寵愛な幻想郷   作:覚め

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八雲

「んっ…紫さん」

 

「私よ」

 

「ここどこ?」

 

「私のお家」

 

そう言われた。僕が立ちあがろうとすると体を抑えられ、何かと思えば押し倒された体の上に紫さんが跨る。退けて、ようやく立ち上がる。服はそのまま、布団もどうやら変わらず。どうやら僕は布団ごと運ばれたらしい。置き手紙はと聞くと置いてきたらしい。さて問題。僕のプライバシーというか意見はどこでしょうか。ええ、もちろんありません。泣くね、限界だ。青蛾をきっかけに拉致が流行り始めた。恐ろしい。

 

「…あのねぇ、お酒を飲んでいたとは言っても約束してるのよ?」

 

「僕酒飲まないけど」

 

「飲ませたのよ。それで、ゆーは私と約束してくれたの。私の家に来るって」

 

「…」

 

思い出してみる。確か…に、うん確かに約束してた。つーか思い出せるもんなんだ。聞けば紫さんが細工して忘れないようにしていたらしい。なんとも、恥ずかしいというかなんというか。約束していたなら仕方ない。僕はさっさと家の中を歩き回る。紫さんが話していた式神の八雲藍さんに会ってみたいと考えたからだが、全然見つからない。帰省した?してないの?じゃあなんで??

 

「…出かけさせてるのよ。良いじゃない、私と二人きりでも」

 

「…良くないとは言ってないけどさ」

 

「そういうところよ、ゆー」

 

「何が?」

 

「はぁ…」

 

僕としても会いたい相手ではあったけど、まあ仕方ない。拉致された身分なので適当に過ごすとする。紫さんが持ってくる外の世界の菓子や、良くわからない茶葉で作られた茶。紫さんが最近植え始めたらしい桜。ちなみに妖怪単位の最近であるためかなりご立派な桜の木である。紫さんが衝撃的なことを言っていたが、それは無視させてもらう。聞いた感想としてはキモいだった。まあ関係は変わらないと思うけどね。

 

「ゆー、貴方が幻想郷に来てどれくらい経ったか覚えてる?」

 

「…さあ?僕も知らないんだ。異変らしき異変と言えば…逆さまの城とか」

 

「派手な異変しか知らないのよねぇ」

 

「でも、ここは楽しいから好きだよ。外とは違って」

 

「それは貴方だけよ。」

 

言われてしまった。そう思い菓子を頬張る。美味いな、これ。そう話していると帰宅の音。恐らくは八雲藍さん。僕が出てみようとすると紫さんに制される。なんだよ。僕だってみたいのさ。尻尾九本とかどう生きてんの?気になるよね。僕はただみたいだけなんだ。まあそれは良くて。制され方が良くない。紫さんの手で押さえられているわけではなく、僕の目の前にあるスキマから出ている上半身で動きを再現されているのだから。つまり胸目前。

 

「紫様、ただい…ま…」

 

「藍、言ったものは買ってきたの?」

 

「は、はい。えっと、その人間は…」

 

「話してたでしょ?ゆーよ」

 

「あ、なるほど。」

 

「助けて…」

 

「紫様、体勢がかなり危ないと思いますが」

 

「…押し付けてるだけよ」

 

「その客人の体勢です」

 

「あ、え、ごめんなさい」

 

僕の仰け反った体を無理やり戻し、腹が伸び切った痛みを抑えつつ菓子を食べる。藍さんは忙しそうにどこかへ消えた。何かあるのかな、と思い紫さんに聞くとそんなことはないという。であればおそらくあれだ。親が客を連れてきた時の気まずさ。あれだな。そんなわけで紫さんと話を続ける。続けるとは言っても紫さんの一方的な発話だけど。うんうん頷いていると、たまに私と暮らしましょうとか言うのでそこだけは断る。

 

「…そうねぇ…ゆー、貴方思い違いしてない?」

 

「何を?」

 

「なんで貴方に拒否権があると思うの?」

 

「…ああ、そういう」

 

首元に紫さんの手が伸びる。掴まれた。決して強くないので恐らくはいつでも絞められんだぞと言う意思表示だろう。ただ僕はこういうのは何度かあった。酷かったのはフランドールだった。次に永遠亭。意外と風見幽香や天子はそういうことをして来ないので経験自体は少ないけど、それでも長考できるほどには慣れている。慣れたくなかったけどね。首を掴まれたまま真っ直ぐ紫さんを見る。

 

「なんでだろうね。僕としてはただ関わってるだけなのに」

 

「魅力的なだけよ。紅い館にいて食われてないのがその証拠。気付いてるでしょ?」

 

「…どうだろうなぁ。萃香はどう思う?」

 

「調子に乗りすぎだ、紫」

 

「…貴女も入れ込むわねぇ。許可は取ってるの?」

 

「黙認してるだけだよ」

 

「いやあの…口の中から出てくることなんだけど?」

 

「黙認」

 

そういうと紫さんは黙った。そのまま萃香に首を締め上げられたままの紫さんはどこかへと引き摺られていった。さてどうしよう。萃香がいるかどうかは賭けだった。摩多羅が出てきたり、謎の方法で仙人が出てきたりしたら危なかった。私を他の女と間違えるのかと後で詰められたらとても恐ろしいことになった為である。その場合僕は吃り、唸りながら違うことを主張することだろう。良かった。

 

「おや、萃香様まで」

 

「なんでか僕の体内にいたんだ。よくわかんないよねー」

 

「はぁ…紫様は連れて行かれたようで?」

 

「連れてかれたよ。」

 

「なるほど」

 

僕と八雲藍さんの二人きり。だけれども、僕はやはり話すことはなかった。藍さんが作ったという料理に手をつけ、ただ美味しいというだけ。ちゃんと美味いのだが、な。咲夜と妖夢のせいでかなり慣れてきたというのが本音か。永江衣玖の手料理も食ったことがあるが、あっちは家庭料理の味だった。不味くはない、しかし美味しいとは言いづらい。だけど好物の時はとても美味しい、というような料理。

 

「ところで、お名前は?」

 

「勇吉。あだ名はゆーだよ」

 

「…では、ゆー様」

 

「なんで敬語なの?」

 

「紫様からそう呼ぶように言われていますので。」




紫「私の夫(予定)」
藍「紫様の夫(誤解)」
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