俺の一日の始まりは、様々な形だ。
その中で、穏やかに始まる事はない。
「まぁてぇぇぇ」
そして、その日の俺の朝の始まりは、とてもではないが穏やかではない。
「いや、待って下さいよ!イータさん!マジで勘弁してくださいよ!!」
「逃げるなんて卑怯だよ!仁!新作のサポートアイテム、絶対役に立つから!」
イータが振りかざすのは、銀色に輝く奇妙な形状の機械だ。
まるで金属製のゴキブリのようなフォルムで、背中から小型プロペラが突き出ている。名付けるなら「スカウティングバグ」だろうか。
「イータさん!役に立つかどうか以前に!私がテストすればどうなるか見たでしょう?前回の「耐久服」は確かに耐久性があったけど!着たら二日間脱げなくなったんですよ!しかも!臭かった!本当に臭かったんです!」
事務所の廊下を仁は全速力で走り抜け、書類棚の角を曲がる。イータの白衣が風を切る音が迫ってくる。
「大丈夫!大丈夫!今度のは本当に安全!私が試したから!」
「でも!あなたはスライムだから!人間と同じ反応かどうかわかりませんよね!」
仁は応接室に飛び込むと、ソファの下に滑り込んだ。
「あ!そこ!ずるい!」
イータが追いかけてきてソファの前に立つ。
「いいですか?仁。これがあれば索敵能力が100倍アップ!敵の位置がレーダーに表示されて……」
「いや!別に!索敵能力は欲しいんですが!でも!イータさんの作ったものは必ず副作用がある!」
仁はソファの陰から顔を出し、真剣な表情で訴える。
「大げさだなぁ。今回は副作用は3つだけ!」
「『だけ』じゃないですよ!3つもあるじゃないですか!何が起きるんです?」
イータは胸を張って答えた。
「1.3時間後に突然笑い出す!2.周囲の人間を褒めちぎりたくなる!3.お腹が減る!」
「1番と2番は何なんですか?!完全に精神操作系の副作用じゃないですか!」
仁は立ち上がり、再び逃走を開始しようとする。しかし、イータは素早く立ちふさがった。
「落ち着いて!仁!科学の進歩には犠牲が必要なんだよ!」
「その犠牲がいつも私になるのが納得できないんです!」
仁は必死に言い返す。
「それに、仁の個性だったら、様々な実験データを得られるから、便利」
そう、俺の個性は2倍。
一つのものを二つに増やすシンプルな個性。
対象が人間の場合、その人物の個性や人格までコピーすることができるが、複製はある程度のダメージが蓄積すると、泥の様に崩れ消滅する。
つまり。
「そういえば、イータさん!ツカサさんは今日帰ってくるんですよね?!」
仁は必死の形相で言い返した。
イータの手が一瞬止まる。
「……うん。たぶん。でも、まだ連絡ないし」
仁はこの隙を見逃さなかった。
「なら!ツカサさんが帰ってきたら!彼がこの装置をテストすべきじゃないですか?」
イータは明らかに不満そうな表情を浮かべたが、ゆっくりと頷いた。
「……そうだね。ツカサに頼もうか」
彼女は仁に背を向け、スカウティングバグをしまい始めた。
仁は安堵のため息をつきながらも、「ツカサさんは絶対に断らない」という事実を思い出し、心の中で後悔した。
いつものパターンだ。
「仁、コーヒー入れて」
イータが振り向きもせずに言った。
「はい……」
事務所のキッチンでコーヒーを入れながら、仁は自分の過去について考えていた。
過去、仁は不幸の連続だった。
その過去は、壮絶で住み込みで働いていた場所を追い出された。
2倍で、自分を増やした結果、自分同士の殺し合い。
そんな事もあり、仁は社会に戻る事が出来なくなりそうになっていた時、
これが原因で仁は心の病にかかり、社会復帰が困難になった。
だが、ツカサが現れた。
彼は仁をディケイド事務所に招き入れ、新たな人生を与えた。
仁がコーヒーを持って戻ると、イータはすでに仕事に没頭していた。
彼女の机の上には半透明の液体が入ったビーカーや配線があちこちに伸びた機械が散乱している。
「イータさん……掃除してくださいよ……」
「仁。今大事な実験中なの。邪魔しないで」
仁はため息をつきながらコーヒーカップを置いた。
「あの……いつになったらこの装置が完成するんです?」
イータは目を細めながら言った。
「あと178時間43分……いや、やっぱり156時間9分かな」
「イータさん、それって約7日と少しですよね?なんか、それ、微妙にトラウマなので、辞めてくれません」
そうしながらも、彼は主に、事務所で入り浸っているイータの世話を中心に仕事を行っていた。
「・・・仕方ない、他のじっ、事務員にも声をかけようか」
「皆!イータさんが実験するよ!逃げてぇ!!」
3rd舞台となる世界は?
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