「確かに盛りました。ですがね、一応考えがあったんですよ?」
「ほう?」
話を聞いてみると、何やら薬を盛ってどうこうするつもりはなかったらしい。僕が寝不足気味なのを見て盛ったとか。それにしては量が多くかなりの即効性だったな。あのまま風呂に入れば溺死だぞ。そう言うと、そのための一輪だったことを告げられる。なんだか嫌な伏線の張り方をする。と言うわけで、何やら寝るために盛られたらしいので寝ようとすると星がそれを妨害する。なんだ、今度は寝かせてくれないのか。なんなんだお前。
「まあこのまま一夜を共に過ごして既成事実を少々加えてもいいんですけど」
「よくない」
「私としても寝かせたくない、と言うだけですよ。寝てしまうと、聖のいない一対一の状況が崩れてしまいますから」
「なんだ?僕は今日徹夜か?」
「いえ、夜明けごろには寝ても良いんですよ?」
「それもう起こされる日じゃん」
「後は…夢魔に襲わせないためですかね」
「ドレミーのこと?」
「解釈はご自由に」
なんだかよくわからんな。星に言われたことを無視して、何をしようか考える。寝ないようにすれば満足なのだろうから、起きてさえいれば良いだろう。布団から立とうとすると、足元に星の持っていた長刀が。寝転ぶか背を起こすかくらいに留めろ、とのこと。余計おきているのがきつくなったな。さてどうしたものか。流石にうとうとする頭を星にこれでもかと見せると、頭を支えられた。
「まあ、ゆーは健康的な生活をしていますからね」
「そうだなぁ。だからもう眠くなってるからなぁ」
「…そうですね。まあでも起きてもらうんですけど」
「お前なんか今日は強引だな?」
「それほどの事情と使命感がある、と思ってもらえれば。」
「今日なんかあんの?」
「いえ?少なくとも私が知り得る限りは」
「じゃあ寝させてよ。夢魔とも仲が良いんだよ?」
「そうですか」
軽く流された。なんだよもう…いじけたいがそんなことしても意味はない。星は僕が眠らないように体を揺すってきたりするから本当に眠れない。あの、あんまり強く握られると腕が痛いです。脇腹はダメです。いだだだ、こいつ。仕方なく起きていることにした。もう簡単に寝させてくれよ。眠い。僕が何をしたのか、よくわからない。しかしあれだ。こうも考えていると段々と眠気が消えていく気がする。するだけだった。
「ゆー。このまま起きていれば明日にでもお家に帰れますよ」
「ほー、そりゃ嬉しい」
「ですからこのまま起きていてください。」
「寝たらどうして帰れないの?」
「…いえ、正しくありませんでしたね。起きていても帰れることには帰れますよ。ですが、厄介が生じます」
「どんな?」
「私にもさっぱり。だからこそ未然に防ぐためこうして起こし続けている」
「へぇ」
いったい何が起こるのか。空はまだ暗く、夜明けまでは後少しといったところ。夜明け前が一番暗いとか抜かす奴がいるが、それならまだ上等。ここ幻想郷では夜明け前ですら場所によっては山に隠れて陽が出たのかどうかもわからない時がある。え?それは夜明けではない?知らねえよそんなの。星に文句を垂れる。最近頭のネジが外れた誘い方をする奴が増えた、と。前には信頼できていた紅魔館すら信頼できなくなっている始末だ。助けてくれ。
「私ではどうも。それこそ、仏教を薦めることしか。まあ、貴方がここに住んで教えを乞うと言うのであれば、皆歓迎しますが。」
「そうならないんだよね」
「それも良くわかっています。後は…そうですね。こちらの手紙を、件の隙間妖怪に」
「なんぞこれ」
「今回の保護についてですね。八雲紫に手紙について頼まれていまして。聖が」
「その聖は?」
「…その手紙、中身は見ない方がいいですよ。また誰かを信用できなくなりますからね。」
「ふーん」
つまり手紙の中身は誰かの陰謀だろう。しかし…手紙か。僕の家には郵便受けを設けてないからかなり久しぶりの代物だ。恐らくは人里で暮らしていた二ヶ月間ぶり。と、ここに来て慧音先生を思い出す。最近会えてないな。でも今会いに行っても迷惑をかけるだけだろうか。里のお祭りは参加するなと紫にも言われているし。まあ、考えていても仕方はない。懐に…これ寝巻きだから意味ねえわ。
「…まだ?」
「もう眠くなりましたか?」
「ぃや…ん…」
「誘ってるんですか?」
「んなわけないだろ…いやでももう眠いぞ」
「仕方ありませんね…」
そう言われて星に抱えられる。そのまま少し上に投げられる。マジ?焦りのおかげか一瞬で目が覚める。そのまま床から一寸も離れていないであろうところで星にキャッチされる。怖いって、何の説明も無しにこれは怖いから。ほら、怖すぎていつもの僕ならやらない他人にがっしり捕まることやってるよ。怖いんだよ。ついでに脇腹ねじってやろ。いやほんと怖かった…もう嫌…この寺怖い…
「すみません、起こすためとはいえ…後脇腹が少し痛いです」
「だって怖えもん…」
「やっぱり誘ってますよね。仕方ないなぁ」
「お前寝不足で頭おかしくなってんぞ。さっさと寝ろ」
「何度も言ってるでしょう。そう言うわけには…おっと、もう夜明けですね」
明るい日差しが差し込む。僕は徹夜を後悔した。陽の眩しさと寝不足によるダブルパンチのおかげで目を瞑らなければいけなかったためだ。なんでここ陽が差し込むんだよ。日焼けとか気にする人だったらどうするんだ。戸を閉めろ?それはそう。星の影に隠れながら居間に歩いていく。そこには聖が一人で着替えていた。急いで後ろを向く。いつもは僕が起きる前に皆着替え終わってるのに…聖も。と言うか星はいつ着替えるんだ?
「夜更かしはいけませんよ。ちゃんと寝なければ」
「うわっバレてた」
「私がついうっかりお話ししてしまって」
「後人の着替えを見るんじゃありません。星も分かって連れて来ましたね?」
「…私も寝不足で頭が回っていなかったようです」
「天誅…と、行きたいですが。早起きはいいことなので許します。星、皆を呼んできてください」
Q.寝てたらどうなってたの?
A.不老長寿になって人を捨てることになっていたため、巫女にぶち殺されるか存在を秘匿されるかの二択