変身が終わった、その刹那だった。
オール・フォー・ワンが一切の躊躇もなく腕を振る。
空気が歪み、視界が揺れた。
衝撃波、重力操作、圧縮された風圧――複数の個性が波のように重なって押し寄せてくる。
(早い……!)
反応する暇すら与えない連続攻撃。
まるで一つの個性が終わる前に、次の個性が上書きされていく感覚だ。
地面が抉れ、瓦礫が弾丸のように飛ぶ。
防御の隙間を狙った衝撃が、装甲越しに骨を揺らした。
「……上等だ」
俺は踏み込み、迫る波を正面から見据える。
ここで退けば、全員が呑まれる。
俺が踏み出そうとした瞬間、轟が一歩前に出た。
「ここは――俺が行きます」
その声に、迷いはない。
次の瞬間、緑の疾風が爆ぜ、轟の背後でオーラが牙を剥いた。
押し寄せる個性の波。
重力、衝撃、圧縮――それらが束になって轟へ叩きつけられる。
だが、轟は動じない。
右手で炎を解き放ち、衝撃波を焼き切る。
左手で氷を展開し、重力の歪みを凍結させる。
そして、サイクロンの加速が二つの属性を回転させ、攻撃そのものを相殺していく。
(……なるほどな)
二つの個性を同時に操ってきたからこそできる芸当。
炎と氷の切り替えではない。同時制御だ。
アルティメットバイスの衝動が出力を底上げし、エクストリームの解析が最適解を示す。
個性の波は、轟に触れる前に崩れ、霧散していった。
オール・フォー・ワンが、わずかに目を細める。
「……ほう」
轟は一歩も退かず、地に足をつけたまま言い放つ。
「二つを扱うのは、今さらだ」
炎と氷、疾風と極光が交錯する中で、
俺は確信した。
――こいつは、もう守られる側じゃない。
並んで戦う、ヒーローだ。
俺は拳を握り、次の一手を見据えた。
轟が攻撃を相殺した、その一瞬の隙。
俺は迷わず踏み込んだ。
サイクロンの加速が視界を歪め、距離が一気に潰れる。
オール・フォー・ワンが腕を伸ばす――個性を奪うための動きだと、直感で分かった。
(……無駄だ)
その手が触れる直前、俺は身体を沈める。
世界を渡り歩いてきた俺にとって、“個性”は絶対的な力じゃない。
この力は、世界そのものが違う。
肘。
掌底。
膝蹴り。
無駄のない連打が、正確に急所を打ち抜く。
それはオールマイトのような圧倒的パワーではない。
相手の重心と呼吸を読み切った、徹底した格闘術だ。
「ぐっ……!」
オール・フォー・ワンの体勢が崩れる。
奪えない。触れても、何も引き抜けない。
焦りが、その動きを鈍らせた。
俺は踏み込み、肩越しに拳を叩き込む。
装甲越しでも、確かな手応えがあった。
「悪いな」
耳元で低く告げる。
「俺は――通りすがりの仮面ライダーだ」
世界の理屈が違う以上、
お前の“絶対”は、ここでは通じない。
後退するオール・フォー・ワンを見据える。
オール・フォー・ワンが後退し、地面に膝をついた。
放とうとした個性は、どれも形を成さない。
重力も、衝撃も、奪う力すら――すべてが沈黙している。
「……なぜだ……!」
焦燥が、その声に滲んだ。
両腕を振り回し、力を引き出そうとするが、何も起きない。
「力が……もっと力が必要だ……!!」
喉を裂くような叫び。
それは支配者の怒号ではなく、渇望に縋る哀れな叫びだった。
俺は静かに構える。
(もう分かってるはずだ)
ここでは、
奪う力も、積み重ねた個性も――通じない。
残されたのは、
己が何者であるかという問いだけだ。
次の瞬間、轟が踏み込んだ。
緑の疾風が爆ぜ、炎と氷が螺旋を描く。
アルティメットバイスの衝動とサイクロンジョーカーエクストリームの加速が完全に噛み合った一撃だった。
「終わりだ!」
轟の拳が、オール・フォー・ワンの腹部を正確に捉える。
衝撃は一点に凝縮され、遅れて爆発した。
音が消え、次の瞬間――
オール・フォー・ワンの身体が宙を舞った。
抵抗する術もなく、
ただ真上へ。
雲を突き抜け、空気を引き裂きながら、
その姿はみるみる小さくなっていく。
(……これが、答えだ)
俺は空を見上げ、静かに息を吐いた。
轟の一撃で、オール・フォー・ワン――ダークディケイドの身体が天高く吹き飛ばされた。
俺はその軌道を見据えながら、静かに息を整える。
緑と黒の極光が霧散し、装甲が分解されていく。
再構築されるのは、俺の原点。
仮面ライダーディケイド。
腰のドライバーに、最後の一枚を装填する。
この一撃で、すべてを終わらせる。
『FINAL ATTACK RIDE
DE-DE-DE-DECADE!』
空間に、複数のカードが一直線に並ぶ。
世界と世界の境界が、刃のように立ち上がる。
俺は走り出した。
一枚、二枚、三枚――
カードを通過するたび、脚部に圧倒的な力が集束していく。
その時。
「終わらせるのは……私だァ!!」
空中で体勢を立て直したダークディケイドが、同じ動作を取る。
歪んだディケイドの装甲が軋み、彼の前にもカードが展開された。
『FINAL ATTACK RIDE
DE-DE-DE-DECADE!』
――ダークディケイド。
奪い、歪め、上書きした力の集合体。
だが、同じ技だからこそ分かる。
(中身が違う)
互いに跳躍。
互いに放つ、ライダーキック。
衝突の瞬間、空間が爆ぜた。
衝撃波が球状に広がり、雲が引き裂かれる。
大気が悲鳴を上げ、視界が白に染まる。
「力が……力が足りないだとォォッ!!」
ダークディケイドの叫びは、渇望そのものだった。
奪い続けなければ立っていられない、空虚な力。
(違う)
俺は歯を食いしばり、さらに踏み込む。
この力は、旅の中で積み重ねてきた答えだ。
カードが砕け、光が弾ける。
二つのキックがせめぎ合い、空中で拮抗する。
――そして、均衡が崩れた。
ディケイドの脚部から放たれた衝撃が、
ダークディケイドの蹴りを正面から押し潰す。
「な……ッ!?」
悲鳴と共に、歪な装甲が砕け散る。
ダークディケイドの姿が、光の中で崩壊していく。
俺のライダーキックが、そのまま貫いた。
轟音。
閃光。
すべてを飲み込む、決着の爆発。
ダークディケイド――オール・フォー・ワンの存在は、
光の彼方へと吹き飛ばされ、完全に消滅した。
静寂。
俺は地に着地し、ゆっくりと立ち上がる。
「……覚えておけ」
空に向かって、静かに告げる。
「俺は――通りすがりの仮面ライダーだ」
それでいい。
それが、旅を続けてきた俺の答えだ。
3rd舞台となる世界は?
-
魔法少女リリカルなのは
-
魔法少女まどか☆マギカ
-
アカメが斬る!
-
ブルーアーカイブ
-
戦隊レッド異世界で冒険者になる