氷の壁が崩れ、その奥から轟が歩み出た瞬間──
俺は思わず声を荒げた。
「轟! ここは危険だ、すぐ避難──」
「──嫌です」
「……は?」
いつも冷静なあいつが、ほとんど即答だった。
「師匠だけに戦わせて、自分だけ逃げるなんて……俺の“ヒーロー像”ではありません」
「いや、お前な……相手はオール・フォー・ワンだぞ? しかもダークディケイドの力まで使って──」
「知っています。だからこそ、です」
轟は俺の前に半歩出て、俺を守るように肩を広げた。
背中越しに、炎の熱と氷の冷気が同時に伝わる。
「俺は、あなたに教わったんです。“ヒーローは、誰かが立てないなら代わりに立つべきだ”って」
「そんなこと……言ったっけか」
「言いました。寮の前で。俺が父のことで迷っていた時」
「……あ〜……あの時か……」
たしかに、言った。
本人にこんな形で返されるとは思ってなかったが。
轟は淡々と続ける。
「逃げろと言われても、師匠が倒れたままの状況を……俺は、受け入れられません」
「轟、これは師匠とか弟子とかの話じゃない。命が──」
「それこそです」
言葉が鋭く、しかし迷いがない。
「俺は雄英を卒業した“プロヒーロー”です。
ここで戦わない理由はありません。
そして……師匠を見殺しにする理由もありません」
──痛いところ突くじゃねぇか。
俺が黙り込んだのを見て、轟は一度だけ振り返り、目を細めた。
「安心してください。俺は死にません。
あなたの弟子ですから」
「お前な……そういう言い方は反則だろ……」
向こうでは、オール・フォー・ワンが黒い炎を纏いながら笑っている。
轟が前へ出て、炎と氷を同時に放とうとしたその時──
俺たちの背後で風が揺れた。
「まったく……お前は昔から無茶しかしねぇな、門矢」
聞き慣れすぎた低い声。
振り返ると、黒いマスクの男──相澤消太が歩いてきた。
「相澤先生……!」
「“先生”はやめろ。もうお前は卒業生だろうが」
そう言いながらも、口調にどこか懐かしさが混じっている。
さらに、プレゼント・マイク、ミッドナイト、セメントス、スナイプ……
お馴染みの教師陣が続々と姿を現した。
「お〜っと! 門矢じゃないか! 元気に殴られてるねェ!!」
「ここまでボロボロになって……あなた、相変わらず無茶するわねぇ?」
「状況は理解している。対応する」
教師陣の声が次々飛んでくる。
思わず俺は顔を覆った。
「なんでみんな来てんだよ……!? 危険だぞ!」
「馬鹿言うなよツカサくん!」とマイク。
「ここは“雄英”だぜ? 教師が戦わないでどうするんだよ!」
そして相澤が俺の肩を掴んだ。
「それに──轟が動いた理由、考えたことあるか?」
「理由……?」
「お前の弟子だからだ。
ツカサ、お前と同じで頑固だ。言っても聞かんタイプだ」
……言い返せない。
先生は続けた。
「いいか門矢。お前が誰かを守りたいように、
あいつらも“誰かを守りたい”んだ。
その対象に……お前が入ってるってだけだ」
「……俺を……?」
「そういうことだ。教師としても、だ。
元教え子が死にかけてるのに、見て見ぬふりなどできん」
その言葉は、不意に胸を刺した。
卒業して何年も経つのに、まだ“守られて”いるなんて思いもしなかった。
「……相澤先生」
「礼は戦いが終わってからにしろ。今は──」
相澤はゴーグルを下ろした。
「お前の背中は、俺たちが守る。
前を見て戦え、門矢」
轟も横から軽く言葉を添える。
「師匠。あなたは一人じゃありません」
……ったく。
なんでこう、俺の周りは勝手に背負いたがる奴ばかりなんだ。
でも──悪くはない。
それと共に、変身は解除された。
けれど。
俺はため息をつき、ゆっくりと歩み出た。
「……オール・フォー・ワン。お前さ」
その名を口にすると、奴の気配がぴたりと揺れた。
「なぁ、ひとつ教えてやるよ。
“弱い”の意味が分かってないのは──お前の方だ」
「……ほう?」
俺は指で自分の胸を叩き、続けた。
「ヒーローが弱い? 馬鹿か。
自分より強ぇ敵がいても、それでも歩くから“ヒーロー”なんだよ」
さらに教師陣と轟へ視線を向ける。
「アイツらは、痛くても怖くても立つ。
生徒のために、仲間のために、目の前の誰かのために。
……その姿勢だけで、お前なんかとは比べ物になんねぇんだよ」
オール・フォー・ワンが不快そうに顔を歪める。
「詭弁だ。結果がすべて──」
「結果だけを欲しがって、何も背負わねぇ奴が偉そうに語るんじゃねぇ!」
一歩踏み込み、奴に指を突きつけた。
「お前は奪うだけ。壊すだけ。
そこに責任も、覚悟もねぇ。
“強さ”ってのはな──背負ったものの数で決まるんだよ」
俺の声は自然と大きくなり、地面に響いた。
「俺も、轟も、先生たちも、ここにいるみんなも……
倒れたって立ち上がる。何度でも。
──それがヒーローだ」
そして、決定打を放った。
傷だらけの手でしっかりと握りしめて、
奴の真正面へとぐっと構える。
「俺が……何者かだって?」
オール・フォー・ワンの視線が僅かに揺れた。
その瞬間、胸の奥でスイッチが入った。
「通りすがりの――」
ライバーを腰に装着し、
カードを一枚指で弾いて掲げる。
「仮面ライダーだ」
風が巻き起こり、コートがはためく。
そして──振り返らずに言い放つ。
「覚えておけ」
カードを勢いよくスロットへと差し込む。
『KAMEN RIDE――DECADE!!』
光の柱が爆ぜ、桜色の紋章が広がる。
視界を染め上げる光の中で装甲が展開し、
俺は再び“あの姿”へと立ち戻った。
仮面ライダーディケイド──として。
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