「…………」
「さて、随分と無茶をしたみたいだな。免許が、資格がないとヒーローができない理由だ。まぁ許可をした本人がいなかったのも問題ですが」
「はい……」
「まぁ、目的等未然に防げたためこれで今回は不問とする。が、次は資格を取ってからだ、それは重々と理解するように」
「はい…」
治崎を殴り飛ばし、一件落着のところで出久
「貴方がたも、今後は手綱を握るように」
「うむ、承知した」
「まぁ…ヒーローとしては見込みがある。それじゃあエリちゃん?はこっちで引き取るから」
「え?えっと…」
「そういえば、バンドの名前しか名乗ってなかったね。緑谷出久、まぁ…ヒーロー名どうしよう?」
出久の、唐突な質問に冬蝶が答える。
「お前さんなら
「??」
「あーデクでいいよ」
「デクさん!」
懐理の不安ながらも元気な声が響く、
「それじゃあ連絡先を、声だけでも聞ければ喜ぶと思うから」
「あ、はいっ」
連絡先を交換して、懐理と別れた出久達。
「ライブ中止、及び再開未定を伝えないと」
「ヴィランに襲われたという真っ当な理由がある。視聴者も許してくれるだろ……それと、会わせたいやつがいる。あの嬢ちゃんも今日来るだろ?相性はいいはずだから」
「あ〜わかった、ただいまぁ…」
「おかえりなさ〜い」
出久の母引子の声が響く、遅れ、また別の女性の声がする。
「おかえり……どうした?疲れているようだが、ライブ行けなくて悪かったな」
「いえ、いろいろあってライブは中止に」
「……!まさか、あの爆破ヴィランもどきに邪魔でもされたか?」
「違いますよぉ! かっちゃんをヴィランもどきって…」
友をヴィラン呼ばわりされて、否定する出久。それでもヴィラン呼ばわりするには理由があるようだ。
「いや、あいつはヴィランだ。出久の事を下に見て… いつも出久に負けてるくせに…!」
「あのですねぇ…僕は気にしていないんですから。それに最近は、一本取られる方が多いですよ」
「なに!?…まぁ辛いことがあったらいつでも言えよ? 私がこの銃で…」
「ワー、キョウノバンゴハンハナンダロウナー」
「おい」
「……心配しなくても大丈夫ですよ、火伊那さん。僕には護衛がついてますから」
「そうだな」
公安ヒーロー、レディ・ナガン、遡ること五年前、出久は公安所属としての汚れ仕事をしているナガンと出会ってしまったのだ。
―――――――――
オールマイトの無事が確認された時期、ヒーロー活動=グッズの量がオールマイトなので、出久もそれを求めて、走り回っている。
近くの店では売り切れて、遠出した日のこと。強めの雨が降り、気分が下がっていながらも、グッズは確実に手に入れて、帰りの道を歩いていたとき、雨の陰気からなる負の霊の警戒から、路地の奥から聞こえた銃声に気づくことができたのである。
「なんだ?」
路地の奥には開けた場所が、そしてピンクとダークブルーのバイカラーの髪の毛をした女性が、三人の死体を見下ろしていた。死体からは止めどなく血が流れ、それを雨水が流していく。女性も自身にかかった血を、空を見上げながら流すように立っている。
『レディ・ナガン!?』
「…っ!誰だ!出てこい…!」
動揺し揺れた出久の気配に、ナガンが反応する。出久も隠れているよりかはいいだろうと、素直に顔を出す。
「子…供……だと?!」
あらゆる人が憧れるヒーロー。殺しはよほどのことがない限り、認可はされない。それなのに、殺していたのだ。皆が大衆が憧れるヒーローがだ。
「こ…れは…」
絞り出した声、それは震えていた。もみ消すことは可能だ。それでも、子どもに見られたことによる動揺と非難されるかもしれない相手の口、振り続ける雨の冷たさが、ナガンを縛っていた。
どんな顔をしているのだろうと震えているのだ。
『は、はは、何が…ヒーローだ。何が社会のためだ…薄汚れたヒーローを消すだ。この子供からしたら、私が薄汚れたヒーローじゃないか』
「あの…大丈夫ですか?顔色悪いですよ?」
ナガンは言葉を発せなかった。子供が人を殺される現場を見て、人を殺したであろう人を気遣ったのだから。
「お前、なんて顔をしているんだ。なんでお前が悲しんでるんだよ!ヒーロ一が人殺しをしていたからか? そうだよなぁ、みんなの憧れのヒーローがこんなことをしてからなあ!!!」
「ナガン」
「その荷物…ヒーローが好きなんだろ…? ごめんなぁ… 最低だな…」
「ナガン」
ナガンの発する自虐を止めようとする出久。言葉は言霊、言霊は呪、自分で自分にかける呪ほど強く作用するものはない。
「ごめんなぁ…」
「ナガン…」
出久は背伸びして、ナガンの頬に少しついていた血を拭った。
「大丈夫です。僕はあなたを拒絶しません」
「…… おまえ… 何なんだ…これを見てどうして落ち着いていられるんだ…」
「僕の個性は特殊だから。個性がない時代に、個性のような力を持った人達は、人を助けるために奔走して、その過程で多くを殺したと言っていた。でも、死してなお、まだ進もうとしている」
出久は個性を持たない。力を借りているに過ぎない。故に過去を見て、努力する。四季の霊の過去は壮絶で戦場を走り、その力の強さ故に味方に刃を向けられたりと、四苦八苦しながら、生きて、逝った。
「……名前は、」
「緑谷出久、それと、僕の個性で力を借りている、霊の一人」
「うむ、山茶花冬蝶じゃ」
「あんたの教育か。だめだな私はそうやって受け入れてくれることを盾に逃げようとしてる…殺しだってそうだ。理由はあった…それも幾度も、私は卑怯者だ」
「いや、ひとつだけ認識を改めるんじゃな、ナガン君。君は戻れる。なぜなら、人は諦めきれずにそこに立っているかぎり、光に向かって一歩でも進もうとしている限り、人間の魂が真に敗北することなど、断じて無い!」
「こんなハリボテだらけの世界で、そんな事を言うやつがいるとはね」
「ハリボテか、いや正しいな。それになぁ、この言葉は、知人が言っていた言葉だ。まぁ、その知人も人から聞いたと言っていたが」
どんなに取り繕っても殺ったことへの事実は消えない、それは冬蝶達はよく知っている。だから残っていたなのだ、事実を背負い、諦めない意思を持つものを、またこの力を持ち否定されずに人とともに生きれるものを。
「あなたが、つらい思いをしてきたから、僕達は平和な世界を生きれたんですね。すみません、気づけなくて」
「やめろよ。謝るな。知ったようなことを……済まない」
子供に当たってしまったことにまた落ち込む。
「人は弱い。その弱さ故、時に矜恃を捨てた行動をとることもあるだろう。だが、それがなんだというのだ。たとえ千の挫折を突きつけられようとも、儂は儂らが生き方を曲げる理由にはならない。だから死んでしまったのじゃがな。生きている、受け入れてくれるものもいる。あきらめるには早計じゃと思うがね」
「僕は、ナガンのことを立派なヒーローだと思いますよ」
「どこが!……………立派なのか?」
「うむ、後は自分で自分を認められるようにじゃな」
―――――――――
「五年かぁ〜」
「どうした?」
「いえ、出会った頃を思い出してました、それと冬爺達が用があるそうです」
「わかった」
二話続けて、血界戦線の、名言を使うことになるとは
「人は弱い。その弱さ故、時に矜恃を捨てた行動をとることもあるだろう。だが、それがなんだというのだ、ご老体。たとえ千の挫折を突きつけられようとも、わたしが生き方を曲げる理由にはならない。」
「ひとつだけ認識を改めたまえ、レオナルド君。君は卑怯者ではない。なぜなら、君はまだ諦めきれずにそこに立っているからだ。光に向かって一歩でも進もうとしている限り、人間の魂が真に敗北することなど、断じて無い!」
クラウスさんのこの言葉、好きです、次回は、血界戦線ネタで埋まります。ナガンは必要なかったかな……