個性がなくても、視えること、助けられることを
「……」『なんだろ、あの人たち』
緑谷出久四歳、散歩に出て桜の木の周りを半透明な人間?四人が浮かんでいた。何かわからないが、この歳では好奇心が勝ってしまい、出久はそれらに向かい歩き出す。
「ねぇ、」
「……ん、あ?坊主私達のことが視えるのか?」
「?うん」
「……そうか、そうか、まだいたか…見鬼持ちが、」
桜の木の周りにいた半透明な四人のうち一人、和服で老人の風体を持ったものが嬉しそうに、頷く。
「これが僕の個性?」
「個性ではないな、これは魂に刻まれた力、個性ではない」
「そっか…」
自分の周りとは違うことに個性が発現したと喜ぶが、個性ではないと告げられ、ひどく落ち込む出久。
「スマンな、ところでだがついて行ってもよいか?長年ここにいるが暇でな、坊主なら問題はないだろう」
「勝手に話を進めないでくれるかしら」
老人の言葉を遮り。着物を着た女性が、半透明なものが話に入ってくる。
「えっと…」
「ごめんね、私たちは既に死んでるから、君が良ければついて行ってもいいかな?」
出久を優先しようとは考えていたものの、やはり退屈だから、他のところに行きたいと、声を発する。
「うん、いいよ!」
無邪気に、答える出久。疑いを知らない子どもに少し心配をしながら、五人は自己紹介をする。
「緑谷出久!」
「わしは
「私は
「
「
この四人は、オールマイトとからOFAを受け継ぐ前、そしてその後も支える者たちである。
―――――――――
四人の霊を自身の身体に宿し、個性がわからなくても、元気に動く、出久。それを見ていた、夏月がある異変に気づく。
『出久…すこし焦げ臭い臭がする、どうする?』
「ん〜行ってみる!」
四季の霊は、基本放任主義だ、気づいたことを出久に伝えて、行動を聞く、危険があれば守るという意志の下の行動だった。
「ここかな?」
「止まれぇ!止まれぇぇぇ!!!」
白髪の少年が、蒼い炎をまき散らし、木々を燃やし尽くしてしまっていた。言葉から察するに、意図しない行動であることが予想される、つまり個性の暴走である。
「大丈、!!っ!!あぐぅぅぅ!!」
「!ご、ごめん!ごめん!ごめん!ごめん!」
身体が焼ける痛みで悶える出久に驚き、さらに混乱してしまう少年。炎の出力がさらに上がり温度が上昇する。
『これ以上は!』
「いや…だ、ヒーローは絶対に諦めない、オールマイトだってそうだ!」
『…そうか、妖術〈
放任主義、ソレすなわち話意見の九割九分の尊重。桜が個性ではなく、妖術を展開することにより、出久の体は燃えずに回復し続ける。痛みと回復を繰り返すが、今の出久は、脳内アドレナリンが体力に分泌されているため、問題にはならない。
手を伸ばし、少年の手を握り笑顔を見せる出久。
「大丈夫、僕は、大丈夫だ…よ」
その笑顔は、少年の意識を落ち着かせ、激情で染まっていた感情は心配へと変わっていく。炎が完全に収まったが出久の意識は朦朧としていき、気絶した。
―――――――――
無機質な機械音と激しい雨の音、そして四季達の心配する声を聞き、出久は目覚める。
「ここは…」
『病院だ、よく目覚めたな……』
「あの子は…」
『……大丈「自分が何をしたかわかっているのか!!!」
病院には似つかわしくない、怒号が病室の外から響いてくる。大したケガもなかったため、少し痛む体で外に出る出久。
外にはNo.2ヒーロー、エンデヴァーとその妻の冷、そして白髪の少年がいた。
「分かっていたことだが、本当に個性をまともに使えないのだな!ソレだけでなくこんなことをしでかして!ヒーローになるだと?ふざけるな!」
白髪の少年の顔が青ざめていき、母である冷が、庇うように抱き寄せる。
「エ、エン…デヴァー…」
「むっ、無事に起きたか、」
「何してるんですか?」
「説教だ、個性で人を傷つけることなどあってはならない、傷つければ
白髪の少年は原作では荼毘と名乗り敵連合に所属していたが、敵となる主な理由の山火事に介入した事により、少し未来が代わったのだ。
「じゃぁ、おにいさんはヴィランなんですか?」
「違うな」
「じゃぁなんで」
「君はまだわからないかもしれないがこれでもヒーローだ、人を助けることを怠ったことはない」
このときのエンデヴァーは、オールマイトを越せる個性を持つ焦凍がいれば問題はないという考えだった。
「じゃぁおにいさんは助ける必要はないんですか?怖がってますよ、目の前のことをちゃんと見て」
「目の前のことだと?」
語気が強くなって行く、四季達の勝手ながらのサポートだ、エンデヴァーは冷と燈矢の顔を見る。二人の顔は恐怖に染まっていた。
その顔を見てエンデヴァーは顔をそらす。
「なんで目をそらすんですか?いま一番近くに苦しんでいる人がいるのに」
「……うるさい」
子供とは思えない静かで的確な言葉に、エンデヴァーは嫌気が差していた。
「見なくちゃいけない、今がある、それを作った自分がいる、目を逸らしたら「……うるさい!!」
エンデヴァーに怒りが募って行く。冷と燈矢は口を挟めずに、ただただ見ていることしかできない。
「……貴方はヒーローだでも一番近くにあるものを見落としている」
「うるさい黙れぇ!!」
エンデヴァーの怒号が響き、冷と燈矢はもちろん、周りにいた人達も腰が抜け逃げ出す。
それでも出久は、冬蝶は目をそらさない。
「っ…!」『なんだこの小僧は、人生経験もないのに、何を背負っている、この目は、オールマイトの……』
「個性は、個体差がある、エンデヴァー、炎を操る個性、おにいさんが炎を出していたことも納得だ。個性にはつながりがあるから、そして個性は使う人次第で大きく変わる、同じ能力でも使う場所で天地ほどの違いが生まれる」
「っっ…!」
「可能性は無限だ、なのになぜ道を閉ざす、壊す!奪う!彼の力は、彼自身のもの、限界を決めるな、見続けろ!失って気づいてじゃぁ遅いんだよ!」
もう一押しと無意識的に冬蝶が言葉を発するが、完全に憑依していたことにより出久の体力が限界を迎え、ふらふらとしているがそれでも、エンデヴァーには深く刺さった。
『......なんなんだ...こいつは...何も知らないはずなのに...俺は何も...何も言い返せない......俺はオールマイトを超えるために...いや、俺じゃない...俺の息子に全部勝手に...!!ヒーローとして救わなくてはいけない者...』
「ごめんね、父さん」
「ゆっくり考えてください」
ふらふらと歩きながら、病室に戻る出久、それを見送ったエンデヴァー、轟炎司は、家族に向き直る。
「……燈矢…」
「俺頑張るから… 火傷なんて平気だから…! 超えてみせるから…!」
『(俺は何をしてたんだ…無理やり押し付けて追い込んで… 下手したら死んでいたかもしれないのに、また個性ごとで燈矢を……。あんな幼い子供に言われて自分の愚かさを知るとは……そうだ… 俺自身がやらねば意味がないんだ…燈矢は…燈矢は燈矢自身の道があるんだ…!救わなくてはいけないのは、謝らなくてはいけないのは、失ってはいけないものは目の前にいたんだ…』「もういいんだ、燈矢」
「大丈夫!もうあんな小さな子を傷つけることなんてしない!「違うんだ燈矢… もう俺の道を歩まなくていい…お前の道を目指してくれ…」…え?」
「燈矢…済まなかった」
精一杯の謝罪の言葉、嘘偽りなどない本心からの言葉だ。だが、今までしてきたことから納得さできない。
「辞めろよ、じゃあ今までの俺を否定するのか」
「違う!」
「じゃあ!」
「否定などしない... お前が強くなろうとしていたことを否定しない... ただ... オールマイトを超えるという、俺が持った野望に呑まれないでくれ... 俺のようになってはいけないんだ。見ただろう…幼い子供に何も言えずに怒りをぶつけただけの哀れな男を… 燈矢、今更だと思うがお前はお前がなりたいヒーローを目指してくれ! オールマイトなんて関係ない!」
エンデヴァーの言葉に、焦凍が反論する。今までの行動から来る否定だった。
「今までお母さん達をいじめてきたくせに!!いきなり謝ってもやだよ!!」
「ああ…その通りだ。身勝手だと思う…だが…今は…これしか…言えない… んだ…」
「あなた…やっと逃げるのをやめたのね…」
「ああ… 俺は…ここからやり直せるか…」
「ええ... 今のあなたなら。それにここまで追い込まれている燈矢を助けられなかった。私にも責任はある...」
エンデヴァーは涙を流しながら冷の顔を見た...
「でも急に言われても... 俺は...」
「燈矢、約束しよう。もうお前から目を背けない。お前を見続ける。だからもう苦しまないでくれ.....」
「俺を…見てくれるの…」
「ああ…!!」
「本当に…!?」
「轟燈矢という一人の息子を自慢の息子だと」
エンデヴァーは、他の子に向き直り、家族全員を見る。
「燈矢...冷...冬美... 夏雄... そして焦凍... 許してくれなんて烏滸がましい言わない...ただ... お前達が胸を張れるヒーローになろう。父は誰よりも偉大な男であると...!」
いつも怒りで濁り切っていた分からなかったエンデヴァーの目が真っ直ぐ自分達を写していることの全員気づいた...
―――――――――
「……大丈夫かな…」
「出久どうかした?」
「ううん、なんでもない」
雨の渋滞で、到着が遅れた引子が出久の言葉に疑問を投げかけるが、大丈夫と、答える出久、そこに医者が入ってくる。
「失礼します、お子さんの怪我ですが、状態も良いので、明日、明後日には退院出来るでしょう…」
出久が直ぐに退院出来るということを、聞いてホッとする引子に、医者のはっきりしない言葉が耳に残る。
「あの…?」
「…息子さんの個性検査も兼ねたんですが…」