悪魔と呼ばれ慣れて 2nd   作:ボルメテウスさん

185 / 193
ヒーローが背負う物

 氷の壁が崩れ、その奥から轟が歩み出た瞬間──

 俺は思わず声を荒げた。

 

「轟! ここは危険だ、すぐ避難──」

 

「──嫌です」

 

「……は?」

 

 いつも冷静なあいつが、ほとんど即答だった。

 

「師匠だけに戦わせて、自分だけ逃げるなんて……俺の“ヒーロー像”ではありません」

 

「いや、お前な……相手はオール・フォー・ワンだぞ? しかもダークディケイドの力まで使って──」

 

「知っています。だからこそ、です」

 

 轟は俺の前に半歩出て、俺を守るように肩を広げた。

 背中越しに、炎の熱と氷の冷気が同時に伝わる。

 

「俺は、あなたに教わったんです。“ヒーローは、誰かが立てないなら代わりに立つべきだ”って」

 

「そんなこと……言ったっけか」

 

「言いました。寮の前で。俺が父のことで迷っていた時」

 

「……あ〜……あの時か……」

 

 たしかに、言った。

 本人にこんな形で返されるとは思ってなかったが。

 

 轟は淡々と続ける。

 

「逃げろと言われても、師匠が倒れたままの状況を……俺は、受け入れられません」

 

「轟、これは師匠とか弟子とかの話じゃない。命が──」

 

「それこそです」

 

 言葉が鋭く、しかし迷いがない。

 

「俺は雄英を卒業した“プロヒーロー”です。

 ここで戦わない理由はありません。

 そして……師匠を見殺しにする理由もありません」

 

 ──痛いところ突くじゃねぇか。

 

 俺が黙り込んだのを見て、轟は一度だけ振り返り、目を細めた。

 

「安心してください。俺は死にません。

 あなたの弟子ですから」

 

「お前な……そういう言い方は反則だろ……」

 

 向こうでは、オール・フォー・ワンが黒い炎を纏いながら笑っている。

 

 轟が前へ出て、炎と氷を同時に放とうとしたその時──

 俺たちの背後で風が揺れた。

 

「まったく……お前は昔から無茶しかしねぇな、門矢」

 

 聞き慣れすぎた低い声。

 振り返ると、黒いマスクの男──相澤消太が歩いてきた。

 

「相澤先生……!」

 

「“先生”はやめろ。もうお前は卒業生だろうが」

 

 そう言いながらも、口調にどこか懐かしさが混じっている。

 さらに、プレゼント・マイク、ミッドナイト、セメントス、スナイプ……

 お馴染みの教師陣が続々と姿を現した。

 

「お〜っと! 門矢じゃないか! 元気に殴られてるねェ!!」

「ここまでボロボロになって……あなた、相変わらず無茶するわねぇ?」

「状況は理解している。対応する」

 

 教師陣の声が次々飛んでくる。

 思わず俺は顔を覆った。

 

「なんでみんな来てんだよ……!? 危険だぞ!」

 

「馬鹿言うなよツカサくん!」とマイク。

「ここは“雄英”だぜ? 教師が戦わないでどうするんだよ!」

 

 そして相澤が俺の肩を掴んだ。

 

「それに──轟が動いた理由、考えたことあるか?」

 

「理由……?」

 

「お前の弟子だからだ。

 ツカサ、お前と同じで頑固だ。言っても聞かんタイプだ」

 

 ……言い返せない。

 先生は続けた。

 

「いいか門矢。お前が誰かを守りたいように、

 あいつらも“誰かを守りたい”んだ。

 その対象に……お前が入ってるってだけだ」

 

「……俺を……?」

 

「そういうことだ。教師としても、だ。

 元教え子が死にかけてるのに、見て見ぬふりなどできん」

 

 その言葉は、不意に胸を刺した。

 卒業して何年も経つのに、まだ“守られて”いるなんて思いもしなかった。

 

「……相澤先生」

 

「礼は戦いが終わってからにしろ。今は──」

 

 相澤はゴーグルを下ろした。

 

「お前の背中は、俺たちが守る。

 前を見て戦え、門矢」

 

 轟も横から軽く言葉を添える。

 

「師匠。あなたは一人じゃありません」

 

 ……ったく。

 なんでこう、俺の周りは勝手に背負いたがる奴ばかりなんだ。

 

 でも──悪くはない。

 

それと共に、変身は解除された。

けれど。

 

 俺はため息をつき、ゆっくりと歩み出た。

 

「……オール・フォー・ワン。お前さ」

 

 その名を口にすると、奴の気配がぴたりと揺れた。

 

「なぁ、ひとつ教えてやるよ。

 “弱い”の意味が分かってないのは──お前の方だ」

 

「……ほう?」

 

 俺は指で自分の胸を叩き、続けた。

 

「ヒーローが弱い? 馬鹿か。

 自分より強ぇ敵がいても、それでも歩くから“ヒーロー”なんだよ」

 

 さらに教師陣と轟へ視線を向ける。

 

「アイツらは、痛くても怖くても立つ。

 生徒のために、仲間のために、目の前の誰かのために。

 ……その姿勢だけで、お前なんかとは比べ物になんねぇんだよ」

 

 オール・フォー・ワンが不快そうに顔を歪める。

 

「詭弁だ。結果がすべて──」

 

「結果だけを欲しがって、何も背負わねぇ奴が偉そうに語るんじゃねぇ!」

 

 一歩踏み込み、奴に指を突きつけた。

 

「お前は奪うだけ。壊すだけ。

 そこに責任も、覚悟もねぇ。

 “強さ”ってのはな──背負ったものの数で決まるんだよ」

 

 俺の声は自然と大きくなり、地面に響いた。

 

「俺も、轟も、先生たちも、ここにいるみんなも……

 倒れたって立ち上がる。何度でも。

 ──それがヒーローだ」

 

 そして、決定打を放った。

 

 傷だらけの手でしっかりと握りしめて、

 奴の真正面へとぐっと構える。

 

「俺が……何者かだって?」

 

 オール・フォー・ワンの視線が僅かに揺れた。

 

 その瞬間、胸の奥でスイッチが入った。

 

「通りすがりの――」

 

 ライバーを腰に装着し、

 カードを一枚指で弾いて掲げる。

 

「仮面ライダーだ」

 

 風が巻き起こり、コートがはためく。

 

 そして──振り返らずに言い放つ。

 

「覚えておけ」

 

 カードを勢いよくスロットへと差し込む。

 

 『KAMEN RIDE――DECADE!!』

 

 光の柱が爆ぜ、桜色の紋章が広がる。

 視界を染め上げる光の中で装甲が展開し、

 俺は再び“あの姿”へと立ち戻った。

 

 仮面ライダーディケイド──として。

 

3rd舞台となる世界は?

  • 魔法少女リリカルなのは
  • 魔法少女まどか☆マギカ
  • アカメが斬る!
  • ブルーアーカイブ
  • 戦隊レッド異世界で冒険者になる
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。