キングwithゴムゴムの前世氏   作:ZN

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続けてみました。
 
※おまけ追記


劣化版ゴムゴムのキングvs劣化版ピカピカの家なき王

 

 

 

 

 ピンポーン、という音と共にジェノスが秒速で扉の前に立ち、サイタマに無表情な顔を向ける。おそらく面倒がっているのか「もしやサイタマ先生の弟子になるのを狙っているのか」という表情なのだろうが、そんな機微はサイタマには伝わらない。

 私服、とうより部屋着で完全にくつろいでいたサイタマだったが、ジェノスから相手が誰かを聞いて面倒そうに表情を歪めた。むろん「ぬぼー」っとした印象は抜けていない。

 

「サイタマ先生、またフブキ組です」

「うぇ~、またかよ……」

 

「人気者だねサイタマ氏。パニック氏だっけ? みたいじゃない」

 

 そして特に我関せず当たり前のような顔でカップ麺を食べているキングに「音速のソニックだ」と訂正を入れるジェノス。別に言う必要はないだろうが、多少は武士の情けなのだろうか、変なところで几帳面さをはっきしているのだろうか。

 どちらにせよあまり関係も無く、音速のソニックのことは忘れ去られている。

 

「サイタマ氏、麺のびるよ」

「おっ、いけねいけね。いただきます……」

「そう言う訳だから、先生は忙しい。他を当たれ」

 

「って、何悠長な事言ってカップ麺すすってるのよそこの……!」

 

 思わずキレて扉をバン! と開く美女。黒い揃えられたショートカットに同じく黒いハイネックなドレス。脚にスリッドが入っているのが何かと共通な感じの服装となっているが、そんな彼女は自身の超能力を使い、扉を強引に締めようとするジェノスのサイボーグパワーに対抗した。

 結果、扉が爆発四散した。

 サイタマ、「あっ」という他なく、同席していた相変わらず私服のキングは ドッドッドッドッドッ とキングエンジンを鳴らす。

 飛散る鉄片。ざくざくと床やら天井やらテーブルやらに刺さり、キングの鼻先数ミリを加速して通過する扉のポスト。「打撃は良いけど斬撃というか、刃物はね……」とぼそりと呟きながら、キングエンジンは加速する。

 

「せっかくわざわざフブキ組勧誘に来たって言うのに、新聞の契約以下の扱いな訳!? せめて知り合いの美女をもてなすくらいの何かくらいは有っても良いんじゃないの、アンタ性欲ないの!?」

「いやどーでも良いけど、お前、それ……、弁償しろよ? 扉」

「えっ? あ、うん。……って、いや、そんなことはともかくよ!」

「見くびるな地獄のフブキ、先生ならそのような枝葉末節の感情さえ己の強さに作り替えている。先生にそのような無駄な感情などない、サイタマ先生は完璧なヒーローだからだ」

 

 真顔でそんなことを言うジェノス。

 思わずサイタマに駆け寄り「アンタの弟子、大丈夫なの? 何かこう色々と」と思わず素で問いかける、ちょっと馴れ馴れしいフブキ。

 サイタマも扉を勝手にぶっ壊された怒りを置いておいて「こんなもんじゃねーの?」と雑に応対する。

 

 そして指パッチンをすると、扉の外から数名の黒服が部屋に入って来て、さらさらと請求書に金額と書く。

 

「意味わからないこと言ってないで……って、そういう話じゃないわね。はい、請求書」

「おー、サンキューな」

「ケチケチはしないわよ。じゃ、あなたもここにサインして、そうすれば振り込みの契約になるから」

 

 ──────ドッドッドッドッドッ────

 

 そして何か軽くやりとりされている流れに無言のまま目頭を押さえるキング。ずずず、と麺をすすって呑みこんでから「サイタマ氏、ちゃんと読まないと」と一言割って入った。

 

 キングのツッコミ通りというべきか、その請求書の片隅にはほんの小さく「なおこのサインについてはフブキ組に加入したものとみなし、組内での金銭の支払いに相当する」などと書かれており、当然ジェノスは視線を鋭くして、サイタマは「お前、こっすッ!」と大人げなく指をさしてわめく。

 当然のように「騙される方が悪いのよ」と言わんばかりの雰囲気で鼻を鳴らして微笑み腕を組むフブキ。過剰なほどではないがフブキの胸は姉のタツマキよりはるかに豊満であった。

 

 なおこの場にて反応する男は、フブキ組以外は誰一人としていない。

 ……キングに関しては内心の人格二つがそれぞれにそれぞれな似たようなリアクションで「おぉ!」と立ち上がりガッツポーズめいた姿勢をしているが、それが表面に出ないのがキングである。

 なお先ほどの粉砕されたドアの欠片が転がっているせいもあって、あおられた恐怖心からキングエンジンは鳴り止む気配がない。

 

 そしてしばらくフブキがサイタマを勧誘するような謎アプローチを繰り返しているのを見てから。

 ねぇフブキ氏、とキングの中の前世氏は問いかける。ナチュラルに。

 

「ひょっとしてサイタマ氏のこと好きなの?」

「えっ?」

 

「はぁ?」

 

 なお当然のように地雷である。

 

 面倒くさそうなサイタマの表情に対してか、あるいは雑に妙なことを聞いて来たキングに対してか。彼らの後方、入り口付近でたむろしてたフブキ組も目を見開いて「くわっ」と驚いた表情で固定されているが、そんなことはさておいて。

 

(前世氏~! 何言っちゃってるの前世氏~!? せっかくサイタマ氏たちと仲良くなったのに、出禁されちゃわないかこれ~!?)

(大丈夫、大丈夫。こういうのは下手に指摘しない方が進展が見込めないって相場は決まってるから……、エ□同人的な意味で)

(それむしろ色々アウトなやつゥ!?)

 

 そしてキングの精神内において、先ほどからずっとビビリちらしているキングと、割と余裕綽々にフブキを揶揄うつもりのような前世氏と呼ばれる人格は、表面上は双方の人格の境目などないように、普段のキングらしい口調で続けた。

 というか何の進展をさせるつもりだ、何の。

 

「…………そう、なのか? それは……、む、そういう事情なら────」

「えっ? ちょっと止めなさいよ鬼サイボーグ、何なの全然そういうのじゃないし。あなたむしろ『先生につり合う訳がない』とか言い出しそうなものだと思ったけど、何? ねぇちょっと空気変な感じになっちゃってるじゃな──────ってあなたはむしろ少しは意識したらどうなのよ……」

 

 本当に性欲とか無い訳? とジェノスに対して慌てて否定していたのとはまた違った表情で、サイタマに同情するフブキ。

 同情されるサイタマはサイタマで「いやお前面倒くせーんだもん」と、口元をひしゃげさせる。完全に忍者「音速のソニック」を目の当たりにした時と同様のリアクションなのだが、それがなおフブキの同情を加速させる。

 

 フブキ自身ハニートラップと言うほど経験はないが(※姉の監視があるため交際経験もない)、己の容姿やスタイルに資産もろもろ色々な要素込みで、異性を釣る事もゼロではない。なんならフブキ組を結成した時も、間違いなく自分が美女であるというのが影響している確信もある。

 その辺が全く通用しないサイタマに、謎の対抗心を燃やさない。

 その辺が全く反応しないらしい彼に、ごく普通に同情していた。

 

 脈無し、とジェノスがこくりと頷くと同時に、どこからともなくキングがスマホ(?)を取り出して何やら操作しながら一言。

 

「でもサイタマ氏って顔は良い方だと思うけど。やる気がある時は」

「えっ? 俺、そう?」

「ハッ」

 

 鼻で馬鹿にしたフブキに「はいこれサイタマ氏の昔の写真」とすっと差し出すキング。そこには何故か血だらけで、しかし目が爛々と輝いた……具体的に言うとハゲてもいないしマントも着用していない、普通の好青年の姿がそこにあった。

 ボロボロ極まっているサイタマのかつての姿。

 無様ね、の一言でも普段のキャラクターであれば有りそうなものだったが…………、何故かフブキは無表情のまま、写真を食い入るようにじっと見ていた。

 

「…………ま、まあ、悪くはないんじゃない?」

 

「おっ思ったより好感触だフブキ氏」

(というより、フブキ氏って意外と素直なところあるよね前世氏)

(割と育ちは悪くないんじゃないかね? お姉ちゃんが守ってた影響で)

 

 写真とハゲマントな現在のサイタマとの間で視線を行ったり来たりさせ、改めて写真のサイタマを凝視してぼそっと呟くフブキである。

 いる? と聞くキングに「い、一応、将来の幹部候補だし……」と微妙に言い訳めいた言い回しを取りながら要求するフブキ。

 

 両者の目の前で通信しながら写真のデータを転送するのに「俺も一枚もらいたい」とすっと介入してくるジェノス少年。もっとも「って俺の許可無いじゃねーか!? キングそれいつの写真だよ!」と叫ぶサイタマであったのだが。

 

 

  

「じゃ、帰るから。またね~」

「おー、今度は負けねーぞ!」

「負ける負けないじゃなくって、そもそもレベルアップしといた方がいいって。持ち運びのアレより育成しやすいんだからさ」

 

「一応聞くけど、あの二人、私来るまで何をやってたの……?)」

「デジモ〇の対戦だ」(※ジャンプ的な理由で)

 

 結局何も進展せず、雑に話し合いも進展せず。結局キングが持っていたかつてのサイタマの写真は両者に配られ、キングはキングでサイタマから一発殴られるという珍事こそあったものの(⁉)、とりあえず状況は落ち着きを見せた。

 なお殴られたキングは「金属と金属が接触するような」爆音と共にキングエンジンを鳴り響かせて「痛いよサイタマ氏~」と肩をすくめたのみ。これにはジェノスのみならず、フブキも驚愕の表情でキングを見ていたが。

 

 そんな場を「用事があるから」と退場したキングに、雑に応対するサイタマはそれはそうとして。

 途中からジェノスに「これもトレーニングだ」と共生参加させていたパーティーゲームの対戦に参戦したフブキ組の面々(おかげで部屋が手狭である)一同、そんなサイタマの平常運転っぷりに目を見開いていた。

 

 一方のキングはキングで表に出るとサイタマのマンションを走って離れる。特に特別な能力を使わず、軽いランニング程度の走力だ。今日も外向き、変装用にかぶってきた麦わら帽子が揺れる。

 

「……さて、家に帰ったら何見る? キング氏。バラエティも何だかワクチンマンのパロディコントやってるのがあったけど」

(というかサイタマ氏のパンチ、マジで怖いんだけど前世氏~!? 大丈夫なのわかってるけどさぁ!)

(いや、サイタマ氏が本気で殴ったら粉々になるぞ、いくら()()()()()()ボディでも)

 

 前世氏の無茶振りのようなからかいにちょっとイラっと来たサイタマがつい「あっ」と殴ってしまったキングであったが……、初対面の後に自分がサイタマの功績を多く奪ってしまっていること、それとは別に比較的最近「本当の意味で」ゴム人間的な体質に目覚めたと言う話を含めての謝罪を終えて、両者は正式に友人となっている。

 だからこそジェノスには内緒で「せっかくだし、一緒にトレーニングとかするか?」と雑に言ったサイタマに合わせて、スパーリングをしたのが運の尽き。あわれ手加減を間違えたサイタマのパンチ一発で、首から上が粉々になるような錯覚を覚えたキングと、辛うじて耐えた前世氏であったので、そのあたりは特に問題がないことは知っていた。

 

 キングの身体は、前世氏による生態融合および改造により疑似的なゴム人間風なものになっている。風、とつくのは、ワ〇ピースにおけるゴム人間のようなわかりやすいゴム人間ではないからだ。

 

 例えば直接的なエネルギー……、破壊力による打撃に対する受け方など。

 ちょうど今、キングに降り注いだ数多の光エネルギーの雨のように。

 

「眩しっ」

((眩しっ))

 

 前世氏、キング氏、双方同時に同じようなリアクションで目を瞑り手で顔を覆う。

 そして絨毯爆撃されてクレーターが出来る中…………、キングの身体は全くの無傷。

 

 えっ服? そこはほら、漫画的な嘘というか、そこまあ含めて無傷と言うことで……。

 

 ともあれ腕を組んでキングエンジンを鳴らす彼は、ちらりと周囲を見回す。

 特に何の気配も感じない。キング氏はその身体こそ勝手に魔改造されているが、特に気配の感知などといった「それらしい」スキルに目覚めた訳はないのだ。

 一方の前世氏も本来は植物系の怪人であるからして、生き物の気配のようなものを特に敏感に感知したりするようなスキルはない。

 

 なのでそろって一つの肉体を用いてきょろきょろする他ないのだが、そんなキングの姿を視界に収めるとある男が一人。

 距離としてはそう離れていない。キングがいる歩道、そのすぐ近くにある公園。複数人のホームレスが段ボールでその辺に寝泊まりしている。その中に一人、段ボールの毛布(涙)にくるまって右手でピストルを象り、ときおり周囲に銃口を向けたり向けなかったり、あるいは空に剥けたりしているホームレスが一人。髪もボーボー、髭ボーボーだが、老人と言う訳ではなくまだ若い。紀元前、あるいは西暦開始周辺あたりに一般的だったかもしれないややヒッピーめいた雰囲気を漂わせる男の目は、光が宿っていなかった。

 

「やはり一筋縄ではいかないか。しかし、すべては星の意志のままに。

 貴様から()()()()ぞ、『明けの明星』よ────整列爆撃(せいれつばくげき)(おかわり)

 

 ふたたび銃口に見立てた人差し指を、遠方のキングに向けた男であったが。

 

 

 

 その瞬間、ぐりんと自らの方を見るために首を180度(真反対に)回転させて、目を見開くキングの姿を見る。

 

 

 

「あの男、どこかで……」

 

 確かホームレス帝だっけ、などと思うもののキング氏に思考共有はしない前世氏。

 

 まあそんなことより自らの身体に起こったその現象に「(ちょっと前世氏、これ首捩じり切れないよね……? ね?)」と恐怖に打ち震えてキングエンジンがさらに加速するキング氏と。

 どう見てもホラー映画の有様なキングのそんな姿に、まさかゴム人間みたいなものだから身体が異常に柔らかいなどと言う結論に至ることなく「ひっ⁉」と小声で声を荒げるホームレスの男……、怪人・ホームレス帝。なお、顔面は声の小ささに反して大層()()()()驚愕しており、目ん玉転げ落ちそうだる。

 

 そんな調子であったせいで、絨毯爆撃の加減を間違えるホームレス帝王。「あ、やっべ」などとぼそっと呟いたが時すでにお寿司……じゃなかった遅し。空中から降り注ぐ数多の光の球は、キングがいる局所だけではなく町一帯に降り注ぎかねない有様。

 

──────ドドドドドドドドドドドドドドドドドッ────────

 

 だが、そんなものを見ていて逃げるようなキングではない。キングは地上最強の男、敗北の二文字はない。

 キングエンジンがうなりを上げ、彼は首をばね仕掛けのように勢いよく戻して空を見上げる。

 

 …………内実は「(前世氏~~~~~~~~⁉)」と死にそうな悲鳴を上げているキング氏によるキングエンジンの超加速と超爆音が鳴り響いているだけだが、それを使いこなしている前世氏の「流石に寝覚めが悪いからなあ」という適当な顔はどうしようもない。

 

「通常の光というより超エネルギーが光のような形をとっているのなら、おそらく()なら殴れる」

(本当⁉ この世の終わりだって嘆かなくて良い⁉)

「大丈夫、大丈夫。キング氏にはキング氏の活躍するべき時に活躍する役割があって、俺には俺の活躍するべき役割がある。

 サイタマ氏に啖呵切ったんだろ? 胸を張ってヒーローだって名乗れるような、そういう男になるって」

(…………)

「ま、戦闘は俺が受け持つから、仕掛け人は任せるよ。セカンドギア────」

 

 ぼそぼそと独り言をつぶやきながら両足を開き、片手を膝の上に、片手を地面につくキングは。

 

「────JET(ジェット)

 

 一瞬「赤く光り輝いた」のと同時に、その姿を消す。

 

 次の瞬間、空中に待っていた光の球そのすべては「空中で一か所にまとめられ」、その場で爆発した。

 花火というにはあまりに鑑賞させる気も無いような大爆発。轟音、爆音と共に衝撃波が走り、近場の事務所やら住宅やらの窓ガラスを震わせホームレスたちの段ボールハウスを粉々に粉砕する。

 悲鳴を上げて逃げ出すご老人やら()()()()目前な学生服のホームレスたちが逃げていく中、腰が抜けたように一人のヒッピーめいたホームレスが驚愕の表情を浮かべていた。

 

 否、驚愕というよりも、恐怖である。

 おしっこチビってないが、時間の問題だろう。

 

「ば、馬鹿な……! 我が神通力が、抗う事すら出来ず死・あるのみである我が光パワーが……⁉」

 

「────()()()()()()時点で、限界は知れている」

 

 ―――― ドッドッドッドッドッドッドッドッ ――――

 

 ぬ、と。いつの間にかホームレス帝の前に立つキングの姿。全身から蒸気を漂わせているその姿は、おおよそ何をやったか判らないが自らの「神の力」を力業でねじ伏せたことを如実に語っている。

 なんならちょっと汗をかいているし……、キングエンジンは止まる気配もない。

 

 彼は明確に、自分を倒すべき敵と認識している──────。

 

「やはり危険だ貴様は────十字爆撃ィ!」

 

 あわてて両手を交差させ、その十字から無数の光の球を放つホームレス帝王。

 だが、キングはそれを全く躱す気配もない。

 

 爆裂する光球は、本来であれば目の前の障害物ごと薙ぎ払いその後方一帯に莫大な被害を与えるはずであるのだが。

 

「────効かないねぇ、ヒーローだから」

「……!」

 

(…………って、絶対言ってみたかっただけだよねキング氏)

(い、いいじゃんちょっとくらい俺tueeeして(調子乗って)もさあ。実際すっごい痛いし)

(その痛みも大半は俺もちなんだけど……、しかも何かわざわざちょっとアルビ〇戦のルフ〇のセリフにかけてるし)

 

 内心の仲の良さはともかく、全くの無傷で佇むキングである。

 否、性格にはキングの足元のみがクレーターになっており、その衝撃にホームレス帝もわずかに巻き込まれて転がされていたのだが。

 

「ありえない、一体何がどうなっている! 人間であれば不可能のはずだ!」

 

(ゴムだからなあ……)

(厳密にはもっとややこしいんだがなあ……)

 

 種と仕掛けとしては、本家ゴム人間のように衝撃に対する異様な耐性と、超攻撃力ですら反発する肉体的性質をキングは併せ持たない。

 例えるなら、体表面は硬質ゴム。セカンドギア非使用時、弾性は少なく摩耗への耐久に優れている体表面は、体内にあたる軟質ゴムに衝撃を伝え、それを身体の柔軟さの形質から「強引に」脚へと流し、地面へと放出する。

 ……もっともJET時においては速度が速すぎるせいでかかる圧力が異なり、前世氏に改造された肉体がダイラタンシー現象的な理屈で超高硬度を発揮したりするので、それをもって光球を蹴り飛ばしたりといったこともしたのだが。まあ、瞬間的に百回前後蹴り飛ばしてボールを無理やり一まとめにしたあたり、ここは前世氏の健闘であろう。

 

 さて。ホームレス帝に冷静な観察眼があったならば、キングの両ひざから下の衣服がボロボロなこと、靴がはじけ飛んでいることなどに気付けたろうが。わずかなりともキングの体質についてのヒントを得られただろうが、否、キングエンジンのサウンドとキングの一睨みを前に、そこから視線を動かすことなど出来ないと言うのが正しいだろう。

 ある意味、前世氏とキング氏の両方が揃っているからこそのカバーリングである。

 

「神を裏切り、仇名す堕天使めが……!」

「神がどうとかは知らないが……、俺は悪魔を宿した男だ」(※悪魔の実を食べたゴム人間的な意味合いで)

 

 そしてキングも適当にそれっぽいことを言ってるだけなので、ホームレス帝との会話が繋がらない。

 

「この害悪たる文明社会が、そんなに好きになったか────()()() グハッ!!!!!

 

「ん、何? 今全然聞き取れなかったんだけど」

(気にしな~い気にしな~い)

 

 そしてセリフを言い終わる前に……、あからさまに“神”との接触と、その“神”から自分のことを聞かされているような言葉を前に、衝動的にJET(ジェット)で蹴り飛ばしてしまった前世氏であった。

 ひゅー、と打ち上げられたホームレス帝は、その姿が空中で見えなくなる。

 

「殺しちゃった? まだそういう覚悟あんま出来てないんだけど────いや、誰かに()()()()()な」

 

 ま、そのうちまた出てくるだろ、と。自らの正体に繋がりかねない前世氏は、キング氏にそう適当に言って肩をすくめた。

 

 

 

 

 


【おまけ】 

 

 

 

 後日、高級フレンチのディナー中のタツマキ・フブキ姉妹の会話。

 

「フブキ、最近よく携帯端末の画面ばっか見てるけど、何よ? 何か気になる事でもあった? 株とかやってないでしょ、あなた」

「べ、別に何でもないけど……?」

「怪しい。……男?」

「違う」

「ふーん、そっ」

「いえ、ね? 全然そんなのじゃないから。こう、学術目的というか、どうしてあんな風になっちゃったのかしらって思ってるだけだから。流石に宝の持ち腐れどころの騒ぎじゃないんだもの…………」

「?」

 

 

 

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