「それで、ここはなんだ」
「儂らの旧友がいた場所じゃ。まぁあ奴らは霊の中でも特殊だったがな。冥府から色んなところに行ってたみたいだしの」
「私は必要なのか?」
「……出久の守役としてだな、」
「それならいいが、」
「誰がいるの?」
荒廃した日本家屋。そこに出久と火伊那は四季の霊に連れられ、来ていた。
「ちょっと変わり者だ。儂らが扱う霊術は四季ということもあり、受け入れられやすかった。奴等は呪術に近い。血液を操る、黄昏と暁の霊術、逢魔ヶ時とも言うな」
「変わり者とは失礼ね」
「なんじゃ、珍しい。いたのか
「いるわよ…人のもとにつくんだね」
中は良さそうに会話をするが、知った仲ゆえなのか出久、火伊那を目に止めると、嫌悪の視線を向ける。
「ふ〜ん、私だけじゃ無理ね。ついてきなさい。東雲お客さんよ」
暁色の和服を着た女性と、東雲色の和服を着た男性の霊
「子供につけと、理由は分かった。それ故に分からん。もう十分だろ」
「実力としてわな、だがまだおぬしらが救われておらん。」
「…いや、十分救われたよニューヨーク、ヘレサムレズ・ロットでね」
「あんたらに教えた言葉は、そこで聞いたものだ。そこは血闘士がいて、血を使い戦う。多くを学んだよ。高校入学までどれだけある?使いこなせるのか?……いや、それが君の才能かもな。一月以内に、血で人助けをしろ。それが条件だ。そっちの生者の守役は、そうだな、こいつと会うのを禁ずる」
「え……………………………………」
衝撃的な東雲の発言に火伊那は絶句する。ハリボテの世界のハリボテのヒーローだった火伊那は出久に助けられた。それ故に、公安よりも出久を緑谷家を優先すると言う考えだったのだ。
『え、え?!?!出久が見れない?かわいい出久が?』
「あなた、血濡れ仕事やってるでしょ、今回はそれが色濃く出る、離れてたほうがいいかな」
「そ、そうか……」
「う〜ん血で人助けか、献血はまだできないし……」
「そう考えるようなもんじゃない。生活の中で考えるものじゃ」
「…分かった、」
暁音と東雲はそのまま出久に憑依する形でついてくる。その間火伊那は出久にべったりとくっついていた。
―――――――――
『そろそろ夏休み。タイミングが合わなくて、OFAの受け継ぎが夏休みになったけど、それまでにも鍛えないと……ん?なんだあの子、公園に一人で……』「あの…大丈夫ですか」
「……別に……なんでもないですよ」
笑顔ではあるものの、無理をした笑顔。出会って数日の火伊那がよくしていた顔のため、何かあるとすぐに気づく出久。
「何か無理をされてませんか」
「?!わかるんですか?」
「なんとなく、知り合いが似たような顔をしていることがあるので」
「……好きな人がいるんです」
『まさかの恋愛相談?!桜姉さん!』
『がんばれ!』
『ちょっと!』
桜に救済を求めるが、それを拒否られる。霊の中で何か打ち合わせがあったようで、他のものは会話すらできなくなっている。
「普通に告白すればいいんですかね。でも普通ってなんですかね?普通じゃないといけない。でも、それが分からない」
「……」
「普通にオシャレすればいいんですかね?カァイイ服とか……」
「う〜ん、恋愛については分からないけど、個性社会は違いがより強く出る。押し殺さずに、ありのままやるのも手なんじゃないかな?」
恋愛について分からないため、普通についての回答をする。普通から逸脱して否定された者を出久はよく知っている。
「私の普通は皆と違います」
「そうなんだ。でも、見える景色はちょっとずつ違うからさ、それは仕方ないことなんじゃないかな。身長みたいに物理的な違いもあるけど、同じものなんてないから…」
「……」
「我慢は必要だ。でも、自分を表すのが個性だ。それまで押し殺したら、自分であって自分じゃない何かになる。僕はそう思う」
黙って出久の話を聞き、それでも納得できないと言う。
「でもあなたがそれを言えるのは、受け入れてくれる人がいるからですよね?」
「...」
「私の普通は親から拒絶されました」
『考え方の違いで拒絶か…遺伝子から似通った性格の子供が生まれる。それは至極当然とも言える。でも突然変なのと言われたり、たまに大きく違うものが生まれる…』「…じゃあ僕に君の普通を教えてくれないかな」
「…?どうしてそこまで私に関わるんですか?」
「…僕…自分で言うのもなんだけど…困っている人を放っておけないんだ」
その言葉を聞いた少女はゆっくり話し始めた。
「私…昔から血が好きなんです。チウチウするのが好きなんです。血が流れているとカッコよくて、カァイイと思うんです。好きな人の血をチウチウしたいと思ってしまうんです。でもダメなんですよねェ。生きづらいですよねェ。親には気味の悪い笑顔と言われたんですよ。でもこれが私の笑顔なんです」
そう言った少女の笑顔は、切なく重く、直ぐに崩れる笑顔だった。この時少女はこの話を聞いた出久が逃げてしまうのではないかと思っていた。
しかし出久は黙って話を聞いていた。
少女は出久のその態度に驚いた。
「そうなんだ。血が好きなんだ。個性の影響かな?」
「そうなんです... 多分」
「理解されないか…確かにつらいね…」
「……あなたの個性は?」
「人、死者から個性を借りるというもの。自分の体に合わない、使いこなせない、それでもヒーローになりたい一心で努力して、幾つか身につけていく、そんな個性」
借りてはいないが、実際四季の霊ほどに扱えるわけではない、それでも努力と研鑽を積んで、ヴィランに対抗できるほどにまで仕上がった。
「凄いねェ…かっこいいねェ…」
「… ありがとう。君の行動はダメ…だね…フォローはできない。我慢は辛いと思うけど、君が犯罪を犯して、ヒーロー達に追われるのは嫌だな」
「…でもどうすればいいのです?」
「…血が好きなんだよね?」
「はい」
「…」
出久は近くに落ちていた石で、手のひらに傷をつけた。そこから血が流れる。これには少女も驚く
「えっ!?」
「…… 少しだけチウチウ?してもいいよ。これで我慢する必要がなくなるなら」
少女は、恐る恐る手のひらの傷口に口を近づけ、血をチウチウと吸う。
「…!君の血…美味しぃねェ」
「そ、そう………よかったら、たまに血をあげようか?」
「…なんで、そこまでしてくれるんですか?」
「言ったでしょ困っている人を放っておけない。今自分ができることをする。」
血への欲求がなければ普通の少女と言える。
「…!! 嬉しいのです! 私を受け入れてくれるなんて!あなたがいるなら我慢できる気がします!生きづらい世の中でも、あなたがいるなら生きやすくなると思います!」
出久の言葉はしっかりと少女に響いたようだ。
「私トガです! トガヒミコです。」
「僕は緑谷出久… よろしくねトガさん」
「ヒミコでいいです。出久くん…カッコいいねェ…中学のあの人より…」
「えっ!?」
「出久くんと仲良くできなくなるのは嫌なので、悪いことはしません。連絡先を交換しましょう!」
血が欲しくなった時に、直ぐに動けるようにと、出久もそれに了承した。
『合格だね』
『ああ、出久明日から霊術〈
『じゃあ』
『夏休み前には完璧に覚えられていると思うぞ』
「よし!」
少しというか、かなりの荒治療ですがトガのヴィラン化を防ぐことができました。敵連合の弱体化が酷いですが、映画でも詰め込んでおきましょう、ヒロインが増えますが……