暗い裏路地にピンク色の閃光が走る。ヴァルゴ・ゾディアーツが作り出した空間の裂け目が、闇の中に浮かび上がった。ゼータは咄嗟にウィザーソードガンを構え、トリガーを引く。紫電が夜を切り裂き、標的を追う。
「逃がさない」
ヴァルゴが笑う。
「無駄よ。私の領域はもう完成している」
宣言通り、彼女は空間を捻じ曲げた。ゼータの眼前にいたはずの敵が突如として消失し、遥か後方に現れる。周囲の壁が歪み、重力が乱れる感覚。まるで異世界に迷い込んだようだ。
「この狭さが私の武器なのよ」
ピンクの竜巻が夜空に舞い上がり、ヴァルゴを包み込む。瞬間移動の兆候だ。ゼータは咄嗟に跳躍し、側壁を蹴って宙返り。銃口を下に向けてトリガーを引く。
「甘いわ」
すでにヴァルゴは背後に立っていた。鎌状の触角が鞭のように唸る。
「時間をかけるのは好きじゃないの。さっさと終わらせて――」
言葉半ばで空間が砕け散る。ゼータが放った弾丸が命中したのだ。
「効かないわ」
「当然だ。だが隙は作った」
ゼータのウィザーソードガンの刃が展開された。
「本番はこれからだ」
刃が振り下ろされる。しかしヴァルゴは既にテレポートを完了させていた。今度はさらに距離を取り、住宅の屋根の上に立っている。
「賢明な判断だ。しかし……」
ゼータは静かにウィザーソードガンを構え直す。銃口に、周囲の空気が震え始めた。
「空間把握出来るなら、余裕だよ」
テレポート中のヴァルゴの体が一瞬だけ現実空間に浮かび上がる。
その刹那を逃さなかった。
ゼータが跳躍し、屋根に着地する。右手のウィザーソードガンから紫色の稲妻が迸り、ヴァルゴの周囲を囲む。
「無駄よ。これは私の専売特許」
ヴァルゴが嗤う。再び空間が歪む。ゼータの眼前から消え去った瞬間、彼女の背後の虚空から鎌が突き出される――はずだった。
「なっ!?」
ヴァルゴの背中で翼のような構造物が紅蓮に染まる。遥か離れた路地裏の影から放たれたレディ・ナガンの狙撃。その一筋の赤い閃光が正確に翼を貫いていた。
「バカな……いつの間に!」
焦燥に駆られたヴァルゴが咄嗟にテレポートを起動。ピンクの竜巻が形成され始める。狙いはもちろん狙撃手――ナガンの方だ。
(読まれている……!)
背後の虚空へ吸い込まれそうになるヴァルゴ。だがゼータは既に動いていた。
「遅すぎるよ」
冷徹に宣告し、足首を回転させる。
『Teardrop IMPACT』
電子音声が轟く。
「喰らいなさい」
右足が銀糸を引いて旋回する。それと同時に、真珠を思わせる七色の粒子が炸裂した。螺旋を描く軌跡に沿って、無数の煌きがヴァルゴを飲み込む。
「ギャアアアッ!?」
鈍い悲鳴が夜気を切り裂く。彼女の肢体は半円を描いて吹き飛び、煤けた壁面に激突して沈黙した。
「……気絶、か」
確認のために近づくと、彼女の変身は既に解けている。黒いドレスが砂埃を被って悲惨な有様だ。
「ふう。一安心といったところか」
一息吐いて変身を解いたゼータはナガンに通信を入れる。
「首尾良く片付いたよ」
『そう』
無愛想な返答だが安堵の色が滲んでいる。
「さて。この女が持っている情報源を洗い出してもらおうか」
3rd舞台となる世界は?
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