俺の母さん、実は魔王でした⁉   作:KuRoNia

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第五章:登場キャラクター紹介&幕間 「魔物のいない不思議な道」

【聖女アリス】

種族:人間 年齢:13歳 所属:教会

 

金糸のように輝く髪と、どこか儚げな雰囲気を纏ったシスター服の少女。年齢に似合わぬ落ち着きと柔らかな物腰を持ち、誰に対しても分け隔てなく接する姿は、まさに“聖女”の名に相応しい品格を感じさせる。

 

だがその見た目に反し、アリスの本質は驚くほど行動的で、思い切りが良い。困っている人を見ると放っておけない性分で、思わず首を突っ込んでは、周囲をハラハラさせることもしばしば。特に世話になっている教会の神父からは「せめて事後報告はしてほしい」と日々嘆かれているが、本人は「人のためなら多少の迷惑は仕方ないよね」と、どこ吹く風である。

 

本来は王都の教会に身を置くべき存在であるが、とある目的のため、辺境の街アルセナを訪れる。そして偶然出会ったノクスと交流を深め、ともに行動するようになる。

 

使用能力:

神聖魔術および高位の治癒術に長けており、戦闘よりも支援を得意とする。特に“神の加護”を受けた祈りの魔術は、浄化・回復において絶大な効果を発揮する。ただし、本人はあくまで“見習い”であることを自覚しており、慢心せず日々修行を重ねている。

 

性格:

優しく正義感が強いが、その優しさゆえに無茶をしがち。人と関わることを厭わず、年齢以上に大人びた一面もある。しかし、人との距離感は近く、親しくなると天然な一面や小さな頑固さを見せることも。

 

 

 

 

幕間:魔物のいない不思議な道

 今日も快晴だった。雲ひとつない青空の下、ノクスたち三人――ノクス、ジョーヌ、ルカのパーティは、冒険者ギルドで引き受けた「野菜配達」の依頼をこなすため、街外れにある農村へと続く道を歩いていた。

 

「……それにしても、いい天気だね」

 

 ノクスが空を見上げてぽつりと呟くと、その隣でジョーヌがうなずいた。

 

「空気も澄んでるし、こういう日は歩くのも楽しいよね」

 

「だなー。仕事じゃなかったらピクニック気分ってやつ?」

 

 ルカがあくびまじりに言いながら、ふわりと伸びをする。その顔には緊張感など微塵もない。が、別にそれはルカに限った話ではない。

 

 というのも――

 

「そういえば、さ」

 

 何気なくルカが言葉を落とした。

 

「この前、俺一人でこの道通って野菜運んだんだけど……その時はけっこう魔物に遭ったんだよな~。弱いやつだったけど、それでも三匹くらい?」

 

「え、本当?」

 

 ノクスがきょとんと目を丸くする。

 

「僕、もう冒険者になって二週間経ったけど……魔物に一度も遭ってないんだよね。配達とか回収とか、色んな依頼こなしてきたけど、魔物遭遇ゼロってすごくない?」

 

「……あー、確かに」

 

 ジョーヌも腕を組んで少し考え込んだ。

 

「っていうか、言われてみれば魔物どころか獣の鳴き声すら聞いてないかも……。まあ、楽でいいけどさ?」

 

 そう言って笑うジョーヌの声は、まったく気にしていない様子だったが、ノクスは少し首をかしげる。

 

「でも、偶然ってにはちょっと不自然じゃない? ルカが言ったように、ほんの一週間前に魔物が出てた道だよ? なんで僕と一緒の時だけ……?」

 

「偶然偶然、細かいこと気にすんなって~」

 

 ルカが軽くノクスの頭をぽんぽんと叩いた。

 

「むしろありがたく思おうぜ。魔物が出ないのは“ノクス運が良い説”でいいんじゃね?」

 

「……うーん、それならいいけど……」

 

 ノクスは未だに腑に落ちない顔で首を傾げていた。

 

 そんな彼の様子をジョーヌは微笑ましく見つめながらも、(ふむ……これはさすがに確率的に妙かも)と、内心ではやや真剣に思案していた。

 

 しかし――ノクスも、ルカも、ジョーヌも知らない。

 

 この“幸運な道”には、ひとつ秘密があったのだ。

 

    ***

 

 一方その頃、ノクスの自宅では――

 

「よし、こちらは異常なしじゃな」

 

 骨でできた小さな鳥――まるで白く乾いた骸骨の小鳥――が、くるくると旋回した後、モルテの肩に着地する。

 

「ええと……座標A-12、検知完了。魔物なし。移動経路問題なし」

 

 まるで事務作業のように呟きながら、モルテは使い魔の鳥から得た視覚情報を整理していく。机の上には簡易地図と符術が並び、何本もの赤い糸が結界のように張られていた。

 

 ……そう、ノクスの“平和な冒険者ライフ”は、完全に家族の手によって守られていたのだ。

 

「さて……そろそろ警戒範囲B-07の確認を……またか」

 

「――あら? また魔物が出たの?」

 

 その背後からひょっこり顔を出したのは、エステアだった。可愛らしいエプロン姿で、手にはパイ皿を持っている。どうやらキッチンから来たようだった。

 

「出たのじゃ。まぁ、またゴブリンだけどね。三体まとめてこのエリアに向かって来ておるの」

 

「……仕方ないわね」

 

 そう言って、エステアはさらりと右手を振ると、指先に魔力の流れを集中させる。指先に淡く浮かび上がる魔術回路――彼女の得意とする遠隔魔術の詠唱だ。

 

「対象補足完了。――《氷結》」

 

 静かに詠唱を終えたと同時に、遠く離れた森の中で突然氷の槍が地面から湧き出し、魔物たちの足元を貫く。動揺した魔物たちは方向を変え、一目散に逃げていった。

 

「ふぅ、これでまた当分は安心ね」

 

 エステアは満足そうに微笑む。

 

「ねぇ、モルテ。あの子たちに魔物が出ないようにしてるのって内緒なんでしょう?」

 

「当然じゃろ。ノクスが“冒険者としての経験”を積むには、まず“基礎体力と道中の安全管理”からじゃ。いきなり戦闘経験なんて必要ないのじゃ。精神衛生上もよろしくないしの」

 

「ふふ、()()()()()()()()()()()が過保護ねぇ」

 

「……()()()()()()()()にその言葉そっくりお返しするのじゃ!」

 

 そんなやりとりを交わしながら、二人は静かに頷き合った。

 

 外の世界はまだまだ危険だ。ノクスの成長のためにある程度の刺激は必要だろう。しかし、命の危険までは背負わせない。それが、家族である彼女たちの暗黙の決意だった。

 

 その頃、ノクスたちはというと、また別の畑へ向かう道の途中、ジョーヌが持ってきたリンゴをかじりながら「今日も楽勝だね~」などと無邪気に笑っていた。

 

 だが、彼が笑っていられるのは――

 

 そう、背後で“超過保護モンスターたち”が、今日も全力で動いているからなのであった。

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