往々にして妖とは嘘をつく。しかしたまに本当のことを言う。そんな感じの生態をしている妖に僕はよく攫われたり救われたりして、世話にはなっている。だけれども、だけれども。僕は流石に今のこの状況から助けてくれる妖は思いつかない。僕の目の前には、純孤さんと…よくわからない狸の妖が一人。純孤さんを止めながら話を聞く。僕と純孤さんの養子縁組を聞きつけてやってきたらしい。僕はそれでも理解できなかった。多分初対面だよね?
「…あぁ、八雲紫は伝えておらんのか」
「え?」
「ゆー、知っているのか?」
「いや、知らないはずだけど…」
「はぁ…ほれ、お前さんを初めてゆーと呼んだのは誰だったか」
「っ…」
ずい、と近づけられた顔から肩から上の力で距離をとる。僕を勇吉ではなくゆーと呼び始めたのは僕の母親だ。気がついたらそう呼ばれていたはずだ。幻想郷の前の記憶などはあやふやだが、こう言う変なことは覚えている。しかしなぜ今それを。僕としては本当に面識がない。すると、目の前でコミカルなボフッと音が鳴った後。僕のよく知る母の姿が見えた。声を漏らし、尻もちをつく。
「頼んだなら伝えておくべきだろうに…全く。お主…ゆーの育ての親はワシだろう?」
「あら、じゃあわたしが継母ね」
「んー?それを言うなら儂も継母にはなるがの」
「ぇ…い、つから…」
「ん?そうだのう、ゆーが二歳の時からじゃ。ゆーが幻想入りしたと聞いた時は驚いたぞ。ある程度の身支度を済ませてさっさとこっちに来たんじゃからな」
「は…?」
「これくらいは聞いてるじゃろうが…八雲紫はゆーのことを、ゆーが生まれてからずっと知っておったのだぞ」
聞いた。聞いたとも。紫の家に生えている桜。アレが僕と同い年で、更にはあの木を僕が産まれたと同時に植えたのだとも。でも、だからと言って親が妖怪?あり得ない、それなら僕はずっと妖怪と暮らしてて…は…?目の前の狸の言葉から察するにどうやら紫が頼んだらしい。鼓動が早まる。紫に、事実の確認。いやでも今は冬だ、じゃあ、あれ、誰に確認すれば?八雲藍さんはどうやら僕とは初対面だった。誰に…
「そうか。だがしかし、この一瞬で理解しただろう。お前はゆーの精神を乱す。ゆー、気にすることはない。さ、帰りましょう」
「ほう?過保護じゃなぁ…自立すらできない子供の誕生かの?」
「…先ほどから黙って聞いていれば」
「ん、今のが煽りだと聞こえたのなら申し訳ないな。何せ子育てまあまともにできた試しがなさそうじゃ」
「あ゛?」
純孤さんを止める。…純孤さんの能力である、結構端折って説明すると消しとばす能力が目の前の狸を消し飛ばしたら僕の夢見が悪い。ので必死に止める。今日は帰ってもらおうかな。無理かな。僕としてもこの人のこと気になるし。と言うわけでどうにか純孤さんには帰ってもらった。狸と歩くことに。僕は一体どう扱えば良いのか…育ての親らしいけど、一体誰に話を聞けば…困ったな、もう。
「でもどうして今更」
「儂も養子縁組なんぞ組まれなければゆーの前に姿を現さなかったわい。」
「養子縁組…紫から許可はもらったよ」
「あのスキマ妖怪め…全く。新聞にゆーの情報が載ってるから我慢しておったのに」
「そうなんだ…」
「しかし助かった。正直言ってアレには勝てんからな」
「何やってんの!?」
「いやいや、ゆーの優しさに賭けただけじゃ。儂の育て方は間違ってなかったんじゃなあ」
姿を元の狸に戻した狸、マミゾウさんは僕を抱え上げた。なんでマミゾウさんは僕より大きいのか。なんか2メートルくらいない?変化で身長も変えられる?何言ってんの…でも安心する。どうやら本当に僕の育ての親をやってたらしい。でもね、怖いからおろしてね。や、ちょ、揺らさないで。いやまあ、うん…マミゾウさんから抱え上げられた状態で聞いた話を全てまとめると、紫は後で殴る。
「ほれ、ここが最近儂が訪ねてる寺じゃ」
「…ま、マミゾウ?文句とかじゃないんだけど、あの、帰して…」
「ここまで来て帰るはないじゃろ。全く…」
「おや、マミゾウにゆー」
「いっ!」
星さんがいた。いやね、星さんならまだ良い。聖が一番ダメなのだから。マミゾウの手からどうにかして抜け出し、立つ。後ろに下がろうとしたら背中に感触。後ろを向くとひじりがいた。えっ、今の感触って壁となそういうものにしか許されない不動でしたよね。僕はさっさと連れ込まれ、マミゾウが笑いながら現状を見る。この狸め…そうして僕とマミゾウの関係が聖に明かされる。
「まあ、そう言う関係だったのね」
「ゆーが勝手に母親を変えよったから出てきたんじゃ。それがなければ新聞で満足していたわい」
「…なんで僕を見るのさ。僕だって知らされてたら組まなかったよ」
「ゆー、お茶です」
「あ、どうも」
「命蓮寺の方がマミゾウも気軽に訪ねるでしょうから、やはり命蓮寺に住処を移した方が」
「?何を言っておるんじゃ、儂は別に遠目で見れれば良いぞ?」
僕としてもその答えは意外だった。今まででそんなことを言った人はいなかった。一人として僕の自立を認める人はいなかった。僕は喜びそうになった。そんな中、星さんは僕を膝の上に乗せた。え、なんで。ナズーリンさんで我慢してよ。僕こう言うの苦手だよ。
「ま、流石に命の危機に至れば姿は現す。言うたじゃろう、母親を変えたのが気に食わないから出てきただけじゃと」
「今後は関わることもない、と?」
「そうではないが…まあ良い。ゆー、最後に言っておくことがあるぞい」
「なんです?」
「…ゆーの父親は儂じゃなく、八雲の式神じゃ」
藍さんは高性能コンピュータ、従来の父親と同じことをするのは楽勝。
設定が盛りすぎだな…?でも寵愛だしな…