集中治療室は無機質な白と消毒液の匂いで満たされていた。
ピッ……ピッ……ピッ……
定期的な電子音だけが静寂を破る。
ガラス張りの室内には、無数のチューブと生命維持装置に繋がれたサー・ナイトアイが横たわっていた。
彼の右腕は添木で固定され、左胸には包帯がぐるぐると巻かれている。輸血パックが腕に刺さり、点滴スタンドは不安定なリズムで薬液を送り続けていた。
「……」
ガラス越しに見つめる俺の息が白く曇る。心拍モニターの波形が弱々しく揺れるのを見て、拳を握りしめた。
昨日までの威厳あるヒーローの姿はどこにもない。今はただ、生死の淵を彷徨う一人の人間に過ぎなかった。
「容態は安定していません」
背後から医師が告げる。白衣の裾に染み付いた血液が痛ましい。
「刺傷による臓器損傷が激しく……」
言い淀む医師の言葉が続くまでもない。緑谷くんから聞いた情報と一致している。明日まで持つかどうかもわからない。それがサー・ナイトアイの余命宣告だった。
ドアが静かに開く音がする。
集中治療室のガラス越しに見えるイータの姿に、俺は背筋に冷たいものが走るのを感じた。
黒いマントを翻しながら入室した彼女がベッドに近づくと、モニター上の心拍が一瞬だけ乱れた。
「……来たか」
嗄れた声が虚空を震わせる。サー・ナイトアイの瞼がゆっくりと開き、虚ろな瞳が天井を捉えた。呼吸器に阻まれた呻きが喉から漏れる。
「未来を見たならば分かっているはず。取引をしよう」
ベッドシーツが軋む音が静寂を破った。
「……お前が」
サー・ナイトアイの唇が震える。酸素マスクの中で吐き捨てるように紡がれた声は掠れている。
続きを語る代わりにイータが差し出した。
「悪魔の取引だな」
サー・ナイトアイの視線が鋭くなる。未来視で垣間見た結末に眉根を寄せながらも、その瞳には微かな光が宿った。
「だが……そうか」
ベッドサイドのセンサーモニターが不規則な波形を刻む。彼は乾いた唇を噛みしめた。
「それで変わる未来があるのか」
イータは何も答えず微笑んだだけだ。
サー・ナイトアイの肺が痛々しく上下する。天井を見据えながら苦悶の吐息を漏らす。
「……リスクは大きいな」
彼は覚悟を決めたように瞑目すると再び問う。
「代償は何だ」
「秘密。でも理解してるはず」
イータの言葉にサー・ナイトアイの顔が歪む。
数秒後─
「分かった」
静かに彼が答えた途端、モニター画面が狂ったように点滅を始めた。
そして、翌日。
サー・ナイトアイというヒーローは、この世界から消えた。
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