雄英体育祭本番前。
校舎内の控え室は独特の熱気に包まれていた。
A組の部屋をそっと覗く。
オーロラカーテンを悪用しているようだが、事前に校長の方には許可を貰っている。
それと共に、俺が見ていた事に気づいた様子。
轟は、そっとその場から離れて、出て行く。
「よっ、USJぶり」
背後から声をかけると、焦凍の肩がビクッと跳ねた。ゆっくりと振り返った顔には驚きが広がっている。
「師匠!?」
焦凍が慌てて立ち上がろうとするのを制止する。
「落ち着けって。もうすぐ本番だろ?」
彼の右手を軽く抑えると、意外なほど硬くなっているのが分かる。緊張してるな。
「実は……」
焦凍が俯きながら話し始めた。
「親父に言われたんです。“お前の左を使えば必ず一位になれる”って……」
ああ、あのエンデヴァーか。
「でも……」
焦凍の顔に苦悩が浮かぶ。左半身に宿る青い炎の欠片がかすかに揺らいでいる。
「これは母さんが……奪われたものだから……使いたくないんです」
その言葉に胸が痛んだ。エンデヴァーへの憎悪と、母への罪悪感。この少年が抱える矛盾が痛いほど伝わってくる。
「焦凍」
そっと彼の肩に手を置く。昔、訓練で疲れた彼にいつもそうしたように。
「別に無理に使えとは言わん。お前が母の為に努力しているのは分かっている。けどまぁ」
俺はそう言いながら、笑みを浮かべる。
「父の為でも、母の為でもなく、今は自分の為にやってみな」
焦凍の眼が微かに揺れる。そこに映るのは葛藤と、かすかな希望か。
「もちろんエンデヴァーとの因縁もあるかもしれんな。でもお前が今持っているものを信じろ」
彼の左手に触れると、冷たい氷の感触が伝わってくる。これこそが焦凍の“個性”であり、“アイデンティティー”だ。
「それに……」
少しだけ意地悪く笑ってみせる。
「お前の成長を一番楽しみにしてるのは俺なんだぞ? 絶対見せてくれよ、全力のお前を」
焦凍は照れているな。
昔からこういうところは変わらない。
それと共に俺は右手を前に出す。
それに合わせるように、焦凍も右手を出す。
互いの拳と拳を合わせると、冷たい氷の感触が皮膚に沁みる。
「頑張ってこい」
「行ってきます!」
そう言って送り出した背中が、いつもの十倍くらい大きく見えた気がした。
俺は振り返らずに控え室を後にする。背中に残る冷たさが妙に心強く感じられた。
さあて……
「こっちはこっちで仕事を済ませるか」
体育祭の舞台は今まさに幕を開けようとしていた。
弟子である轟の成長を見守る為にも。
この体育祭を決して邪魔させない為に。
3rd舞台となる世界は?
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