雄英の試験を終えた焦凍が戻ってきたのは、夕暮れ時だった。空は赤く染まり、長い一日を終えた学生たちが疲れた足取りで帰路についている。
「おかえり」
俺は軽く手を挙げて出迎えた。
焦凍は少し俯き気味で歩いてきた。その表情からは緊張感がまだ抜けていない。
「どうだった?」
俺が尋ねると、焦凍はゆっくりと顔を上げた。
「合格は確実だと思います」
その口調には自信が滲んでいた。俺が彼に教えた技術と精神力がしっかり発揮できたのだろう。
「そうか。それは良かったな」
俺は笑みを浮かべた。焦凍が成長した姿を見るのは素直に嬉しい。
「でも……」
焦凍の表情が曇った。
「何かあったのか?」
彼は深く息を吐いた。
夜嵐という同じ受験生が話しかけてきたと焦凍は言った。俺は缶コーヒーを渡しながら続きを促した。
「最初は……どう話しかければいいか分からなくて黙っていたんです」
焦凍は缶コーヒーのプルタブを開けながら小さな声で続けた
「そしたら夜嵐が『エンデヴァーの子供か』って聞いてきて……」
彼の拳が微かに震えた。
「気づいたら感情が爆発してた。すぐに止まろうとしたのに……もう遅かった」
焦凍は缶コーヒーを一気に飲み干した。俺は黙って聞いていた。
「師匠、俺は変わったと思ってた。でも結局……何も変わってない」
彼の声には後悔と自己嫌悪が混ざっていた。
「焦凍」
俺はゆっくりと立ち上がった。
「お前は確かに変わったよ」
焦凍が驚いたように顔を上げる。
「もし一年前のままなら、そもそもその夜嵐という少年に興味すら持たなかっただろう」
「・・・それは」
その言葉に、確かに焦凍は答えなかった。
「いきなり変われなんて無理だ。たった一年でお前の15年の憎しみを変えろってのは不可能だからな」
そうして、俺は続ける。
「けれどな、お前がその少年と出会った時。もし、お前が彼に興味を持たなかったとしたら。お前がもし彼に話しかけられなかったら。きっと、お前は友達なんて作ろうとしなかっただろう」
「っ」
焦凍は息を飲む。
「変われたかどうかなんてのは今はどうでもいい。大事なのは一歩踏み出したことだ」
俺はゆっくりと焦凍の肩に手を置いた。
「入学してからが本番だ。胸を張って行け。お前がどんな道を選ぶにせよ、俺は見守っているからな」
焦凍は何かを考えるように黙っていたが、やがて小さく頷いた。
「ありがとうございます、師匠」
その目には復讐心だけではない光が宿っていた。未来への一歩を踏み出す覚悟が見えた気がした。
「とりあえず、お前がやる事は一つ」
「・・・」
「謝る事だな。その夜嵐と会ったら、まず」
「あぁ、そうするつもりです」
それだけ言い、焦凍は立ち上がる。
3rd舞台となる世界は?
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