霊縁とともに、霊感ありの出久   作:紡縁永遠

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誰かにとっての

 「〈菖蒲満開〉!治崎!!」

 「なんで来たの!あの人に殺されちゃう!」

 「もう、大丈夫!僕が君のヒーローになる!」

 「…戻ってこい懐理、殺されちゃう?何度言ったら分かるんだ。お前は、人を壊す。そう生まれたんだよ」

 

 治崎の無慈悲な言霊が、懐理に響いていく。それでも出久は懐理を離さない。

 

 「――だめ!…やっぱり…」

 「聞かなくていい。自分に掛ける言葉ほど強くかかる」

 「いつも言ってるだろ。お前のわがままで、俺が手を汚さなきゃいけなくなる。お前の行動一つ一つが人を殺す。呪われた存在なんだよ」

 「人に、子供に掛ける言葉じゃないだろ!」『魂の形からして、血縁じゃないのは確か。となると八斎戒の誰かの子供か…!〈オーバーホール〉対象の分解、再構築を可能とする。素材があればほぼ何でも作れる、錬金術に近い個性。この子の生死を厭わない攻撃、人体の再構築もできるのか?それなら無差別的な攻撃も納得できる。イレイザーヘッドの個性は視認が条件。この攻撃で分断された!不味いな、今の僕に人を抱えながら完璧に戦うことは無理だ。開化も初めて何より、相手の底がわからない。最初から全力は禁止されている。どれだけ削れるか

 

 治崎が地に触れたと同時に崩れ、幾多の棘となり出久と壊理に向かう。接敵した時点でイレイザーは個性を発動していたが、常時発動できるわけでもなく、出久との会話で切れた瞬間に分断してくる。

 生死を賭けた戦いの経験が無い出久。不利なのは当たり前で懐理を庇いながらではボロが出てくる。それでも怪我をさせないように、見える攻撃を全て捌いていくが、それも限界となる。元々慣れない和服に片腕が封じられている。限界は早く来る。

 その対処法は、羽織を懐理にかけて避難させ、自力を上げる。これにより、治崎は懐理に集中せざるを得なくなり、出久は全力で治崎に相対できる。

 

 「懐理を置いたら意味は」

 「〈山茶花流拳武術(さざんかりゅうけんぶじゅつ)御神渡(おみわたり)〉」

 「化け物か」

 

 御神渡、長野県諏訪湖で冬に見られる自然現象で、湖面が全面結氷した後に、気温の変化で氷が伸縮を繰り返し、亀裂が入って隆起する現象であり、拳を地に叩きつけることで地割れを引き起こす。四季の武術はその特性上、荒地を想定したもののため、どんな場所でも最速で駆けることができる。

 対する治崎は自身の足元を崩さないように、物質の再構築を行っていたため、脚を捕られ動きが止まる。

 

 「確かにあんたは強い。僕は訓練と修練の繰り返し、それでも、今だけは、僕が優位に立つ!」

 『もう、大丈夫!僕が君のヒーローになる!』「!」

 「もう、指一本触れさせない!お前の負けだ治崎!!」

 「気安く呼ぶな!来い!クロノ!止めろ!ヒーローになりたかったか、懐理を助けたかった、全てこの時代の病気だ!だから全て無に返す!」

 

 どこに隠れていたか、クロノ〈クロノスタシス〉が出久を減速させる。

 

 「懐理は、「〈山茶花流・霧ノ華(きりのはな)〉どいてくれんかのう。イレイザーといったか、コヤツ封じておけ。」

 「はぁ…だから止めたんですよ」

 「わかっとる、車では禁止したが、十分じゃ。溢れるほどに、咲くがよい」

 「件の少女保護できました!」

 

 離れていた冬蝶とイレイザーが合流し、出久が救出される。だが、これで終わらない。諦めない野望を持ったのが死穢八斎會現組長である。

 

 「いいのか?お前のせいでまた、人が死ぬぞ!これが望みか?懐理!」

 「!」

 

 言葉巧みに、懐理を縛り、連れ戻す。

 

 「望んで…ない」

 「冬蝶…いける!」

 「わかった」

 「こいつ程度で何とかなるか?懐理」

 「……ならない」

 「お前はどうすべきだ」

 「戻る」

 「だそうだ。他を下がらせたのは悪手だったなお前は望求められていない」

 「そうだとしてもだ!」『冬蝶が昔言ってた、いつか会う知人も、人の言葉と言っていたが』「僕はまだ、諦めきれずにここに立っている。いいか、人は、光に向かって一歩でも進もうとしている限り!人間の魂が真に敗北する事など断じて無い!〈麒麟霊地〉そこをどけ!」

 

 菖蒲の零咲、麒麟は陰陽道で土に属する。出久の踏み込みに呼応して、大地が均される。が、ぶっつけ本番で、満開を始めて使用したばかりの出久には重く、本来麒麟の特徴が体に現れるはずが、出ずに、その場にしゃがみ込み、血反吐を吐く。

 それを逃さない治崎ではない。懐理ともども地をせり上げて、地上への脱出を測ろうとする。

 

 「ま…でぇ」

 「しつこい…!」『こいつの羽織、目障りな。一緒に巻き上げたか』

 

 巻き上げられた羽織を懐理は意図してつかんだわけでわない。それでも、『僕はまだ、諦めきれずにここに立っている。いいか、人は、光に向かって一歩でも進もうとしている限り!人間の魂が真に敗北する事など断じて無い!』絶対に諦めないその意志が、心が、引き金を引く。

 

 どちらの家系にも属さない、突然範囲の個性〈巻き戻し〉目の前で殺されそうになった譲許を見て、逃げることを不可能した懐理。自身が痛みに耐えればと、そう決めた。だが、その日のうちに、何度も立ち上がり、諦めない目を見た。

 呪われた子だと、言われ続けた子供に、新たな意志が芽生える。助からなければと、その思いが、少女を加速させる。

 

 「もう、離さないよ」

 「返せ!」

 『空中じゃ身動きが取れない、いや、治崎が開けた穴がある、冬じい達が言っていた。麒麟は殺生を嫌い、地に足をつけずに、空を駆けると』「ああ゙あ゙あ゙あ゙」

 

 爆発音とともに、出久は空に放り出される。先程とは違い血反吐も吐かずに、数メートルを自由落下した後に着地する。

 

 「身体は無事、怪我も治っている。君の力なのか?…ぐぅ、体が内側から」

 

 「表示で発動できたとして、止め方が分からないんだろう、懐理!」

 「合成獣、捕らえられた構成員を取り込んだのか」

 「人間を巻き戻す、それが懐理だ。使い方によっては、人を猿まで戻すことすら可能だろう。そのまま抱えていたら消滅するぞ。触れたもの全てが【無】へと巻き戻される。呪われてるんだよ、その個性は」

 「絶対に嫌だ!おそらく、足が折れた瞬間に、痛みを感じる前に、折れる前に戻してくれたんだ。とっても、【優しい】個性じゃないか。体感でわかった。体が戻り続けるスピードを、それを超えるスピードで大怪我をすれば、勝てる。エリちゃん、力を貸してくれるかい?」

 

 数人の敵を自身とともに分解、再構築することで、合成獣となった治崎。出久は否定するように、羽織で懐理を背負うように結ぶ。

 

 「お前も、懐理も、力の価値をわかっちゃいない。種としての変化をする前まで巻き戻せることがわかった。個性因子を消滅させ、人間を正常に戻す力だ。個性で成り立つこの世界を、理を壊すのが懐理だ。価値も分からんようなガキに使いこなせるわけがない!!!」

 「〈菖蒲流・活火山(かっかざん)〉」

 

 治崎の、壊理を個性でしか見ず、道具としか感じない、その考えに、治崎を上空へと蹴り飛ばす。

 

 「どいつもこいつも大局を見ようとしない!!俺が崩すのは、この世界!その構造そのものだ!俺の邪魔をするな!!」

 『エリちゃんの力が強まってる。止め方がわからないのか、時間がない。でもこれだけは』「目の前の…………小さな女の子一人救えないで…みんなを助けるヒーローになれるかよ!」

 

 拳連発、空いた穴に叩き込むように、撃ち込む。

 

 「はぁ…はぁ…はぁ…」

 「うぐ!」

 『エリちゃんの個性が、勢いを増してる!』

 『いや!この人が、死んじゃう!止まって!』

 「詰めが甘いのぅ。〈生命凍結・氷獄(ひょうごく)〉」

 

 個性の暴走だけでなく、負荷による熱も飛ばす、冬蝶の霊術。これにて任務は完了した。




ヒロアカの話で最も好きなのがエリちゃんの救出です!少し抜けていますが、3話も使えたので上々かなと、出久の解説ブツブツだったり、血界戦線の名言を取り入れたりと、難しかったかなと、相澤先生を活躍させれなかったり、オールマイトやサー・ナイトアイが全くでてこなかったのは、考えものですが、頑張りました。
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