【完結】デジタルモンスターA&A~紡がれる物語~   作:行方不明

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第八話~動き出した失敗作~

 翌朝。大成たちは荒野を歩いていた。

 あの戦闘の後、見張り役であるスレイヤードラモンを除く全員が再びの睡眠をとった。少ない睡眠時間でも、とっておいたほうがマシであるという判断からである。そうして全員が起床した後、行動を開始したのだ。

 ちなみに、初めは野宿に対してあまり良い気がしなかった大成だが、一夜過ごした今ではそんな気は消えていた。大成が思っていたほど、野宿は辛いものではなかったのである。とはいえ、それは大成の感性でのことである。普通の人はキャンプ用品なしでのサバイバルなど、辛い以外の何者でもない。もっとも、大成もあまり好んでやりたいと思う訳でもないのだが。そこら辺は現代人である。

 

「そういえば……セバスってアナザーの中にいたんだよな?」

「大成殿、そうですな。お嬢様が出してくださらなかったので、仕方なく……そう、仕方なく。しかし!このセバス!このような危険がある世界で、二度とアナザーの中には入りませぬ!このセバスがお嬢様を守り抜くのです!」

「……もうちょっと落ち着いて」

「何を言いますお嬢様!?危機意識が足りないと言うべきですぞ!?」

 

 あの優希が疲れた顔で狼狽えている。レオルモンと優希のやりとりは傍から見ていると面白い光景ではある。だが、実際経験すると面倒くさい性格といえるだろう。

 やっぱり現実はゲームと違って、うまくいかないものだな。とそんな光景を見ながら大成はぼんやりと思うのだった。

 ちなみに、アナザーの中ってどうなってるの?という大成の当初の疑問は、このやりとりの間に忘れられることとなったのだが、それはほんの余談である。

 

「で?何も分からずに着いて行っててるけど……どうするんだ?」

「え?そういえば……リュウ、どこに向かっているの?」

「お嬢様っ!?まだ話は終わっておりませぬぞ!」

「遠くに見える山があるだろ?そこにある森の中にある街へ向かってる」

 

 そう言ってスレイヤードラモンが指差した先。そこには山々があった。だが、贔屓目に見なくても、遠い。全体像も山頂も霞んで見える。どれほど遠いのか、知識のない大成にはわからないことだ。だが、少なくともハイキング気分で楽に行ける場所にあるわけではないことくらいは、大成にもわかる。

 これから待ち受ける苦行に早くも心が折れそうになる大成だった。

 

「当面は情報収集だな。ある程度安全なところで、イモを鍛えないといけないし……」

「僕、ワームモンだよぅ……」

「あ、悪い。イモじゃないのか」

「うぅ……どうせ僕は……」

 

 気弱な性格ゆえか、ワームモンは自己主張をあまりしない。そのくせ抗議だけは小さな声でするので、周りの面々としてはワームモンの意思を測りづらいことこの上なかった。

 スレイヤードラモンは、大成の言からワームモンの名前をイモだと思い込んでいた。だが、ワームモンはその名前を納得していないらしい。強く言わないから、何を思っているのかわからない。

 そんなワームモンを見て、少しイライラしてきたスレイヤードラモンだった。

 

「ったく。おい、ワームモンっ!」

「っひ!な、何ですか……」

「……はぁ。言いたいことがあるなら、ハッキリと、デカイ声で言え。結局な、世の中で上手いこと行くのはそれが出来る奴だ。例えどんなに、黙りこくっている奴でも、気弱な奴でも、それだけは譲れないってものをハッキリとさせる奴だ」

「でも……」

「まぁ、そういう性格なんだろ?わかってるぜ。でも、いつも周りにビビって縮こまってると、本当に叶えたい思いができても、結局いつも通り(・・・・・)に縮こまることしかできなくなるぞ」

 

 そう言ったはいいが、スレイヤードラモン自身も“すぐに変わるのは無理だろうな”と思っていた。性格というものがそう簡単に変わるものではないことを、スレイヤードラモンは知っている。

 だが、ちょっとのキッカケとほんの少しの意思で、なんとでもなることも同様に知っている。だからこそ、一応ワームモンに伝えたのだ。

 そんなワームモンだが、やはりすぐには変われないだろう。スレイヤードラモンの顔にビビって優希の後ろに隠れているその姿を見れば、容易に想像できることだった。

 ちなみに、ワームモンに頼られない大成を見て、優しい顔で気遣ったレオルモンがいたのだが、それはほんの余談である。

 

「しかし……子供みたいな奴に縁があるのかね?つーか、ワームモンって優希のパートナーみたいだな」

「はっ!まさか!?イモ殿!お嬢様を渡してほしくば、このセバスの屍を超えていけぇっ!」

「ひっ!無理だよぉ!」

「っく。なんで優希ばっかり……」

 

 人間と戯れるワームモンやレオルモンを見て、どこか懐かしそうな顔をしたスレイヤードラモンに誰も気づくことはなかった。

 そんな感じで歩き続けいると、そろそろ辺りには草木がチラホラと見え始めていた。荒野から、草原に大成たちが入り始めた証拠だ。だが、大成たちが目指す山は変わらず遠くにある。何時になれば着くのだろうか、と嫌な予感を感じた大成だった。

 そんな時である。どこからか音が鳴ったのは。

 

「……」

「……俺じゃねぇぞ」

「私でもないわよ」

「同じく」

 

 ともあれば、犯人は決まっている。というか、犯人捜しをするまでもない。犯人は緑色の顔を真っ赤に染め、地面の上で縮こまっている芋虫(ワームモン)だからだ。

 先ほどなった音は、腹の音だ。それも、その場にいた全員の耳に届くほど盛大に鳴るほどの。ワームモンからしては恥ずかしいことこの上ないだろうが、それでも腹の音が鳴るのも仕方ないことだろう。ここにいる全員が、昨日の夜から何も食べていないのだから。唯一の例外はスレイヤードラモンだけである。

 とにかく、全員が空腹を我慢していた。そして、ワームモンの腹の音で口火が切られたのだ。後は、決壊したダムのように、溢れ出すしかない。グダグダと大成たちはしているが、空腹は割と死活問題である。

 ここはあの街ではない。ようするに、食料がないのだ。先ほどまでいた場所は荒野で、草木も時々生えているかどうかというレベルの場所だ。そんな地面と空気くらいしかない場所で得られる食料など、無いに等しい。

 

「……まぁ、確かにお腹は減ったわね」

「お嬢様!……そうですな、仕方ないですな。この危機……このセバスの体で乗り切りましょうぞ!」

「デジモンの肉ってうまいのか?」

「大成、そこじゃないでしょ!」

 

 レオルモンの調理の仕方を思い浮かべる大成だが、優希の言うとおり問題はそこではない。問題は、食料難という危機に直面していることだ。優希も大成も、単純に野宿することには慣れたといってもいい。だが、食料調達となると話は別である。

 

「……」

「優希どうかしたのか?」

「なんでもない」

 

 食料調達。その言葉で思い出したかつての嫌な記憶を優希はそっと胸の内に戻した。嫌な記憶は忘れるに限るのである。

 もっとも、それで無かったことにはならないのが、現実の辛いところではあるが。

 

「食べない訳にはいかないしね……」

「どうにかしないと。あーあ……異世界なんだから、空から食料でも降ってこないかな」

「それは衛生的にダメでしょ」

 

 食料調達をしなければならない。だが、現代日本に生きる子供だった大成たちに、満足な量の食料の調達ができるはずもない。それらしきものを集められたとして、大成たちに専門的な食料の知識はない。何が食料なのかわからないのだ。しかも、ここは異世界である。どこに危険があるかわからない。集めていたら、お陀仏になることすらありうる。

 だからこそ、希望の目がスレイヤードラモンに向けられたのも、仕方ないことではあるだろう。

 

「……はぁ。わかったよ」

「スレイヤードラモン殿!お嬢様のためにありがとうございます!」

「なぁ、別にリュウでいいぜ?」

「いえ!スレイヤードラモン殿を親しく呼ぶなど!」

「……。まぁ、いいけどさ。それに、お前らにも働いてもらうからな」

 

 ようするに、この場で最も安全に、かつ食料調達の知識を持っているだろうスレイヤードラモン任せにするつもりなのだ。スレイヤードラモンも、大成たちに単独(・・)で食料調達をさせるのは不可能だと思っていたので、任されたのは別にいい。だが、スレイヤードラモンとて、すべて(・・・)を自分がやるつもりはなかった。

 つまり、少しは手伝えということである。

 

「えー!」

「えー……じゃねぇよっ!自分の食い扶持くらい自分で稼ぐって考えはねぇのか!」

「まぁ、手伝えることがあるなら……」

「お嬢様の分はこのセバスめがっ!」

 

 グダグダ言っている大成以外は、自分で食料集めにすることに乗り気である。一方で、大成は乗り気ではない。単純に面倒で嫌なのだ。というか、大成は本気でスレイヤードラモンに任せるつもりだったのである。

 普通に考えて、スレイヤードラモンに大成の面倒を見る理由はない。この状況こそが、スレイヤードラモンの好意である。そんないつ見捨てられても仕方ない状況下で、ここまで図太い対応をできる大成は大物なのか、それともただの馬鹿なのか。おそらくは後者である。

 

「っく……イモも手伝えよっ!」

「僕は……草木があれば……何とかなるから……」

「このぉ……!」

 

 そんな大成が、苦し紛れにワームモンを手伝わせようとする。まあ、ただの八つ当たりなのだが。自らがサボることができないなら、せめて道連れを用意するということだろう。

 だが、残念ながらそんな大成の目論見は成功しなかった。芋虫のようなワームモンの食料は、そこら辺に生えている草木で十分なのである。ようするに、ワームモンには取り立てて食料調達をする必要性がないのだ。

 とはいえ、大成の命令によって、結局はワームモンも手伝うはめになるのだが、それもほんの余談である。

 

「ったくもー……なんで俺が草刈しなくちゃいけないんだ。俺は桃太郎じゃねぇんだぞ」

「実際は芝刈りだし、それをやっていたのは桃太郎のおじいちゃんだけどね」

「なんで僕まで……」

「うるせっ!四の五の言わずに手伝えっ!スレイヤードラモンも全部やってくれればいいのに……」

 

 スレイヤードラモンの言っていることにも筋が通っていることくらい冷静になればわかるだろうに、空腹によるイライラゆえか、馬鹿だからか、それともわかっているのか。ぶつぶつ文句を言い続けながら、大成は食料を集め続けていた。

 といっても、この荒野とも草原ともつかぬ場所では、得られる食料などたかが知れている。ようするに、植物である。それが食べられるものであるかどうかは、スレイヤードラモンが選別している。

 だが、所詮は植物。しかも、草や葉系の。腹が膨れるほどの量を得るためには、ひたすらに頑張るしかない。結局、全員の腹が満たせるほどの食料が集まった頃には、日が暮れていたのだった。

 ちなみに、集めた食料の味は苦味とほぼ無味の二択しか選択肢がなかったりする。たいして美味しくもなかったあの街の食事が懐かしくなった大成だった。

 

 

 

 

 

 大成たちが二度目の野宿に入ったその頃。とある街“だった”場所にて、静かに佇む者がいた。

 そう、“だった”。つまり、過去形なのだ。その場所はデジモンたちが平和に暮らすこの世界の街だったのだ。だが、今のその場所にはその見る影もない。その場所は、元が街だったとはわからないほどに滅茶苦茶に破壊尽くされていたのである。

 この様子では、生き残っている者などいないであろうし、いたとしても僅かであろう。それほどの“破壊”がその街を襲ったのだ。

 

「スレイヤードラモン……五年前の件の立役者の一人か」

 

 そんな廃墟へと変貌したその街に佇むのは二体のデジモンだ。

 一方は、まるでさまざまなデジモンの部位をくっつけたような、空想上の動物であるキマイラのようなデジモンである。そしてもう一方は、全身が機械でできた竜と形容するのが相応しいデジモンだ。

 だが、言葉を発しているのはキマイラのようなデジモンの方だけである。機械の竜の方は沈黙を貫いている。というよりも、キマイラのようなデジモンは、機械の竜と会話しているつもりはないのだろう。つまり、ただの独り言という訳だ。

 

「……まぁいい。どのみちいつかは相手取らないといけないことには違いない。今のうちに殺っとくべきか」

「……」

「不確定要素は動き出した奴らか……」

 

 その時、キマイラのようなデジモンの脳裏にあったのは、破壊された瓦礫の街と街を壊す白銀の竜の姿だ。そして、血を流し、徐々に冷たくなっていく“両親”の姿。思い出したくもない記憶を想起してしまった自分に嫌悪して、すぐにその記憶を振り払って自らの頭から消す。

 どのみち、自分がやることは代わりないのだ。なら、精神が不安定になるようなことを思い出すべきではない。

 そう考えて、キマイラのようなデジモンは機械の竜を連れて歩き出す。

 

「奴らも、デジモンも、オレが――」

「……」

「……生き残りか」

 

 見据えた先には、急いでこの場を離れようとしているゴキブリのようなデジモンの姿があった。運良く助かったそのデジモンは、おそらく今までジッとやり過ごそうとしていたのだろう。だが、最後の最後で恐怖に耐えられなくなり、逃げ出してしまったのだ。

 キマイラのようなデジモンは、素早い動きでこの場を離れていくそのデジモンを追いかけることはなかった。いや、正確には追いかける必要がなかったというのが正しいのだろう。

 

「放て」

「ターゲットロック。∞キャノン。ファイア」

 

 放たれたのは、破壊の光線。機械の竜の背中に付いた二つの砲身から放たれたソレが、世界を貫く。一瞬後、光線が走った場所には、何も残っていなかった。逃げていたデジモンも含めて。

 その結果を当然とばかりに見ていた()は機械の竜を連れて“再び”歩き出す。

 そんな二人が見据える先にいるのは――白き竜騎士。スレイヤードラモンだ。

 




さて、最後に出てきたデジモンたちは誰でしょう?バレバレですけどね。
彼らはもう少し後に登場します。

それでは、また次回もよろしくお願いします。
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