ゼータの耳に異音が届いた。ダークウィザードの胸部中央、黒曜石のように艶めく宝石が不規則に明滅している。まるで心臓が鼓動を超えて痙攣しているかのように。彼女は半歩退きながらアタッシュアローを構え直した。
「……なんかおかしい」
小さな呟きは火災報知器の警報にかき消される。炎の海に浸る通路の壁で、耐火パネルがミシミシと悲鳴を上げ始めた。焦げた薬品の揮発臭が鼻腔を刺す。
「ふっ……あははっ……!」
荼毘の哄笑が途切れ途切れになる。喉が焼けたのか乾いた咳が混じる。
その時だった。ダークウィザードの黒い装甲表面に蜘蛛の巣状の亀裂が走った。亀裂の奥から蒼い炎が血のように滲み出す。粘度を持った炎が滴り落ちる音はゼータの足元まで届いた。
「はは……熱い……こんなに熱くて……痛ぇのに……!」
彼の全身を巡る血管が浮き上がり、炎に照らされて青白く透けて見える。熱に炙られた汗と血液が混ざり合う不快な臭い。ゼータは眉をひそめた。
(制御できない火だ……)
ダークウィザードが手を振るうと炎の舌が壁を舐め、備品棚の消毒液瓶が次々と破裂。アルコールの甘い香りが燃焼によって焦げ臭く変質していく。
突如として空間が歪んだ。ダークウィザードを中心とした半径3メートルが青黒い火柱に包まれる。ゼータは本能的に跳躍――床に叩きつけられた瓦礫に着地したとき、既に変貌は完了していた。
「見てろよ……これが……俺の……すべてを焼き尽くす……!」
仮面の奥で光る瞳が消えた。代わりに闇が宿る。体表を覆う黒いヒビは網目状に広がり、その隙間から蒼炎が間欠泉のように噴き上がっている。背中からは炎で形成された翼が不規則に揺れている。
その姿はまるで復讐の記憶が具現化した怪物だった。幼い日の冷遇が炎となり、父への憎悪が黒いヒビとなり、社会の抑圧が翼の形で背後に広がる。荼毘の理性は今や灼熱の中心核に封じ込められ、怒りだけが燃料となって機械のように動作していた。
「ふふ……全部……灰にする……あいつの居場所も……ヒーローの居場所も……!」
炎の轟音に紛れて彼の独り言が響く。言葉と感情が乖離した危うい均衡。ゼータの額に汗が流れる。
(このままでは施設全域が炎上する……)
そう考えていた時。
「ガァァ!」「っ」
聞こえた音と共に眼を向けると、そこには。
「イータ、それに馬鹿犬」
「あぁゼータ!なんでデルタだけ馬鹿って言うですか!」
「やっほぉ、ゼータ」
そこには、既に仮面ライダーへと変身していたデルタとイータがいた。
「・・・まぁ、良いか」
それと共に、ゼータは仮面の下で笑みを浮かべながらも、構える。
この絶望的状況を打開する為に。
3rd舞台となる世界は?
-
魔法少女リリカルなのは
-
魔法少女まどか☆マギカ
-
アカメが斬る!
-
ブルーアーカイブ
-
戦隊レッド異世界で冒険者になる