道路のライトが流れるように背後へ消えていく。排気音とエンジンの振動だけが車内に響き、窓の外は深い闇と星々。
暗殺任務では常に単独行動だったし、公共交通機関を使うことは避けてきた。
「クレイドまでまだ結構あるな」
助手席のロディがマップを見て溜息をつく。バックミラーに映る彼の顔は疲労で青ざめている。スーツケースを握りしめた指先が白くなっているのが見て取れた。
「休憩入れますか?」
後部座席の緑谷が心配そうに尋ねる。
「問題ないよ、慣れっこだし」
そう答えたのはゼータにとっての本音である。
この世界に来る以前でも旅をしていた。
そして、その時、幼かった時の事も。
「……楽しそうですね?」
緑谷の言葉に一瞬だけ呼吸が止まる。
「え?」
「なんか笑ってませんか?」
思わず自分の口角に触れた。無意識に上がっていたらしい。
「いや別に」
「そうですか? でもほら」
彼が指差したミラーの中には確かに柔らかな表情を浮かべる自分がいた。
敵の追跡を受けながら国外脱出を企てる絶体絶命の状況で「楽しい」とは。
「楽しさというより……懐かしさかな」
ゼータは前方を見据えたまま口を開いた。指先がステアリングホイールの革製カバーをそっと撫でる。
「ディケイドや馬鹿犬にイータとそれに弟と一緒にいろんな場所を巡ったことがあるんだ」
突然飛び出した名前に緑谷とロディが同時に顔を見合わせる。車内の空気が微妙に変わる。
「……ディケイドさん達と?」
緑谷が慎重に言葉を選ぶ。
「また、なんで?」
「・・・まぁ色々とあってね、私の故郷はなくなったんだ。丁度、ヒューマニズムのような奴らによってね」
「それじゃ、ゼータさんは、その」
「復讐に?まぁ、考えなかったと言ったら嘘になるよ。なんだって、家族を殺した張本人の奴らだからね」
そうして、ゼータはその事を思い出したように言う。
「これ以上の追及は野暮ですよ」
緑谷が遮るように言った。バックミラー越しの彼の目が優しく細められている。
「それに僕たちはこれから同じ目的に向かう仲間ですから」
ロディがケースを膝の上で握りしめる音が小さく響く。彼もまた言葉に出さずとも何かを感じ取ったようだ。
「……ありがとう」
ゼータの返事は短く、それでいて確かな感謝の念がこもっていた。ランプのオレンジ色の光が三人の顔を温かく照らしている。深夜のハイウェイを往く一台の車。後部座席で眠ってしまった少年と青年。運転席の女がふと笑みを浮かべる。それは追憶と決意が交錯した儚い表情だった。
道路を離れ一般道に入るころには街灯がぽつぽつと現れはじめた。車内の時計は午前三時を回っている。対向車線はほとんど空っぽで、時折大型トレーラーが唸りを上げてすれ違うのみ。路肩には枯れた雑草が夜露に濡れ光っている。
「もうすぐ検問ポイントです。迂回します」
ゼータはハンドルを切ると同時にペダルを深く踏み込む。エンジンが唸りを上げて加速する車内で眠っていたロディがびくりと起き上がる。
「さてっと、どうするか」
3rd舞台となる世界は?
-
魔法少女リリカルなのは
-
魔法少女まどか☆マギカ
-
アカメが斬る!
-
ブルーアーカイブ
-
戦隊レッド異世界で冒険者になる