悪魔と呼ばれ慣れて 2nd   作:ボルメテウスさん

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原典:

 変身が終わった、その刹那だった。

 オール・フォー・ワンが一切の躊躇もなく腕を振る。

 

 空気が歪み、視界が揺れた。

 衝撃波、重力操作、圧縮された風圧――複数の個性が波のように重なって押し寄せてくる。

 

(早い……!)

 

 反応する暇すら与えない連続攻撃。

 まるで一つの個性が終わる前に、次の個性が上書きされていく感覚だ。

 

 地面が抉れ、瓦礫が弾丸のように飛ぶ。

 防御の隙間を狙った衝撃が、装甲越しに骨を揺らした。

 

「……上等だ」

 

 俺は踏み込み、迫る波を正面から見据える。

 ここで退けば、全員が呑まれる。

 俺が踏み出そうとした瞬間、轟が一歩前に出た。

 

「ここは――俺が行きます」

 

 その声に、迷いはない。

 次の瞬間、緑の疾風が爆ぜ、轟の背後でオーラが牙を剥いた。

 押し寄せる個性の波。

 重力、衝撃、圧縮――それらが束になって轟へ叩きつけられる。

 

 だが、轟は動じない。

 

 右手で炎を解き放ち、衝撃波を焼き切る。

 左手で氷を展開し、重力の歪みを凍結させる。

 そして、サイクロンの加速が二つの属性を回転させ、攻撃そのものを相殺していく。

 

(……なるほどな)

 

 二つの個性を同時に操ってきたからこそできる芸当。

 炎と氷の切り替えではない。同時制御だ。

 アルティメットバイスの衝動が出力を底上げし、エクストリームの解析が最適解を示す。

 

 個性の波は、轟に触れる前に崩れ、霧散していった。

 

 オール・フォー・ワンが、わずかに目を細める。

 

「……ほう」

 

 轟は一歩も退かず、地に足をつけたまま言い放つ。

 

「二つを扱うのは、今さらだ」

 

 炎と氷、疾風と極光が交錯する中で、

 俺は確信した。

 

 ――こいつは、もう守られる側じゃない。

 並んで戦う、ヒーローだ。

 

 俺は拳を握り、次の一手を見据えた。

 轟が攻撃を相殺した、その一瞬の隙。

 俺は迷わず踏み込んだ。

 

 サイクロンの加速が視界を歪め、距離が一気に潰れる。

 オール・フォー・ワンが腕を伸ばす――個性を奪うための動きだと、直感で分かった。

 

(……無駄だ)

 

 その手が触れる直前、俺は身体を沈める。

 世界を渡り歩いてきた俺にとって、“個性”は絶対的な力じゃない。

 この力は、世界そのものが違う。

 

 肘。

 掌底。

 膝蹴り。

 

 無駄のない連打が、正確に急所を打ち抜く。

 それはオールマイトのような圧倒的パワーではない。

 相手の重心と呼吸を読み切った、徹底した格闘術だ。

 

「ぐっ……!」

 

 オール・フォー・ワンの体勢が崩れる。

 奪えない。触れても、何も引き抜けない。

 焦りが、その動きを鈍らせた。

 

 俺は踏み込み、肩越しに拳を叩き込む。

 装甲越しでも、確かな手応えがあった。

 

「悪いな」

 

 耳元で低く告げる。

 

「俺は――通りすがりの仮面ライダーだ」

 

 世界の理屈が違う以上、

 お前の“絶対”は、ここでは通じない。

 

 後退するオール・フォー・ワンを見据える。

 オール・フォー・ワンが後退し、地面に膝をついた。

 放とうとした個性は、どれも形を成さない。

 重力も、衝撃も、奪う力すら――すべてが沈黙している。

 

「……なぜだ……!」

 

 焦燥が、その声に滲んだ。

 両腕を振り回し、力を引き出そうとするが、何も起きない。

 

「力が……もっと力が必要だ……!!」

 

 喉を裂くような叫び。

 それは支配者の怒号ではなく、渇望に縋る哀れな叫びだった。

 

 俺は静かに構える。

 

(もう分かってるはずだ)

 

 ここでは、

 奪う力も、積み重ねた個性も――通じない。

 

 残されたのは、

 己が何者であるかという問いだけだ。

 次の瞬間、轟が踏み込んだ。

 

 緑の疾風が爆ぜ、炎と氷が螺旋を描く。

 アルティメットバイスの衝動とサイクロンジョーカーエクストリームの加速が完全に噛み合った一撃だった。

 

「終わりだ!」

 

 轟の拳が、オール・フォー・ワンの腹部を正確に捉える。

 衝撃は一点に凝縮され、遅れて爆発した。

 

 音が消え、次の瞬間――

 オール・フォー・ワンの身体が宙を舞った。

 

 抵抗する術もなく、

 ただ真上へ。

 

 雲を突き抜け、空気を引き裂きながら、

 その姿はみるみる小さくなっていく。

 

(……これが、答えだ)

 

 俺は空を見上げ、静かに息を吐いた。

 

轟の一撃で、オール・フォー・ワン――ダークディケイドの身体が天高く吹き飛ばされた。

 俺はその軌道を見据えながら、静かに息を整える。

 

 緑と黒の極光が霧散し、装甲が分解されていく。

 再構築されるのは、俺の原点。

 

 仮面ライダーディケイド。

 

 腰のドライバーに、最後の一枚を装填する。

 この一撃で、すべてを終わらせる。

 

『FINAL ATTACK RIDE

 DE-DE-DE-DECADE!』

 

 空間に、複数のカードが一直線に並ぶ。

 世界と世界の境界が、刃のように立ち上がる。

 

 俺は走り出した。

 一枚、二枚、三枚――

 カードを通過するたび、脚部に圧倒的な力が集束していく。

 

 その時。

 

「終わらせるのは……私だァ!!」

 

 空中で体勢を立て直したダークディケイドが、同じ動作を取る。

 歪んだディケイドの装甲が軋み、彼の前にもカードが展開された。

 

『FINAL ATTACK RIDE

 DE-DE-DE-DECADE!』

 

 ――ダークディケイド。

 

 奪い、歪め、上書きした力の集合体。

 だが、同じ技だからこそ分かる。

 

(中身が違う)

 

 互いに跳躍。

 互いに放つ、ライダーキック。

 

 衝突の瞬間、空間が爆ぜた。

 衝撃波が球状に広がり、雲が引き裂かれる。

 大気が悲鳴を上げ、視界が白に染まる。

 

「力が……力が足りないだとォォッ!!」

 

 ダークディケイドの叫びは、渇望そのものだった。

 奪い続けなければ立っていられない、空虚な力。

 

(違う)

 

 俺は歯を食いしばり、さらに踏み込む。

 この力は、旅の中で積み重ねてきた答えだ。

 

 カードが砕け、光が弾ける。

 二つのキックがせめぎ合い、空中で拮抗する。

 

 ――そして、均衡が崩れた。

 

 ディケイドの脚部から放たれた衝撃が、

 ダークディケイドの蹴りを正面から押し潰す。

 

「な……ッ!?」

 

 悲鳴と共に、歪な装甲が砕け散る。

 ダークディケイドの姿が、光の中で崩壊していく。

 

 俺のライダーキックが、そのまま貫いた。

 

 轟音。

 閃光。

 すべてを飲み込む、決着の爆発。

 

 ダークディケイド――オール・フォー・ワンの存在は、

 光の彼方へと吹き飛ばされ、完全に消滅した。

 

 静寂。

 

 俺は地に着地し、ゆっくりと立ち上がる。

 

「……覚えておけ」

 

 空に向かって、静かに告げる。

 

「俺は――通りすがりの仮面ライダーだ」

 

 それでいい。

 それが、旅を続けてきた俺の答えだ。

 

3rd舞台となる世界は?

  • 魔法少女リリカルなのは
  • 魔法少女まどか☆マギカ
  • アカメが斬る!
  • ブルーアーカイブ
  • 戦隊レッド異世界で冒険者になる
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