自分の体が自由に動かせる事を証明して紅魔館から帰り。何だか少し久しぶりな気がする家の扉を開けると、すぐに閉めた。家の中を見た時、僕の脳裏に何が浮かんだだろうか。蠱毒?いや、それならまだ良い。蠱毒が共生しそのまま僕に食ってかかりそうな雰囲気を感じた。しかし開かなければどうにもならない。蠱毒に例えはしたが人数で見ればそれこそ大した数ではない。天子、紫さん、射命丸、アリス、…数えるのめんど。
「ほれ天子、起きろ」
「ん…あ、ゆー…今までどこいってたのよ」
「すまんね、少し神経毒喰らって寝てた」
「…はぁ!?何よそれ、ダメでしょ!」
「知らん。とにかく…紫さんも、ほら、起きて」
「…ぁあ、なるほどね。後で問いただそうかしら」
そう言って紫さんは消えた。アリスの背を起こし、呼びかける。射命丸も。リグルでさえもここで寝ている始末。 何でお前らそんなにここで寝てるんだ。早く帰りなさい。天子も。そう言った後、僕は何故か天子に押し倒された。うつ伏せで。少しの沈黙の後、現状を理解した射命丸達によって天子が引き剥がされ、その後にアリスやら何やらが僕の上を陣取り始めた。きつい。
「っはぁ…今日はちょっと疲れた」
「まだ一日は始まったばかりなんですよ?まあ、八雲紫やらなんやらのせいで大した熟睡はできませんでしたが。」
「射命丸は人の家で寝ない事を覚えろ」
「幽香さん帰った?じゃあ私も帰ろ」
「…つまり?」
「3日前までいましたよ」
頭を抱えておく。マジか…。アリスは僕の家に人形を飾りつけた後に出て行き、リグルも宣言通りに帰った。天子は僕に構ってもらえないと見るや否や頬にキスをして去っていった。できるだけ控えてもらいたい。面倒な相手が多いのだから。現に射命丸なんかはすんごい顔で僕を見ている。信じられないと言うよりも私もやっていいのかと問いたそうな顔だ。どうぞ、とすると早速された。
「ん…貴方の緩さ、妖怪からすれば隙ですよ」
「襲われること以外は別に。どうせアリスが見てるしな」
「…さて…行きましょうか。」
「どこに?」
「お風呂ですけど?」
「僕は入らないよ」
「嫌だなあ色々と準備するために身体を整えるんですよ」
無視。何言ってんだかね射命丸は。さて僕は散らかった部屋を片付けつつ、どこかに出かけたい気分に駆られていた。いやしかし拉致された直後だ。あまり居なくなるのは控えた方が良いだろう。ならば日帰りか。温泉でも行こうかな。博麗神社近くの。でもあそこの巫女さん怖いんだよな。出会う度に妖怪になってないかどうか確認してくるし、酒の匂いが付いてたら萃香を探し出すし。なんでかね。酒の匂いは好きそうなんだけどね。
「…だからって直接本人に来たわけね」
「うん」
「はぁ…混浴って、されるとこっちが面倒なのよ。男湯と女湯で分けてるんだからそれで入って欲しいってだけ。萃香はそう言うの無視できるから警戒してるし」
「はぇー」
温泉まで案内してもらい浸かる。あったかい。久々の広い風呂、そんで持って1人の風呂だ。紅魔館では妖精メイドによる僕の溺死妨害が行われていたため、久しぶりとなるのだ。問題としては、恐らくルールとかそう言うの一切聞かずに入った正邪が目の前で寛いでいることだろう。一応背を向けて見ないふり。ここは男湯と女湯が完全に分かれている構造のため、やはり正邪が悪いが、今正邪を見たらそれはそれで僕も悪くなる。
「…ぅわっ…あっ!?お、おお、お前、ゆー!」
「なんだ」
「おま、おまえここ女湯だぞ!?」
「…男湯だよここ」
「えっ」
「ルールどころか表記も読めないのかお前」
でも博麗の巫女が気付かなかったことはないだろうから、公認なのかな。それとも面倒だから良いやの精神?どっちもろくなことじゃないけど。しかし正邪が出ていく気配がないな。正邪はこういう時に騒ぎながら出ていくかと思ってたんだが。空を仰ぐ。こっちが出るのを待っているのかな?まあそれもそれでありそうではあるけども、僕は認めないわけで。はー、どうしよ。
「どうするもこうするもない、私に任せれば良い」
「うわっ!?」
「ぎゃっ」
「後戸の国に案内させてもらおうか」
「や、ちょ、ゆー、ゆー!」
「やめんか摩多羅!」
後戸ごと岩にぶつける。お前も監視してる内の一人か。そろそろプライバシーが無くなってきたな。八雲紫が出かかっていたのかどうかわからないが、少なくともこいつは出た。つまり正邪が音もなく近づいたからなんかしたんだろう。遠心力で摩多羅を投げ飛ばし、正邪を庇うように立つ。いや、浸かる。そうここは温泉。男湯。二人とも女湯に帰すのが道理だ。そのはずだよな?
「…何故その妖怪を庇うんだ、ゆー。お前のその態度は何だ。つい最近連れ去られたのに分からないのか?」
「やめろ摩多羅。お前の相手するの面倒くさいんだからな。」
「お前を守れるのは私だけだ。そこの木っ端な妖怪でも、博麗の巫女でも、幼い吸血鬼でもないのだぞ?」
摩多羅から少し笑いが溢れる。神は尊大だな。しかし僕は守られるより守る側でいたい。なんならそのどちらにも属さず生きて行きたい。そんな人間なので、こいつのバックダンサーになるのをずっと拒否し続けている。しつこいんだよ、こいつ。本当に。しかし最近は間が空いたから飽きたんだなと思っていたのに、どうやら飽きたどころか少し怒っているらしい。僕が正邪を庇うのがそんなに嫌なのかな。
「その連れ去りも正邪がいなかったらどうなってたかな」
「…紫が見つけただろうな。あそこの魔法使いと違って大した時間もかからない」
「ああ言えばこう言う」
「少なくとも今その手を離すなら私もここから消えるさ。なあ、天邪鬼?」
「っ…や、やだね!私は天邪鬼だぞ!」
「そうか。そこまでして消えたいか」
ヤンデレってなぁに(原点喪失)