戦闘終結から数日後。
那歩島は元通りの穏やかな空気に包まれていた。島民たちは奇跡的にほとんど無傷で、破壊された建物の復興作業が始まりつつある。しかしデルタの日常は変わってしまった。
あの日以来、彼女は島の外れにある自分の住まいを片付け始めていた。
「……荷物なんてほとんどないですがねぇ」
部屋の隅に積まれた数枚の服と最低限の道具。サラ――いや、今は“デルタ”として生きる獣人にとって、物質的な豊かさは不要だった。必要なのは獲物と狩りの技術だけ。だが。
「お姉ちゃん……どこか行くの?」
玄関口に立つ小さな影。島乃活真だ。活真は不安そうな表情でデルタを見上げている。その目はまだ少し涙ぐんでいるが、以前のような臆病さは薄れつつあった。
「あぁ……狩りの仕事が終わったのでな」
デルタは屈んで弟の目線に合わせた。
「姉ちゃんと遊んでくれるんじゃないの?もっとずっと一緒にいてよ……!」
「活真」
後ろから走ってきたのは姉の島乃真幌。彼女は活真を守るように抱き締めたが、その目も潤んでいた。
「……お願いデルタさん、行かないで」
真幌は必死に懇願する。島民たちとの別れも辛いが、彼らにとってデルタは家族同然の存在だった。
「心配するな。私はどこにいても同じだ」
デルタはそっと真幌の肩に手を置き、微笑む。それはいつも荒々しい彼女には珍しい、穏やかな笑顔だった。
「ヒーローならまた会えるだろう。この島のことは任せたぞ。お前が……強く生きればな」
「お姉ちゃん……!」
真幌の声が震える。
活真は小さく頷きながらも、「僕も必ずヒーローになる。だから今度は僕が守る番だよ」と宣言した。その瞳には確かに成長の輝きがあった。
デルタは苦笑いし、「ふん、まだまだ甘いなぁ」と軽く額を小突いた。
けれどその指先は優しかった。
デルタは船の縁に腰掛けたまま、島の空気を深く吸い込んだ。この島での日々――狩りではなく“暮らし”と呼べる時間――はかけがえのないものだった。
「……まぁ、悪くなかったですな」
ぽつりと呟く。普段の彼女からは想像できないほど静かな声色。
「さよならは言いませんよ。また会うために」
そう言うと船は岸を離れ始める。デルタは徐々に小さくなる島を眺めながら目を細めた。潮風が頬を撫でるたび、思い出が胸の内に刻まれていく。
そして。
「今度は、ボスも一緒に遊びに行きたいです」
そうしながら、デルタは元の日常にどこか笑みを浮かべながら、再び暴君を思わせる表情へと変わっていく。
3rd舞台となる世界は?
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