ザ・デッドヒートブレイカーズ ~デッドヒート・ゼロ~ 作:ぐるぐるチャンポンスープ明太子サラダ
――砂嵐の向こうに、夕日が沈みかけていた。
装甲車カーゴは岩陰に身を潜めるように停車し、その周囲だけが静かな時間に包まれている。
「ほら、こいつが今日の晩飯だ」
ヴィクターが無造作に缶詰を放る。アミマルは慌てて受け取った。ラベルは擦れていて、何の料理かはわからない。缶切りを使って開けると、温かくした豆と乾燥肉のスープのようなものが現れた。
「う……これ、味付け……」
「文句は食えるようになってからにしろ。マシな方だ」
アミマルはおとなしく頷く。たしかに、昨日の“虫スープ”よりはずっとマシだった。
カーゴの内部は、狭いながらも機能的にまとまっている。後方は折りたたみ式のベッドと工具棚、側面の壁には乾燥食料、ガスボンベ、消毒薬などが並ぶ。中央には簡易のコンロと給水装置となにかの通信装置。排泄は車外の「ポータブルシェルター」で済ませる決まりだが、砂嵐の日は「空気浄化フィルター付きの簡易トイレユニット」を使う。
アミマルは初めてその存在を知った時、目を丸くした。
「こんな場所で……生活できるんですね」
「生きるだけならな」
ヴィクターは、カップを片手に言った。その中身は野草茶らしい。苦そうな香りが漂っている。
アミマルは遠慮がちに尋ねた。
「ヴィクターさんって、普段どうやって……稼いでるんですか?」
「“請け仕事”だ。
「……」
アミマルは黙り込んだ。その“死体の回収”が、何を意味するのか、言葉にしなくてもわかった。
「お前を拾ったあの村も、本来なら報酬が出るはずだった。だが、依頼主共々村が消えちまったから依頼は失敗として見なされちまった。――だから、赤字だ」
「……す、すみません……!」
「気にするな。これでも昔はブイブイ言わせてたんだぜ。セブンボールっていってな、それはそれは世間を騒がせてた傭兵だったんだ。自分で言うのもなんだがな」
そう言って、ヴィクターは一枚の古い写真を取り出した。色褪せたそれには、7人の傭兵たちが写っていた。みんな屈託のない笑顔を浮かべている。
「……この人たち……」
「昔の仲間たちさ。死んじまったけどな……良いやつらだったんだ」
「・・・・・」
その言葉に、アミマルは何も返せなかった。けれど、心に一つ、重たい灯がともった。
「なーに、戦場ではこれが当ったり前よ。もう慣れた」
ヴィクターは笑った。
「さて、そんでもってうちは貧乏傭兵になっちまった。だから明日から適当な依頼を受けて金を稼ぐ。」
「どこで依頼を受けるんですか」
「傭兵ギルドだ。正式名称は…‥あっ、ほら、あれだ。長いやつだよ」
「・・・・・・・・・傭兵管理組合‥‥‥‥…」
「そうそれだ。長くて覚えらんねだよな」
「長くはないですよ。」
――その夜。ヴィクターは外で警戒しながら、アミマルに言った。
「“撃つ”ってのはな……引き金を引くことじゃない。意思を通すことだ。たとえ、お前がまだ震えてても」
「はい……」
「だが震えるなら、誰かの後ろに立て。そこで学べ。お前の役目は、まだ“前に立つ”ことじゃねぇ」