俺は勇者だけど、狂った美人パーティーから逃げたい。…けど、彼女たちは俺を逃がしてくれない 作:銀層
俺は、首輪で繋がれた女二人を引き連れつつ、自分も別の女に首輪をつけられて街を歩いている――いや、どう考えても狂ってるだろこのパーティー
だが、この選択が一番正解なんだ。
狂った3人を収めるにはこれしかない。
これが、俺の神の一手って絶望すぎる
街行く人々は目を逸らしつつ、誰も止めてはくれない。
……俺は今すぐ逃げたい。マジで。
俺は、名ばかりの勇者である。
前世は、女にもてない童貞SE。
だからこそ、貞操逆転の世界に転生した時は思った。
「女の子に襲われるとか最高じゃん」――なんて。
でも、慣れてくるとわかる。
あれはただの、恐怖だ。
勇者には、ある選択があった。
それは「世界から迫られる二択を、絶対に選ばなければならない」というもの。
選ばされた選択肢はこうだった。
【1:このまま保護され、複数の女に束縛される生活を受け入れる】
【2:勇者として世界を救う旅に出る】
どう考えても、2がマシだと思った。
束縛プレイ付き監禁より、世界救った方がマシだろ?
――だけど、その選択こそが、俺の地獄の始まりだった。
冒険者ギルドに登録すると“パーティー自由加入制度”なるものがある。
要するに、自分の好みで女の子を選んでいいっていう神仕様だ。
異世界転生モノでよくある「テンプレパーティー」が、自分で作れる。しかも合法で。
だから俺は、当然こう考えた。
――ステータスの高い女を選べば、俺は戦わずとも勝てる。
実際に選んだのは、こうだ。
・戦士:攻撃力・素早さカンスト
戦士のコメント
勇者様を忠実な犬のように守ります!!
・ヒーラー:回復と蘇生は無限に使用可能
ヒーラーのコメント
壊れても、直してあげます。何度でも、何度でも。むしろ壊れてくれないと困ります…
・黒魔術師:全属性の最上級の魔法使用可能。下級魔法は無限に扱えます
黒魔術師のコメント
厳しい環境や強い言葉には、なぜか心が落ち着きます。痛みを伴う経験ほど、自分の成長を実感できる気がします。
数字だけ見れば、最高だった。
勝利は約束されたはずだった。
……なのに。
なのに、こいつら――
性格面で、異世界最凶だった。
俺の“女運”が悪すぎたんだ。
~~
今日、この広場で。
ここで出会う予定のはずだった――そう、まともな仲間と。
「……あれ?」
視線を感じて振り返ると、そこにはひとりの少女が立っていた。
銀色の髪、獣のように立った耳、そして大きな目。
ケモミミ。
しかも、めちゃくちゃ可愛い。
やばい。これ、当たりだ。
思わずそう思った。
その瞬間だった。
ドンッ!
「うわっ――!?」
……押し倒されていた。
背中が石畳に打ちつけられ、目の前にはさっきのケモミミ少女。
間近に見ると、まるでぬいぐるみみたいに整った顔。
でも、彼女の瞳は獲物を見つけた肉食獣みたいに開ききっていて――笑っていた。
「くんくん……♡ ふふ、やっぱり……勇者様の匂いだぁ♡」
「ちょ、君、いきなり他人を押し倒すって、おかしいよ!?」
「他人じゃないよ。だって、私たち――目、合わせたよね?」
「は?」
「私、フランだよ。今日からご主人様の戦士。……ね? もう“ご縁”できたでしょ?」
“ご縁”――
その言葉が、耳に妙に残った。
「目が合ったら、縁ができる。だから、もう他人じゃないんだよ?
ご主人さま♡」
少女――フランは、悪びれることもなく、笑顔で俺の胸に頭を乗せてきた。
柔らかくて、温かくて、心地いい――はずなのに、体がこわばる。
こいつは危ない。
本能が、そう叫んでいた。
逃げろ――
でも、もう遅い。
フランの体はびくとも動かず、俺の上から離れようとしない。
「ちょっ、フラン! 本気で重たいって、降り――」
言いかけた瞬間、俺は悟った。
無理だ。逃げられない。
この少女――戦士フランは、冒険者カードの情報に記載されていたとおり、攻撃力がカンストしている。
つまり、物理的に敵わない。
どんなに力いっぱい押しても、彼女の体はピクリとも動かない。
「ふふっ、ご主人さまったら、暴れないで。大丈夫、怖くないよ。舐めてあげるから」
「いや、意味がわからないって!」
その時だった。
ぺろっ――と、何かが顔に触れた。
「……うわ、やめっ、ちょ、フラン!?」
ぺろ、ぺろ、ぺろぺろ――
犬みたいに、顔を、舐めてくる。
頬、あご、額、耳の後ろまで、まるでマーキングするみたいにぬらぬらと。
「えへへ……やっぱりご主人様の味、特別……♡」
「ふふ、もう全部、覚えちゃった。匂いも、味も……体温も……♡」
ゾクリ、と背中を何かが這い上がる感覚がした。
こいつは……ヤバい。本当に犬だ。いや、犬よりタチが悪い。
嬉しそうに俺を舐めながら、フランは子犬のように尻尾を振る――いや、実際、尻尾がある。しかも振ってる。
でも、その目は嬉しそうどころか、どこかゾッとする執着心に満ちていた。
「この顔は、もう誰にも見せないでね。私だけのものにするから……♡」
こいつ、犬っていうより……クマだ。
見た目はもふもふケモミミ少女、でも体感は猛獣級。
顔をぺろぺろ舐められながら、俺は震えた。
全身の力を込めても、フランの体はびくともしない。
冗談抜きで、腕を折られる未来が見える。
【とんでもねぇパワー系ワンコ】に好かれるなんて、聞いてない。
神様、転生特典に「力では勝てない異性に全力で舐め回される呪い」とか、つけました?
こうして、俺の地獄――第1の地雷との邂逅は、強制的に終わりを迎えた。
「うふふ……これは、予想以上、ね……♡」
その声に、俺とフランが同時に反応した。
目をやると、そこには黒衣に身を包んだ少女が立っていた。
艶やかな黒髪を三つ編みにして垂らし、腰には魔導書。
その瞳は冷たく、けれど――なぜか潤んでいる。
「この世界に“勇者”なんて存在、本当にいたのね。
でも……ふふっ、あんなふうに押し倒されて、されるがままって……」
少女は、うっとりと目を細める。
「――勇者様って、弱いんだ……♡」
「いや、ちょっと待ってくれ。これは事故で――というか俺が弱いんじゃなくてフランが強すぎるだけで――」
「んふっ……♡ 言い訳、可愛い♡」
ゾクッとした。
こいつ、今ので何かに目覚めた顔をしてる。
「ふふ……そんなにされて、抵抗もできずに、舐められて、潰されて……
きっと、いっぱいいじめられて育ってきたんでしょうね?
ああ、そんな可哀想な勇者様……っ!」
震える手で頬を押さえながら、息を荒くする。
魔力が、じわりと周囲に溢れ始める。
「ふふふ……ぺろぺろされて、身動きもできなくて……
情けないくらいに無力で、無抵抗で……」
頬をほんのり染めながら、恍惚の笑みを浮かべた。
「……そんな情けない勇者様に、私いじめられるのね……」
――うわ、そっち!?
「もう、最高~~♡♡」
両手で顔を覆い、腰をくねらせながら、彼女はのけぞるように興奮の声をあげた。
その体から、じわじわと妖しい魔力が滲み出す。
「ねぇ、ねぇ……わたし、ずっとこういう“立場の上下が逆転してる”関係に憧れてたの♡
弱いくせに“いじめられる側の男”に、いじめてもらうの……」
いやそれ、完全にバグってるだろ。
「勇者様ぁ……もっと、私のこと罵ってくれていいんだよ?
最低って言って。無様って言って。ほら……あの子みたいに、私を押し倒してよぉ……♡」
違う! 俺は被害者で! フランが! というか、押し倒されてるの俺だ!!
だけど――この黒魔導士、完全に“倒錯したスイッチ”が入ってしまっていた。
「まさか……君が黒魔導士の子!?」
「そうよ。メルヴィナよ――勇者様♡」
最悪だ。
俺の中の何かが、警報を鳴らしていた。
まだハッキリとは言語化できない。だが、感じる。確信してしまう。
こいつはヤバい。
さっきのパワー系ワンコ――フランは、見た目通りに脳筋で元気なバカ犬だった。
でも、この子は違う。目の奥が澄んでるのに、何かが壊れてる。
その奥に――暗い井戸の底のような闇がある。
視線が合った瞬間、背筋にひやりとした感覚が走る。
それはまるで、気付かないうちに足元から絡みついてくる蜘蛛の糸。
じわじわと、確実に、逃げ場を奪っていく。
俺はいま、地面に押し倒されている。
銀髪ケモミミのパワー系大型犬・フランに全力でのしかかられながら、顔中ぺろぺろ舐められている状態だ。
「くっ……離れろフラン、酸欠で死ぬ……!」
「やだっ、ご主人様のにおい、まだ堪能してないもん……♡」
やべぇよこの子。可愛い顔して、筋力カンストのモンスターだ。
抱きつきってレベルじゃねぇ。完全に締め技。犬というより熊。
そこへ、ふわりと風のような声が届いた。
「――あらあら。勇者様を、いじめちゃダメでしょ?」
その声とともに、ひんやりした光の粒が辺りに舞う。
そして、俺の体を拘束していたフランの力が――一瞬、緩んだ。
「……おまえ、誰だ」
フランが鋭く振り向く。その瞳は、さっきまでの甘えた顔とは別物。
番犬が縄張りに入った“別の犬”に牙を剥くときの顔だ。
「ご主人様を奪おうとしてる臭いがする……何を、企んでるの?」
その問いに、現れた女の子は微笑んだ。
金髪に揺れる長い三つ編み。癒し系の雰囲気。
「私? セラ。ヒーラーよ。あなたみたいな子が勇者様の上に乗ってたら、死んじゃうからってだけ」
「……ふーん。“だけ”って言った割には、においが強すぎる。
本当は、私のご主人様を狙ってるんでしょ?」
「さすがに、これ以上は解放してあげないとダメでしょ?」
セラは、俺に笑いかける。けれどその目は――フランから決して逸らさない。
「この臭い……やっぱり本当みたいね」
セラは、軽くフランに視線を投げる。笑顔を崩さぬまま、静かに言い放った。
「――でも、ご主人様は私のものだから」
「うぐぅ……」
フランが名残惜しそうに俺の胸板から顔を離す。
まるで、ボールを取られた大型犬のように耳をぺたんと倒していた。
そうして俺は、ようやく――解放された。
「ご主人様、冒険に行きましょう?」
何気ない一言。けれどその声に、どこか命令のような重みを感じたのは、たぶん気のせいじゃない。
「……助かった。マジで死ぬかと思った」
「ふふっ、大げさねぇ。でも――」
セラは俺の顔を覗き込む。
「あら〜……ちょっと、傷だらけじゃない?」
「……ああ、まあ、舐められて押し潰されて、色々……」
「なら、少し回復させてあげるね。じっとして?」
彼女の手が、俺の頬に添えられる。
次の瞬間、光の粒が舞い上がり、体中に心地よいぬくもりが走った。
「ヒール――」
……気持ちいい。
体の芯まで届くような癒し。痛みが抜けていき、こわばった筋肉がほぐれる。
だが――
「……っ、あ、れ……?」
おかしい。おかしすぎる。
あと少しで完全に楽になる……ってところで、ヒールの波が、絶妙に止まる。
しかも、回復の波が来るたびに、微妙に位置がズレる。
喉まで来た水を、寸前で引っ込められるような感覚。
「ふふっ……勇者様、気持ちいい?」
囁くように聞いてくるセラの目が、すごく、楽しそうだった。
「ねぇねぇ~、もっと情けなくお願いしてよ~?」
優しい声色の中に、くすくすと笑いを含んだ挑発の響き。
癒しの魔法をかけながら、セラは俺の顔を覗き込んでくる。
その瞳は、まるで玩具をじっと観察するような艶めいた光を湛えていた。
「そ、そんなこと言われても……」
俺が困惑して言葉に詰まると、セラは楽しそうに笑った。
「も~……素直じゃないですねぇ、勇者様は」
「じゃあ、言ってください? 自分は下等生物で、セラ様が上位に立ってるから、癒していただいてるんです、って」
耳元で囁くように、優しく、だけど逃げ場のない声で。
身体は回復しているのに、心はどんどん追い詰められていく。
「さあ? どうして黙ってるんですかぁ?」
「もしかして……そんな屈辱的なセリフ、本当は興奮しちゃって言えないんですか?」
にっこりと微笑むセラの手が、また少しだけヒールの光を強めた――しかしまたしても、あと一歩で快癒という絶妙なところで、わざと止められる。
「あ、ダメですダメです。今の態度じゃ、治す価値ないですねぇ~」
……こいつ、本気で遊んでやがる。
可憐な笑顔の裏にあるのは、間違いなく――嗜虐心の権化。
セラの指先からは、じんわりと温かな癒しの光が溢れていた。
けれど、それは一向に“終わらない”。
むしろ、わざとらしく寸止めされているような……そんな感覚。
ちくしょう……心地よさが焦らしに変わっていく。
これじゃまるで――
「もしかして……もっと“お願い”してほしいんですかぁ? 勇者さま♡」
俺の思考を見透かしたように、セラが囁く。
くそっ、わかってる。
たぶん……ドMにならないと、この傷は回復させてくれない。
けど、なりすぎたら――こいつは、調子に乗る。
絶対、際限なく支配してくる。
俺の自由と尊厳は、いまセラの気分ひとつに握られている。
その光景を、離れた場所からうっとりと見つめていたのは、黒魔導士のメルヴィナだった。
黒く波打つローブの裾をつまみながら、興奮したように頬を紅潮させている。
「あ~♡♡いい~♡♡本当に♡♡」
くねくねと体をくねらせながら、こちらへ近づいてくる。
「ねぇ、勇者様。今のプレイを覚えてくださいね、次は私にもさせるようにしてくださいね?」
「もちろん安心していいですよ。私、女からの責めとか全然興味ないんで。
弱くて、情けなくて、逃げ腰で、でもちゃんと私を罵ってくれる勇者様が、最高に刺さるんです♡」
言葉の端々に混ざる吐息。
その目はすでに、何かに取り憑かれたように潤んでいた。
「あは〜ん……寸止めプレイって、本当に心にくるのよねぇ……
お願い、次は私にも、いっぱい焦らして、罵って、我慢させて……?」
これは……これは絶対ヤバいやつだ。
心の奥で警鐘が鳴っているのに、俺の周囲の空気は、なぜか甘ったるく、逃げ場がどんどん失われていく――。
「な、何この変態は……!?」
セラが、まるで汚いものを見るような目でメルヴィナを一瞥する。
じらしプレイをしていた手も止まり、癒しの光は霧のように消えた。
しかし、フランが黙っていない。
「ご主人様~、かまってほしいな~」
フランがわんこよろしく耳をぴくぴくさせながら、ずずいと距離を詰めてくる。
「わかったから! 押し倒すのはやめろ!!」
「……でも、傷が残ってるわよ?」
セラが意味深に微笑みながら、俺の服の隙間から肌を覗き込む。
「――“放置プレイ”、最高にそそるわねぇ♡♡」
「勇者様♡♡♡もっと蔑んで~! 私の分も寸止めお願いします♡♡」
カオスになっている。
セラの手はぴたりと止まり、フランの鼻息は荒くなり、メルヴィナはひとり勝手に天国を見ていた。
……どうしてこうなった。勇者って、もっと神聖な職業じゃなかったか?メルヴィナは地面を転げ回って喜んでいる。
これは……ダメだ。
このままじゃ、俺が壊れる。
誰かをなだめても、別の誰かが暴走する。じゃあ――全員を“同時に構ってる”状態を作ればいい。
俺は、荷物の中から取り出した何本かの首輪を見つめた。
……こうなったら、やるしかない。勇者としてじゃなく、“飼い主”として。
「フラン、君のは専用首輪だからな。つけてやるよ」
「わーいっ、ご主人様ぁっ♡ もう絶対、はなさないからねっ♡」
俺が首輪を手にした瞬間、フランの目が獲物を見つけた大型犬のように鋭く光った。興奮と喜びが混ざり合い、耳をぴょこぴょこと動かしながら、嬉しさを隠そうともしない。
「メルヴィナ、お前にも……つけてやる」
「えっ……首輪!? やだ嬉しい……勇者様に飼われるの最高ぉ♡」
頬を赤らめ、首筋を押しつけてくるようにしてうっとりと身をくねらせる。そのまま地面に転がり、仰向けのまま両手を胸に重ねて痙攣するように身を震わせた。まるで「調教済」のタグでも付いていそうな姿だ。
「セラ……君には、俺の首輪を持たせる。それで、俺を――引っ張ってくれ」
「ふふ……ようやく勇者様が自分の“立場”を理解してきたみたいですねぇ♡」
静かに一歩踏み出してくると、白魚のような指先が俺の顎をそっと持ち上げた。視線を上から下へと落としながら、うっすらと浮かぶ微笑み――それは、慈悲ではなく、支配者の笑みだった。
これは……今の俺にとって、思いつく限りの“最善手”だった。
これしかない。これが正解だ。
――いや、きっと正解なんだと、そう“思い込もうとしている”だけかもしれない。
狂った日常が、何の前触れもなく俺を飲み込んだ。
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