第一章一話:黄金砂漠への切符
◎エガリテ学園 生徒会室
私の報告を受けて、早速生徒会では「先生」に対する評価をどう暫定するかの会議が開かれた。
「まず私の意見なんだけど…連邦生徒会長の変わりとしては良いかもしれないけど、それは裏を返せば何も変わらないっていうことでもある、って思ってるな。何か特筆すべき点でもあればね…」
エガリテ学園の生徒会長、新田メバエは少々辛辣な評価を下した——役職柄、無条件で大人を信用してはいけないことを理解しているからなのだけど。
けれど私は、彼について気になる点が少しあったために意見を返す。
「特筆すべき点はあるでしょ。あのタブレット…シッテムの箱って言う、大きく特筆すべき点が。」
「んー、確証がないものを特筆すべき、っていうのは違うんじゃないかなって思って。そんなにあのタブレットが気になったの?」
やっぱり、アレは実際に見ないとメバエは確証が持てないかな。私の言葉で、精一杯納得させられたらいいのだけど。私の目標のためにも。
「あのシッテムの箱…箱って呼ぶけど、アレから何か変なものを感じたかな。具体的にはわからないけど…あのD.Uでの映像は見たよね?」
「あー、妙に動きが良くなってたやつ?」
先生が指揮していた時の様子はクロノススクールがこぞって放送していたから、知らない人は居ないはず。あの動きは間違いなくシッテムの箱の力があるからだと直感的にわかった。
弾丸一発当てるのにはとてつもない集中力がいるはずなのに、全員がまるで弾道が見えているように撃って当てていた。
「クロノスで「命中率も回避率も高い」って多くの専門家が言ってたでしょ?専門家の全てを信じるワケじゃないけど、少なくとも参考にはなるはず。」
「まあ確かに、他の人はどう思う?とりあえず良い寄りの評価にしようかと思ってるんだけど。」
メバエの提案に反対する人は居なく、満場一致で評価が暫定された。よし、とりあえず先生の価値を印象付けられたから、満足かな。
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◎シャーレ部室
サンクトゥムタワーの奪還から数週間が経って、いくつかの生徒たちと交流を深めていった。
ユウカ、チナツ、ハスミ、スズミの他にも色々な、主に連邦生徒会のみんなと話をしてみたりした。
トリニティやゲヘナ、ミレニアム出身の子が連邦生徒会には多いみたいで、色々な特徴を聞くことができて面白かった。例えばゲヘナは——…っと、そういえば今日は手紙が届くんだった。
生徒会の人が持って来てくれるって言ってたけど…
「手紙が届きました、机の上に置いておきますね」
「“ありがとう、そのファイルの上に置いてくれると助かるよ”」
噂をすれば、例の手紙が1枚届いた。
その手紙には、今まで見たことのない校章が書かれていた。
下には…アビドス?と書かれていたから、アビドス高校…で合ってるはず。
そんなアビドスからの手紙を要約すると、地方の暴力組織によって学校が追い詰められていること、現在ギリギリで抑えていること、土地が狙われていること…が書かれていた。
そして、「どうか助けてください」と切実な文も添えられていた。
生徒が、このようなことを言わなければならない状況にあるのに、私はアビドスのことも知らなかった。
それがなんだか悔しく思えて、私はアロナにアビドスのことを聞くと、
「昔のアビドス自治区はとても大きくて、街の中で遭難することがよく起きたそうです!ですが、そんなアビドスが暴力組織に襲われていて追い詰められているだなんて…何かあったのでしょうか?」
「“うーん…アビドスに行ってみることにするよ”」
「もう出発するんですか!?かしこまりました、すぐに行きましょう!」
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◎D.U地区 中央駅
私は早速アロナの助言を受けながらいくつかの水と携帯食料を持って、アビドス駅へ向かうことにした。
D.U↔︎アビドス行きの本数は他の自治区と比べると少ない方なため、遅刻は許されない。逃したら1時間は待つだろうとアロナが入っていたから、なるべく早く駅に行くことにした。
駅のホームを見ると、やはりというべきかゲヘナ方面やトリニティ方面、ミレニアム方面…あれはなんと読むのだろうか、百鬼…?行きの列車に乗ろうと待つ人が多く、笑い声や話し声もよく聞こえてきて、アビドス行きの方面の冷えるような静寂とはえらく様相が違っていた。
少しの物悲しさを感じながらも数分経って、ホームに列車がやって来た。
電車に乗って、数駅か通り過ぎてD.Uを出ると少しずつ外の景色が変わっていくのを感じた。
ビルの森から抜けて、揺られるたびに知らないことがこの世界に溢れていることに気づかされた。
内なる好奇心のエンジンに火がつくのを感じながら、アビドスの地図を見ることにする。
車両内にはあまり人がいないようで、閑散としている。
おかげで落ち着いて地図を見ることができる。
シャーレの部室にあった地図。少し端が破れているが、問題にはならないだろう。
その地図が最新のものであるなら、の話だと気づくのはアビドスについてから半日が経った時だった。
永葉シウ:エガリテ学園の書記。グレーのパーカーをよく着用している。身長は157cmの高校2年生。
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