薄闇の中で創世王が蠢く。歪に肥大した胸部が不規則に膨張し、肋骨の隙間から漏れる微かな唸りが、まるで絞り出される断末魔のようだった。喉奥で何かが燃焼する音――燃料タンクが破裂したような破裂音とともに紫煙が噴き出す。その瞬間、空気が灼ける。皮膚に焼けつくような刺激を感じた。
その瞳に、俺は知っている。
(……弔)
その単語が頭蓋の奥で爆発する。
死柄木弔。かつては歪みながらも独自の美学を持って生きようとしていた青年。彼が抱えていた矛盾も絶望も知っている。それが今、この怪物に置き換えられている。
俺の拳を握る力が増した。
掌の内側で爪が皮膚を抉る。痛みは遠く霞み、代わりに心臓が鉄の塊になったような鈍痛が胸郭を満たす。熱いものが喉奥でわだかまる。
(許さない)
思考が沸騰する。論理的な判断能力が溶解していく。目の前に立つオール・フォー・ワンの背中に向けて、渦巻く感情が溢れ出す。憎悪ではなく、もっと根源的で原始的な怒り。それは彼が人間を弄ぶ行為そのものに対するものだった。
オール・フォー・ワンが振り返り、薄笑いを浮かべた。
「美しいだろう?私が手塩にかけて育てた……最高傑作だよ」
その声は甘く響き渡る。
「弔には僕の後継者として、立派に育って欲しかったからね。君もヒーローの弟子を持っているんだろう」
その言葉がトリガーになった。
(後継者?冗談じゃない)
轟はまだ知らない。師として俺がどんな苦悩を抱えているかなど想像もつかないだろう。いや、それでいい。彼は純粋な意志で前に進んでほしかった。だからこそ、その背中にこんな穢れたものを刻み付けられたことが我慢ならない。
胸の奥から灼熱の塊が込み上げてくる。血管を焼けた鉄が巡るように、激しい熱量が体中を貫く。
視界が歪み、色彩が濃くなる。赤が主張し、灰色だった世界が禍々しく彩られていく。
オール・フォー・ワンの笑みが、歪な嘲笑に見える。
(こいつだけは許せない)
その思いが思考を焼き尽くす。理性の堤防が決壊し、怒涛のような感情が流れ込んでくる。
怒り。憤怒。憎悪。あらゆる負の感情が混ざり合い、圧倒的なエネルギーとなって体内を暴れ回る。
「お前だけは……」
声が震えた。絞り出すように唇から零れた言葉は、自分でも制御できないほど低く響く。
オール・フォー・ワンの顔色が微かに変わった。
彼は一瞬だけ眼を見開き、その視線が俺の胸元へ落ちる。
気づいたのだ。
『KAMEN RIDE DECADE』
ベルトから異形の警告音が鳴り響く。
変身ベルトに宿る何かが反応している。
今までにない現象だった。
俺の全身から闘気が渦巻き始めた。
肌の表面が逆立つ。服の下で筋肉が盛り上がるような感覚がある。
(違う)
これはただの怒りじゃない。
何か別の力が芽生えようとしている。
理性の欠片が最後に抵抗する。これ以上の変化は危険だと警告する。
しかし怒りはそれを一瞬で踏み潰した。
もう止まれない。
普段は緑色の光彩を放つはずのそれが──今、鮮やかなエメラルドグリーンに変色していく。
同時に額にある小さなパーツが発光を始めた。黄色だったそれが紫色の妖しい光を帯びる。
「くくっ、それではヒーローじゃなくて、悪魔じゃないか、ディケイド」
そう、俺に向けて言う。
けれど。
「俺はヒーローじゃない。通りすがりの仮面ライダーだ」
3rd舞台となる世界は?
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