寵愛な幻想郷   作:覚め

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合わなくても、会えなくとも


捧げ物

「なんですか。僕今日疲れてるんですよ?」

 

「疲れてるって…項垂れてるの間違いじゃないの?」

 

目の前にはメディスンと風見幽香。メディスンは無くなった壁をマジマジと眺めてクスリと笑った。なんだそんなにおかしいのか貴様。まあ、僕としても他人の出来事なら笑っただろうな。嫌な実感と共にそうしただろうと言う確信が僕を包んだ。結局性根ではこいつらと同じなんだろうな。頭を振り、雑念を消し去る。壁がなくなって早くも数日。僕はやはり、壁を取り戻そうとしていた。

 

「とりあえず毒草生やせばいい?」

 

「妖怪が近づかない程度に」

 

「私を置く?」

 

「色々と誤解が生まれるからいいよ」

 

「…植物の壁で良ければすぐに作れるけど」

 

「まじ!?」

 

頼んだ。そしたらすぐに造られた。メディさんはまだ外である。数日ぶりの壁。少し間食は違えど、それは間違いなく壁だった。僕はその壁を叩きながら安心感を覚える。これでようやく、風に怯え流れくる雨水から身を寄せ躱し雷鳴が鳴れば布団に包まれた日々からの解放だ。ちなみに壊した張本人達はなぜか音沙汰がない。あいつらいつか絶対叩いてやる。もっともそんな事をすれば大変なのは僕であろうが。

 

「…生やすなら言って」

 

「ごめんメディスン」

 

「あら、ゆーの謝罪って意外と軽いのね。」

 

「風見はなんだよもぅ…」

 

「‥別に、良いのよ。私たちが貴方をここから連れ去ることも、追手を蹴散らすことも、私たちなら楽にできるんだから」

 

「メディスン〜」

 

「魅力的な提案だ」

 

「おい」

 

壁を直して満足したのか、はたまた満足しなかったが僕の反応を見て満足したのか、そこら辺はわからないがとにかく風見幽香とメディスンは帰って行った。嵐のような人達だった。壁を無くしたと噂を聞いて来たのだろうか?それなら相当な地獄耳である。それか噂好きか。どちらにせよ、家の問題は片付いた。去り際に風見幽香が手紙を置いて行ったので開く。驚きの内容が書いてあった。

 

「…その、ごめんなさいね?」

 

「良いよ、紫」

 

「…呼び捨てになったのは、貴方にとって私の位が下がったから?それとも親しくなったから?」

 

「どっちだろうな?少なくとも僕は謝罪として風見幽香を使う度胸は良いと思うよ」

 

「あら、そう?じゃあ…隠岐奈からの謝罪とかって」

 

「怖いこと言うな」

 

「怖いとは何か。畏れならば良いものの」

 

「うおっ」

 

尊大な神だ。顔見せないようにするか。それとは別に、また面倒な人が来た。僕としては最上位のめんどくさい人が摩多羅になるのだが、同じくらい面倒な人として聖が思い浮かぶ。何故って?僕が魔法を使えるためだ。出会う度に仏教と不老長寿を勧めてくる。僕は人でいたいのに、それすら通じる気がしない。必然的に僕は紫に近寄った。それに気づいた紫は嬉しそう顔をし、摩多羅は嫌そうな顔をした。

 

「ゆーさん、このような離れに住むのも宜しいでしょうが、やはりもう少し里に近づきませんか?」

 

「はっきりと」

 

「私たち命蓮寺の皆と暮らしませんか?」

 

「嫌だ!」

 

「本人の嫌がることは強いるべきではないわ。ねえ、隠岐奈?」

 

「ふん…私の庇護とそこの尼の庇護は比べるものではない」

 

「私たちの方が快適で充実していますからね。」

 

「…随分な自信じゃないか。過信じゃないと良いが?」

 

「命蓮寺では人を死なすことはもちろん、ストレスさえ与えません。そちらは?」

 

「ストレスはおろか風に揺らされる髪の毛一本までがゆーの望んだ時に与えられるが?」

 

…どうしよう?瞬間、僕の横を誰かが通り過ぎた。額に汗が流れる。僕の後ろにいたのは誰か。それは紫である。誰を呼べばこの絶望を巻き戻せるであろうか。質問にすらならない疑問である。そしてこの問いに対して僕は唯一の答えを知っている。三人ともが自信の住む場における快適さを語ろうとしているこの状況、誰も呼ばないことが正解。萃香を呼べば妖怪の山を進められるだろう。天子を呼べば天界、正邪なら逃亡生活。アリスなら…何と言うだろうか。

 

「私の住処には八雲藍という完璧な式神がいるわ。藍がいればゆーを癒せるし、藍の世話によって退屈はない。貴女達はどうやって世話をするのかしら。傷がない事を謳っても虚無であれば意味はないのよ?」

 

「ほぅ…?」

 

「紫…まさかお前が私に反抗するとは。ついつい私に預けたとばかり思っていたが?」

 

「あり得ないでしょ」

 

この場合、最も恐るべきは『本人に決めてもらおう』と言い出す事だろうか。正邪譲りの逃走スキルを発動させ、逃げ始める。結果、三人に囲まれた状況を抜け出さずに周りの背景だけが変わるという珍妙な視界を味わった。僕が膝をついて息を整える度に、議論が止まる。もはや何が何やら。僕は毒を撒き散らすことも考えたが、三者共に毒への対策が取れる事を思い出し、辞めた。

 

「…あら、もう終わり?」

 

「っ…ぁー…はぁ…」

 

「意外と長く保ったな。運動も好きと見た」

 

「多少っ…は…息切ってよ…」

 

「人間にしては速い方ですね。私の魔法を使えばもっと早く動けますよ?」

 

「聖のそれは魔力の消費激しいからやだ…」

 

「…さて。ゆー、選んでもらおうか。私、尼、隙間妖怪。この中から、ゆーがただ安心を享受できる暮らしを持つ相手を選ぶんだ。」

 

まずい。最悪である。以前にもこういうことがあった。菓子はどっちが美味かった、という可愛らしいものであったが。その時は僕の好みの味であった方を選びはしたが、今回ばかりはそうもいかない。この場に誰もが気づいていないようなので、最後の手段を取る。僕が今いる場所は、かつて僕を数度救った恩人達の住む場所。霧の湖目前の場である。途端に視界が暗転、何も見えなくなる。それと同時に体感温度が急激に下がる。

 

「はー!」

 

「あら」

 

「じゃあ、連れて行くから」

 

「貴女…っ」

 

「追ってくんなよ」

 

「…それが望みか」




エクストラルーミアは実在しろ!!しやがれ!!
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