僕は今、家の中で読書をしている。理由?久しぶりに昼間に誰も尋ねてこないからだ。今一冊読み終えたところで、読書後の感覚とはこう言う物だったなと適当に思い出しながら床に転がっている。このような時間が大好きだ。そしてそう思うとすぐにその時間は消え去るものだ。僕の経験則であったが、どうやらそれももう会わないらしい。漸く、好きに行動ができると。じゃあ何しようかな。
「こんにちは」
「…いねえと思ったのにぃ」
「?何言ってるかわかりませんね。お薬出しますか?」
「良いよいらない…」
優曇華。優曇華じゃないか。僕は項垂れた。まあ良い。いるならいるで考えるべきだろう。些か不満ではあるのだが、まあそれは…それとして。僕はいつのまにか感情を押し殺すのが得意になった。いつから出来たとか、そう言うのは知らない。結果的にはそれが優曇華の言う波長にすら出ないポーカーフェイスならぬ…ポーカー波長になったわけだ。故に優曇華もたまに僕の機嫌を伺う。断言しておくが、良いことではない。むしろ悪いことである。
「…ゆーさん、ご飯は何が良いですか?」
「んー、雑煮」
「わかりました」
夏も終わり秋が近い。季節とはこうも僕に気配を感じさせずに動いていく。悲しいかな。冬になると厄介なのが動きやすくなり、その結果として僕は被害を受けることがある。まあそいつ限定の話ではないけども。冬になれば八雲紫も冬眠する。僕を守る手段が一つ減ることを考えるなら、冬は過ごしやすい季節だが危険な季節であることがわかるだろう。鈴仙はそんな僕の杞憂も知らずに鼻歌混じりでご飯を作ってくれている。
「はい!出来ましたよ!」
「餅は入ってる?」
「…どこにも餅はありませんでしたよ?」
「ありゃ、どっかで仕入れた記憶が…あー、誰か持って行ったな。天邪鬼かな」
一体いつの間に。賞賛してやるから出てきなさいと言いたい気分にかられるも、おそらくこの場にはいないので。僕はさっさと餅の入ってない雑煮を食べ始める。しかし、餅以外は食べられてないと言う事実の方があまり信じられない。普通栄養価の高い方を食べるだろう。腹持ちの良さで選んだのか?もしそうなら、さぞ懸命なやつなのだろうな。僕にはあまり理解のできない所業ではあるが。
「ゆーさんに迷惑をかけてるなら私が捕まえてきますけど」
「良いよ。あれを捕まえるつもりなら僕はここで待つだけで良いし」
「そうなんですね。おかわりはいりますか?」
「今の半分くらいの量で」
「わかりました」
おかわりも食べ、優曇華と共に机に頭を乗せる。ちなみにだが、優曇華はここに来ることを理由に休みを得ているらしい。僕のところを尋ねれば合法的に休めるのだとか。優曇華も大変そうだなぁ。僕はあまり味わいたくない忙しさだ。アレはもう、教育実習だけでよかった。あんなに辛いなんて誰が教えてくれたんだ。いや違う。優曇華と顔を見つめ合い、たまに逸らしたり逸らさなかったり。
「…ゆーさんとこんな風に駄弁る一生を終えたいです」
「終えたいの?過ごしたいの?」
「このままぽっくりと」
「休みたいだけだよね」
「…ここに来るとですね。帰った後に師匠から『また連れて来れなかったのか』って言われるんですよ。なんなら姫様からも」
「じゃあなんで来るの?」
「大好きだからです」
「…正直なのは良いことだよ」
返事は返さんがな。水を飲み、娯楽としての読書を終え、体を伸ばし、さーてここまでやってまだ日が落ちてないぞどうしようか。少しの涼しさを風で感じつつ、空が乙女心のようにどんよりとしてきた。不安定さを見せる空を見えないように窓を全て閉め、寝転がる。雨は好きだが濡れたくはないのだ。寝転がっていたら優曇華が跨ってきた。悪手だったようだ。読書本もないので見つめ合うしかない。
「…ここから動きたくないです」
「こんな天気ならそうなるよなぁ」
「私もここで暮らそうかなぁ」
「それならそれで永琳の方に連絡入れろよ。僕だって面倒なのは嫌だからね」
「…私と暮らすのは別に問題はない、と?」
「この家の中に収まるなら何人いても良い。僕の部屋に入らなければ」
「…今から永遠亭に辞職届を」
「ちょっと待てや」
僕は必死に止める。そしてその会話をどこで聞いたかわからないが紫が来た。アリスは人形だろう。待て、僕はこの家に収まるならと言ったんだぞ。後紫が来たら正邪が来ないだろう。あーもう、どけどけ。前言撤回だ、どっか行け。僕が何をしたらこうも変な扱いを受けるんだか。全く意味のわからないことである。優曇華は帰る気がなさそうだ。僕は項垂れ、そのまま不貞寝をすることにした。
「もう、皆勝手ですね」
「…無自覚なのは良いんだがな、うん。聞いてるやつが多すぎだ」
「きゃっ、いきなり耳に手を…やるなら耳かきで…ひゃんっ」
「変な声を出すな。ほら…ほらあった。永琳のやつだな」
「これは?」
「…盗聴器ってやつだよ。」
こんなものを仕込むほどの何かがあるのかね。息を吹き込み、優曇華の頭を撫で意識を盗聴器から逸らし、盗聴器を握り潰す。ふむ、まあ、そう言うことだろう。僕としてはプライバシーは欲しい。たまにだが魔法で聴かれていることがあるため、それは見つけることができない。なんでこうも僕のプライバシーは無くなっていくんだ。おかしいだろう。長寿なら長寿らしく砕けるようにストレートに来ても良いだろうに。妹紅さんはそうだった。
「…あの、また触っても良いんですよ?」
「誰が。耳かきは永琳にやってもらえよ」
永琳「甘いわね。鈴仙自身に仕掛けさせてるから無駄よ」