悪魔と呼ばれ慣れて 2nd   作:ボルメテウスさん

25 / 193
15年と1年(ツカサ)

雄英の試験を終えた焦凍が戻ってきたのは、夕暮れ時だった。空は赤く染まり、長い一日を終えた学生たちが疲れた足取りで帰路についている。

 

「おかえり」

 

俺は軽く手を挙げて出迎えた。

 

焦凍は少し俯き気味で歩いてきた。その表情からは緊張感がまだ抜けていない。

 

「どうだった?」

 

俺が尋ねると、焦凍はゆっくりと顔を上げた。

 

「合格は確実だと思います」

 

その口調には自信が滲んでいた。俺が彼に教えた技術と精神力がしっかり発揮できたのだろう。

 

「そうか。それは良かったな」

 

俺は笑みを浮かべた。焦凍が成長した姿を見るのは素直に嬉しい。

 

「でも……」

 

焦凍の表情が曇った。

 

「何かあったのか?」

 

彼は深く息を吐いた。

 

夜嵐という同じ受験生が話しかけてきたと焦凍は言った。俺は缶コーヒーを渡しながら続きを促した。

 

「最初は……どう話しかければいいか分からなくて黙っていたんです」

 

焦凍は缶コーヒーのプルタブを開けながら小さな声で続けた

 

「そしたら夜嵐が『エンデヴァーの子供か』って聞いてきて……」

 

彼の拳が微かに震えた。

 

「気づいたら感情が爆発してた。すぐに止まろうとしたのに……もう遅かった」

 

焦凍は缶コーヒーを一気に飲み干した。俺は黙って聞いていた。

 

「師匠、俺は変わったと思ってた。でも結局……何も変わってない」

 

彼の声には後悔と自己嫌悪が混ざっていた。

 

「焦凍」

 

俺はゆっくりと立ち上がった。

 

「お前は確かに変わったよ」

 

焦凍が驚いたように顔を上げる。

 

「もし一年前のままなら、そもそもその夜嵐という少年に興味すら持たなかっただろう」

 

「・・・それは」

 

その言葉に、確かに焦凍は答えなかった。

 

「いきなり変われなんて無理だ。たった一年でお前の15年の憎しみを変えろってのは不可能だからな」

 

そうして、俺は続ける。

 

「けれどな、お前がその少年と出会った時。もし、お前が彼に興味を持たなかったとしたら。お前がもし彼に話しかけられなかったら。きっと、お前は友達なんて作ろうとしなかっただろう」

 

「っ」

 

焦凍は息を飲む。

 

「変われたかどうかなんてのは今はどうでもいい。大事なのは一歩踏み出したことだ」

 

俺はゆっくりと焦凍の肩に手を置いた。

 

「入学してからが本番だ。胸を張って行け。お前がどんな道を選ぶにせよ、俺は見守っているからな」

 

焦凍は何かを考えるように黙っていたが、やがて小さく頷いた。

 

「ありがとうございます、師匠」

 

その目には復讐心だけではない光が宿っていた。未来への一歩を踏み出す覚悟が見えた気がした。

 

「とりあえず、お前がやる事は一つ」

 

「・・・」

 

「謝る事だな。その夜嵐と会ったら、まず」

 

「あぁ、そうするつもりです」

 

それだけ言い、焦凍は立ち上がる。

3rd舞台となる世界は?

  • 魔法少女リリカルなのは
  • 魔法少女まどか☆マギカ
  • アカメが斬る!
  • ブルーアーカイブ
  • 戦隊レッド異世界で冒険者になる
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。