寵愛な幻想郷   作:覚め

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沼の底から


仄暗い

「…とうとう始まったか」

 

「ゆーを賭けた争い?」

 

「人里競争賭博…!」

 

「あ、待って随分不健全」

 

風見に新聞が取られる。良いじゃないか、僕は外の世界で一切の賭博が出来なかったんだ。単純に興味があるだけだと言うのに。ていうかなんだよ、僕を賭けた争いって。景品じゃねえんだぞ、僕は。僕が景品だとしたらそれはもうかなりトチ狂った争いだ。何故なら僕はそもそも物ではないからだ。ちなみに人里の賭博は金ではなく米を賭ける形だったので僕は参加できない。米ないからね。

 

「風見…不健全とかよく言えたな…」

 

「別に良いでしょ、私が何を何と言おうが。どうせ後ろには妖がいるんでしょうし」

 

「御名答」

 

「ま、それが分かるってことは対策も出来るってことだけど。」

 

「変なこと言うなよ。対策したってこっちは見られるんだからさ」

 

「そう。なら今頃そっちは大騒ぎね」

 

その言葉を聞いて気を引き締める。どれくらい引き締めたか。僕と風見の距離を30メートルに広げたくらい。つまり僕は今屋外にいる。出来る対処法の候補として絞れるものはないが、それでもある程度の理解はできる。範囲か対象か。風見のことだ、どーせ僕自身を対象にしているのだろう。なんなら魔力が少し減っている気がする。何か仕掛けられた?…ないか。にしても、風見のこれは予想外だ。

 

「別にそれくらいの距離ならすぐに追いつくわよ」

 

「げっ」

 

「それっ」

 

脇腹に何かが刺さる。バランスを崩して勢いよく倒れてしまうが、うーん。痛覚切る魔法覚えておいて良かった。でなければただ連れていかれるだけだった。起き上がりにくく扱いづらい体を何とか駆使して風見の首を蹴る。全然効かない笑えない。僕の抵抗は虚しく消え、どこかへ運ばれていく。どこからかメディスンも現れ、概ね理解。ドレミーの話していたことと幽々子の話が合致する。紫と摩多羅への対策。それ以外は毒で足りたということだ。

 

「メディスン…」

 

「眠らせることはできないわ。死なれたら困るし」

 

「この体制なら、こう!」

 

メディさんの頭をぶっ叩き、それによって揺れた風見の肩から脱出を試みた。結果はまあ、うん。無視だな。僕は結局そのままいつぞや振りとなる風見の家に来た。昔、それこそ花だけが僕の友達ムーブをしていた人間不信だった頃はよくここの花を眺めていた。風見もどちらかと言うと植物のような妖怪だったからな。それが今ではこうだ。笑えんよ。拉致された挙句に帰れないのは一番ダメだ。帰りたい。

 

「っ…」

 

「我慢して。その種が芽を出すまでは動けないのよ。メディスンが見つけた種だからちょっとやそっとじゃ枯れないのよ」

 

「そりゃ便利なタネを見つけたなメディスンは。褒めてやる、こっち来い」

 

「はーい」

 

脇腹は刺されたのではなく貫かれていた。風見の傘によって。今現在はその部分を埋める植物の種を仕込まれ、その出芽を待とうと言うことだった。種を仕込む…なんか卑猥だな?しかしやはりと言うか。メディスンがこの周りに毒をばら撒いてきたのか本人はかなり衰弱している。髪の毛の奥が少し濡れている。恐らくは汗で、目も伏せ気味。頬と顎の肉が…お前確か人形だろ?なんでそこに変化が訪れるんだ?

 

「無理はすんなよ」

 

「…分かってるわよ」

 

「それに僕の心当たりだと毒草を無効化してくる強い妖精を知ってるんだが」

 

「空気は、凍らせられないから」

 

「バケモンかよお前」

 

風見の頭も撫でる。こちらに衰弱は見られない。どちらかと言えば活気溢れてる。僕の知る風見なら頭を撫でた途端に腕を掴まれてもおかしくはなかったのに、今は僕に身を委ねている。長い緑髪の毛先を見ても分かるように、メディスンとは違って手入れする余裕があるようだ。ちなみにだが毒に関しては僕の脱走を妨害するためにもあるらしい。化け物か、お前。でも僕一応免疫作れるからね、と言うと吸ったら即死レベルの毒だとか。え?

 

「あら、ゆー。早速慌てて貴方の家を訪ねてる馬鹿が…六人。全員盗聴でもしてたのかしらね?」

 

「見覚えは?」

 

「スキマと後ろ戸、それに魔法の森の魔法使いまで。でも1人厄介なのがいるわ」

 

「誰?」

 

「博麗霊夢」

 

小さく声をあげる。何故?何故??まだホワイトデーに未来への貯蓄としてクッキーを渡していないのに、どうして?息を整え、れるわけないよね。マジで。は?僕の知ってる博麗の巫女はこういう事態に出勤したか?答えは否。そんなことをした覚えはないし、そんなことをする人に見えなかった。温泉の時でさえ巫女さんは気付いていたはずだが見て見ぬふりをしていた。だから僕はそういう性格だと思ってたのに。

 

「やめなさいよ、貴方まだ動けないのよ」

 

「栄養補填剤でも何でもぶち込めば育つだろ!」

 

「毒は転じて栄養にできるけど」

 

「おっしゃもらった!」

 

「…何でそんなに焦ってるの?」

 

「当たり前だろ説教喰らいたくねえんだよ」

 

実際一度だけ叱られたことがあるのだが、なんとも。めんどくささは閻魔を凌ぐ。だって聞いてるかどうかの確認が聞いてますか?じゃなくて復唱しろなんだもん。閻魔ならちょろいのに。しかしまあ、なんというか。どうすんの、これ。僕としては別に良いんだけど、紫や他の奴らもこれは快く思わないだろう。恐らくだが巫女が出ているのは紫が垂れてきたから。まずいな…?

 

「とりあえず僕はその辺で寝てたことに」

 

「出ても良いけど、ゆーは吸ったらすぐに死ぬ毒をどうするの?」

 

「…」

 

「メディスンの毒でまず人は近寄れない。それ以外を私が蹴散らす。そうすれば未来永劫、ゆーは私たちだけのもの」

 

「メディスン…助けて…」

 

「嫌だ」




巫女「…殺すけど、どうする?」
紫「一生のお願い♡」
(AM.3:00の出来事)
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