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私がブラックマーケットに来てから数日が経って、なんとなくこの場所のことを理解した。
私のように学校を逃げ出した————もしくは退学になった生徒が徒党を組んで縄張り争いをしている地獄絵図ということを。
実際に私も何度か襲撃を受けたし、逃げてもまた他の集団に襲われて。
アリウスのライフル弾はブラックマーケットにも流通していたようで、幸い銃弾には困らなかったが…
だとしても、日々襲撃を受けると精神はすり減っていく。もしかしたら彼女らがアリウスから雇われた兵士かもしれないし、アリウス生が素性を隠してやってきているのかもしれない。
「ふーっ……………」
深く深呼吸をして、狂いかけてきた思考を元に戻す。
思えばここに来てから寝たことがない。
アリウスでいくら不眠の訓練をしたとは言っても、やはり眠いものは眠い。
決めた。今の最優先目標は寝床を探すこと。
寝床といっても宿の類は頼れない。ブラックマーケットの宿は金額が異常に高かったり、不良集団——ヘルメット団だっけ?の手先だったりするから迂闊に利用することはできない。
で、あるならば手っ取り早いのは誰かのアジトを襲撃しそこを拠点とすること。
1から作るよりは早いし、何より資源をそのまま再利用できるのが大きい。
ヘルメット団の拠点は探さなくても見つかるのがここだから、手間はかからない。
早速近所にあるヘルメット団の基地に襲撃をかけることにした。
まず基地の検問…的なナニカに梱包爆弾を投げ込む。結局アリウスで使うことはなかったな…よく考えるとあんなところで起爆したら自分も巻き添えくらっちゃうし。
ともかく、梱包爆弾は検問の近くで起爆した。
普通の手榴弾だったら爆風は届かないが、生憎これは攻城戦にも使われる爆薬。
検問ごと見張りを吹き飛ばし、煙が立ち込める。
「戦闘開始…!」
M4A1のグリップをしっかり持って敵陣に一気に踏み込んだ。
煙で相手の視界は奪えてる。一気に煙を駆け抜けてどこかの建物に入り込む!
「しゅ、襲撃だあ!」
「クソ、どこにいる?!」
突然の襲撃に敵は混乱状態にある。声の聞こえた方に数発撃ち込むと少しの悲鳴が聞こえた。
「戦場で声を出すから…あ、後ろが空いてる」
煙の中で迷い込んだヘルメット団の首元に拳銃を数発打ち込み、関節に打撃を打ち込みダウンさせる。
ダウンした団員からヘルメットを拝借し被る。煙が晴れ始めて、こっちを視認した敵兵数人が射撃を行うけど……銃の撃ち方がなってない。姿勢を低くしながら走り、片方の懐に潜り込んで
思い切り腹を蹴り付け、銃のストックを肩に叩きつける。
「ぐっ!」
「体、借りるよ」
よろけた団員に腕を絡ませて肉壁にする——すごい必死に抵抗してる。罪悪感がすごい。
そんな私を見て、近くにいた…肉壁の人の相方は銃を戸惑ったようにこっちに向けた。
「おい、何してる!やめろ!」
「い、いやでも…」
仲間割れを始めたから、肉壁にした人を全力で相手に投げつける。
勢いよく飛んでくる人の質量を上半身に受けた彼女は倒れる。
倒れたのを片目で確認したら、片足を軸に回転し弾幕をクリアリングとして横一列に張る。
ヘルメット団の援軍が大量に来た…相手にとって不足はない。
地面を蹴り飛ばし、相手との距離を詰め拳銃で着実に首元を撃ち抜く。
隙ができた瞬間に回し蹴りで仲間ごと蹴り付けて気絶させ、手榴弾を投げてまだ戦えそうな余力を排除する。
爆風が止んだあと、残ったヘルメット団に対し通告を突きつけた。
「このままやるか、それとも降伏するか…選択権は全員にある。早く答えろ」
「わ、わかった!降伏するからやめてくれ!」
かつて教わった脅し方を真似しながら聞くと、ヘルメットに特徴的なシールがついている子——おそらくリーダーだろう…が怯えた様子で降伏することを宣言した。
「他は?」
聞くと、皆もリーダー(予想)と同じように首を縦に振った。
「そう。ならいくつか質問をするね。まず、リーダーは誰?」
「わ、私だ…何を…」
やっぱり特徴的なヘルメットの子がリーダーだったか。
「ああ、やっぱり君か、名前なんて言うの?とりあえずここの拠点接収したいんだけど。」
接収したい旨を伝えるとヘルメット団にどよめきが起きる。
不安、怒り、驚き…様々な感情が向けられて、少しイヤな感じがした…仕方ないけどね。突然家私のものねっていったんだから。
「接収…??なんでまた、そんなことを?…………ああ、私の名前はキバだ。」
思い出したようにキバは自己紹介をして、心底困惑したような声と…ヘルメットのせいで表情は窺えないが、間違いなく怪訝な顔をしているよね。そんな感じのオーラを出しながら聞いてきた。
「私最近ここに来たばかりでさ、家がないんだよね。だから拠点でも貰おうかなって」
「頭おかしいんじゃねえのか?」
ひどい。ただ「一時的に」借りようと思っただけなのに。
「何か?」
「はぁ、私たちは負けたんだ。あんな木っ端微塵にされて…拠点は好きにしろ。いずれ奪還しにくるからな!」
「いや、残りたいなら残っていいんだけど?」
「はぁ?どういうことだ?」
この人、もしや感情豊かか?
コロコロ感情が変わって面白い。
「私がくるまでここにいたんでしょ。なら残りたい人も居るだろうし残っていいよ。私も特に貴方達の一部だけ借りられればそこでいいし。」
「お前…本気で言ってるのか?」
困惑の中に安堵を感じた。手ごたえがある。
もしかしたら、ブラックマーケットでのいい仲間になるかもしれない。謀略はよくわからないけど、少なくとも…仲間は必要だしね。
「本気も本気だよ。残りたいなら残って。私も戦闘訓練とか付き合うからさ」
メリットを提示すれば、簡単に人は動く。
こんな環境に居るなら、尚更明日の生活の保障につながるメリットは余計魅力的なはず。
それは、アリウスで嫌というほど体感したし、その分の悪意も体感した。
せめて、みんなにはそんなことを経験させたくない。
キバは他のヘルメット団を集めさせて欲しい、話を通したいと言ってきた。
断る理由もないから許可すると、倒れていた人を除いた…大体20人前後が集まって話を始めた。
みんなが話してる間暇だからベンチにでも座って待ってよう。…座りにくい。アリウスよりマシだけど…まあいいか。
10数分待って、総意が取れたのかキバがこちらに歩いてきた。
「結論が出た…待て、お前それ座りにくくないのか?」
「んーまあそんなに気にならないかな。で、結論は?」
「20人中17人が残る。これからよろしく頼む…だが、条件がある。私たちとお前は対等だ。いいな?」
「うん、最初からそうするつもりだったし。自己紹介がまだだったね。私は永葉シウ。出身は…」
出身。アリウス分校なんて無名だからわからないはず。けど…アシを残すようなことはしたくないし…でもここで黙るのも怪しい。
これ八方塞がりじゃん…どうしよ。
「出身を話したくねえなら話さなくていい。ここはそういうところだし、誰も気にしねえ。」
「…そう、ならまだ内緒。これからよろしく、キバ。」
これが、私とキバ達…「プクプクヘルメット団」との出会いの話。
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