◎アビドス郊外
いつも通り、住宅街をサイクリングしていると道端に倒れかかっている男性を見つけた。
ん、白衣を着てる。見るからに怪しいけど、銃を持っているようには見えないから……多分大丈夫。
ちょっと近づいたけど、気付いてない?
————もしかして、遭難してる?
「あの…大丈夫?」
勇気を出して白衣の大人に話しかけると、彼はゆっくりとこちらを見て
「ちょっと大丈夫ではないかなぁ………アビドスに用事があって来たんだけど、地図が古かったみたいで」
「あ、生きてた。最初死んでるのかと」
「酷いなぁ、ちょっとお腹減ってさ…ははは…」
「もしかして遭難者?」
生きる死体って表現が動いているような人だったけど、確かにここら辺にお店はないから倒れるのは無理もない。
元々はアビドスにも沢山のお店があったって聞いたけど、もうとっくに無くなってるということを伝えると、彼はしゃがれた声で
「やっぱり、土地勘のないところに来るものじゃないね…」
と言った。なんで土地勘のないところに用事があったのか謎だけど、とりあえず水をあげよう。
カバンを少し漁ると、ライディング用のエナジードリンクがあった。
それしか見つからなかったけど、何も飲まないよりはマシになるよね。
「エナジードリンク、飲む?えっと、コップは…」
私がコップを探していると、目の前の大人は口をつけて飲んだ…え、口をつけて飲んだ!?
「ふぅ、ありがとう。数日間何も飲んでなかったから助かったよ!」
「ええと……うーん」
「どうかした?」
心底疑問に思ったような雰囲気で、大人はそう言った。
ちょっと恥ずかしかったけど…まあ、仕方ないか。
「いや、なんでもない。気にしないで」
顔を少し背けてそういうと、彼の腕についていた腕章が目に入った。
「……連邦生徒会?もしかして用事って…
もしかして、アビドス高校に行くの?」
「うん、色々あってね。アビドス高校ってどこら辺にあるか教えてくれる?」
「……そっか、久しぶりのお客さんだね。アビドスはあっち、案内してあげる。」
「ああ、ありがとう。でもお腹が減って動けないかも…」
確かに数日間断食してまた歩くのは厳しいかも。どうしよう、引きずって運ぶか…
「あ、そうだ。乗せてくれない?」
自転車に?二人乗りは重心が傾くからあんまりやりたくないのだけど…それに一人乗りだし…
「これ一人乗りだから…」
「ならおぶってくれない?」
恥ずかしいけど、引きずるよりはずっとマシかな。近くにロードバイクを止めて、彼を背負う。
ロードバイク…あ、もしかしたら…
「あ…さっきまでロードバイクに乗ってたから、ちょっと…普段は学校のシャワーを使うんだけど…」
また恥ずかしさを感じならもそういうと、彼は本気で
「大丈夫だよ、気にしないで」
と言った。
これって私が自意識過剰なだけなのかな…
「むしろいい匂いがするから!」
前言撤回。この人変態だ。
「ま、まあ気にならないならいいか…。しっかり捕まってね。」
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◎アビドス砂漠
私永葉シウは、エガリテ学園安寧部の部員を引き連れて例のグループ——「カイザーグループ」の動向を探ることにした。
事前に土地の謄本は調べた。すでにここはアビドスの手綱を離れてカイザーの土地になってるからアビドスの承認は必要ないはず。
反吐が出るな、カイザー。どんな手段を使ったかはわからないけど、自治区の大多数を接収し何かを起こそうとするなんて。
アビドスの生徒会はこのことを知っているのだろうか。もしくは、知った上で協力しているのか…
エガリテ学園とアビドスの交流は皆無で、そういった情報は全く届いてないから真相はわからないが、警戒しておくに越したことはない。
私は確かに書記の役職を持ってはいるが、決して弱いわけではない。エガリテ学園は…非常にブラックマーケットに近いところにある。自衛能力は高くはないが低くもない。
一個小隊程度なら相手できるって言う自負がある。
ともかく、私は調査のためにアビドスに赴いたのだが…
暑い。エガリテ学園も暑い時は暑いが、アビドスの暑さは…痛さを伴ってる。
薄手の長袖を持ってきて良かった。バンダナを広げて上手く顔を隠して隠密するよう部員に言って正解だった。顔を痛めさせてはあまりに可哀想だし。
そんな暑さを感じながら高地に向かって偵察をすると、遠くの方に人影が見えた。ロードバイクに乗ってる人と、白衣を着てる大人……先生?がいた。
確信は持てないが、あの制服を見る限りは先生だと思う。何故アビドスに?
報告内容が増えた、報告書書くのが面倒になるけど致し方ない。
しかしこんな寂れた……失礼、のどかな地域で倒れてるって…もしかして遭難でもしたのかな。
多分あのロードバイクの人が気づくから放置でいいかな。アビドスに私の情報が渡っても困るし。
「第2分隊の狙撃班はここ…地点アルファ-2を保持すること。私と残余第二分隊で市街地を探索、索敵する。接敵した場合は最小限の戦闘に止めること。命令以上、行動開始。」
第二分隊————私が引き連れてきた分隊群の一部に命令を与えて、私たちで市街地にカイザーの痕跡がないか探ってみることにした。
それに最悪ここでカイザーとやりあうことも想定して、ハイドポイントの確認も含めて行うようにもする。
市街地に入って最初に目に入ったのは倒れた看板と崩れた家々の数々。
カイザーの痕跡を探るべく、元の家主には申し訳ないが瓦礫を退けさせて貰った。
もちろん指紋は残さないように手袋をつけて…暑いけれど仕方がない。
少し漁ると土地契約書だとかが出てきたけど、どれもアビドス生徒会の承認を得ててカイザーの痕跡はなかった。
そうやって少しずつ市街地を詮索すると、遠くの方から重機の音が続けて聞こえた。
伝聞によるとアビドスはあまり裕福ではないと聞いたけど…一体誰が?
第二分隊の数人を引き連れて音源を辿るとそこには…
カイザーPMCの拠点があった。
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