【完結】デジタルモンスターA&A~紡がれる物語~   作:行方不明

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第六章~それぞれが往くはそれぞれの道~
第六十六話~変わったようで、変わらない人~


 あのヴァンデモン襲来から一週間が経過していた。

 エクスブイモンの死に、勇の旅立ち。大成たちの周りも、随分と寂しくなったものである。

 その一週間の間、大成とスティングモンは仕事があれば仕事をし、なければ家でボーッとする日々を送っていた。優希とレオルモンの二人も同じようなものだ。仕事がなければ、修行やら何やらをする日々。

 自分たちの周りがいろいろと変わっていく中で、大成たちの生活は何も変わっていなかった。少なくとも、表向きは。

 

「そういや、結局……ヴァンデモンの奴がなんでウィザーモンを狙ってたのかわからないんだよな……」

「大成ー次ー!」

 

 そう、()()()は。

 あれから大成たちの雰囲気は何やら変わったようである。雰囲気だけでなく、その生活の()()にあるものも。まあ、あれだけ何やらあったのだ。いろいろと変わるのも頷けるだろう。人はそれを成長と表す時もあるし、もっと別の何かで表す時もある。

 それでは、大成たちの変化はどちらなのか。まあ、それは本人たちもわかりようのないことであるが。

 

「ウィッチモン!次は?」

「次はこれね。よろしくね」

「了解」

 

 さて、そんな大成であるが、今日はウィッチモンからの依頼だった。スティングモンは所用でいないので、実質一人で依頼を受けている状態である。

 今日の仕事はウィッチモンから頼まれたものを他のデジモンに貰いに行くだけの単純な仕事だ。難しいことなど特にはない。

 まあ、一度に複数の場所に行かなければならないのは、街中を歩くことになるのでキツイが。

 ともあれ、ウィッチモンから頼まれごと第二陣を受け、大成は街を歩く。多少の退屈さを感じながらも、仕事のために歩き続ける大成は、その時に前方にあるデジモンを見つけた。

 

「はりきっておりますな。大成殿」

「レオルモン!もう大丈夫なのか?」

 

 そう。大成が見つけたのは、優希のパートナーであるレオルモンだ。

 レオルモンはフラフラとした千鳥足で、その歩行速度は遅々としたものだった。だが、それでもバランスを崩して倒れたり転けたりすることない。

 とはいえ――。

 

「もうバッチリですな!」

「……ちなみにその場で半回転してみて」

「ぐ……」

「ごめん、悪かった」

 

 とはいえ、半分は意地なのだろうが。

 そう。ここまでくれば予想がつくかもしれないだろうが、つい昨日までレオルモンはずっと優希のアナザーの中にいた。忘れているかもしれないが、アナザーにはデジモンを収納する機能と収納したデジモンの回復機能がある。

 それによって、レオルモンは昨日までずっと回復していたのだ。

 理由は言わずもがな、優希の力で進化したからである。ようするに、ローダーレオモン(完全体)への進化リスクの筋肉痛だ。

 とはいえ、まあ、以前までのレオルモンだったならば、進化した時点で筋肉痛を越えて死んでもおかしくはなかったのだが。その辺、日々のトレーニングの成果が出ているのだろう。

 

「つーか、ここまでくれば完全回復するまで篭ってれば良かったのに」

「いやいや。いつ何時あのような事態になるかもわからないのですぞ!一刻も無駄にできませぬ!」

「ま、そりゃそうか」

 

 レオルモンの言うことは大成にも理解できた。

 この世界に来て、大成は嫌というほど知ったのだ。事態は、嫌になるほど唐突に来るということを。

 

「そういうわけで、ですな!このセバス、今から修行に行ってまいります!」

「おー頑張れー」

 

 そう大成に言い残して、去っていくレオルモン。相変わらずその歩みは遅く、フラフラとしたものだった。

 そして、そんなレオルモンを見送った大成は、ズボンのポケットからアナザーを取り出して、画面を操作する。しばらく操作すると、下面に通信待機中の文字が浮かぶ。

 その状態になれば、大成はアナザーを耳にあてた。何と言うか、人間の世界ではよく見る光景である。携帯電話で、連絡を取り合うという。

 もちろん、大成もそのつもりでアナザーの通信機能を使った。相手はもちろん――。

 

――何?大成……?――

「ああ、優希?」

 

 優希である。

 まあ、アナザーを持っているのは旅人と優希だけであり、持っていない者でこのアナザーからの通信を受け取れるのはウィザーモンだけであるからして、選択肢は限られるのだが――それはともかくとして。

 優希に繋いだ大成は、すぐさま用件を伝える。用件はもちろん、先ほどのレオルモンのことだ。

 

「さっき、レオルモンがフラフラとした足取りでどっか行ったぞ。たぶん、街の外じゃね?」

――ごめん、連絡ありがと――

「あ、おいっ……切れた」

 

 こんな感じで、大成の用件を聞いた優希は、さっさと連絡を終えてしまった。

 おそらくだが、優希もまだレオルモンには休んでいて欲しかったのだろう。だからこそ、無理をしようとしているレオルモンのことを聞いて、いてもたってもいられなくなったのだ。

 きっと、今の優希はレオルモンを捕まえるために、全力で走っていることだろう。 

 その姿が容易に想像できた大成は、苦笑いを浮かべるのだった――が、その後に後ろから聞こえてきた声に、その苦笑いは速攻で消え去ることとなった。

 

「ふむ……使ってくれているようで何よりだ」

「……いつの間に?」

「フフフ……さて、いつだろうな」

 

 大成の後ろにいたのは、ウィザーモンだ。その手には何らかの巻物やら袋やらの大荷物を持っていた。思わず、その姿を見た大成が引くくらいの量だ。

 そんなに荷物を持って大変そうだな、と。そんなことを思う大成。だが、意外なことにウィザーモンはその手荷物の一つである巻物を大成に手渡してきた。

 その手荷物の一つを渡されるのは予想外だったために、大成は一瞬だけだが固まってしまう。だが、大成はすぐさま思い出した。ウィッチモンから渡されたリストの中に、ウィザーモンの下へと行って何かを受け取ることも書かれていたことに。

 だから、渡されることは普通であるし、ちゃんと予想していなければならないのだが――その辺り、大成は何も考えずにボーッとしていたのだろう。

 

「何を固まっている。ウィッチモン宛だ」

「ああ、なるほど……」

「まったく。来るならもっと早く来てくれ」

「いや、俺だってウィッチモンからいろいろと頼まれて忙しいんだって」

「何を言う。君といい優希といい……僕だって忙しいのだ。手間をかけさせないでくれ」

 

 そう言ったウィザーモンは、さっさと去っていく。

 世間話もすることもなく去っていったところを見るに、やはり忙しいのだろう。知り合いだからといって後回しにしたことを、ほんの少しだけ申し訳なく思った大成だった。

 まあ、大成のそんな気持ちはすぐに消えるのだが。

 

「……これ、すっげぇ邪魔!」

 

 そう。大成がウィザーモンから受け取った巻物は、長かった。それこそ、全長で一メートル近い。

 長いものや重いもの、大きいものというのは、持って歩くだけでキツイものだ。普段とは体勢やら体重やらが普段とは変わるために。そして、大成にはそういった荷物を持って歩く経験などない。

 だからこそ、大成にはこの長い巻物を持って歩くことはキツかった。そして、キツいからこそ、大成の中にフラストレーションが溜まっていく。

 一瞬、これを今すぐ放り投げたい気持ちになって。されど、仕事ということで大成は我慢するのだった。

 そうして、この数十分後。

 

「……ぐ……キツ……!」

 

 その両手に収まりきらないほどの荷物を抱えた大成がウィッチモンの下へと向かうその途中でのこと。大成のその顔は凄いことになっていた。例えるならば、子供に見せたら怖がられるような顔、と言えるだろうか。

 まあ、大成の顔がそうなっているのも、仕方がないのだが。複数の場所にお使いに行くというこの仕事の性質上、行くたびにどんどん荷物が増えていく。どんどん重量を増し、それに連れて動きづらくなっていく。

 そんなこんなで、現在の大成は体力的にもキツかったのである。

 

「だ、……大丈……夫です……か?」

「片成か。これ、大丈夫に見えるか?」

「えっ……と……」

「それくらいの物も持てないとは。情けない!」

「うるせー……!」

 

 そんな大成の前に現れたのは、片成とエンジェモンだ。

 あのヴァンデモンの事件以来、片成は大成と少しだけだが話せるようになった。まあ、そこは一緒に窮地を乗り越えたが故の結果というものか。

 そうして、せっかく話せるようになったのだから、と。片成は毎日のように大成に会おうと外出しているのである。

 とはいえ、話せるようになったとはいえ、まだ面と向かっては片成も恥ずかしい。

 さらに、いくら話せるようになったことが嬉しくても、大成がエクスブイモンのことで気落ちしているところや仕事をしているところに行くわけにもいかない。

 そんなこんなで、片成は毎日のように大成を目撃しているが、実際に話せているのは少しだけだったりする。

 

「で、何か用?」

「我が主に何と言う口を……!」

「……用……は……」

「んじゃ、行っていい?そろそろ腕がキツい……」

 

 ちなみに、ここ最近の片成の行動は天然のストーカーと言われても仕方ないくらいだった。彼女の事情を知る優希をして、そんな片成の姿に戦々恐々としていたりするほどのレベルだ。

 とはいえ、片成はある意味純粋だからこそ、天然でこういう行為をしてしまうのであり、本物のストーカーの方々ほど狂っている訳ではない。片成が()()になるかどうかは、大成が片成と普通に話せるようになるかどうかにかかっている。

 まあ、どれもこれも、ほんの余談だが。

 

「は、……はい……ごめんな……さい……」

「何か調子狂うな……なんでだろ?」

 

 気落ちした様子であっさりと謝り、大成に道を譲る片成。

 そんな片成を前にして、大成は自分がイジメをしているような気分になると共に、そんな彼女が大成の中のイメージとズレているように感じていた。だが、どこがズレているのか、大成にはわからない。

 片成は大成と出会った時からずっとこうだったというのに、どうしてそんなことを思ったのか。そう疑問が思い浮かんだ大成だったが、その疑問はすぐさま腕の中の重さによって流されることとなった。

 今の大成には、そんな疑問を考えるほどの余裕はないのだ。

 

「それじゃ行くぞ。またな片成」

「……!う、ん!」

「我が主に何と言う口を……!」

「はいはい。それ今日二度目……じゃあな」

「む……待て。下賤な者よ!」

「……はぁ。なんだよ!こっちは――」

「あまりパートナーに心配をかけさせるな」

「……?ああ」

 

 ムカつくエンジェモンからの制止の声に、イラっときた大成だったが、その最後の言葉だけは真面目なもののように感じて。よくわからないが、大成は素直に頷くのだった。

 ともあれ、片成たちとも別れた大成は。ようやくの思いでウィッチモンの下へとたどり着く。

 実に長かった。今までの苦労を思って、さらにその苦労が報われることを思って、ウィッチモンに荷物を渡した大成だったのだが――。

 

「あ、次はこれね。ちょっと急いでくれる?早く実験したいから」

「……ちくしょぉおおおおお!」

 

 そうして、大成は再び街へと繰り出すのだった。

 さて、そんな大成はともかくとして。その頃、そんな大成のパートナー(スティングモン)が何をしているかというと。

 

「……」

 

 スティングモンは、大成の後を尾行していた。それこそ、先の片成とは違って、言い逃れようもないストーカー行為である。

 なぜスティングモンがこんなことをしているかというと、これまた単純なことだ。

 スティングモンはここ一週間の大成に違和感を覚えているからである。だからこそ、こっそりと後をつけて、大成の様子を探ろうとしているのだ。

 

「……はぁ。何をしているんだ」

「っ!エンジェモン!?」

 

 そして、そんなスティングモンを後ろから見ていたのは、エンジェモンだ。片成を宿まで送り届けた彼は食材調達のついでにスティングモンを発見したのである。

 実は、エンジェモンは先ほど大成と会った時からストーカー(スティングモン)には気づいていた。だが、先ほどは大成と片成との会話を優先して気にかけなかったのである。で、今回は特に気にすることもないので、彼はスティングモンに話しかけたのだ。

 

「後を追う……なるほど。闇討ちか。下賤な者の考えそうなことだ」

「違います!」

「だろうな。冗談だ。それくらいわかれ。これだから……」

「……っく!」

 

 まさかのエンジェモンの冗談。ここ一週間くらいの付き合いだが、初めて聞いたスティングモンである。しかも、ブラックというか、いまいち笑えない類の。

 何と言うか、そんなエンジェモンの冗談に、謎の敗北感を抱いてしまったスティングモンだった。

 

「はっきり言ってかなり怪しい。街の警備の者たちがつきそうなくらい、な」

「うぐ……」

 

 そう言ったエンジェモンは今度こそ大真面目だった。

 スティングモンのストーカーもとい、尾行技術はお世辞にも高いとは言えない。少し勘の良い者なら気づくレベルだ。

 だからこそ、エンジェモンは忠告するのである。このままでは、スティングモンがこの街の警備のお世話になる可能性が高いが故に。

 あの片成至上主義のエンジェモンがこうも気にかけるのは、やはりスティングモンがエクスブイモンと同じで自分を負かした者だからだろう。いや、まあ、もしかしたら別の理由があるのかもしれないが。

 

「大成さんは……どこか変で」

「……ん?」

「さっきの質問ですよ。ここ最近の大成さんは前と違う。きっかけは……わかるんですけど」

 

 相談相手がエンジェモンというのがアレだったが、スティングモンはちょうど誰かに話したかったということもあって、話し始める。

 それは付き合いの長い者くらいしか気づけないような微々たる者だったが、大成の様子は一週間前とは少し異なっていて、そのきっかけは言うまでもない。エクスブイモンだ。

 あのエクスブイモンの姿は、スティングモンだって一週間経った今でも鮮明に思い出せる。それくらいの衝撃だった。

 だから、大成が変わったのもわかる。が、スティングモンはそんな大成にどうしても違和感を覚えてしまっているのだ。

 

「大成さんだけは、何があっても変わらない。今まではそんな気がしていて……前と同じでいて欲しかったなぁって思いましてね」

「まあ、仕方ないな。そこは」

「むぅ……」

「奴も必死なのだ。汝が必死であったように。それでも、変わらないものはあるだろう?心配しなくても、以前の奴と今の奴にそうたいした差はない」

 

 そんなことを言うエンジェモンに、スティングモンは納得がいっていないような顔だった。

 ともあれ、エンジェモンの言うことは事実である。

 人はそんな簡単に変わらないし、変われない。だが、それでも、ほんの少しは変わる。そのほんの少しの積み重ねによって、人は変わる。

 人が劇的に変化するなど、元からその下地があったか、それか人生観が変わるような体験をしたかのどちらかだ。

 

「その微々たる変化を感じ取ったのは流石と言うべきだが……今は見守ってやれ」

「……」

「やれやれ」

 

 そうして、エンジェモンが去ったことにも気づかず、その後もスティングモンは大成の尾行を続けるのだった。

 




というわけで、第六十六話。
次回はこの話の別サイド的な話です。

さて、今回から第六章へと入っていきますので、それではまたよろしくお願いします。

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