十年が経った。
オレの今の状況は"ギリギリ平穏無事"だろうか。
とりあえず貰った力は使いこなさないとな、ということで嫌々ながら能力の検証を始めたオレは、その過程で頭を抱えざるを得なかった。
「勝手に暴発する能力は能力と言っても良いのか?」
──《女体催眠》
字面から能力の検証をせずとも分かってしまうから放っておいたこの能力は、当初オレは使う気がなかった。
どう足掻いても厄介な事が起きる。
催眠と聞けば聞こえはいいのかもしれないが、催眠をかける前と後でどうしても辻褄が合わなくなってしまう。
例えば──オレがメイドに手を出す、と仮定しよう。
メイドは必ずメイド長の指示に従い、職務をこなす。
『サオエル様を起こしてくる』という命令を受けたメイドが部屋に来て、もしもオレがそのメイドに対して《女体催眠》の能力を行使して手を出すとしよう。
オレがどれだけ早漏だとしても、手を出してからメイドがメイド長に報告するまでに時間がかかりすぎるのだ。
催眠による隠蔽工作なども時間がかかる。
いやいや、やりようによっては工夫できるだろ。
そう思う奴らがいるかもしれないが、そもそもの前提としてオレは無理やり言うことを従わせる"催眠"を人に使う気にはなれない。
そして、使うことによってリスクが微細でも生じる以上は使わないことが安定択だ。平穏無事に生きたいのなら尚更。
──だが。
先程オレを起こしに来たメイドが虚ろな表情になったように────《女体催眠》は時を選ばず暴発する。
ある時は掃除中のメイドを。
ある時は母親を。
ある時は5歳になった妹に。
いつ暴発するかは分からないが、必ず一月に二回程度暴発する仕様になっていることが分かった。
ふ ざ け る な 。
催眠が暴発とはなんだ暴発とは。
オレはドン引きしたしキレた。
もしも重要な場面で暴発なんかしてみろ……終わりだ。
特に
「とりあえず催眠は放置するしかあるまい。問題はコレだ」
オレは窓の外でせっせと庭の手入れを行っているメイドを視認し、心の中で《女体鑑定》と唱える。
すると、固有スキルを確認できるウィンドウ画面に酷似した画面が目の前に映し出される。
───
名前 アリシア ピチピチの19歳!
B/75/W/53/H92
オケツのデカい貧乳美人だね!
ちょっとドジっ子なとこが玉に瑕? だけどもそれを好む男性もきっと多いことでしょう!
残念ながら故郷に婚約者がいるみたいだけど、実にNTRしがいのある女の子だね!!
最近の悩みは欲求不満で……
───
オレは途中で罪悪感が湧いて見るのをやめた。
「知りたい情報が絶対に手に入らない……!!」
男にとっては知りたい情報だらけだって?
知るかボケ殺すぞマジで。
幾ら争いとは無縁な土地で生まれたとはいえ、ここは異世界で魔法や魔物だって存在する世界だ。
いつか理不尽な力で突如奪われるかもしれないんだ。
そんな時、間違いなく情報は武器になる。
《女体鑑定》がもしも女性限定だが、想像する《鑑定》スキルと同等であったならば、拾える情報に限界はあれど何かしらの対策を打ち立てることが可能だったかもしれない。
「無駄に話し言葉なのがムカつく……!」
……ハァ……つくづく癪に触るスキルだ。
一先ず《女体鑑定》は放置するとする。
《約束された金髪と浅黒》と《虚根》だが、コレは当初予想した通りのスキルだったので飛ばす。
そしてオレは徐ろに鉄で出来た装飾物を机の引き出しから取り出すと、グッと軽く力を入れる。
──グシャッ。
装飾物はいとも容易くグシャグシャになる。
力の入れ具合は1%にも満たない。鉄で出来ているのに、まるで紙切れを相手にしているかのような気分だ。
「唯一の喜びは
《決して反抗できない力》
このスキルは対象が男性、女性などの性別に関わらず強大な力を発揮できる能力だった。
簡単に言えば持って生まれた怪力である。
更には力を制御できずに少し力を入れただけで物を破壊してしまう──などということもなく、オレは意思だけで自分の力を思うように扱うことができた。
唯一のチートスキルが怪力というのも華が無いが、"力"というモノが耐久力にも関係していたため何も文句は言えない。
今のオレは恐らく高度100mから落下して無傷で耐えられるくらいの防御力を有している。
平穏無事に生き抜くためにはある程度の力が必要だからな。攻撃面だけでなく防御面でもマージンがあるに越したことはない。
続きが気になった方は、ぜひお気に入りと高評価のほど、よろしくお願いいたします!