ゼータと並んで警備を行いながらのディスプレイに釘付けになっていた。
巨大モニターがメインスタンドを彩る中、俺達が見るのは、轟焦凍。
「始まったな」
俺の呟きにゼータがちらりと視線を寄越す。彼女の目は鋭く会場全体を見渡していた。警備中とはいえ、その瞳が一瞬だけ俺のディスプレイに止まる。
「ふ~ん……大事な弟子ちゃんのこと、随分熱心に見てるね」
「当たり前だろ。今日はあいつの晴れ舞台だからな」
スタートの号砲と共に選手たちが一斉に雪崩れ込んだ。スタジアムの大画面には前方集団の様子が大きく映し出されている。その中に轟の姿はない。
「……あ」
ディスプレイの中で焦凍が静かに走り出していた。無駄な加速をせず一定のペースを維持している。体力温存型か?
「あの子、何か狙ってるわね」
ゼータの声には鋭い洞察が滲んでいる。
「第1関門『ロボ・インフェルノ』です!」
実況が沸騰する。仮想ヴィランのロボット群が目の前に現れた。
轟の動きが変わる。周囲の混乱など無関心といった様子で右腕を前方に伸ばした。
次の瞬間──
「……氷河期再来かよ」
俺が思わず呟いたその刹那、轟の右掌から迸った蒼白い光が空中を疾った。
それは氷晶の槍となって次々とロボットを串刺しにする。
だがそれだけでは終わらない。破壊されたロボットの残骸を利用して彼は足場を作っていくのだ。
「滑る……じゃない。登るのか?」
巨大ロボットの胴体に氷の階段を作り、悠然と頂上へと上っていく。周りは大混雑なのに彼一人だけ別の戦場にいるようだった。
「あの左側は使ってないわね」
ゼータの指摘通り、轟は完全に右の氷能力だけで突破している。だがその効率性は圧倒的だった。障害物自体を武器に変えてしまったんだ。
「第2関門『ザ・フォール』へ突入! これは……まさか!」
実況が絶叫する。谷底へと続く深い溝。その上で揺れる一本の細いワイヤーロープ。普通なら恐怖で足がすくむはずだ。
だが轟は全く動じない。
轟は、瞬時に氷の橋を造り、一気に駆け抜ける。
彼は器用に地形を操って、そして第3関門『地雷原』が目前に迫った。
ここは罠の宝庫だ。地雷だけでなく偽装地雷も多い。慎重さと大胆さが要求されるフィールド。
轟の足がぴたりと止まった。だがそれは停滞ではなかった。
彼の両手が地面に触れる。
瞬時に彼を中心とした直径30メートルほどの領域が凍結した。
「まさか……」
「そうよ。地雷を全部凍らせちゃえば安全だもん」
俺より先に答えを見つけたゼータが解説する。その通りだった。凍結した土は地雷を固定し、起爆さえ不可能にする。
だが、それだけではない。
自ら通った後に、他の選手が通ったら、すぐに割れて爆発出来るように絶妙な調整をしている。
焦凍が氷河のように滑るように駆け抜ける。まるで自分が創り出した氷河の王様のように。彼の個性のコントロール精度は明らかに以前とは別人レベルまで磨かれていた。俺のトレーニングの成果か。
だがゴールテープが見えてきた瞬間──
「来たか……緑谷出久!」
モニター端に緑谷の姿が映った。轟の背後に突如出現し猛烈な速度で追い上げてくる。
最後の直線。轟は全力疾走に入るが……
「ぐっ!」
足をもつれたのか轟がバランスを崩す。ほんの一瞬だった。しかし緑谷はその隙を見逃さなかった。
「ゴォォォォォルッ! 最初にスタジアムに戻ってきたのはA組の緑谷出久!」
歓声と悲鳴が入り混じる大興奮。轟は唇を噛みしめながら2位でゴールした。
「惜しかったわね」
ゼータがぽつりと言う。
「……そうだな」
俺も内心舌打ちしていた。悔しかった。弟子が勝利を目前で逃すなんて。しかもあの爆豪みたいな性格の緑谷に持っていかれたというのが尚更だった。
「でも」
ゼータの視線が轟から離れない。
「すごく成長してたわよ。特に第2関門からの判断と創造性」
確かにそうだ。特に最後の氷操作は芸術的とさえ言えた。周囲の選手まで無意識に援護してしまうほど自然に氷河を創り出していた。
「まあ……負けてはいけませんよね?ツカサ。弟子の教育係として」
「そりゃあ当たり前だ。次は絶対勝たせる。もっと鍛え直さないと」
モニターの中で焦凍が深く息を吐きながら次の種目に向けて準備運動を始める。
「・・・けどさ、気づいていたよね」
「・・・イータの弟子、いたな」
それに嫌な予感にした。
3rd舞台となる世界は?
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