ヨーロッパの辺境にあるオセオン共和国は、裕福な国だ。首都は近代的で華やかな都市だったが、街の裏側には格差の影が濃く落ちていた。
「……こんな辺鄙な土地に潜伏しているなんて」
ゼータはオセオンシティ郊外の薄汚れた地区に立っていた。日暮れ時の路地裏は、安酒場から漏れる酔客の声と、売春婦の誘惑的な囁きで賑わっていた。
彼女の黒髪はフードで隠され、赤い瞳はサングラスに隠されていたが、それでも異国情緒溢れる美しい容貌は隠せなかった。通りすがりの男たちが彼女に注目し、卑猥な言葉を投げかけてくる。
「お嬢さん、そんな格好で一人歩きかい? 寒いだろ。一緒に暖まろうぜ」
近づいてきた酒臭い男を、ゼータは冷たく一瞥した。
「触るな」
彼女の警告に男は一瞬ひるんだが、酒の勢いでさらに近づいてきた。次の瞬間、男の体が宙に浮き、次の瞬間には壁に叩きつけられていた。男の意識は飛んでおり、通りを歩いていた数人が驚いて立ち止まった。
「次に邪魔をする奴は、壁が友達になるまで叩きつけてやる。覚えとけ」
ゼータの声は冷酷だったが、美しさが恐ろしくさえあった。
「!」
突如として街の東側から轟音が響き渡った。振り返ると遠くの橋が炎に包まれている。爆風がここまで届き、頬を焼くように熱い。
「ちっ……早速お出ましか」
直後に肌を刺すような殺気を感じる。これは訓練された暗殺者のものだ。ターゲットは……あの橋の向こうか?
躊躇はない。フードを深く被り直し、サングラスを外す。瞳が闇夜に光る。
「ツカサには後で連絡する……今はこっちが先だ」
壁を蹴り上げて屋根へ飛び移る。石畳の道よりも遥かに軽快だ。ビル群の隙間を縫うように跳躍し、風を切る音だけが耳に響く。
眼下では消防車や警察が集まり始めていたが、標的はすでに別の場所へ移動しているらしい。殺気が移動する方向に僕も滑るように追随する。
三棟目の屋上から斜めに飛び降り、着地と同時に全力でダッシュ。目の前には件の橋が燃え盛っていた。
轟音と黒煙の中、標的を捉えた。
橋梁を狙う緑衣の射手――間違いなくプロの暗殺者だ。彼女の腕は完全に変形した弓となり、弦が月明かりに妖しく光っている。明らかに通常の物理法則を越えた「個性」によるものだろう。
「お前の矢は届かない」
警告する間もなくゼータは跳躍する。狙いは正確に射手の側頭部。空中で体を捻りながら放った蹴撃が弧を描く。
「っ!」
射手は辛うじて反応した。弓と化した腕が盾のように展開され、金属質の衝撃音が夜空に響く。
「っ」
緑衣の女性が初めてこちらを認識した。マスク越しの瞳が驚愕に見開かれている。
「観察者か。邪魔をするな」
着地と同時に距離を詰め、相手の視界を封じる角度から拳を繰り出す。
「こんな街の中で物騒だねぇ、それともあんたもヒューマライズの一人かなぁ」
「…」
無言。
だが、ゼータにとって、それは答えには十分だった。
それと共にゼータは橋の方を見る。
彼女自身、鍛えている事もあり、その視線の先にいたのは、緑谷と見た事のない男性。
彼らがおり、なぜか警察に追跡されている。
緑谷の性格も知っている為、警察に追われるような事はしていない。
だからこそ、結論は。
「あそこに何かあるようだねぇ」
「避けなければいい」
ゼータの宣言に一瞬だけ眉を寄せた暗殺者。直後、彼女の右手が光り、複数の矢が分裂するように飛び出す。
鋭い叫び声と共に放たれた無数の矢が空中で蜘蛛の巣状に広がり、まるで生きた蛇のように蠢いた。
「なるほど」
避けるべきか躱すべきか迷うゼータ。その僅かな隙に矢は彼女を包囲していた。
「……!」
だが次の瞬間、矢たちが急停止する。まるで透明な壁に阻まれたように。
「何をした?」
暗殺者の問いにゼータが微笑む。
「さぁねぇ?」
その間にバイクのエンジン音が遠ざかる。風を切りながら逃げる緑衣の背中が視界から消えた。
「まぁいいさ」
彼女が橋へ目を戻す。火の粉が夜風に舞い上がる中でランドルと見知らぬ男が必死に逃げていく姿。
「さてと……」
ゼータは。
「狙ったのが彼ら。つまりは巻き込まれているという訳か」
3rd舞台となる世界は?
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