ミリタリー✖️東方Project 作:ポーラン
幻想郷・とある前線拠点】
〈第27親衛機械化歩兵連隊・作戦司令所〉
薄曇りの空の下、ハルコフ大佐はテントの外に設けられた即席の指揮席に立ち、目の前の二人の男を見つめていた。
一人は、軍服に反ロシアの自由ロシア軍の徽章をつけたベテラン将校――ワシーリ・ディミトリ・ポロコフ少佐。
そして、その隣にはかつて行方不明となっていた若き将校、ミハイル中尉の姿があった。
ハルコフ大佐はしばらく沈黙した後、静かに口を開いた。
ハルコフ大佐
「……まさか、君たちがここに現れるとは思わなかった。特にミハイル、お前が生きていたとはな。」
ディミトリ少佐(帽子を取り、深く一礼してから)
「少佐……我々は、もはや“大義”を失っているんです。あの……ブチャでの虐殺、ザポリージャ原発への攻撃、民間施設への爆撃……それを見て、私は祖国に対して絶望しました。」
ミハイル中尉(伏し目がちに)
「……あのとき、私は何もできなかった。けど、ディミトリ少佐と共に行くことを選びました。あれが……唯一の良心を守る選択でした。」
沈黙が流れる。だが、それを破ったのはハルコフ大佐の、静かな声だった。
ハルコフ大佐
「……今更、君たちを咎めるつもりはない。いや、むしろ……感謝しているのかもしれない。」
ディミトリ少佐
「……え?」
ハルコフ大佐
「私たちも……薄々は気づいていたのだ、祖国が誤った道を進んでいることを。だが、命令に背けば家族に危害が及ぶ。仲間を裏切ることにもなる。……我々は、ロシアという国に忠誠を誓った兵士だ。だからこそ、黙って従ってきた。」
ディミトリ少佐
「では……」
ハルコフ大佐(ゆっくりと歩み寄り、手を差し出す)
「だが今……この幻想郷で、我々は国という“幻想”ではなく、“人々”のために戦う意味を見出しつつある。ディミトリ、共に自由のために立ち上がろう。」
ディミトリ少佐(しっかりとその手を握り返し)
「……また、共に戦いましょう。今度は本当の意味で、民を守るために。」
二人の握手の音が、静かな風の中に響いた。
ハルコフ大佐はその後、ミハイル中尉の方にも視線を向け、優しくうなずいた。
ハルコフ大佐
「ミハイル……君の行動は、裏切りとは思っていない。あの戦場で“人間”としての正しさを選んだこと、私は評価している。」
ミハイル中尉(目を潤ませながら、敬礼)
「……ありがとうございます、大佐。」
【幻想郷・前線指揮所付近/NATO軍仮設観測所】
仮設された観測テントの中、マクファーソン准将は双眼鏡越しに遠くの光景をじっと見つめていた。そこには――ロシア軍と自由ロシア軍、同じロシア軍だったもの同志…血で血を洗う関係だった者たちが、握手を交わす姿。
マクファーソン准将(ゆっくりと双眼鏡を下ろしながら)
「……歴史的な日になる。これが、たとえ“非公式”な出会いであったとしてもだ。」
隣に控えていたアレン少佐が、静かにうなずく。
アレン少佐
「……はい。しかし、現実の世界ではこうはいかないでしょう。冷戦の壁は、未だに残っています。」
マクファーソン准将(遠くを見つめたまま、微かに微笑みながら)
「わかっている、少佐。だがな……今日、我々は“冷戦”を超えたんだ。憎しみによる壁を、一つ壊したんだよ。」
アレン少佐
「……」
マクファーソン准将
「これは幻想郷という“隔絶された地”だからできたのかもしれん。だが、逆に言えば――こういう地だからこそ、本音で語り合えたとも言える。」
彼は、手元のノートに何かを書き込む。それは簡単な一文だった。
“幻想郷において、かつての敵が手を取り合った。”
マクファーソン准将(静かに続けて)
「時間はかかるだろう。10年、50年……いや、100年……それ以上かもしれない。」
アレン少佐
「……それでも、我々は希望を失わずに?」
マクファーソン准将(確信をもって)
「ああ。何百年かかろうと、人は“理解し合う”力を持っている。幻想郷でそれが可能なら、外の世界でもいつか――必ず実現できる。」
その言葉に、アレン少佐は言葉を返せなかった。代わりに、まっすぐ前を見据える准将の横顔を見つめていた。
やがて、外から吹き込む風が、仮設テントの幕を揺らす。幻想郷の空の下、確かに「かつての敵同士が、未来を語り合った」日だった。