか。スカルグレイモンは、半ば焦るように苛烈な攻撃ばかりを繰り出していた。

 

「っく!……ぐっ……!」

「ガグアアアア!」

 

 とはいえ、どちらが有利かなど一目瞭然だった。隙あらば逆転される。それは逆に言えば、隙がなければ逆転されないということで。

 いくら進化したとはいえ、根本的な地力でローダーレオモンはスカルグレイモンに劣っているのだ。

 レオルモンとグレイモン。進化前に積み上げていた地力が違う。経験が違う。

 だからこそ、スカルグレイモンの方が圧倒的とまではいかなくても、それなりに優位だったのだが――その事実をわかりながらも、ローダーレオモンは全く負ける気がしなかった。

 ローダーレオモンは知っている。勇と共にあった()()()()()の強さを。スカルグレイモンへと進化して失ってしまったその強さを。

 いくら力が増そうと、その強さを失ったスカルグレイモンに、ローダーレオモンは負けたくなかった。いや、負けてはならなかったと言うべきか。

 ローダーレオモンの後ろには、自分を“信じる”と言った優希がいる。信じてくれ、と自分は言った。それは一種の約束で、約束を破る気など毛頭ない。

 

「……!グギャアアアア!」

 

 そんな、いつまでも倒れないローダーレオモンに気圧されたのか。

 スカルグレイモンは、最大化力を持って彼を倒すことを選択する。スカルグレイモンの最大火力。それは、その背中の有機体系ミサイル。“グラウンド・ゼロ”。

 破壊の力の結晶たるそのミサイルは、ローダーレオモンを、優希たちを、この辺り一帯ごと吹き飛ばすだけの威力を持つだろう。

 それが、放たれる。一瞬後、放たれたそのミサイルを前にして――。

 

「おぉおぉおおおお!負けるかぁああ!」

「……!グギャアァアアア!」

 

 ローダーレオモンは、鉄球の付いた尾を振り回して勢いをつける。

 “ローダーモーニングスター”と呼ばれる、ローダーレオモンの必殺技の一つ。彼は、勢いのついた尾をうまくミサイルの側面へと当てて――ミサイルを、あらぬ方向へと吹き飛ばした。

 

「っ!きゃあああああ!」

「……ぅうああああ!」

 

 遥か遠くに吹き飛ばされて落ちていくミサイル。直後、優希たちは教科書でしか見たことがないような巨大な爆発を目撃した。

 




というわけで、第六十話。
スカルグレイモン暴走からの、レオルモン完全体進化回でした。
ちょっとだけ裏話を言うと……この進化は“どうしようもない状況”においての優希の想いが重要だったりしました――が、物語全体的なキャラの描写不足である感が否めないです。
はい。要修行です。

まあ、そんな作者の反省はともかくとして、次回。
場所は移り変わって、大成たちサイドの話となります。

それでは次回もよろしくお願いします。

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