悪魔と呼ばれ慣れて 2nd   作:ボルメテウスさん

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守るべき場所

……最悪だ。

 

光が収まって視界が戻った瞬間、俺は息を呑んだ。

目の前に広がったのは、見間違えようのない――雄英高校のグラウンド。

 

訓練で何度も走り回った地面の固さ、朝練の湿った匂い、風の流れ。

全部、体が覚えている。

 

(ここに転移したのかよ……!?)

 

オール・フォー・ワンの野郎。

負けが見えた途端に、俺たちを“ここ”へ連れてきやがった。

狙いが何かなんて、考えなくてもわかる。

 

雄英なら――ヒーロー科も他学科も、夜でも教師や上級生が残っていることがある。

見知った奴ら、同級生、後輩、顔を合わせた人間が山ほどいる。

 

そんな場所に、激情態のこいつと創世王を連れてきたんだ。

 

(……まずい。まずすぎる。)

 

身体が勝手に強張る。

戦闘の緊張とは違う、もっと底の方で冷えるやつ。

 

俺は雄英の生徒だった。

ヒーロー科じゃないが、共同訓練も、救助演習も、みんなと肩を並べてやってきた。

 

部活も委員会も、揉め事も、大変なことも……色々あった。

多分、あいつらは今でも“ツカサ先輩”なんて気軽に声をかけてくるだろう。

 

それなのに――

 

(ここでアイツらを巻き込んだら……俺は二度と、雄英の誰とも笑って話せねえ。)

 

激情態の紫の光が、すぐ近くで揺れている。

あいつはもう爆発寸前だ。

弔を伴った創世王の異形も、まるでこの場所を蹂躙するのを楽しみにしているかのように、低く唸っていた。

 

オール・フォー・ワンだけが、悪夢の中心で呑気に笑っている。

 

「ヒーローの母校。思い出深い場所だろう? ねえ、ツカサくん」

 

ぞわり、と背筋が逆立つ。

知ってやがる。わざと名前を呼んできやがる。

 

(こいつ……完全に狙ってるな。)

 

俺と創世王、そして激情態。

この3つの戦力を雄英に叩き込めば、どれだけの被害が出るか――

 

オール・フォー・ワンがそれを理解していないはずがない。

 

だからこそ笑ってるんだ。

俺の“ためらい”を利用して、戦いに制限をかけようとしている。

 

(……最低の野郎だ。)

 

雄英の生徒は、ヒーローの卵だ。

鍛えられてはいるが、それでも今ここで起きる戦闘は規格外だ。

あいつらが来たら、確実に巻き込まれる。

 

もし、もしも――

 

(誰かが死んだら……俺は絶対に自分を許せない。)

 

手が震える。

怒りじゃない。恐怖だ。

 

ここで戦うことの恐ろしさ。

そして、俺自身がそれを止められないことの恐ろしさ。

 

焦げるような低い声。

 

でも、俺は下がれない。

ここにいるのは俺の“帰る場所”だった場所だ。

 

(ここで戦ったら……何かが完全に終わる。)

 

だから――なんとかして止めなきゃならない。

 

たとえ、オール・フォー・ワンが嘲笑っていても。

たとえ、激情態が限界に達していても。

たとえ、創世王の異形がこの校舎を破壊するつもりでも。

 

俺は――

 

「……絶対に、ここで誰も傷つけさせねえ。」

 

小さく呟いたその声は、震えていた。

けれど、自分の中の決意は、その震えを押し潰すほどに強く燃えていた。

 

黒いカードがスキャンされるのが見えた瞬間、背筋がひやりとした。

 

『KAMENRIDE RYUGA』

 

 ヤバい。よりにもよって、そっちかよ。

 

 黒炎の龍が咆哮し、ダークディケイド──いや、もう“オール・フォー・ワン”と呼ぶべきか──その身体を包んだ。次の瞬間には漆黒の龍騎、リュウガがそこに立っていた。

 

 しかも、ただのリュウガじゃない。やつの“個性”が混ざったリュウガだ。嫌な予感しかしなかった。

 

『ATTACKRIDE STRIKE VENT』

 

 黒炎をまとったドラグブラッカーの爪が伸縮し、その軌道がまるで俺の未来を読むみたいに変則的に曲がる。──ああ、読心系の個性まで混ぜてやがる。

 

「くっ──!」

 

 俺はとっさに別のカードをスキャンした。

 

『ATTACKRIDE BLAST』

 

 ディエンドのブラスターを展開しながら、身を捻って龍爪を弾く。だが完全には受け切れない。肩の装甲が一枚、斜めに裂けた。

 

 痛みはないけど、嫌でも分かる。俺は“ディケイド”になれても、あれは“ダークディケイド + AFO”だ。相性が最悪すぎる。

 

『KAMENRIDE DARKKABUTO』

 

 空気が震えた。次の瞬間、視界からあいつの姿が消える。

 

 来る──クロックアップだけじゃない。空気圧そのものを操る個性で、周囲の流れまで歪められている。

 

『ATTACKRIDE CLOCK UP』

 

 俺も速度領域に入る。だが、同じ次元に入った瞬間思い知った。

 

 速すぎる。

 ダークカブトの加速に、個性の“高速化”が重なってる。

 

 残像が四つ……いや六つ?

 並列思考の個性も混ぜてやがるのか。

 

「やりすぎなんだよ……ッ!」

 

 俺はアギトのカードを抜いた。

 

『ATTACKRIDE FLAME』

 

 炎のカバーが俺の腕を包む。高速すぎて見えない斬撃に、炎で軌道を読んで迎撃する。

 それでも、胸の装甲が深く抉られた。

 

 さらに、あいつはカードを変える。

 

『KAMENRIDE DARKKIVA』

 

 重々しい鎧が轟きとともに組み上がる。周囲の空気が震えた。いや、震わせてるのか。音波系の個性が混ざってる。

 

『ATTACKRIDE BASHER』

 

 ただのキックやパンチじゃない。

 振り下ろす拳が「音圧」で衝撃波を生む。

 硬化の個性が加わり、黒い鎧はまるで岩盤みたいに重くなる。

 

 飛んできた音圧だけで、地面が波打った。

 

 俺はクウガのカードを構える。

 

『ATTACKRIDE MIGHTY』

 

 キックで衝撃波を相殺するが、装甲がまた一枚砕け飛んだ。

 

 脚が、そろそろ限界を訴え始めていた。

 装甲は割れ、内部フレームが露出した箇所もある。腕を上げる度に、ぎし、と嫌な音がする。

 

 それでも──退けねぇ。

 ここを通せば、雄英が……後輩たちが……終わる。

 

 俺はもう一度カードを握りしめた。

 ただ、その瞬間だった。

 

『KAMENRIDE DARKKIVA』

 

 黒い鎧が音圧を纏い、オール・フォー・ワンがこちらへ跳びかかる。

 音の壁が押し寄せ、世界が歪んだみたいに震える。

 

 ──来る。

 

 避けられない。

 武器も間に合わねぇ。

 

 そう思った瞬間だった。

 

 バキバキバキッッ!!

 

 俺の目の前に、突如として巨大な氷壁がせり上がった。

 爆音のように空間が凍りつき、ダークキバの拳が氷に食い込む。

 

 氷越しに、鈍い衝撃が伝わってくる。

 でも……俺は無事だった。

 

「おっと……助かった、のか……?」

 

 氷壁の向こうから、聞き慣れた声が返ってきた。

 

「──遅れてすみません、師匠」

 

 その呼び名に、思わず俺は肩を落とす。

 

「……マジでやめねぇ? その呼び方」

 

 氷壁が割れ、冷気を纏った轟が姿を現した。

 あいつは俺のボロボロの姿を見るや、眉を僅かに寄せた。

 

「このまま戦えば、あなたが先に倒れます」

 

「そう見えるか?」

 

「はい。師匠の顔、つぶれたカブトムシみたいになってます」

 

「例えが酷いなお前!」

 

 思わずツッコむが、立ってるのもキツい俺より、轟の目は真っすぐ敵を見据えていた。

 炎の熱と氷の冷気、その両方が噴き上がる。

 

「俺の師匠を、これ以上傷つけさせはしません」

 

 ──ああ、こいつ。

 ほんと、俺が教えた以上のヒーローになっちまったな。

 

 背後では、オール・フォー・ワンの声が響く。

 

「弟子……? なるほど。では“師弟まとめて”消して差し上げましょう」

 

 黒いオーラを纏うダークキバが再び拳を構える。

 

 轟は半歩前に出て、俺を庇うように腕を広げた。

 

「師匠。ここからは──俺が戦います」

 

 その背中は、氷よりも炎よりも、ずっと頼もしく見えた。

3rd舞台となる世界は?

  • 魔法少女リリカルなのは
  • 魔法少女まどか☆マギカ
  • アカメが斬る!
  • ブルーアーカイブ
  • 戦隊レッド異世界で冒険者になる
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