それから二三日して、源外さんから連絡があった。
「結論からいうとな、なーんも見つからん」
「本当?」
疑う声に三度調べたと答えが返ってきた。ならばこの世界は――。
安心しようとした時、不穏な一言を突きつけられた。
「だが……何かがあった形跡はあった」
「何か?」
「血液の成分がな……偏っていた。あの血はその偏りを戻そうとしている途中といったところか」
あった……? 無くなった? それは……歴史が変わったことによるもの? 認識できないうちに?
どういうこと?
「ナノマシン……? なくなったのはナノマシン?」
「そうだな……そうであっても不思議ではない。なにせ無くなったモノがなんなのかさっぱり分からんのだからな!」
大声を上げて笑うその口に空き缶でもつめてやりたいが……そうか。ないのか。
「調べてくれてありがとう」
「して、そのナノマシンはどんな代物だったんだ?」
「んー。ちゃんと説明できているか分からないけど、
それを聞いた源外さんは腕を組んだのち、しばらく考え込むような素振りを見せた。
「考えすぎならいいけどよ……。もしかしたらそのヤベー代物がまだこの江戸のどこかにあるかもしれねぇ」
「どこに?」
「そりゃわからん」
ぞっとする。目に見えない最悪な代物がまだ江戸のどこかにあるなんて。どうする……?
「江戸中の人間の血液を調べることは可能?」
「まあ、待て。そりゃ寄生するのは人間だけか? 魚は? 鳥は? 虫は? どうだ」
「分からない……けど、可能性は十分にあると思う」
幾つもの惑星を滅ぼしたということから推測すると、それが寄生できるのは人間に限らないだろう。
どうしたらよいのか……。
「なら、そいつを探すってのは無理だな。別の方向でやるしかねぇ……が、しばらく時間をくれ」
「……ごめん、頼みっぱなしで」
その言葉に、源外さんは気にするなと言ってくれた。
何かヒントとなるものを思い出せないか? と万事屋に行くことにした。いつもの机に座ってジャンプを読んでいる銀さんを見ていれば何か思い出すのではないかと思ったのだ。
神楽ちゃんと定春は遊びに出ていて、新八君もいなかった。
「ねぇ、銀さん……」
「んあ?」
ページを捲る銀さんは生返事を返す。
「銀さんはさぁ、落ちてるキノコ食べて、お腹壊して、コンビニのトイレに引きこもって、そのまま便器から流される予定ある?」
「さぁなぁ」
我ながら荒唐無稽なことを言っている自覚はあるが、それに対してツッコミを入れるのでもなく、銀さんは聞き流す。
ページを捲る手が緩まない事を考えると、これは聞いていない奴だ。
「ついでに、自分の墓に供えられたダンゴ食べて3D化だとか3Dの意味分かってないのに言っちゃったりする?」
「しねーんじゃねぇの」
そうか、しないのか。それなら良かった。
「銀さーん」
「はいはい聞いてますよー」
今日の銀さんはなかなかにしぶとい。
諦めてぐてーと机につっぷす。銀さんを見ていてもしょうがないのだ。もう彼の中に
彼にどうこうしろと言う方が難しい。手があるとするならば10年前か……。タイムマシンを作って、ソレに乗って魘魅を倒して……そして居るはずのない私はどうなるだろうか。
過去との縁のない私は、消えてしまうかもしれない。困るといった銀さんはどんな顔をしていただろうか? けれど、ドーナッツホールの数は数えることをできないのだから困りゃしないはずだ。
顔をあげると銀さんと目があった。
「銀さんは死ぬ?」
「お前、今日はなんの電波受信しちまったんだ?」
「失敬な!」
「無自覚か……こりゃ手に負えねぇな。片耳下にしてトントンってやってみ、治るかもしれねぇから。それで治んなかったら神楽にいっぺんどついて貰え」
「粗大ごみって処理費用、案外馬鹿になんないよね」
「いってろ。……人生相談が必要なら、俺じゃなくて下のババアにでも行ってこい」
百面相をしている私に根負けしたのか、銀さんはジャンプをおいて口を開いた。
「うーん、いやそうじゃないんだよね。いや部分的には合ってるんだけど。うーん……。銀さん殺すのはちょっとねぇ」
「俺の人生相談だった!?」
「まぁ……? おやつのプリン、土方さんに台無しにされちゃってさぁ? でも警察に喧嘩売っても勝ち目ないじゃない? まあ、それがあれよ。あーしてこうして、銀さんで手を打っておこうかなと」
目を外した隙に私のプリンをマヨネーズアラモートにしてくれた土方さんにすべての責任を押し付ける。本人は善意のつもりだというのが困る。
「とんだとばっちりだなオイ」
「でもまぁ、新八君がアイス買っておいてくれたみたいだから、それで許したあげようと思う」
「俺のもー」
「はいはい」
いちご味は銀さんに、チョコ味を貰い考える。アイスじゃ、魘魅おびき出されないよなぁー。