《銀の楯》 剣士:ベアル
年齢:25歳前後
容姿:燃えるような赤髪と爽やかな笑顔が印象的な青年。服装は軽装の騎士風で、鍛え上げられた体格から戦士としての実力がうかがえる。
性格:誰にでも紳士的で、子どもにも優しく接する思いやりの持ち主。明朗快活な好青年で、戦士としての実力も一流。だが、過去にとある“因縁”によって少しだけ自尊心に傷を負っている様子も。
逸話:かつて、自分と瓜二つの人物に襲われ命の危機を経験したと語るが、実はそれは機嫌を損ねたアミーの「ちょっとしたイタズラ」だった。本人は未だに真相を知らない。
ノクスとの関係:ノクスにとって憧れの冒険者の一人。自分たちに興味を持ってくれる子どもに喜び、積極的に交流しようとする。
《銀の楯》 魔法使い:マリー
年齢:18歳前後
容姿:冷たい印象を与える青髪とジト目が特徴の少女。細身の体に長いローブを纏い、常に涼しげな表情を崩さない。
性格:寡黙で無愛想に見えるが、実はちょっとした悪戯好き。感情表現は薄いが、内面には強い信念と洞察力を秘めている。鋭い観察眼と高い魔力を持つ天才肌の魔法使い。
逸話:かつて、圧倒的な実力を持つネクロマンサーとの死闘を繰り広げたと語るが、実はその相手は過去にモルテが遊び半分で指導した男だった。真相を知らぬマリーは、今もその出来事を「最も命の危機を感じた戦い」として語っている。
ノクスとの関係:まだ表立った関係はないが、潜在的にその存在に興味を抱きつつある。
幕間 「鏡の向こうの自分」
ベアル視点――
あれは、確か――今より10年前のことだった。
ちょうど《銀の楯》が王都近辺の依頼をこなして回っていた頃だ。
ある調査依頼を受け、一人で調査のために王都から西に離れた鏡の峡谷へ足を運んだ日のことだった。
日が沈みかけた峡谷の崖際から谷間を覗いていた俺は、異様な気配を察した。
風も止まり、鳥も鳴かず、沈黙が支配している。
――ただならぬ何かが近くにいる。
緊張を覚え、咄嗟に剣を構えたそのとき。
目の前の影から、現れた“それ”は……俺だった。
「……なんだ、これは?」
赤髪、構え、歩き方まで全てが俺そのもの。
最初は幻覚かと思ったが、すぐに否定するように相手が笑みを浮かべた。
「へえ、ホンモノの方がちょっと顔が真面目すぎるわね」
女……? いや、声は男にしては高い。だが、顔は確かに俺そのもの――まさか、変身魔法か?
そう考える暇もなく、偽物の“俺”が一歩、踏み込んできた。
そして始まった――“自分自身”との戦いが。
「おい、お前何者だ!? なぜ俺の姿を……!」
「名乗るほどの者じゃないわよ。せいぜい楽しませてちょうだい?」
笑みを浮かべたまま、そいつは剣を構える。
それが戦闘の合図だった。
最初の一合でわかった。――こいつ、只者じゃない。
俺自身の技を模倣しているのに、それが俺より鋭い。
剣の軌道も読みづらく、戦っているうちに“自分との戦い”ではなく“化け物との死闘”に変わっていた。
「クッ、どこまで俺の動きを……っ!」
「全部よ? だって見てればわかるもの。単純だけどキレはあるわね、気に入った」
木を蹴り、空中から斬りかかってくる“俺”。
あの顔が笑ってるのが、何より腹立たしい。
応戦しながらも、俺は内心で焦っていた。
(やばい……このままだと、負ける……)
何度か斬られた。幸い浅かったが、呼吸が乱れる。汗が目に入る。
「こんな早くに息切れなんてしないよね?」
からかうように言いながらも、相手の剣筋はさらに鋭さを増していく。
(だが、何かが変だ)
殺意を感じない。
手加減とも違う“じゃれているような”感覚が剣から伝わってくる。
まるで猫がネズミをいたぶっているような……
「お前……遊んでるのか……?」
その問いに“俺”は肩をすくめて笑った。
「だって、あんたがどこまで頑張るか、見てみたいじゃない。退屈だったのよね、最近」
その瞬間、ゾッとした。
「化け物め……!」
意地でも斬られてなるかと全力で反撃に転じようとした
その瞬間脳裏に仲間の言葉がフラッシュバックした。
『ベアルは攻めっ気が先行し過ぎているからどこ狙っているかバレバレ』
(そうだ!奴が俺の模倣なら俺の弱点も模倣しているはずだ!)
そう思い立った俺は攻めるのをやめ、ただひたすらに待ちの構えを取った。
「どうしたの?もう終わり?諦めちゃった?」
そう言いながら“俺”が攻めてきた。
(なるほど、確かにこれは
相手の攻撃を見切った俺は最後の全てを賭けた渾身の一撃で、ようやく相手の剣を弾き飛ばし後退させた。
「ふーん、ここまでやるとはね。面白かったわ。気が向いたらまた遊んであげる」
――そして、それきり、そいつは姿を消した。
あれは、俺にとって一つの転機だった。
強さだけでなく、情報と心の隙すら突かれる。ああいう相手がこの世にいることを、身をもって知った。
今でも時折、夢に出る。
自分と瓜二つのあいつが、くすくすと笑いながら、俺の動きを模倣し、そして上回ってくる夢だ。
(いつか……再戦することになるだろうか?それとももうこの世に居ないのか?)
俺は――
「……ん?」
夢から覚めるように頭を振った俺は、窓の外を見つめた。
森の中に、またあの“笑顔”が見えた気がして。
気のせい、だよな……?
――いや、違う。あいつは今も、どこかで俺を見て笑っているのかもしれない。
俺にとっての“悪夢”は、まだ終わっていない。