【完結】デジタルモンスターA&A~紡がれる物語~ 作:行方不明
なぜかジジモンに呼ばれたドルモン。そんなドルモンは、名残惜しかったがティンカーモンと別れて、この町で一番大きなジジモンの家へと招待された。
何故自分が呼ばれたのかは、ドルモンにはわからない。だが、その招待されたジジモンの家で、そこでドルモンはジジモンからいろいろと聞かれていた。
「ふむぅ。すまんのーあの悪たれはこの町に住んでいる者でな?この町に住んでいる者なら誰しもあのいたずらの被害を受けているのじゃ」
「うわ~あれを?」
「お主のはとりわけてキツイやつじゃったがの」
「なんで僕だけ……」
「ともかく、この町の者はもうやつのいたずらにはほとんど引っかからなくなってきておってな。じゃからお主のような外来の者を狙ったのじゃろうて」
ジジモンが言うには、今日のドルモンが受けたイタズラは、インプモンのイタズラの中でもとりわけてキツイ部類に入るらしい。そんなイタズラのターゲットとして選ばれてしまったのだ。何と言うか、今日のドルモンは本当に運がないと言うしかない。
自分の今日の運は最底辺を行っていることを感じて、がっくりと肩を落としたドルモン。そんなドルモンの姿を、ジジモンは苦笑いを浮かべながら見ていた。
「うぅ……ひどいや。旅人には置いてかれるし、激辛肉は食べさせられるし、苦い薬草はそのまま食べちゃうし……」
「ほっほっほ。まあ、仕方ないのー」
「他人事!?っていうか、わかってるならそれこそなんとかできなかったのか~!?」
「まぁ、あの悪たれには皆いい思いを抱いておらんのでな。何度か捕まえようとしたこともあったんじゃがなぁ」
そう言ったジジモンが窓から外を見れば、あのインプモンを捕まえようと血の気を多くしているデジモンが何人かいる。が、その全員が今日中にインプモンを捕まえられないであろうことは、ジジモンには容易に想像がつくことであった。
というか、あのインプモンは
「……?じゃあ、今まではどうしているんだ?泣き寝入りしているの~?」
「いやな、たいていの場合は何日か後、あやつがイタズラをしたことを忘れてひょっこり出てきた時に捕まえるのじゃ」
それは何と言うか、締まらない最後と言うか、アホな最後と言うか、である。この町の住人たちから逃げ果せるほどの実力を持ちながら、イタズラしたことを忘れて出て行って捕まるのだから。
ともあれ、それも数日後の話。ドルモンは、そんなに待つつもりはなかった。というか、待てなかった。今すぐ仕返しする気満々である。
一方で、そんなドルモンのやる気を見たジジモンは溜息を吐いていた。これでは何のためにここに呼んだのかわからんではないか、と。内心でそう思いながら。ジジモンは、ドルモンが軽率な行動をしないために、説得するためにここに呼んだのである。
「やれやれだのー。いいか?あの悪たれは普通ではないのじゃ」
「……?普通じゃない?」
「そうじゃ。じゃからやめておけ。最近はここらで得体の知れぬ行方不明事件も多く起きておる。見たところそれなりにやるようじゃが、怪我をするような行動をするもんじゃないぞ」
「でも……」
「年寄りの言うことは聞くものじゃぞ?」
まるで諭すかのようにジジモンに宥められるドルモン。とはいえ、ドルモンも引き下がるのは癪だった。ゆえに、ジジモンの言うことを聞くつもりなど、端からない。
「でも!絶対に大丈夫!ちゃんと捕まえるよ!」
「いや、じゃから人の話聞いてたかの!?それにさっきお主と話していた者も気を付けたほうがいいぞ?」
「……?とにかく、忠告ありがとうね!」
そうして、せっかくのジジモンの好意からくる説得を受け入れず、ドルモンはインプモンの手掛かりを探してさっさと外に出ていく。
そんなドルモンの姿を、再度の溜息を吐きながらジジモンは見送って――。
「やれやれ。せっかちじゃの……申し訳ないが、あの旅のお方にはもう少し頑張ってもらうとするかのー」
ジジモンはそんなことを呟いたのだった。
ともあれ、ジジモンがそんなことを呟いている時には、ドルモンはもう町の中で情報収集をしていた。この町はどうやら植物系のデジモンたちが多く住んでいるらしい。もちろん、それ以外のデジモンもいるのだが、比率にして七対三くらいはあった。
まあ、森の中にある町だ。植物系デジモンたちにとってはオアシスなのだろう。
「あっ!ドルモーン!」
「んえ?さっきのティンカーモン!」
そうして地道にインプモンについての聞き込み調査をしているドルモンに話しかけてきたのは、先ほどの薬草の件のティンカーモンだった。
彼女は空をふわふわと飛びながら近寄ってきて、ドルモンの目の前に着地する。その様子からして、どうやらドルモンのことを待っていたようだ。
さらに、そんなティンカーモンの姿を前にして、ドルモンは早速数分前のジジモンの言葉を忘れていた。
「ジジモンからのお話はもう終わったの~?何の話だった?」
「終わったよ~。なんか、気をつけなさいって」
「ああ……最近の行方不明事件のことね」
先ほどのジジモンも言っていたが、行方不明事件など穏やかではない。この世界では往々にして似たような神隠し的な事件がないわけではないが、町の者たち全員に認知されるほど多くの者が行方不明になっているとなれば、さすがに異常だ。
ドルモンもそのことをわかっているからこそ、その事件のことが少しだけ気になった。
「いなくなっているのはね……主に小さい子たちらしいの。幼年期のデジモンが多いわ。成長期もチラホラといるみたい。でも、成熟期のデジモンはみんな無事よ」
「小さい子たちがいなくなっているの?」
「うん。みんな誘拐か、誰かに襲われたか……怖がっているみたい」
「それこそ、あのインプモンの仕業とかは?」
「いたずら悪魔は違うわ。彼はここまで大事になることはしないわよ」
数時間前の記憶がそうさせるのか。インプモンに対して疑惑を向けるドルモンだったが、ティンカーモンは違うと言う。そこには、同じ町の住人だからこその確信を持った響きがあった。
彼女がそうまで言うのなら、違うのだろう。インプモンが庇われている事実に納得いかなかったが、ドルモンはそう無理矢理に納得することにしたのだった。
「行方不明ね。ティンカーモンも気を付けないとダメだよ?」
「私は大丈夫。それよりドルモンこそ……」
「なんでそんなに疑いの目を向けるの~!?」
「だって、雰囲気が子供っぽいから」
「そんな~!」と叫びながら、落ち込むドルモン。
そんなドルモンを見つめていたティンカーモンは不思議な感覚を覚えていた。子供っぽい。ティンカーモンのその言葉に嘘はない。ティンカーモンは、本当にそう思えたのだ。
が、ティンカーモンには、ドルモンがあくまで子供っぽいだけで子供ではないような、そんな気がしていて――だからこそ、迷っていた。
そして、そうして迷っていたからだろう。気が付けばティンカーモンはドルモンのことをジッと見つめていて、ドルモンとしては居心地が悪いことこの上なかった。
「……?どうしたの?そんなに見つめてきて~?」
「えっ!いやっ!な、なんでもないわ~」
「……?」
そんなティンカーモンの挙動不審さを若干疑問に思いながらも、ドルモンは「まぁ、いいか」と呟くとその瞬間にハッとなって思い出した。肝心のインプモンの情報をまだ何も得られていないことを。
この調子では、いつインプモンは自分のしでかしたことを忘れてしまう。その前に捕まえられなければ、自分は悪いことをしたと本心から謝らせるという、ドルモンの思う復讐ができない。自分のしでかしたことを忘れた頃ににどうこうしても、それではドルモン自身の憂さが晴れるだけだ。
別にそれでもいいのだが、ドルモンとしてはやはり謝らせたい。だからこそ、ドルモンは焦る。
「いたずら悪魔なら、森の中よ。この町には数日は帰ってこないわ」
「やっぱり現場に立ち戻るしかないか……!」
そうして、そんなドルモンのことを見かねたのか、ティンカーモンがインプモンについての情報を漏らす。ティンカーモンのもたらした情報。それは、ジジモンが言っていたことを考えれば、すぐわかるようなことではあったが――焦り故か、ドルモンはそのことに気づいていなかったらしかった。
ティンカーモンの言葉を聞いて、ドルモンはすぐさま行動を開始する。この町の食べ物を扱っている場所へと出向き、食べ物をいくつか恵んでもらう。
この町は、金品系の物で食料のやり取りをしないらしく、ドルモンは必要な分だけもらうことができた。こういった金品系の物がないのは、食糧が足りている証拠だろう。やり取りする必要のないほど、他人に恵む余裕があるほど、この町は食料に恵まれているのだ。
「よし、これで準備オッケ~!」
「ねぇ、それで本当に行くの?」
「大丈夫!」
ティンカーモンがそう尋ねたくなったのも無理はなかった。
なぜなら、今のドルモンの格好はそれほどの物だったから。大きな布にいっぱいに食料を詰め込み、それを首に括り付けるようにして自分の背中に背負っている。はっきり言って、機動性は皆無に見える見た目だ。
これでインプモンを見つけられた時どうするのだろうか、と。そんなことをティンカーモンが思う見た目だった。
まあ、ドルモンからすれば、この程度の荷物で根を上げるようなこともないのだが。
「重くない~?」
「大丈夫~ちょっと動きにくいけどへっちゃらだよ~」
「やっぱり、ドルモンはダメなんじゃ……」
「僕が何~?」
「な、なんでもないわ~」
そうして、ドルモンはティンカーモンにひとまずの別れを告げて、町の外へと歩いていった。
そんなドルモンの後姿を、微妙な気持ちになりながら見送ったティンカーモンは、そのままふわふわとある所へと飛んでいく。無表情ながら、微妙な雰囲気を纏って。
ともあれ、そんなティンカーモンのことなど知らないドルモンは、先ほど歩いた道を一時間ほどかけて戻り、町の外のあのイタズラをされた場所へと戻って来た。
「ふぅ。もうすっかり薄暗くなってきたな~」
とはいえ、今日のドルモンは時間単位で移動をしていたために、この時点での時刻はもう夜にほど近い夕方だった。これでは町に戻るのも面倒だ。今夜は野宿になるだろう。
まあ、ドルモンにとって野宿とは日常茶飯事である。別にどうってことはない。
「お!あった~!」
そうして、現場に立ち戻ったドルモンはそこに落ちていた肉を拾う。特に誰かが食べていた形跡はなく、先ほどドルモンが噛みついた跡が残っているだけだった。
まあ、誰かが食べていたら食べていたらで手を合わせる結果にしかならないし、食べきられていたら食べきられていたでドン引きするしかないのだが。
とはいえ、その肉はあれから数時間も経っているはずであるのに、相変わらず憎たらしいほどの良い匂いを放っていた。そんなその肉を、ドルモンは丁寧に持ってきた小さな布で包む。
別に食べる気は毛頭ない。ただ、あわよくばインプモンの口に放り込んでやろうと思っただけの話である。
「さて。ほかに何か手がかりはないかな~?」
その後もドルモンは辺りを探し続ける。時には草の根をかき分けて、時には匂いを嗅いで。だが、当然のことながら、初めに見つかった肉以外の手がかりは何一つ見つかることがなかった。
流石に、インプモンは町の住民たちから数日間も逃げ回れるあって、そう簡単に手がかりを残すようなことはないらしい。用意周到と言うべきか。
ドルモンとしては、悔しいことこの上なかった。
「うむぅ……ない~!」
想像以上に見つからない手がかりを前にして、ドルモンは思わずといった感じでそうぼやく。まあ、気持ちはわからんでもないだろう。
とはいえ、そんな時だった。事態が動いたのは。だが、それはドルモンの望んでいたものではなくて、全く別の、予期してすらいなかったことで。
「むぅ~むぅ~……ん?」
「あはは!あははは!あははっ!」
そうして、ドルモンは全く予期していなかったトラブルに巻き込まれていく。
そんな時にドルモンを襲ってきたのは、黄金の粉で。いや、襲ってきたというのは語弊があるか。空の上から落ちてきたのだ。ドルモンがハッとなって上を見ると、そこにいたのは金色の虫のような羽を持った女の子の妖精――ティンカーモンで。
それと同時に、どこからともなく楽しそうな笑い声が辺りに響いてきていた。
「ねぇねぇねぇ!楽しい場所へと行きたくなーい?」
「え?ん?は?」
状況がよく掴めないドルモンに、ティンカーモンが話しかけてくる。
楽しい場所と言われても、抽象的すぎて想像がつかない。もし本当に楽しい場所であるのなら、行ってみたいとは思うけど、と。
そんなことを思いながら、ドルモンは彼女の話を聞いていた。
一方のティンカーモンは、そんなドルモンを気にした風もなくドルモンの周りを飛び回っている。
「楽しい場所ーずっと子供が子供でいられる場所ーずっと守ってもらえる場所ー」
「……?」
「そうさ!それこそがネバーエヴァーランド!」
「うわっ!びっくりした~」
妖精にばかり気をとられていたドルモンは、背後からいきなり現れたもう一人に気づけなかった。結果、その登場にたいそう驚いてしまう。
一方で、ドルモンの背後に突然現れて、妖精の言うことを引き継ぐような形で言葉を発したそのデジモンは、少年のような姿をしているデジモンだった。
「ははっ!で?どうだい!一緒に子供だけの国を造らないかい!?」
「楽しい場所でー嬉しい場所でーずっといたくなるような場所でー」
「……楽しい」
「子供の願いが叶う場所さ!どうだい?」
はっきり言って、ドルモンには彼らの言っていることがさっぱり理解できなかった――が、その言葉の内容には、惹かれるものを感じて、ドルモンは差し出された彼らの手を取る。
そして。その翌日。だから言ったのに、と。溜め息を吐いたジジモンによって、行方不明者のリストにドルモンの名前が追加されることとなったのだった。
というわけで、第七十四話。
前回に引き続いてのドルモン回。
最後に出てきたデジモンは、人によってはモロ分かりですね。
さて、次回は、ドルモンが事件の中核に迫ります。
それでは次回もよろしくお願いします。