寵愛な幻想郷   作:覚め

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うおおおおおお!!
これ書いててなんですけど、僕はやっぱり一話完結の短いお話がまだ楽なんだなって思いました。まる。


始まり

「…どうした、紫」

 

「ん?あ、いたのか」

 

「随分と仲が良くなったのね」

 

「いや、酒の匂いつけられてるだけだ」

 

「ん、そうだ」

 

ホワイトデーから少し。神子どもからは何もなく、命蓮寺の奴らからも何もなかった。純孤さんのところも。つまりは…本当に、何もなく終わった。不気味なほどに。萃香の頭を抱えながら本を読むほどには平和で何もない日。嵐の前の静けさと取ればいいのか…それとも嵐が過ぎ去った後だと考えればいいのか。過ぎ去ったんだろうな。嵐が神子で。そうなると完璧通り過ぎた。2連続で嵐が来ることはないな。

 

「ん、紫もか」

 

「出来れば萃香を追い出したいわ」

 

「やだね」

 

「生意気な」

 

「どうしたんだよお前…」

 

「これ、見なさい」

 

手渡されたのは新聞。うわ、文の奴だ。読んでみるか…え、なんか僕結婚したことになってる。しかも萃香と。首飾りのことも書かれてる。え、どう言うこと?ちょっと待て。つまりどう言うことだ。僕と萃香は他人から見れば事実婚だったのか。しかしそうなれば騒ぐ奴も出て来るはず。…出て来るはずである。そうだろう?紫に聞いてみるも、なかなか答えない。…紫?

 

「ええ、これは私の失態。だから、私が責任を取らなければならない」

 

「紫、話が見えてこないぞ」

 

「萃香、今日から貴女は接近禁止よ」

 

「…は?」

 

「待て萃香落ち着け」

 

「こうなるんでしょうね…他の人外には貴女をどうにかすることで抑えてもらってるのよ。だから…」

 

「だからって離れるわけないだろ」

 

衝突しやがった。僕は哀れにも吹き飛び、すってんころりんと転がる。あの新聞に書かれていたこと、紫が抑えてもらっていると言ったこと。いや正直言って黙ってる奴が何人いる?紅魔館は抑えるだろうか。天界…どころか冥界や仙界は新聞届いてんのか?命蓮寺は黙っててくれ。アリスは多分黙らないだろうな。正邪は黙るだろう。となると、風見幽香はここに来るだろうな。メディスンも。まずいな?

 

「っ…あ?」

 

違和感。体が今勝手に動いたような感覚。いや、今確かに動いた。全力で身体を反対方向に動かすよう意識すればまだ抵抗できる。が、糸の感触がないことからアリスの仕業ではない。じゃあこれはなんだ。本能からどこかに歩いて行こうとしているのかな。まだ遠くから萃香と紫のぶつかる音が聞こえる。家からはそう遠くはないはずだが、キロメートル単位で離れてはいそうだ。

 

「っ…ぐっ…」

 

「お困りかな、ゆー」

 

「摩多羅!」

 

「そんなに嬉しそうな顔をされると私も嬉しく思う。それで、ゆーは今どのようになっている?」

 

「体が、ちょっと言うこと聞かない」

 

「ふむ…一回気絶させて確認してみよう」

 

「えっ」

 

目覚める。目覚めた僕は立ちながら摩多羅に抑えられてた。肩を掴まれて…何これ、どう言うこと。聞くと僕は気絶した途端に走り出したらしい。そんな馬鹿な。気絶してんだよな?そこを摩多羅が抑えていたとか。挙句に空も飛ぼうとしたらしい。なるほど肩を掴む理由になる。自分の意思で足を止め、摩多羅の腕を掴む。そろそろ痛い。しかしそうなれば呪いの類か。頭に浮かぶ選択肢は何個かあるのが嫌だな。

 

「…右手の薬指か?」

 

「多分な」

 

「しかしそんなことが」

 

「摩多羅の目に映らないならもう科学の力よ。はよしてくれ」

 

摩多羅に右手薬指を千切らせる。これならもう勝手に動くこともあるまい。摩多羅と紫、紅魔館の奴らは信頼できる。事が収まるまでそこを頼るのもいいんだが、それと同時に僕が頼る事でなにかしらの変な事が起これば申し訳ないと言うことにもなる。薬指の焼かれるような痛みを我慢する事ができる自分に驚愕しつつも、対策は打たないと…どうするべきか。どうしようもないのか。まずは文に解決したことを報道させればなんとかなるか。

 

「迷惑をかけても問題のない相手、それは」

 

「お前じゃねえぞ」

 

「…」

 

「とにかく。紫と萃香の喧嘩が終わらないことには何も始まらん。」

 

「…なあ、ゆー」

 

「なんだ?」

 

「今ので私の誘いを断ったのは何度目だ?」

 

「急だな…知らんが、三桁はないな」

 

「そうだ。ゆーにとって私は摩多羅隠岐奈であり、摩多羅神ではない」

 

「…?」

 

「これからは摩多羅隠岐奈とゆーではなく、摩多羅神と勇吉だ」

 

「何言ってんだ?」

 

「今後は対等ではないと言うことだ」

 

首を掴まれる。情けない声が出るも、それ以上に摩多羅がなりふり構わないことに驚きだ。こっちは右手の薬指がなくなったばかりだと言うのに、随分乱雑な。必死に抵抗をする。魔力も込める。だが、摩多羅も格式のある神らしく僕の抵抗を一切無視している。千切れた小指を探す傍らで僕は首を掴まれたまま壁に押し付けられている。声も出せず、マジでヤバい状況。ざけんな腹何回も蹴ってんだぞ。

 

「っ…」

 

「この指輪を、左手の中指に着けてもらいたい。そうすればこの指輪の真価を発揮する。ゆー、お前は私と同格の存在となり、お前は」

 

「断る」

 

「…そうか。いや、期待してたわけではない。お前はきっとそうするだろうとは思った。今ここでお前は私の夫となる道を断ち、私の物となる道を選ぶと!」

 

「は?」

 

「この指輪はな、首輪にもなる。私はあらゆる神を兼任する。人から権利を奪い、自らのものとする神も私は兼任するのだ」

 

「っ」

 

未だ血が溢れる薬指を抑え摩多羅の顔を蹴りまくるも、何の意味もなさない。抵抗しているうちにも首輪と化した指輪が迫って来る。なんで顔面蹴られても無反応なんだよ。そろそろ怖えぞお前。いや元々怖えわ。紫は萃香との喧嘩でおそらく来れないし、そうなると本当にどうしよ。純孤さんやマミゾウが来てくれると助かるが、摩多羅が結界やらなんやらを施せば簡単に来れる場所ではないだろう。

 

「そんなに怖いか。自我は残り、私の意思に従わなくても良いと言うのに」

 

「っ…ぁ…」




摩多羅神「来い。選択肢はそれのみだ」
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