悪魔と呼ばれ慣れて 2nd   作:ボルメテウスさん

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悪魔の取引

集中治療室は無機質な白と消毒液の匂いで満たされていた。

 

ピッ……ピッ……ピッ……

 

定期的な電子音だけが静寂を破る。

 

ガラス張りの室内には、無数のチューブと生命維持装置に繋がれたサー・ナイトアイが横たわっていた。

 

彼の右腕は添木で固定され、左胸には包帯がぐるぐると巻かれている。輸血パックが腕に刺さり、点滴スタンドは不安定なリズムで薬液を送り続けていた。

 

「……」

 

ガラス越しに見つめる俺の息が白く曇る。心拍モニターの波形が弱々しく揺れるのを見て、拳を握りしめた。

 

昨日までの威厳あるヒーローの姿はどこにもない。今はただ、生死の淵を彷徨う一人の人間に過ぎなかった。

 

「容態は安定していません」

 

背後から医師が告げる。白衣の裾に染み付いた血液が痛ましい。

 

「刺傷による臓器損傷が激しく……」

 

言い淀む医師の言葉が続くまでもない。緑谷くんから聞いた情報と一致している。明日まで持つかどうかもわからない。それがサー・ナイトアイの余命宣告だった。

 

ドアが静かに開く音がする。

 

集中治療室のガラス越しに見えるイータの姿に、俺は背筋に冷たいものが走るのを感じた。

 

黒いマントを翻しながら入室した彼女がベッドに近づくと、モニター上の心拍が一瞬だけ乱れた。

 

「……来たか」

 

嗄れた声が虚空を震わせる。サー・ナイトアイの瞼がゆっくりと開き、虚ろな瞳が天井を捉えた。呼吸器に阻まれた呻きが喉から漏れる。

 

「未来を見たならば分かっているはず。取引をしよう」

 

ベッドシーツが軋む音が静寂を破った。

 

「……お前が」

 

サー・ナイトアイの唇が震える。酸素マスクの中で吐き捨てるように紡がれた声は掠れている。

 

続きを語る代わりにイータが差し出した。

 

「悪魔の取引だな」

 

サー・ナイトアイの視線が鋭くなる。未来視で垣間見た結末に眉根を寄せながらも、その瞳には微かな光が宿った。

 

「だが……そうか」

 

ベッドサイドのセンサーモニターが不規則な波形を刻む。彼は乾いた唇を噛みしめた。

 

「それで変わる未来があるのか」

 

イータは何も答えず微笑んだだけだ。

 

サー・ナイトアイの肺が痛々しく上下する。天井を見据えながら苦悶の吐息を漏らす。

 

「……リスクは大きいな」

 

彼は覚悟を決めたように瞑目すると再び問う。

 

「代償は何だ」

 

「秘密。でも理解してるはず」

 

イータの言葉にサー・ナイトアイの顔が歪む。

 

数秒後─

 

「分かった」

 

静かに彼が答えた途端、モニター画面が狂ったように点滅を始めた。

 

そして、翌日。

 

サー・ナイトアイというヒーローは、この世界から消えた。

3rd舞台となる世界は?

  • 魔法少女リリカルなのは
  • 魔法少女まどか☆マギカ
  • アカメが斬る!
  • ブルーアーカイブ
  • 戦隊レッド異世界で冒険者になる
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