竿役の能力を手にしたといえども   作:恋狸

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固有スキルとそのリスク

「父上」

「サオエルか。その……どうだ、固有スキルの詳細は分かったのかい?」

「いえ……まだです」

「そっか……」

 

 はぁ~、とデカいため息を吐くのは小太りの中年男性。

 彼の名はエムエル・ルナティック。

 オレの今世の父親にあたる人物である。

 

 彼に呼ばれたオレが自室に出向くと、父上は異常に気まずそうな表情でオレに固有スキルについて聞いてきた。

 墓まで隠すと決めているオレの固有スキルだが、父上には不意の事故で固有スキルを持っていることがバレてしまったのだ。

 

☆☆☆

 

 アレは4歳くらいの時だったか。

 当初、固有スキルを確認できるウィンドウ画面のようなものは普通に誰もが見ることのできるものではないか、と思ったオレは父上と二人きりになった際に──

 

『父上、この目の前に浮いている半透明のモノはなんでしょうか?』

 

 ──と無知を装って聞いた。

 その瞬間、座っていた父上は驚愕の表情を浮かべるとダラダラと冷や汗を流し始めた。

 

『ま、まさか固有スキル……!! そんな……ウチのコに発現するなんて……!! さ、サオエル、良いかい。間違っても絶対ボク以外に固有スキルを持っていることがバレちゃいけないよ。ホントにホントにね!!』

『え……』

 

 血相を変えてそんなことを言う父上にオレは固まった。

 まさか固有スキルというのはこの世界で忌まれている類のものなのか……? と悪い想像がよぎる中、オレは『どうしてですか?』と問い掛けた。

 

『えーと……なんて言えば良いかな。ウチ……ルナティック家は実質的には隣の公爵家──マラスキ家に支配されてる状況でね……あとは反対側のお隣さん──デカルマ伯爵家とも懇意にしてる状況なんだ。伯爵家と懇意にしてることは公爵家には黙認されているんだけど……その、公爵家と伯爵家の当主って昔からの知り合いらしくてすっごく仲悪いんだよね……』

『なるほど……』

  

 4歳のオレに理解できるようにすごく言葉を選ぶ父上だが、残念ながら普通の4歳児には理解できない事柄だろう。

 だとしてもオレは理解できるので相槌を打ちながら先を促すと、彼は言いづらそうに話しを続ける。

 

『その、常に喧嘩してる原因っていうのが、二人とも上位貴族の当主としては珍しく固有スキルを持っていないんだ。だとしても凄まじく強いんだけど……だから二人の禁忌ワードが固有スキルでさ……もしもサオエルが固有スキルを持っていることがバレたら──最悪家が取り潰される、なんてこともあるわけなのォ……!!』

 

 ひぐっ、ひぐっ、と小太り中年おっさんが泣き始めた。

 己の父親としてはとんでもなく情けないが、上位貴族の板挟みになって苦労していることは分かった。

 

『二人とも若くして当主になったせいか野心バリバリだしさぁ……どうもボクみたいな見た目のヤツが嫌いらしくて会う度に冷ややかな視線飛ばされるし!! ヘコヘコしないと家取り潰す気満々なのに【それでも貴様は男か?】とか言われるし! どうしろって言うんだよぉ!!』

 

☆☆☆

 

 以上、回想終了。

 そんなわけで固有スキルを持っていることが父上にバレたオレは、二人きりになると固有スキルの詳細が分かったかどうかを確認してくるようになった。

 

 バレたら終わりとはいえ、固有スキルは強大な力を持つものがほとんどだ。

 何だかんだ父上もオレにこの板挟み状況から脱退できる力を有していることを期待しているのだと思う。

 

 父上には申し訳ないが、ヘコヘコしてるだけで平穏無事に過ごせるならばオレは力を開示するつもりはない。

 どのみち催眠とかゴミ鑑定とか虚根とかほとんどは貴族生活に使い道のないものばかりだし……。

 

「はぁ~、今日も公爵様に嫌味言われちゃった。こっちは飢饉のせいで貯蓄が心もとないのにさぁ。今のところ支援するつもりはない。自分で何とかしろ、だってさ」

「それは……大丈夫なのですか?」

 

 今年は小規模な飢饉が起こったせいで作物が不況だったらしい。当然父上は街中の人々に支援を要求されて忙しない日々を送っていたし、公爵家に支援を頼んでみるとも言っていた。

 どうやらそれは断られたらしいが。

 

「まあ、飢饉に備えて領民も貯蓄してるし、今年度分の税金を軽減すれば文句は出ないと思うよ。あとはボクらが少し豪華な食事を我慢すれば良いだけだしね」

「そうですね。領民優先で良いでしょう」

 

 こういう貴族らしからぬ部分は尊敬に値する。

 未だ奥底に現代日本人としての倫理観が備わっているオレとしては、領民が苦労している中で己だけが豪勢な食事など心が痛む。

 ましてやそれが将来の反乱の原因などになったら目も当てられない。

 

「父上……?」

 

 心配が無いと言い切った父上だが、その表情は芳しくない。

 怪訝な表情で問いかけると、父上は酷く真面目な表情で言った。

 

「多分近々、サオエルを公爵様と伯爵様に紹介する日が来ると思う。勿論、固有スキルの存在は秘匿すること。基本的には挨拶と相槌を打つだけで良いから」

「……分かりました」

 

 ……どうやら今世における最大の試練がやってきたようだ。

 もしもここで上位貴族に目をつけられたら──ジ・エンド。人生ごとフィニッシュになる。

 

 何とか平穏無事に生きるために──オレはこの状況を乗り切るしかない。

 

 




次次回──!!

サオエル、固有能力を勘違いされるの巻!!
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