「…ふー…」
僕は今、地底の風呂に入っている。地底は蒸し暑く、しかし年中安定している気候のため今のような暑い夏はこちらの方が涼しいこともある。ちなみになのだが、僕がアリスから教わったクッキーの作り方はまだ使われてない。何せ、アリスに教わったのはホワイトデーが来日した事を知った後なのだから。紫のせいで僕は執拗に追われた。来年返す事を条件に引き下がってもらった。だからその目でこちらを見ないで。
「…はい、わかりました」
「便利だねぇその目は」
「そのせいで随分と忌み嫌われましたがね」
「物の価値がわからんやつは扱えんやつだ。扱えない奴にとってはハサミも怖い」
湯に浸かる。僕は今、古明地さとりと…おい読むな。僕が心の中でどう呼ぼうと関係がないだろう。さとりちゃんが良いのか?マジかよ…僕は今さとりちゃんと温泉に入っている。何故かといえば特に理由もない。強いていえば地上の喧騒から逃げて風呂に浸かりたかっただけだろう。ここなら射命丸も来れない。それ以外でここに来れるやつは何人か心当たりがあるが、ほとんどは静かにしてくれるはずだ。
「…なるほど。確かにその御友人達なら大丈夫でしょうね」
「勘違いしないで欲しいんだが、一応その中にお前もいるからな」
「ええ。その友人の間にいるのをしっかりと見させてもらいましたからね」
「…わざわざここまで足を運んだのに何故こうも湿らなきゃならんのか」
「ここは元から湿気ってます」
「わかって言ってるよな」
「何がですか?言わなければ通じませんよ?」
こいつ…。まあ良いけどね!湯に浸かった体で何かをすることは基本ない。それこそ目の前で喧嘩が起きない限りは。この温泉はさとりちゃんが持っている温泉らしく、鬼も入ってこない。ここならもう、どこよりも安心安全に湯に浸かれる。暮らせない理由としてはここにいる鬼が原因なのだが、まあ、それは良い。あー、そろそろのぼせるかもしれない。あがるか…
「湯冷めせぬよう、体はしっかり拭くのだぞ」
「分かってる」
「…いや待ってください今の誰ですか!?」
「摩多羅。最近僕の周りが妙に物騒だったり何だったりするからね。いつもそばにいるらしい」
仕事して欲しいものだ。僕は温泉から出て地霊殿にていつのまにか設置されていた僕の部屋に入り、ベッドに体を乗せる。僕の部屋はここに住む住人達が何故か冷やしてくれており、僕は快適に過ごすことができる。理由は本当に知らない。僕は色々とやることがあるのだ。ルーミアとチルノに対する礼。二人からは結局菓子の要求で済ませはした。ルーミアの方は血を入れろと耳打ちをしてきたが。それを真似して耳にキスしてきたチルノはよくわからん。
「借りてるぞー」
「お、お兄さんが作ってくれるの?良いねえ」
「お燐の分はないぞ」
「えー!?」
「当たり前だろ。これは礼で作ってんだから」
「お兄さんがここにきた時、世話したのは?」
「…ずるいぞ、お前」
猫らしいといえばそうなのだろうか。僕は知らないが…手短に物を作る。猫のアレルギーとかよく知らないので適当に混ぜて作る。クッキーは食べられそうなので、うーんと。野菜炒めでも作ってやるか。調味料は…どこだ。ここですか。すみません心の中を覗いて急に現れるのやめてくださいさとりちゃん。怖いので。匂いに釣られたか、出処が気になったのか知らないが人が増えた。何故何故。
「ほらよ、お燐」
「世話してみるもんだねー♪」
「さて…あんたらの分は流石にないっすよ」
「知ってますよ。さ、行くわよ。こいし、物欲しそうに見ないの」
「いーなー…ゆーの手作り…」
「な、ちょ、ダメですよ!?」
「私は?私には?」
「お空もどっか行ってなさい。しっ、しっ」
「はーい!」
…よし、全員行ったな。血は濃すぎるとバレる。フランドールやレミリアさんに会った日には最悪だ。ねだられるならまだしも、強奪もあり得ると考えて良い。とか考えながら手の甲を少し切る。これくらいなら、まあ。あれだな。慣れた痛みである。つい最後に喰らった一撃の痛さで言えば紫の照れ隠しが一番痛かった。ホワイトデーのお返しに僕の身柄を要求され、思わず聞き返した時の反応であった。
「…良し。こっちがルーミアで、こっちがチルノだな」
個数も確認。さっさと地底から帰るか。さとりちゃんの読心術を畏れて僕を追ってくる妖がほとんどいない地底では料理を作るのに好都合。つまみ食いも発生しづらい。地上に登り着き、霧の湖へ。血は鮮度が命。焼いてて何を言うのかと思うかもしれないが、まあそれはそれだ。僕は何も考えずにただ歩くだけだ。紅魔館の周りを避けて。うん、良い感じ。チルノとルーミアを見つけて手招く。
「おー!久しぶりの食感なのだ〜」
「美味しい!」
「これが礼だ。ルーミアもありがとな」
「んー、わかったのだ」
「…じゃ、帰るわ。多分そろそろだし」
「?」
「さよならー」
家の扉を叩く音がする。ドンドン、と。少しずつ大きくなっていく。ゴンゴン、と。僕は家の外からその様子を見ていた。やっている本人は妖夢で、付き人のように幽々子さんが立っている。何やってんだろ、と見ていると少し幽々子さんが揺らいだと思えば消え、僕の目の前に。2歩下がる。僕の勘では来てるくらいにしか考えてなかったんだが。なんなら幽々子さんとか除外してたし。
「…な、なに」
「朝食べに来ちゃったのよ。それじゃ、お家でご飯でも食べましょ?」
「…幽々子さんの好物なんか知らないので」
「構わないわよ」
最後眠すぎたんで誤字脱字があったら教えてちょ