俺の母さん、実は魔王でした⁉   作:KuRoNia

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第八章:登場キャラクター紹介&幕間「リゼリア、崩れた計画」「指輪の秘密」

■リゼリア

種族:吸血鬼(喰種→真祖)

 

年齢:200歳ほど(外見年齢は16~17歳ぐらい)

 

性別:女性

 

外見や特徴:金髪の長髪に真紅の瞳。蒼白な肌と気品ある佇まいが特徴で、常に優雅なドレスを身にまとう。外見も言動も高貴で社交的だが、微笑みの奥に深い計算を隠している。

「〜ですわ」「〜ましてよ」などの貴族口調を使うが、苛立つと素の口調が漏れることも。

 

■性格

表面上は丁寧で物腰も柔らかく、人間や魔族を問わず社交的に接するが、本性は極めて野心的かつ冷静な策士。

もう一つの面としてコレクター気質で自分の興味を引いたものは目の届く範囲に入れたがる。

 

自身の“弱点”を克服するために動いており、聖女アリスの血を取ろうとして魅了を試みたが失敗した。

普段は愛想よく振る舞っているが、目的のためなら裏で手段を選ばない冷徹な一面を持つ。

 

元来、吸血鬼の真祖は高い知性と魔力を有しており、リゼリアもその例に漏れない。政治や交渉術にも長けており、魔王にも我を通すほどの胆力を有する。

 

ノクスの“魔族に対する偏見のない心”に触れ、計画の軌道修正を決意。

魔王に頼るのではなく、自らノクスに協力を求める道を選ぶ柔軟さを見せる。

 

■能力・特技

魔力操作:高い制御能力を誇り、精密な魅了や記憶操作が可能。

 

吸血能力:真祖ゆえに吸血行為によって一時的に他者の記憶を読み取ることもできる。

 

情報操作・交渉術:他者の感情や立場を読むのが得意で、貴族社会や政治的な駆け引きにも強い。

 

使い魔操作:複数の蝙蝠を使い魔として使い、遠距離監視などに用いている。

 

刻印魔術:アクセサリーや武器に魔術を刻印でき、魔道具に昇華させることが出来る。

 

 

 

 

 

―リゼリア、崩れた計画―

魔王城の地下深く、冷たい石の壁に囲まれた一室──

リゼリアの私室兼研究室。そこには彼女の長い年月をかけて集めた魔道具、禁書、古代の遺物が整然と並べられている。普段であれば、研究の静寂と魔力の微振動が心地よい空間であるはずだった。だが、今は違う。

 

バァンッ!!

 

部屋の隅に置かれていた高級木製の椅子が、壁に激突して砕け散った。背もたれが折れ、脚がバラバラになって床を転がる。

 

「クッ……あぁもう、なんでこんなことに……!」

 

美しい顔を歪め、リゼリアは肩で息をしていた。昂ぶった魔力が室内に渦巻いている。

 

「あと少しだったのに……あの聖女さえ、あの時魅了できていれば……!」

 

パーティ会場。計画は完璧だったはずだ。アリスという聖女の少女を魅了し、信頼を掌握することで、自らの弱点を完全に克服する為の血を得られるはずだった。それが、あと一歩のところで──

 

「ルカお姉さま……! なぜあのタイミングで邪魔を……!」

 

その場でとぼけようとしても、すぐに魔王陛下サイド──エステアたちが、どう考えても見逃せない証拠を突きつけてきた。アミー。あの女だけは最初から疑っていた。全てを一瞬で見抜くような目で。

 

「まさか……全員で私を監視していたの……?」

 

寒気がした。まるで計画の全容を最初から見透かされていたかのような感覚。背筋を汗がつたい、リゼリアは唇を噛む。

 

「終わった……私の計画は……」

 

吸血鬼という種族が本来持ちえた“真祖”に至り、完全体となる──それが彼女の悲願だった。誰にも頼らず、己の力と知略でたどり着こうとした真理。しかし、聖女の血無しに真祖に至るには真祖の血が必要だった。研究は完全に袋小路に入ってしまった。

 

「……いや、まだよ。まだ終わってないわ」

 

荒れた呼吸を無理やり整え、額の汗を拭う。自らの頬を軽く叩いて正気を取り戻す。

 

「落ち着きなさい、リゼリア。考えるのよ……打つ手は、まだある……」

 

数分間、研究机に手をついて思考を巡らせる。だがどれも望み薄だった。唯一浮かんできた可能性──

 

「魔王陛下……エステア様に、協力を仰ぐしかない……」

 

彼女ほどの実力者であれば、何らかの“突破口”を知っているかもしれない。何より、あのルカお姉さまが連れてきた少年への態度は変だった。それを利用できれば──

 

「……躊躇っている場合じゃないわ。今すぐ話を……!」

 

リゼリアは立ち上がり、研究室の扉を開けると廊下を駆けだした。魔王たちが集まっている応接室──普段は訪れない領域だが、もはや遠慮はしていられない。

 

迷いなく扉の前に到着し、真鍮の装飾が施されたノブに手をかけたその時──

 

「……魔王様、今回はアリスとルカを助けていただき、本当にありがとうございました」

 

──男の声だった。

 

(誰……?)

 

反射的に手を止め、扉に耳を寄せる。中からは、信じがたい会話が聞こえてきた。

 

「この声は確かルカお姉さまが連れてきた人間の男の子……? 確かノクスだったかしら?」

 

リゼリアは息を呑んだ。

魔王エステアと人間のノクスが、リラックスした様子で会話している。穏やかで、温かなやりとり。とても人間と魔族の会話とは到底思えないものだった。

 

「それに、俺――魔王様のこと、よく知らないですし一方的に怖がるのも失礼だと思ったので…」

 

その言葉を聞いた瞬間、リゼリアは膝が抜けるような感覚を覚えた。

呆然と、ぽかんと、心が止まる。

 

(……え?)

 

彼は、人間だ。

普通の少年だ。

それなのに、魔族を──魔王を──人類の敵と認識していない?

 

「……魔族に、嫌悪感を抱いていない……」

 

リゼリアの中で、何かが崩れ落ちる音がした。彼女が知っている“人間”という存在像が、大きく揺らいだ。

 

数秒、茫然自失のまま扉の前に立ち尽くしたリゼリアだったが、すぐに目を見開く。感情が、また熱を持ちはじめる。

 

(……違う。魔王様に頼むより、あの少年に話した方がいいのでは……?)

 

あの少年なら、きっと話を聞いてくれる。

人間も魔族も関係なく、必要であれば手を差し伸べてくれる。

 

「そうよ……! ノクス様なら……!」

 

魔王陛下に頼めば、確かに知識と力は借りられるかもしれない。だが、そこには“立場”が介在する。利害が一致しなければ、切り捨てられる可能性もある。

 

──だが、ノクスは違う。

彼は、感情で動いている。そこに付け入る隙、いや信頼がある。

 

「行かないと……話さなきゃ……!」

 

決意の表情に変わり、リゼリアはその場から離れる。魔王の部屋とノクスの部屋、その中間にある長廊下。そこなら、ノクスが部屋に戻る途中で必ず通る。

 

そこで待とうと、彼女は足早に歩き出した。

 

リゼリアの中で、失敗に終わったはずの計画が、別の形で動き出そうとしていた。魔族としてではなく、一人の()()()()()()()として、あの少年に助けを求めるという選択。

 

(ノクス様……私を、救ってください)

 

彼女の目には、迷いがなかった。

揺らいでいた信念が、新たな形で再構築される瞬間だった。

 

静かな廊下に、足音が一つ。

希望と共に、リゼリアは待ち始めた。

 

──そして、その判断は正しかった。

 

 

 

 

 

―指輪の秘密―

ヨトソラスでの慌ただしい旅路を終え、ノクスたちはようやく故郷の町へと帰り着いた。教会の前、白い石畳の上に立つノクス、ジョーヌ、ルカ、そしてアリス。

 

「じゃあ私はここで。また明日」

 

手を振るアリスに、ルカとジョーヌが軽く会釈を返す。ノクスも片手で振り返し、くるりと踵を返して自宅への道を歩き出す。

 

「……どうかした?」

「もう疲れた~早く寝たい~」

「俺も流石に疲れてきたな…」

「まぁ長旅だったしねぇ」

 

そんなゆるいやりとりを交えながら、自宅の門をくぐると、ノクスは勢いよく玄関の扉を開けた。

 

「ただいまー」

 

直後、ドタドタドタッ! と家の中を走る音。玄関ホールの先から次々と現れるのは、すでに人化している家族たち――エステア、セス、モルテ、アミー、リュース。

 

「おかえり、ノクス!」

「ご無事でなによりでございます」

「よしよし、無事に帰ってきたな…」

「風呂は? お腹空いてる? 着替えは? それともほっぺにチューしてあげようか?」

「よく帰ってきたな、ノクス!」

 

「なんかすごい勢い……!」

笑いながら靴を脱ぐノクス。後ろのジョーヌとルカも、「ただいまー……」とぼそぼそ挨拶するが、エステアたちは当然、視線をノクスに全集中していた。

 

そのままリビングに誘導され、久しぶりの団欒。ノクスはソファに座って、旅の出来事――ヨトソラスの街の賑わいや、街道の出来事、パーティでの騒動を楽しそうに語っていく。

 

「でね、向こうを発つ時、リゼリアさんっていうすごい人が、これをくれたんだよね」

 

そう言って、ノクスは首から提げていた小さな銀の指輪をテーブルに置いた。

 

「なんか、念話ができるんだって! すごいよね!」

 

その瞬間――

 

「ん?」

 

モルテがピクリと眉を動かした。

 

「ちょっとノクス、それ、少し貸してみろ」

 

「うん?」

 

不思議そうに指輪を手渡すノクス。モルテはそれを手のひらに乗せ、ノクスにバレない様に魔力を込めて調べ始めた。数秒の沈黙の後、彼女の顔が険しくなる。

 

「チッ……あの、蝙蝠女……」

 

静かに、小さく、しかし明確な怒声を噛み殺すように吐いたモルテは、青筋を浮かべながら指輪をエステアに渡す。

 

「どういうこと?」

 

「念話の刻印は確かについてる。それは問題ない。だが――それ以外にも、探知の刻印がある。つまりこれは……」

 

「……位置を把握するための監視装置ってわけか」

 

エステアの顔もまた、どこか引きつっていた。優雅な微笑を貼りつけていた表情は消え、代わりに現れたのは、魔王らしい冷ややかな怒気。

 

「うそ!? あれ、そんなにヤバいものだったの!?」

 

ノクスが目を丸くして問いかけるが、モルテは笑顔を引きつらせながら答えた。

 

「いや、大丈夫じゃノクス。お主に危害を加えるような細工はされてないのじゃ……今のところは」

 

「なにその含みのある言い方……」

 

エステアの目が細められる。炎のような怒気が魔力に乗ってじわりと周囲に漏れ出す。

 

「後日、この“指輪”の真意を聞きに行くわ……私の手で、ね」

 

バチッという音がした。エステアの手から放たれた静電気のような魔力が、テーブルの木材を焦がす。

 

ノクスはポカンと口を開けたまま、家族たちのやりとりを見つめていた。

 

「えっと……じゃあ、問題ないなら指輪返してもらっていい?」

 

「いいわよ、でも今は指に嵌めないでね?絶対よ?特に左手薬指は絶対ダメだからね!!?」

 

「……わかった」

 

必死過ぎるエステアにドン引きしながらノクスは了承する。

そしてノクスに気づかれない様にコソコソと話し合う

 

「エステア、あの蝙蝠女どうするのじゃ?」

 

「決まってるわ。アイアンクローよ」

 

「はは、いい気味じゃな。その時は全力でやってくれ」

 

「もちろん♪」

 

エステアとモルテの“穏やかな殺意”に包まれた中、ノクスは指輪をお守り代わりに首元に戻しながら、そっと胸の中で呟いた。

 

(……この指輪そんなに変なのかな?)

 

不思議そうに指輪を眺めているノクスを見て、家族たちの表情も和らいでいく。

 

いつも通りで、どこか安心できる、にぎやかでちょっと物騒な日常。

 

ノクスの旅はまだまだ続く。けれど、帰る場所がある限り、彼の心は迷わないだろう――

 

……ただし、リゼリアの運命については、この場にいる誰も保証できなかった。

 

――後日――

「あの探知の刻印外しなさいよ!ストーカー吸血鬼!!」

「絶対にいやですわあああああ!!!」

 

ヨトソラスの古城でこんなやり取りがあったらしい。

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